もしかしたらあったかもしれない、そんな未来   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第十一話

早朝、走り込みを終え、俺は木刀を振る。 小、中と続けてきた剣道だが、IS学園(ここ)では部活動に入っていない。 小学生、つまりは施設に居た頃は、いい成績を修め褒められるのが嬉しかったが、中学で続けていたのは誘われるがままに、だ。 一応、これでも個人で全国優勝者だ。 小学校から何かと有名だったため、中学の顧問にもぜひと言われてはいったに過ぎない。 それでも、今もこうやって振り続けているのはなぜなのか。 褒められたいから、なのだろうか? 自分でもよくわからない

 

「・・・・・・もう一回最初からやるか」

 

雑念が入ったため、最初からもう一度やり直すことにした

 

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シャワーを浴び、身支度を整えて学食に来れば、混んでいた。 人混みは苦手というわけではないが、これだけの女子が学食に居るのだ、気後れしないわけがない。 毎朝こんなふうになるのかと少しげんなりしていれば、ようやく俺が食券を買える順番が回ってきたようだ。 納豆定食の食券を買い、食堂の人に差し出せばメニューが渡させる。 それにしても、好奇の視線と侮蔑、嘲笑がひどい。 表立って言っているわけではないが、小声で言ってるのが聞こえる。 わざとなのかと思いそっちを向けば、ばれたという顔をして顔をそむける。 わざとではないらしい。 ため息つきたくなる衝動をこらえ、座れる席がないかを探す。 これ以上注目は集めたくないので、どこかの死角を探せば

 

「おぉーい、こっちこっち!」

 

男の声がした。 反射的にそちらを向けば、もう一人の男子織斑一夏が俺に向かって手を振っていた。 その行動が注目を集めているのだが、本人に自覚はないようだ。 ここで反応しないのは織斑に悪いし、何よりこの不特定多数が見ている状態で無視はまずい。 なので、そちらに向かうことにした

 

「昨日は会えなかったけど、お前が二人目なんだろ?」

 

「あぁ、白石黒夜、よろしく」

 

「俺は織斑一夏よろしくな!」

 

人当たりがいいのか、笑顔を浮かべながら握手を求められた。 俺はそれに応じ、握手をする。 あぁ、ねたむ声が聞こえる。 そんなにお近づきになりたいのなら、声をかければいいだろうに。 そう思いながら織斑の対面に腰を下ろす

 

「いやぁー、男子が一人で心細かったんだ」

 

「クラスは別だけどな」

 

「でも、もう一人がどこかにいるって分ければ、つらさも和らぐだろ?」

 

なんというか、プラス思考なのだろう。 別に俺がマイナス思考というわけではないのだが、俺が現実的なことを言うと、それをプラスの方向にもっていこうとする。 まぁ、隣の女生徒の好意には気が付いていないようだがな。 隣の女生徒は、男子が一人で心細かったといったときに、顔をしかめた。 たぶんなじみか何かだろうが...... ん? この顔

 

「・・・・・・篠ノ之箒か?」

 

「む? お前と私は初対面のはずだ、何故私の名を?」

 

警戒心バリバリの篠ノ之箒だが、何故ときたか

 

「中学三年の剣道大会、全国の女子の部の優勝者だろう」

 

「なっ!? 何故それを!!」

 

大声でテーブルに手をついて立ち上がったため、大きな音と声で注目を集めてしまう。 その様子に隣の織斑は驚いているが、それにしても最悪だ...... めがねをしているからだいじょうぶだと思うが、しかめっ面を隠すように味噌汁を飲みながら、一言

 

「全国大会、男子の優勝者だ」

 

「え!? そうなのか?」

 

興奮したように織斑は立ち上がり顔を近づけてくるが、近えよ。 若干下がりつつ返事をすれば、箒の試合はどうだった、とうとう聞かれた。 本人には悪いが、アレは試合何て呼べるものではない。 本人も自覚があるのか、俯いて何も話そうとしない。 正直に言えば面倒ことになるのは必須、そもそも今も面倒だが。 なので、逃げの一手だ

 

「その時疲れていてな、表彰があるまで寝ていたから見ていないんだ」

 

「そっかー、みてないのかー」

 

自分のことのように残念がる織斑と、言われないことにほっといている篠ノ之。 面倒なことになったと思いつつ、食べる速度を上げたのだが

 

「相席、いいかな?」

 

ここでさらに面倒な事態になった。 織斑目当ての女子三人が、織斑に相席を申し出たのだ。 これは、確実に面倒なことになる。 そう思い、食べるスピードを速めるのだが遅かった

 

「隣、失礼するね~」

 

「・・・・・・あぁ」

 

マイペースな少女が、俺の隣に座る。 かなり言いたいことがあるのだが、一つだけ。 何で着ぐるみなんだ。 食堂に来ている生徒は着替えてきているのだが、少女だけは着ぐるみなのだ。 しかも、某ポケットなモンスターの黄色い電気ネズミ。 懐かしさすらこみあげてくるが、色々な意味で目立っていた

 

「私、布仏本音だよ~、よろしくね~」

 

「布仏? 布仏先輩の妹か?」

 

自己紹介をされて、びっくりして箸が止まる。 確かに、布仏先輩に似てるところがあるなーなんて思っていたが、まさか妹だとは。 まぁ、ある意味バランスはとれているのかもしれない。 姉はピシッとした秘書のような人で、妹はまったりのほほん系。 あぁ、いろんな意味で布仏先輩って苦労してるんだ。 もう少し、ゆとりを持たないと胃に穴が開きそうだ

 

「お姉ちゃんを知ってるの~?」

 

「あぁ、色々な意味でお世話になったからな。 自己紹介が遅れた、白石黒夜だ」

 

「なら、シロクロだ~!」

 

「「はい?」」

 

篠ノ之箒以外の全員の声が重なる。 シロクロ? なんだそれ

 

「あだ名だよ、あだ名~」

 

「あぁ、あだ名ね?」

 

えぇー...... あだ名でシロクロって、まんまやん。 ネーミングセンスもさることながら、どうしてこうなった感がすごいのだが

 

『随分独特だね!』

 

白も思わずといった感じで、声に出していた。 何かと絡んでくる一夏とのほほんさん(こう呼べって言われた)を適当にあしらいつつ、納豆定食を食べ終える。 篠ノ之箒? 彼女なら、相席が決まり少し経ったら席に行ったよ。 俺は立ち上がる

 

「ん? 黒夜もう行くのか?」

 

「あぁ」

 

「えー、一緒に行こうぜ!」

 

暑苦しいことこの上ない笑顔で言われるが、俺は一緒に行く気はない。 これ以上女子の嫉妬の視線にさらされるのが嫌なのと、時間がギリギリだからだ

 

「悪いが、俺の部屋は寮の端なんだ、急がないと間に合わなくなる」

 

「あー、それは仕方ないか...... また後でな!」

 

「・・・・・・あぁ。 それとのほほんさん」

 

「なに~?」

 

「こんなこと言うのはデリカシーがないし失礼かもしれんが、君も急いだほうがいい。 着替えの時間、無くなるぞ」

 

「はっ!」

 

後でというのは何か考えたくないが、本当に時間が無くなってきたから次にする。 のほほんさんに忠告をすれば、俺と時計を交互に見て、それまでの速さは何だったのかという速さでご飯を消費していく。 まぁ、本人がやる気になったのだから良しとしよう。 つまらないかが心配だが。 俺はそのまま食堂を後にし、部屋に戻るのだった

 

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