輝きがほしい比企谷八幡   作:SHSH

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第十四話

 朝、目が覚めると同時に昨日の事を思い出す。

 

(謝らなければ。…違う、謝りたい)

 

 桜内さんの力になりたいと思ったのは本当だ。そこに嘘偽りはない。ピアノから逃げてきたという桜内さんに、今まで人から逃げてきた自分を重ねてしまった。そして、あの二人に救われた俺は、今度は俺が救う番だと勝手に息巻いていた。

 

「…はぁ」

 

 自分が情けない。やはりリア充の真似事は俺には出来なかった。けれど、腐ってもいられない。

 

(…謝ろう)

 

 早く謝りたいという自分勝手な衝動を抑えながら、身支度を済ませ学校へと向かう。

 

 

 

 

 学校に着き、疑わしげな視線を浴びながら職員室へと向かう。(大丈夫、俺は転校生だ。何も後ろめたいことはない)と思いながらも、歩く足が速くなる。

 職員室に入ると、応接室へと促された。

 そしてそこには、俺が謝りたくて止まない彼女がいた。

 

(桜内さん…)

 

 目が合う。が、すぐに逸らされてしまう。

 それでも、謝りたい。

 

「桜内さん、昨日はごめんなさい。俺何も知らないのに、勝手なこと言って」

「……」

 

 目は合わせてくれない。

 …仕方ない。これ以上どうにかしようとするのは、また桜内さんを自分勝手に巻き込んでしまう。…そう思い、椅子に座ろうとすると、桜内さんが口を開いた。

 

「…私も、私もごめんなさい!」

 

「…え?」

 

 何故桜内さんが謝る。

 

「ピアノが上手くならないのは自分のせいなのに、比企谷君に当たっちゃって、本当ごめんなさい…」

「違う、悪いのは軽率だった俺で、桜内さんは何も」

「ううん、悪いのは私。比企谷君は頑張れって言ってくれただけだもん」

「いやいや、それが軽率だった訳で、やっぱり悪いのは俺なんです」

「違うよ、だから私が悪いの…」

「いや、だから俺が悪い訳で…」

 

 目が合う。すると、桜内さんが笑い出す。

 

「ふふふ、良かった…」

「良かった?」

「うん、良かった。だって比企谷君、怒ってると思ったから」

「俺が怒る理由はないと思うけど…」

「あんな事言って、飛び出して行ったのに?」

「だからそれは俺のせいであって」

「…私は悪くないと?」

「勿論。むしろ怒るどころか、昨日からずっと謝りたいと思ってたぐらいで…」

「…そっか、比企谷君"も"そう思ってたんだ」

「"も"?」

「うん。私も謝りたいと思ってたから。でも、中々言い出せなくて…」

 

 またも目が合う。

 

「ふふふ、比企谷君って優しいね」

「い、いきなり変なこと言うなよ…」

 

 優しいのは桜内さんだろう。やはり、そんな彼女の力になりたいと思った。今度は言い方を間違えない。

 

「…桜内さん」

「何?比企谷君」

「もし困った事があったらさ、俺を頼ってほしい。桜内さんの力になりたいんだ。」

 

 勿論無理にとは言わないけど、と一言付ける。

 

「…なんで、どうして力になりたいの?」

 

 当然の質問。会って二日の男に、二つ返事で頼る人はいない。でも、桜内さんに自分を重ねたから、なんて気持ち悪い事を言えるはずもなく…

 

「…桜内さんだから」

 

 と、なんとも言えない言葉を口にしていた。それでも、彼女は納得してくれたようで

 

「…私だから。そっか…うん、わかった。頼りにするね、比企谷君!」

「お、おう!まかせろ」

 

 入った時には静かだった空間は、ほんの少しだけ賑やかになっていた。

 

「比企谷君、これからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「そんなに畏まらないでよ、同じ二年生でしょ?」

「じゃ、じゃあ。…よろしく、桜内さん」

「うん!こちらこそ」

 

 

 

 しばらくして、先生がやって来た。これから教室へ行くそうだ。今朝までは悪かった体調も、気付けば良くなっていた。…本当に、良かった。

 教室へと向かう途中、桜内さんを見ると大分緊張しているようだったので声をかける。

 

「さ、桜内さん。ききき、緊張しないで、リラックスして行こう」

「…いや、比企谷君の方が緊張してない?」

 

 そう言いジト目で見てくる。…だって仕方ないだろう。これから行く教室には、女の子しかいないのだ。多いのではない、しかいないのだ。男にとっての未開地、フロンティアなのだ。スピリットエボリューション!

 

 どれだけ緊張していても、その時は来る。

 

「えー、今日から新しくこのクラスの仲間になる、転校生を紹介します」

 

 教室の中から、"どんな子だろう"、"一人は男の子だよね、イケメンかな!?"なんて声が聞こえてくる。やめろ!それ以上の期待は己が身を滅ぼすぞ!

 そして先生に指示され、二人で教室の中へと入る。

 

 一転して静まり返る教室。今、俺たち二人は見極められている。スクールカーストという生態系の、どこに位置する者なのかを。

 そして俺は教室内を見渡す。さきほど"イケメンかな!?"と言っていた愚か者の顔を、この眼に焼き付けるために。

 

 すると、一人の女の子と目があった。

 

 

 

「「…あ」」

 

 

「比企谷君だ!」

 

 俺の視線の先には、先日お世話になった高海さんの姿があった。…浦の星の生徒だったのか。




この作品では、梨子ちゃんが海に飛び込もうとしなかったことになっているため、千歌ちゃんとの奇跡の出会いはありません。
許せサスケ……
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