輝きがほしい比企谷八幡   作:SHSH

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第八話

「おはよう、小町」

「おはよ、お兄ちゃん」

 

 アラームに起こされた俺は、珍しく二度寝をせずに、リビングへと降りていた。小町の顔を見て、昨晩から解いていた問題に答えが出る。

 

「小町」

「なに?お兄ちゃん」

 

「昨日はありがとな」

「…うん」

「…それと、やれるだけやってみる」

 

「そっか、よかった…」

 

 そういって、笑みを溢す小町。

 

 

 

 

 

 

 昨日、布団に入ってからずっと考えていた。自分がこれからどうすべきかを 。いや、これからどうしたいかを。

 正直に言えば、雪ノ下と由比ヶ浜、二人の事は好きだ。ただ、心が先に進みたいと願っても、これまでの経験を忘れたのかと、自分を守るための理性が絶対的なブレーキをかける。

 どうせ、いつもと同じだと。いままでの自分が、分厚く巨大な壁となって、自分を堅固に守る。

 

 

 

 平塚先生は言っていた、"目を背けるな"と

 

 小町は言っていた、"傷付く事を恐れないで"と

 

 

 

 二人と俺を遮る、大きな壁。

 

 転校というきっかけが、そこに小さなヒビを入れた。

 

 その一点を見つめる。

 

 壁は崩れるだろうか。

 

 目を逸らさず、立ち向かい続ければ壁の向こうにいる二人に出会えるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友達になりたい。

 

 

 シンプルな答えだった。

 

 理解したいだの、理解されたいだの難しい事を考えてきたが、それも全部自分を守るための言い訳。そんな事はどうでもよかった。ただ、昔からずっと欲しかった。俺が今まで、馬鹿にしてきたあの関係が。

 度々集まっては、笑い合う。喧嘩もすれば仲直りもする、そんな関係。俺が馬鹿にしてきたものは、手に入らないから、馬鹿にするしかなかったのだ。

 

 

 

 朝食を食べ終え、洗面所へと向かう。すっかり使い古した歯ブラシを手に取り、歯磨き粉を付けようとする。

 

「…空じゃねぇか」

 

 買い置きはあっただろうか。思いだそうとするも記憶にないため、探すことは諦める 。仕方なくそのまま磨くか。

 やけに瑞々しいシャカシャカ音を立てながら、洗面台に貼り付けられた鏡を見る。相変わらず目が腐っている。けれどもその目には、ほんの少しだけ希望の色が輝いて見える、そんな気さえしていた。

 

 

 

 

 さて、そろそろ学校へ行く時間だ。時計を見ながら一人決心をする。

 

 友達になってみせる。

 

 そう考えただけで心臓の鼓動が速くなる。

 

「本当、ノミの心臓だな」

 

 自虐しながらも気持ちは穏やかだった。

 今日の天気は、雲一つない快晴。絶好のチャンスだろう。いや、天気は関係ないか。

 

 なんて言おうか、いつ言おうかなど、ありとあらゆるシミュレーションをしながら、学校へと急ぐ。

 

 

 

 気温は低く、まだ肌寒いはずなのに、俺の体はどこか熱を帯びていた。




そろそろ転校させます。
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