高海さんと運命の邂逅を果たした俺は、涙ながらに抱き合う事もなく自己紹介を終え、指定された席へと着いていた。
(…さて、問題はここからだ)
自分で言うのもなんだが、俺の顔は目以外はそこそこ整っている。それゆえ、休み時間の間におそらく質問攻めに遭うだろう。 念のためシミュレーションをしておく。
『ねぇねぇ、比企谷君って彼女いるの?』
『い、いないけど』
『じゃあ、趣味は?』
『読書…とか』
『そーなんだ!オススメの本とか教えてよ』
『…特には』
『じゃ、じゃあ好きな女の子のタイプとかは?』
『俺を養ってくれる人』
『そ、そうなんだ…』
『……』
って全然駄目じゃねぇか!
生憎女子にオススメする様な本は読んでないんだよ!いや、出来そうなものはあるけど、この女学院で出すには余りにもリスクが高すぎる。クソッ、俺はピエロになることすら出来ないのか。
あーでもない、こーでもない、と考えている内に朝のHRが終わり、激戦の火ぶたが切って落とされた。
(来るなら、来い!)
衝撃に備え身構える。教室内が一気に騒がしくなり、静寂が尻尾を巻いて逃げていく。皆が席を立ちある場所へと向かう……そう、転校生である桜内さんの席に。まぁ分かってたけどね。備えあれば憂いなしっていうじゃん?…備えたが故に憂う事になってしまったが。
涙が零れないように上を向いていると、高海さんが声を掛けてくる。
「比企谷君、一昨日ぶりだね」
「あ、あぁ、そうだな。一昨日は助かった」
「えへへ、よかった~、ちゃんとお家に帰れたんだね」
「そりゃあ、交番まで行けばこっちのものだからな。高海さんがいなければ、どうなってたか」
大袈裟だよ~という彼女の隣で、グレーの髪色をした女の子が仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
仲間にしますか?
はい←
いいえ
"はい"を選ぼうとしたところでその女の子が口を開く。
「私の名前は渡辺曜だよ!よろしくね比企谷君!」
渡辺曜と名乗った女の子は、正に体育会系、リア充です!という風貌をしていた。
「よ、よろしく渡辺さん」
とりあえず挨拶代わりに吃っておく。これがボッチの流儀だ。
「曜ちゃんはね、高飛び込みの選手なんだよ!」
「お、おう、そうなのか」
興奮しているのか顔が近い。いい匂いがする。
「それに、曜ちゃんすっごいかわいいでしょ!?」
ね?ね?と言った顔でこちらを見てくる高海さん。
「ちょ、千歌ちゃん!変なこと言わないでよ…。ごめんね比企谷君」
「…いや、全然気にしてないから」
本当に気にはしていない。…意識はしてるけど
…それに
「かわいいのは事実だしな」
「え…」
「でしょ!いやー比企谷君はお目が高い!」
…しまった。ここでボッチの弊害が出るとは、しかし渡辺さんを見る限りまんざらでもなさそうだ。つまりセーフ
「もうっ!からかわないでよ//」
プイッと余所を向いてしまうところがまたかわいい。だがそれを口に出すと流石に怒られそうだ。
すると、突然高海さんが声を上げる
「あっ!そうだ!」
「ん?どうしたんだ」
「私ね、スクールアイドルやることにしたんだ」
"スクールアイドル"聞いたことがあるような、ないような。あれか、学生がアイドル活動するやつか…そのまんまだな。
「そうか、それは良かった」
「それでね、比企谷君」
なんだろう、嫌な予感がするような、しないような…
「手伝って!」
やっぱ、してた。
なんていうか、まぁ…あれですよね。つまり…その、難しい!