輝きがほしい比企谷八幡   作:SHSH

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第四話

 

 

「本当に転校しちゃうの?」

 

 由比ヶ浜が先程とはうって変わって、消え入りそうな声で確認をする。

 

「不本意だけどな、静岡にある高校に行くことになった」

 

「それってつまり、引っ越すってことなの?」

 

「まぁ、そうだな」

 

 実際は引っ越すから転校するのではなく、転校するから引っ越すのではあるが。それと、女子高へ共学化のテスト生として行くことは伏せて置く。ほら、変に邪推されても困るしね。

 

「そっか…」

 

 またしても小さな声で、そう呟く由比ヶ浜

 

「ヒッキーはさ、…それでいいの?」

 

「いいも何も仕方ないだろ。考えたところでどうしようもない」

 

 そう仕方ないのだ。上が決めたことなのだから。相変わらずの社畜精神である。

 

「…私は嫌だな、ようやくヒッキーと仲良くなれたと思ってたのに。寂しいよ…」

 

 "寂しい"、由比ヶ浜はそう口にした。生まれて初めて言われた言葉だ。今まで俺は、どこにいても、いなくても何も変わらない様な存在だった。彼女はそんな俺がいなくなると寂しいと言ってくれたのだ。正直嬉しい。

 

 だがそれは、一時の気の迷いに過ぎない。由比ヶ浜は優しい。その優しさゆえに俺に幻想を抱いた。入学式の日に犬を助けたのはただの自己満足、いままで受けた依頼も奉仕部の仕事として請け負っただけだ。そんな俺が、彼女の求める比企谷八幡を演じ続けられるはずがない。時間が立ち、見える部分が増えるにつれ、彼女が夢見る比企谷八幡の色は剥げ、錆び付き、音を立てて崩れ去る。だから俺はこう返す。

 

「今生の別れじゃあるまいし。会おうと思えばいつでも会えるだろう」

 

 嘘は言っていない。死ぬわけじゃないし、千葉と静岡だって陸続きで繋がっている。

 

「それでも…、近くにいるのと、いないのとじゃ全然違うよ」

 

「大丈夫、このご時世携帯がある。日本中どこにいてもみんなと繋がり放題だ。大差ない」

 

 これも嘘ではない。電話をかければ声が聞けるし、SNSを見れば相手のしている事がなんとなく分かる。

 

「…でも、やっぱり寂しいよ…」

 

 由比ヶ浜の目が俺を見つめる。言って欲しい言葉があるのだろう。けど、それは俺の言っていい言葉じゃない。もっと、卑屈で、陰湿で、最低な言葉でなければ。

 

「大丈夫だって」

 

 無責任な言葉。

 

 そして、終わらせるための言葉。

 

 これで漸く彼女は、悪い夢から覚め、次に進むことが出来る。

 

 

 

 

 

 沈黙が訪れる。

 

 先程から黙っている雪ノ下は勿論、由比ヶ浜も言葉に詰まる。そして、しばらくの後沈黙は破られる。

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 

 

 部活の終了時間を告げるチャイムだ。

 

「時間ね、今日はもう終わりにしましょうか」

 

 雪ノ下が本をしまいながら二人に声をかける。

 

「そうだな」

 

「…ゆきのんは、ヒッキーがいなくなってもいいの?」

 

「そうね、いいも悪いも決まっている事なのでしょう?私たちが、とやかく言うことではないわ」

 

「ゆきのん…」

 

 長居は無用だろう。

 

「じゃ、俺帰るわ」

 

 鞄を手に持ち、出口へと向かう。

 

「あっ、ヒッキー…」

 

 背中に声をかけられたが、俺は振り向かない。

 そして、足早にある場所へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぶねー、間に合った」

 

 洋式トイレに座りそう呟く。

 

 実は途中から、便意を我慢していたのだ。ついでに尿意も。

 迫り来る二つの脅威。先に出るのは、大か小か、さぁ、君はどちらを応援する!?(特撮風

 

 




おシリアスって、難しいですわね。
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