もしかしたらあったかもしれない、そんな未来   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第十四話

正座をすれば、更識会長は目の前に座り説教を始める。 お姉さんをからかったらダメ、女性は丁重に扱うこと、あんなことをすれば勘違いされる等々、色々なことを言われたが

 

「そもそも、更識会長が悪戯をしなければこんなことにはならなかったのでは?」

 

「うっ......」

 

俺の正論に言葉を詰まらせる更識会長。 いやまぁ、俺がやりすぎじゃないかと聞かれれば、やりすぎということもあるが。 そもそも、こんなことをしなければ...... ってやめよう、こんな話は無限ループになる。 まぁ、今回の事は更識会長にも責任があるし、俺にも責任がある、さっさと謝ることにしよう

 

「でも、今回は俺もやりすぎました、すみませんでした」

 

「私も、いたずらしてごめんなさい......」

 

俺が頭を下げれば、更識会長も頭を下げる

 

『反省してる割には着替えようとしないよね!』

 

いまだに動揺してるんだろ。 とりあえず、立ち上がり足をほぐす。 更識会長は、動く気配がない。 これ、言わないとだめか? 正直言ってかなり面倒なんだが

 

『もしここに誰か入ってきて、勘違いされてもいいんだったらいいんじゃないかな?』

 

それはまずい。 入ってくる人物なんて全く思い当たる人がいないが、勘違いされたら困る。 ため息をつきながら、更識会長に声をかける

 

「更識会長」

 

「なにかしら?」

 

「その格好、気に入ってるんですか?」

 

「・・・・・・」

 

自分の服装を見て、ようやく着替えていないことに気が付いたのか、赤い顔をしながら脱衣所へ向かった

 

「はぁ、どっと疲れが......」

 

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更識会長も着替えが終わったので、早速とばかりにこの部屋に来た目的を聞くことにした。 俺の見間違いでなければ、俺の見覚えのないものが増えてるし

 

「あの、更識会長、何をしにここへ? 俺の見間違いじゃなければ、俺が部屋を出るときよりも見覚えのないものが増えているんですが」

 

「あー、まぁ悪戯をしにと言うのもあったんだけど、本当の目的は貴方の警護をするためよ」

 

悪戯という言葉にお灸が足りなかったかなと思ったが、うんざりした顔をしたので何も言わないでおいた。 それにしても警護か。 たぶん、校内の女尊男卑思考の奴らへの牽制、と言ったところだろうか? 話を聞けば、盗聴器等も仕掛けられていたようであった。 いつの間にとも思ったが、スペアのキーなどはあるだろうし、それを借りれば誰でも可能か。 今は、監視カメラや盗聴器にダミーの映像やジャミングしているから安心らしいが。 織斑の部屋は...... 大丈夫か。 あの篠ノ之と一緒の部屋らしいし

 

「なるほど、オアシスだと思ってくつろいでいた部屋は、思いっきり監視されていたと」

 

「まぁ、私や十蔵さんで撤去とかしておいたから、これからは安心と言えば安心だけどね」

 

「ありがとうございます。 学園長の方にも、家具の事でお礼を言わないと」

 

「マメなのね、貴方って」

 

くすくすと笑う更識会長にそんなことはないだろうと思いつつ、更識会長に似ている子がいるのを思い出した

 

「更識会長って、妹さんいるんですか?」

 

「・・・・・・いるわよ。 簪ちゃんって言うんだけどね、とってもかわいい子なの!」

 

一瞬表情が固まったものの、饒舌にしゃべりだす更識会長。 妹のどこがかわいいか、どんな容姿なのか、何故か聞いてもいないのに話してくる。 本当に妹が好きなのはわかるが、妹離れしたらどうなのだろうか。 ・・・・・・まぁ、俺も人のことは言えないんだろうが

 

「もう本当にかわいいのよ!・・・・・・でも、この頃は私の前で笑ってくれることはないんだけどね」

 

