第一話
私こと比企谷八幡は現在、生徒指導室に呼び出され一人の先生と対面していた。何故呼び出されたのか、理由が分からない。
そこで、人間万事塞翁が馬ということばを思い浮かべる。人生何がいつどうなるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないという意味だ。
故にここで何を言われようとも、心に波を立てず、山の如く佇んでいようとそう考えていた。 …先生が口を開くまでは
「突然だが比企谷、には共学化のテスト生として浦の星女学院に転入して貰うことになった」
「…はい?」
時間が止まった、つられて思考も止まった。先生は何を言っているのだろう。浦の星女学院?いや聞き間違えか、ということは Uranohoshi Joe JAC IN つまり浦の星のジョーがジャックインしたのか。スロット当たって良かったね。
などと訳の分からないこと考えている間にも、脳が勝手に理解をし始める。
"共学化、テスト生"
いやいや
"浦の星女学院"
そんなまさか
"転入して貰うことになった"
俺の意思は!?
…嫌な汗が頬を伝う。これが俗に言うターニングポイントというやつだろう。ここで間違えれば地獄が待っている、ぼっちとしての生存本能がそう警鐘を鳴らす。まだ終わっちゃいない、始まってすらいない。これまでの人生経験を駆使し、持てるカードをすべて使い、微分積分を応用し全身全霊を賭けてこの窮地を脱する。
"先手必勝"
「平塚先生」
「どうした」
「嫌です」
「君に拒否権はない、それにこれは君のためでもあるんだ。人と関わろうとしないその孤独体質、奉仕部で少しは変わってくれると思っていたんだがな。」
まだ大丈夫"明鏡止水"
「だとしても親が何て言うか」
「親御さんの了承は得ているぞ」
あ、あれ?"暗雲低迷"
「妹がまだ小さいので」
「中学二年生を小さいとは言わんだろう」
やばい"五里霧中"
「でも、女学院に男が行くのはおかしいでしょう?」
「共学化のテスト生だからな。喜べ、先人の誉れだ」
だめそう"絶体絶命"
「とはいえあちらにも人を選ぶ権利がありますよね?」
「すべてこちらの裁量にまかせるそうだ」
それでも!"不撓不屈"
「い、行きたくない!」
「行け」
1日の授業が終わり、学生はそれぞれ自分の行くべき場所へと足を動かす。三学期も残すところ後一週間。本来なら春休みに胸がときめき、心踊らせ、浮き足立っているはずだった。
しかし浦の星女学院への転入が決まり(いや正確には決まっていたんだけど)軽いとは程遠い、鉛のように重い頑丈な脚部パーツを手に入れた俺は、その足で奉仕部へと向かった。ちなみにバーニヤはついていない。