新米提督の日常(?) 作:朝人
……そして榛名もまた出ました(泣き)
今日も今日とて仕事をしに執務室に向かっていると不意にバン!という音が聞こえた。
「わ、私なんて!!」
次いでそんな悲観的な声を上げながら戦艦、山城が走り去って行った。
いきなりのことでわけが分からず首を傾げる提督。とりあえず原因を究明するべく、たった今山城が飛び出し、そして自分の目的地でもある執務室に改めて向かった。
「で、キミ達一体なにしたの?」
扉を開け、最初に提督を出迎えたのは、第一艦隊随一の火力を誇る戦艦陸奥だった。……ただしその姿は異常な火力に見合わないほど沈んでいた……更に正確に言うと部屋の隅で膝を抱えていた。
「……提督、私火遊びしたいわ……」
「
先ほどの山城といい一体何があったのか? そんな提督の疑問は当然今執務室にいる他の艦娘達に向けられた。
現秘書艦、榛名はなんとも言えない微妙な表情を浮かべ。霧島はメガネを押さえながら視線を逸らし、比叡は「き、気合さえあればなんとか……!」と一応フォロー(?)をし、金剛は「ア、アハハ……」と苦笑いを浮かべていた。
「……ごめんなさい、提督……」
そして……素直に頭を下げたのは長年連れ添った相棒の瑞鳳(と言っても着任してまだ一ヶ月だが)。どうやら今回の騒動の原因は彼女らしい……珍しいことだ。
その見た目に反しフランクな彼女だが問題を起こすようなことだけはしないはず……一体彼女の何が今回の騒動を起こしたというのか。
「霧島、三行で説明して」
はい。と返事をした後一度深呼吸をし、本当に簡潔に説明した。
「瑞鳳さんの運で
陸奥さんと山城さんが
発狂しました」
「OK、把握した。そりゃこうなるわ」
たったそれだけで分かってしまえる辺り瑞鳳は恐ろしい子である。大方、何かの拍子に瑞鳳の運のパラメーターを知ってしまったのだろう……哀れな。
「艦これ」のパラメーターの中には「運」という要素がある。正確な効果とかはよく分かっていないのだが、その分低いより高い方がいいと感じてしまうのは仕方ないことだろう。それでこの「運」なのだが大体10前後が平均であり、どうやら史実もある程度関係しているらしい。例えば金剛型の中で最後まで生き残った榛名は姉妹の中で一番高い15である。
逆に言うと史実で碌な目に合わなかった場合「運」は低くなってしまうのだ。全力負け犬ダッシュして行った山城や絶賛鬱状態に陥ってる陸奥は正にその代表例だろう。欠陥戦艦と呼ばれ、前線にいるほうが珍しいと言われるほどほとんどドック入りしていた山城の運は5。原因不明の爆発で真っ二つになり本当に不遇な最後を遂げた陸奥に至っては更にその下の3である。
……それで件の瑞鳳の運なのだが……その数値は驚愕の40である。40である。大事なことなので二回いいました。平均値の四倍、山城八人分。陸奥に至っては約十三人分である。流石にここまで差を見せ付けられたらああなるのも仕方ないことだろう。
ちなみに瑞鳳並もしくはそれ以上の「運」の持ち主は数えるほどしかいなく、更に瑞鳳を含めた全員がレア扱いである(新米提督は初期の頃に瑞鳳と出会っているのでレアだと知ったのはつい最近です)。そのため彼女達を全て揃えるのは非常に困難なのだとか……。
閑話休題
「まずは山城をなんとかしないとな」
自棄になって単身突撃だけは止めて欲しい。せっかくレベルが20に到達したというのに轟沈となっては話にならない。それに山城とも長い付き合いだ、いなくなったら提督の精神が抉られる。まだ沖ノ島海域を攻略していないのにそれは不味い。絶対に阻止しなければならない。
「……奴を使う時がきたか」
意味ありげにそう呟くとすぐにその「奴」に連絡を入れる。
「あの、提督……「奴」とは一体……」
「なに、アイツのことだからすぐに来るさ」
「はぁ……」
瑞鳳の問いかけに返事を濁す。どうやら来てからのお楽しみということらしい。
一体誰なんだろう、と思考する暇もなくダン!と執務室の扉が勢いよく開かれる。
「あ、アナタは……!」
驚愕する一同の前に現れたのは、うさ耳のようなリボンにゆるキャラのような旋回砲塔(通称、連装砲ちゃん)を装備したあざとい娘。二次界隈における「艦隊これくしょん」の象徴ともいうべき艦娘。
「ぜかましサン!」
「島風です!」
金剛のボケにコンマ単位で突っ込みを入れたのは、最速の駆逐艦、島風である。
「確か……配属されたのはいいけど「轟沈が怖くて艦隊に入れれない」って言ってませんでしたっけ? 提督」
「……まあな」
霧島の言葉に遠い目をしながら頷いた。
何度目かの沖ノ島海域に行った際ドロップしたのだが、流石に沖ノ島では火力が心許ないので今までずっと第二艦隊でスタンばっていたのだ。そして今日、ようやく出番が回ってきたわけだが……。
「すまないが島風、すぐに山城を追ってくれ」
「……えー」
肝心の仕事内容がこれである。出撃かと思っていただけに少し落胆してしまったようだ。
「偵察機は飛ばしてくれているはずだから居場所は加賀に聞いてくれ」
「いつの間に……」
同じく第二艦隊でスタンばっている加賀に既に手を回している辺り、抜け目がないというか用意周到というか……半ば呆れながらも歓心する比叡。
「大丈夫、最速のお前ならすぐに追いつけるさ」
「任せてください!」
最速という言葉に釣られ、つい引き受けてしまった島風だが、既にやる気は十分らしく今にも出て行きそうなところだが。
「ちょっと待て」
「おぅっ!?」
辛うじて首根っこを掴んで引き止める。
「な、なんですかー? 提督」
「説得役に霧島を連れて行け」
恐らく山城はいつものように……いや、いつも以上に辛気臭い雰囲気を漂わせているはずだ。その場合島風だけいっても連れ戻すことは難しいだろう。故に霧島を同伴させることにした。
「え、私ですか?」
「ああ、聞き分けがないようならマイクチェック(物理)していいからな」
「……提督の中での私のイメージって一体……」
上官の自分に対する見方が気になったが、「さっさといきますよ!」と島風に腕を引かれ聞く暇もなく島風共々霧島は執務室から退場した。
「さてと……後は陸奥だな」
未だに部屋の片隅で膝を抱えている陸奥を見た後、残ったメンツに視線を送るも、皆一同に視線を逸らす。流石に運3の彼女に平均値や例外が声を掛けても逆効果だと思ったのだろう。
「仕方ない、こうなったら……もしもし那珂ちゃん、ちょっとこっち来てくれない?」
自称艦隊のアイドルに任せよう……主にその
……結局、島風に追いつかれた山城は霧島によって宥められ帰ってきた(額にこぶが出来ていたが詳細は不明)。陸奥に関しては運が高くても残念な人がいるのだという実例を目の当たりにし、なんとか持ち直した。
そして……。
「これに懲りたらもう迂闊に運のことは言わないようにな」
「はい……ごめんなさい、提督」
今回の一件でいたく反省した瑞鳳であった。
今回のネタは運です。同じ艦隊にいるのに運の差が激しい三人がいたので書きました。ちなみに姉の扶桑は未だに出ていません。……もし出てたら文字量があと千か二千くらい増えてたかも……。
ちなみに一番最初に出た空母はひゃっはーさんで、その次に瑞鳳が出ました。その為最近までレアだということを知りませんでした……。