キーンコーンカーンコーン
部活の終わりを知らせるチャイム。
「終わりだな」
自分に言ったのか、二人に言ったのか俺の口から言葉が漏れる。
「…そうだね」
「…そうね」
先程まで、俺に聞こえない程度の絶妙な声量で話をしていた二人もそれに賛同する。
「それじゃあ、帰るわ」
そう言い、席を立とうとする。
「待って、ヒッキー!」
「ん?なんだよ今から帰るところなんだけど」
「それは分かってるよ!」
分かってるなら何故呼び止めた。あ、用があるのか。
「それで?」
「あのねヒッキー、本当に転校しちゃうんだよね?」
「ああ、そうだな。喜べ、来週にはいなくなる」
そう、いなくなる。ここから
「そっか、本当なんだよね…」
僅かな沈黙。
「あのね、昨日部活が終わってからさっきまで、ゆきのんと二人で話してたんだ。」
「なにを?」
「ヒッキーのこと」
トクンと心臓が跳ね上がる。
「…なんで俺の事」
「だって転校しちゃうんだよ。どうせヒッキーのことだから、"もう会うことはないだろう"とか"これで俺という呪いから解き放たれる"とか思ってるんだよね」
いや、そこまで厨ニくさい事は思っていない。近いことは考えてたけど。
「でも、私はヒッキーとさよならしたくない」
「…」
「だから、ヒッキーと友達になりたいの」
"友達"
酷く定義が曖昧で、安っぽい言葉。けれど、俺がずっと手にいれたかった理想の関係。
「今までずっと甘えてた。奉仕部に居ればヒッキーともいつかは仲良くなれるって。けど、違った。勇気を出さなきゃダメなんだよ」
由比ヶ浜は続ける。
「ゆきのんもそう思ってるんだよ。ね、ゆきのん」
「え、ええ、そうよ」
雪ノ下を見ると、目があった。だがすぐに逸らされてしまう。
「どうしたんだよ、急に…」
「急じゃないよ。ずっと思ってたんだから」
「私も、…ずっと思ってたわ。比企谷君、あなたと仲良くなりたいと」
…俺も思っていた。けれど諦めていた。
「ゆきのん、せーので言うよ」
「わかったわ、由比ヶ浜さん」
「せーの」
「「ヒッキー(比企谷君)、私と友達になってください」」
俺が言えなかった言葉を、二人は口にしていた。
たくさん考え、勇気を出して俺に言ってくれたのだろう。
冷えた手に、熱がこもる。ついさきほどまで、諦めきっていたのに現金な体だ。返事をしなければ。だけども、言葉が出ない。代わりに心から溢れだした感情が、涙となって零れ出てくる。
「うっ…、うっ…」
「ちょっと、ヒッキー大丈夫?」
「比企谷君?」
「だいじょうぶ、だいっ、じょうぶだから…」
なけなしの勇気を振り絞る。もう目を背けない、傷付くなんて知ったことか。
「よろしくっ、お願いします…」
「よかった~」
「ええ、本当によかったわ…」
涙が止まるのを待ち、顔を上げる。
「ヒッキー、これからよろしくね」
「比企谷君、…そのよろしくお願いするわ」
夢にまで見た光景。二人に手を差し出し、目配せで握手を要求する。
大丈夫、腕は動いた
二人がそれに応じ、握手をする
暖かい確かな感触がある
握り返す
今度は消えない
「雪ノ下、由比ヶ浜」
「「なに?」」
「これから、よろしくお願いします」
あれから二週間が過ぎ、俺は内浦に来ている。
あのあと二人を遊びに誘い、出掛けたりもした。漸くなることが出来た"友達"という関係。ほんの少しの間ではあったが心から楽しいと思えた。そして、その時間が俺を大きく変えた。
「よし、友達100人つくるぞ」
おかしな事を口にしていた。出来るわけがない。それでも、不思議と心は楽しんでいた。
これから、どうなるかわからない。1か月前の俺なら、ここで"どうせ一人なんだ、どこにいようと大差ない"と、腐っていただろう。
けど今は、"たくさんの人達と友達になろう"と新しい出会いに胸をときめかせていた。
そんな気持ちで歩く、内浦の浜辺。それも悪くないと思えてしまう。
やはり、俺の青春ラブコメはまちがっている。
くぅ~疲れましたwこれにて完結です!
なんてことにはなりません。漸く千歌たちとのイチャイチャを書けるのに、終わらせるわけがない。
ちなみに、よろしくした二人は二度と出ません。