もしかしたらあったかもしれない、そんな未来   作:サクサクフェイはや幻想入り

17 / 58
第十五話

二人とも落ち着き、そう言えば聞きたいことがあったのを思い出しそれを聞くことにした

 

「あー、そう言えば妹さんてビルドファイターズやってました?」

 

「? どういうこと?」

 

「いえ、俺の打鉄を見たときに、俺の現役時代のプレイヤーネームを言っていたので」

 

「うーん、ごめんなさい。 その時は私自分の事で精一杯だったから」

 

苦笑しながら、申し訳なさそうに言う更識会長。 いやまぁ、事情が事情だから仕方ないと思うが。 本人に聞きたいところだが、クラスが分からないから尋ねようもない。 整備課は各々自分の事が手いっぱいで俺のことを気にしている余裕などないだろうから、行ってもいいが。 用もないのに顔を出すのもどうかと思うし。 親しい人がいるなら別だが、特にいないしな。 だが、更識会長は思い出したかのように付け加える

 

「うーん、でもビルドファイターズの最後の世界大会って、今から三、四年前の話だったわよね?」

 

「はい、そうですが?」

 

「そのころ、簪ちゃんが何かにはまっていたのは覚えてるのよ。 もし詳しいことが聞きたいなら、本音ちゃんに話を聞いたらどうかしら? 彼女は簪ちゃん専属のメイドだから」

 

「のほほんさんですか...... まぁ、会う機会があれば聞くことにします」

 

ポンとメイドという言葉が出てきたが、特に驚くことはしない。 一応、更識家と布仏家がどういう関係なのかも、さっきの過去の話で聞いていたからな。 それにしても、のほほんさんが更識さん専属のメイドか。 ちょっとモヤモヤしつつ、その日は時間も遅いのでお開きになった

 

--------------------------------------------

 

「強いわね、剣道」

 

「まぁ、一応全国大会優勝者ですから」

 

早朝、昨日と同じ様に日課のランニングと素振りをしようと、同居人である更識会長を起こさないように脱衣所で着替えたのだが、何故か気を使った本人は起きていて何故かジャージに着替えていた。 何故そんな格好をしているのか聞いてみたところ、警護の一点張りで碌な答えが返ってこなかった。 仕方がないので、そのままランニングをこなし、素振りをしていたのだが、更識会長から試合をしようということになった。 そして、更識会長に連戦連勝し、現在に至る

 

「これでも学園最強を名乗ってるから、自信はあったんだけど、自信なくしちゃうなー」

 

「その割には、声が全然悔しそうじゃないんですが。 それどころか、いっそ清々したみたいな感じなんですが」

 

汗をぬぐうと、中断していた素振りを再開する。 更識会長は、道場の壁に背を預け、水を飲んで休んでいた。 どうも今日は朝練がないらしく、更識会長が先に借りていたらしい。 ここで少し嫌な予感がしたのだが、追及するのはやめておいた。 下手に藪をつつくことはないのだ

 

「でも、本当に強いけど、何か秘訣とかあるのかしら?」

 

「・・・・・・継続は力なり、それだけじゃないですか?」

 

目標回数まで降り終え、汗をぬぐいながら更識会長の質問に答える。 更識会長は疑わしそうな顔をしているが、嘘は言っていない

 

「・・・・・・剣道を始めたきっかけも、褒めてもらいたい、それだけでしたから」

 

「そう言えば貴方、施設の出身だったものね。 その関係?」

 

「まぁ、そうですね。 一番年上ということもあって、小さいやつらの面倒を大人と一緒に見ていたこともありましたから。 褒められる、ということがあまりなかったですからね。 いつの間にか、俺は何でも出来て、当たり前。 頼れるお兄ちゃん、というのが施設での俺でしたから。 息抜きで適当に木刀を振ってたら、剣道を勧められてそのまま、って感じですね。 今は褒められる相手もいませんから、だらだら続けてこの結果という感じでしょうか」

 

「あー、なんか過去のこと聞いちゃったみたいで、ごめんなさい......」

 

「気にしないでください、俺が勝手に話しただけですから」

 

