輝きがほしい比企谷八幡   作:SHSH

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第五話

 トイレでスッキリした俺は、帰宅すべく駐輪場へと向かう。腸はスッキリしても、心が晴れない。

 

 転校が決まり、最初は戸惑った。しかしいい機会だとも思っていた。やっと見つけた学校での居場所らしき場所の居心地は良かった。でも、ただそれだけ。雪ノ下と由比ヶ浜の会話を横目に、小説を読む。依頼が来れば解決はするが、誉められたやり方ではないと言われる始末。

 ここに俺が欲しかったものはあるのだろうか。ずっと昔に求めて、手を伸ばし続けていた何かが。

 いや、手を伸ばせばあったのかもしれない。

 ただその手には数え切れない傷が刻み込まれ、既に一人では手を伸ばす事さえ出来なくなっていた。

 

 死ぬ気で駄々をこねれば、転校の話をご破算にすることだって出来ただろう。でも、そうしなかったのは自分のため。由比ヶ浜を夢から覚めさせるだの、次に進ませるためだの、人のためと宣っておきながら、結局は自分が傷付きたくなかっただけ。だから、嫌われる前にいなくなってしまおうと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰るか」

 

 駐輪場に着き、自転車に乗る。これ以上考えても仕方ないと、ペダルをこぎ始める。

 校門に行くと、平塚先生が立っていた。

 

「比企谷、遅かったじゃないか。他の二人は先に帰ってしまったぞ。」

 

「あ、いえ、ちょっとトイレに行っていたので…」

 

「あっ…、そうか、それは失礼した。ところで二人とはちゃんと話をしたんだろうな」

 

「勿論です。由比ヶ浜は驚いていましたが、雪ノ下はあまり興味無さそうでしたけどね」

 

「雪ノ下が?…そんなはずはないだろう。さっき部活が始まる前、雪ノ下には私から伝えて置いたんだが、驚くほどに動揺していたぞ。職員室から出るとき、扉に頭をぶつけていたな。」

 

「え?」

 

 言葉に詰まる。動揺していた?雪ノ下が?

 

「とにかく二人とはちゃんと話したんだな」

 

「は、はい」

 

「ならよろしい、それと比企谷」

 

「はい」

 

「逃げるのは悪いことじゃない、けど目を背けるな。これからの君に起こることは全て、君自身の出来事だ。他ならない君の目で見届けなさい」

 

 

 

 

「…腐っててもいいんですか?」

 

「ああ構わない、むしろ腐ってなければ君ではないだろう」

 

 そういって微笑む先生。いや、夕陽による逆光で、いまいち表情は読み取れないのだが、声音からして多分微笑んでる。影のイタズラで鬼の形相に見えるが、きっと微笑んでる。

 

「…はい、わかりました」

 

「じゃあ、気を付けて帰れよ」

 

「では、失礼します」

 

 そう言って、ペダルをこぎ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "もしよかったら"

 

 

 雪ノ下は言っていた。由比ヶ浜の登場に言葉は遮られてしまったが、確かにそう言った。あの言葉に続きがあるとしたら、なんだろうか。

 奉仕部に入ったとき、自分が言おうとした言葉を思い出す。

 

「まさか…な」

 

 雪ノ下が言いそうに無いセリフベスト3に入るような事を思い付く。いや、憶測に過ぎないか。人は分からないことに出くわした時、都合の良いように解釈してしまう癖がある。今までも全て勘違いだっただろうと、頭が自分に言い聞かせる。ただ心は、小さな光に過敏に反応し、期待をふくらませる。

 考えがまとまらないまま、家に着いた。鍵を開け、家へと入る。

 

「ただいまー」

 

 

 

 

 返事がない、代わりにシャワーの音がする。

 

「小町は風呂に入ってるのか」

 

 すぐに理解した俺は、疲弊しきった心と体を癒すため、リビングのソファーへと眠るように倒れ込んだ。




八幡と千歌たちのイチャコラを書きたかったのに、まだ転校しない。なぜだ。これじゃあ、ただ八幡が転校する話になってしまう。
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