「なにはともあれ、まず呼び方を変えようよ!」
そう声高に提案しているのは、右に座する高海さん。
「それって、つまり…どういうこと?」
と、流れるように質問しているのが、左に座する渡辺さん。
そして、対面に座する俺は、ただ黙ってパンを咀嚼している。ゆえに思う
(これ、…俺要る?)
昼休みに入り、二人がご飯を食べながらスクールアイドル部について話しているのだが、全く会話に入るタイミングが見当たらない。どうしたもんかと考えあぐねていると…
「比企谷君もそう思うでしょ?」
突然話を振られる。
漸く俺のターンか、待ちわびたぜ。ここで一発ビシッと決めてやろうじゃないか。
「確かに、一理ある」
まるで、話を一言一句聞き漏らしていないかのような反応。その実、どうしようか考えていたせいでほぼ聞いていなかったのだが。
「でしょ!じゃあ、これからは名前で呼んでね!」
「…ん?」
思わず声が出てしまった。名前で呼んでね?それはつまり、あれか、下の名前で呼べということなのか。
……無理だろ。会って二日の女の子を下の名前で呼ぶなど、神様仏様が許してもこの八幡が許さない。
「た、確かに一理あるとは言った。けどそれは飽くまで一理に過ぎない。他にもやりようはあると思うんだ」
そう、やりようはある。…というか、スクールアイドルの話してるんじゃなかったのか。
「そんなことないよ!やっぱり仲良くなるには名前で呼び合うのが一番だよ!…八幡君!」
なん…だと…!?
…"八幡君"、なんて甘美な響きだろう。その言葉を耳にするだけで脳が幸せの鐘を鳴らす…っておい、チョロ過ぎるだろ俺!
悔しくも内心喜びながら必死(笑)の抵抗を続ける。
「だ、だとしても仕事をする上で大事なのは仲が良いことじゃない。適度な距離感と、仲が悪くないことなんだ。」
それに…と続けようとする俺を、二つの可愛らしい瞳が静かに、だが確かに訴えかけてくる。そんなこと言わないで仲良くなろうよ、と。
「い、いや、だから、その…ね?」
「…八幡君は仲良くなりたくないの?」
高海さんが上目遣いで聞いてくる。これはわざとやっているのだろうか、あざとい。
「そういうわけじゃないけど…」
「じゃあ、名前で呼んでよ」
「うっ…」
観念しよう。し、仕方なくなんだからね!勘違いしないでよ!…俺のツンデレは気持ち悪いな、やめよう。
「…千歌さん」
「呼び捨てでいいよ!」
「なっ!……ち、千歌」
「うん、よろしい!」
ご満悦の笑みを浮かべる彼女の隣で、もう一人の女の子が、俺の目を見てこう言った。
「…八幡君、私は?」
…またしても上目遣い、やはりわざとなのだろうか…、だとすれば女の子って怖い。
「よ、曜…」
「えへへ//」
くっ…照れるな、笑うな、はにかむな!好きになっちゃうだろうが!
…はぁ、やっぱり女の子って怖いな。
これはイチャイチャの兆しが見えますね…