いきなり泣き出しそうになる更識会長。 あぁ、()()()()なのか。 この人も妹の事で、()()()()()()()()()人なのか、そう考えると今までどこか温かかった心が、凍てつくのを感じる。 どうにも空気が悪い、更識会長もこれ以上語るつもりはないのか口を閉ざしたままだ。 俺は立ち上がると、キッチンスペースで紅茶を淹れる。 暖かいものでも飲めば、心も落ち着くだろうということだ

 

「どうぞ、布仏先輩のと比べるのもおこがましいほど、まずいですが」

 

「・・・・・・ありがとう」

 

布仏先輩の紅茶は本当においしかった。 飲む機会があったのだが、紅茶の香りを楽しむなんて、布仏先輩が出してくれた紅茶が初めてだった。 まぁ、布仏先輩みたく紅茶の勉強や淹れ方なんて知らないので、適当に淹れた代物だが

 

「温かいわね、美味しくないけど」

 

「そうですか」

 

更識会長も落ち着いたのか、普通に話せるようになってきたようだ。 いらない言葉が付いたが

 

「聞いてもらえるかしら、簪ちゃんがなんで私の前で笑顔を見せなくなったか」

 

「・・・・・・」

 

無言で頷く。 正直言って他人の事情に深くかかわっている場合じゃないのだが、どうも更識会長が聞いてほしそうだったから。 話されたのは、優秀な姉とその姉と比べられて育った妹の話だった。 昔から姉は優秀で、妹はそんな姉と比べられて育った。 でも妹はめげることなく頑張った。 姉は妹の事が大好きで、妹のことを溺愛し、いつも応援していた。 妹もそんな姉を誇りに思いつつ、自分もその背を負って頑張っていた。 姉妹の中はよかった、ある日までは。 その日、その姉妹の父親がいろいろな事情があり体が動かなくなる。 生きてはいるらしいのだが、体は動かない。 その家は特殊な家で、姉は家を継ぐことになった。 姉は余裕がなくなり、妹に酷いことを言ってしまったらしい

 

「無能のままでいなさい」

 

心にも思っていないことを言い、姉妹には溝ができた。 姉にようやく余裕ができ、気が付いた時にはもう手遅れだった。 妹は姉から距離を置き、姉は自分のせいでこうなってしまったことを自覚し、どうにもできなくなっていた

 

「こんなところかしら。 勝手よね自分で蒔いた種なのに......」

 

そう言ってうつむいてしまう更識会長に、俺の口は勝手に動いていた

 

「原因もわかってる、謝る気がある、妹も姉のことを気にしてる。 仲直りの機会なんて、どちらも一歩踏み出せばあるじゃないですか」

 

「黒夜君?」

 

「二人とも怖がってるんですよ、これ以上傷つくことに。 でも、怖がってるだけじゃ何も変わらない。 時には喧嘩したっていい、言いたいことを言い合ってすっきりすればいい。 お互いのわだかまりをなくせば、きっと......」

 

それはどこか自分にも言い聞かせているようで......

 

「・・・・・・そう、かもしれないわね。 うん、少なくとも私は怖がってた。 簪ちゃんとこれ以上仲が悪くなることに。 でも、それじゃあいけないのもわかってた。 だって、簪ちゃんの笑顔、私また見たいもの。 かわいく笑う、その笑顔を。 あーあ!年下の子に励まされちゃったわね!」

 

どうやら元気になった更識会長は、俺の肩をバシバシ叩いてくる。 地味に痛いが、まぁ元気になってよかった。 どうも、妹のことになるとセンチになるらしい。 俺も、更識会長も

 

「本当にありがとう、私、少しだけ頑張ってみるわ」

 

「・・・・・・そうですか」

 

唐突に抱きしめられ、俺は頭が真っ白になる。 声からもわかるように、どうやら悪戯ではないらしい。 それはそれで、別に意味で質が悪いのだが

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