輝きがほしい比企谷八幡   作:SHSH

6 / 22
第六話

 俺は部室で小説を読んでいた。

 

 左を向けば、雪ノ下と由比ヶ浜が楽しそうに会話をしている。ただ、不思議な事に読んでいる小説の内容がおかしかった。信頼、信用、好意などの熟語が無造作に散りばめられている。そもそもこれは小説と呼べるのだろうか?

 疑問に思いながら、ふと顔を上げると、先程まで左の方で会話をしていた二人が目の前にいた。

 

(いつの間に!?)

 

 俺は驚くが、二人は気にも留めず会話を続ける。

 徐に二人がこちらを向き、俺に笑いかけてくる。

 

 

 

 

「ーーー」

 

 

 

 

 聞き取れない。何を言っているんだろうか?

 

「ごめん、聞こえなかった」

 

 二人に聞き返す。

 

 

 

 

「ーーー」

 

 

 

 

 やはり聞こえない。耳がおかしくなったのだろうか。

 

「だから聞こえないって」

 

 すると二人が俺の手を優しく包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視線を落とし、そこで気が付いた。

 

 これは夢か。

 

 二人がこんなことをするはずがない。そもそも距離感からしておかしい。奉仕部の仲は険悪ではなかったが、ここまで良いという程でも無かった。

 

 ただ夢だと気付いても、握られた手を振りほどこうとは思わなかった。

 

 

 

 

 "暖かい"

 

 

 

 夢だというのに手には確かな温もりがある。

 

 

 

 "嬉しい"

 

 

 

 心の内からそんな感情が湧き上がる。

 

 思わず握られた手を、握り返す。

 

 すると、まるで最初からそこに無かったかのように、二人の手が消えて無くなる。

 

 視線を上げる。二人は遠くにいた。

 

 

 

 

 

 

 なんで、なんで離れるんだ

 

 夢なんだろ、もっと見せてくれよ

 

 もう一度手を握ろうと必死になって手を前に伸ばそうとする

 

 けれども、思うように腕が上がらす二人には決して届かない

 

 

 腕を見る

 

 

 たくさんの傷痕が残っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

 目が覚めた。

 

「お風呂さっさと入っちゃってよ!洗濯機回せないでしょ!」

 

「お、おう。わかった」

 

 思い出した、ソファーで寝てしまっていたのか。

 

「ほらほら、早く早く!洗濯するの小町なんだから全力で急いでよ!」

 

「わかってる、わかってるから引っ張るな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小町に急かされ浴室へと急ぐ。鏡を見たら、腐った目がほんのりと赤く腫れていた。

 

(うわっ、小町に気付かれてないよな)

 

 心配になりながらも、頭と体を洗い浴槽へと浸かる。

 

 

 

「なんだよ、あの夢」

 

 先程まで見ていた夢を思い出す。不思議な事に徹頭徹尾、αからωまで鮮明に覚えていた。

 

「馬鹿か、俺は」

 

 変な期待はするなと自分に言い聞かせる。

 

 ふと夢の中で、腕が上がらなかったことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ、動くじゃねぇか…」

 

 浴槽の中で伸ばしたその手は、ゆっくりと視界に現れ、確かに空を掴んだ。




今思えば、

平塚「転校が決まった」
八幡「いやだー」
平塚「拒否権はない」
八幡「なら、致し方あるまい」

ぐらいの超速展開にすれば良かったかな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。