輝きがほしい比企谷八幡   作:SHSH

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第二十一話

「…さぁ?知らないけど」

 

 知らない…か。

 

「そうですか。ありがとうございました」

 

 では、と回れ右をして駆け足でその場を後にする。"あ、ちょっと!"と言う声が聞こえたが俺は立ち止まらない。…が"ハンカチ落としてる!"という声が聞こえ俺は立ち止まる。右ポケットを触ると確かにハンカチが無くなっていた。

 

(…恥ずかしい)

 

 急いで振り返りハンカチを取りに戻ると、何とも言えない苦笑いをされてしまった。……殺せ!もういっそ殺せ!

 一瞬目を見て、軽くお辞儀をすると今度は質問をぶつけられる。

 

「スクールアイドル部がどうかしたの?」

「…ええと、クラスメイトがスクールアイドルを始めようとしてるんですけど、生徒会長がそれをよく思ってないみたいで」

「…ふーん、それでスクールアイドルを認めない理由を探ろうと?」

「はい、三年生に聞けば分かると思ったんですけどね」

「…そっか、ごめんね力になれなくて」

 

 …まぁ、実を言うとおおよその察しはついている。休み時間に携帯で、浦の星女学院スクールアイドルで検索したら意外にも情報は残っていた。二年前"Aqours"というグループ名で三人の一年生が活動していたこと、そのメンバーの中に生徒会長の名前があったことも、すでに把握済みだ。そして、目の前にいる彼女がメンバーの一人として活動していたことも。…これはたった今確信したことだけど。

 先程から会話をする中で彼女は僅かに迷っていた。逡巡するが故に生じる微かな間、俺はそれを確かに感じ取っていたのだ。それに"知らない"はずがない。

 

「じゃあ、俺はこれで失礼します」

「あ、うん、じゃあね」

 

 とはいえ、知らないと言われた以上こちらから執拗に聞くことは出来ない。ネットに載っていたのは、結果と事実であり、過程や動機は分からなかった。もしかしたら人に聞かれたくないことかも知れないしな。

 どうするか考えながら教室へ戻ると、千歌と曜が桜内さんと楽しそうに話していた。

 

「え!ホントにいいの!?」

「う、うん。スクールアイドルやってみようかな」

「ありがとう~梨子ちゃん」

 

 千歌が桜内さんに抱きついている。一体何があったんだ…

 

「あっ八幡君!梨子ちゃんもスクールアイドル部に入部してくれるって!」

「そ、そうなのか。けどホントにいいのか?」

「うん、だって比企谷君も入部するんでしょ?」

 

 …ん?

 

「いや、俺は…」

「そうだよ!私と曜ちゃんと八幡君、それに梨子ちゃんが加わって四人。後一人集めれば創部は目前だよ!」

「ちょ、だから…」

「いやー順調でありますなー八幡君」

「曜、お前…」

「…てへっ♪」

 

 …かわいいなおい。

 

「そうだ聞いてよ八幡君、梨子ちゃんのお家がお隣さんだったんだよ」

「そうなのか?」

「うん、昨日帰ってから気付いてね。夜もベランダ越しに千歌ちゃんが是非!スクールアイドル部に!ってしつこくって」

 

 ホントに押しに弱かったのか…、俺も人のこと言えないけど。

 

「それより八幡君お昼食べたの?」

「ん?あ、まだだ」

 

 時計を見るとお昼休みは、残すところ10分となっていた。あれ!?時間経つの早くない?

 

「じゃあこれ食べる?」

 

 千歌の手元を見ると、そこには"しおから"のみが佇んでいた。お弁当にしおから?…いいセンスだ。

 

「なに、嫌いなの?しおから」

「えっ!?…全然、好きだけど?」

 

 目を見て言ってくれ。

 

「ま、まぁまぁそんなことより、はい、あーん」

 

 そう言いながら箸を持ち上げ俺の口元にねじ込もうとしてくる。

 

「いや、食べるとは一言も…むぐっ!」

「どう?おいしい?」

 

 千歌はこれをおいしいと思っていないから俺に食わせたんだろう…どの口が言うんだ。

 

「…おいしい」

 

 けれど塩辛いはずのしおからは、どこか甘くおいしく感じられた。

 …ホント俺も、押しに弱いな。




千歌ちゃんってしおからが嫌いなんですね。
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