汗をぬぐい、水を飲む。 時計を見れば、昨日と同じくらいの時間だった。 あまりぼさぼさしていれば、HRに遅れてしまう。 そろそろ行かなければ

 

「更識会長、そろそろ行きます。 それとも、更識会長はもう少し休んでから行きますか?」

 

「気を使ってくれてありがとう。 でも、私は大丈夫よ、行きましょう」

 

更識会長は立ち上がり、歩き始める。 俺はも歩き始めると、何故か隣に並ぶ更識会長。 まぁ、この時間なら誰かにみられる心配はないのでそのまま部屋に向かうことにした

 

「そう言えば」

 

「なんでしょう」

 

歩いていれば、更識会長が話しかけてくる

 

「更識会長、って言うのやめない? 簪ちゃんもいるわけだし、更識じゃ紛らわしいから」

 

「まぁ....... それは一理ありますね」

 

確かに一緒に居る所に話しかけることはないだろうが、更識は二人いる。 布仏にも言えることだが、本人たちから何も言われていないことだしそこは気にしない

 

「だから、前に言ったと思うけど好きに呼んでいいわよ? たっちゃんとかたーちゃん...... はなしね」

 

前に言った冗談をまだ気にしているらしい。 あの時のは冗談だったが、まぁいいか

 

「なら楯無先輩と呼ばせてもらいます」「うぅん、まだ硬いけど更識会長よりはましかしら。 それじゃあ改めて、よろしく黒夜君」

 

--------------------------------------------

 

食券を渡し、出された料理をとる。 相変わらず提供されるまでが速いが、この混みようだからだろう。 楯無先輩は流石に遠慮と言うか、多分妹と話に行ったのか隣にはいない。 でも、心は貴方のそばになんてふざけたことを抜かしていたので無視をしておいた。 一応探し人を探しつつ、なるべく人目につかないところで食事をとれる席を探す。 一応あるにはあったが、探し人がいた。 どうしようか歩きながら迷っていると、探し人がこちらを見つけたのか手を振っていた。 笑顔で手を振るのはいいが、袖がだぼだぼだ。 一応、IS学園の制服は改造OKということになっており、人によって制服が違う。 ロングスカートだったり、ミニスカートだったり。 校則とかどうなっているのかと言えば、あまり過度に派手でなければいいらしい。 女子高ゆえなのか、それとも校則が甘いだけなのか。 たぶん両方なのだが。 さて、探し人であるのほほんさんが手を振っているんだ、俺も無視するわけにはいかない

 

「おはようのほほんさん。 今日は制服なんだな」

 

「おはよ~シロクロ~。 私ずっときぐるみきてるわけじゃないよ~」

 

独創的なあだ名は本決まりらしい。 まぁ、いいけどさ。 制服を着ていることを言うと、頬を膨らましながら的外れなことを言う。 そう言うことではないのだが、苦笑いしつつ誤魔化しておいた。 のほほんさんはサンドイッチのようだが、俺は焼き魚定食。 早く食べなければ

 

「お~、朝から魚なんだ~」

 

「ザ・日本の朝食みたいな感じでいいだろ?」

 

「そうかもしれないけど~、私は魚は好きじゃないかな~。 骨をとるのがね~」

 

「それは分かる」

 

と言いつつも、骨を綺麗に取っていく。 実際、骨取りをしないと骨がつっかかったりして危ないのだ。 面倒でも、そこはとらなければならない。 俺がきれいに骨をとっていると、対面ではお~、とか、すご~いとか言われてるが、別に普通だ。 骨を綺麗に取り終えれば、何故か拍手された。 周りの視線は冷たいが。 とはいえ、そんな視線を気にしていたらもうとっくに死んでいるのだ。 ご飯を食べつつ、本題に入る

 

「のほほんさんに聞きたいことがあるんだ」

 

「ほぇ~? なにかな~?」

 

「楯無先輩の妹さんのことなんだが」

 

「・・・・・・」

 

返事がないので視線を向ければ、さっきまでの人を癒すような笑顔ではなく、薄く目を開きどこか真剣な表情をしていた。 いきなりすぎたが、のほほんさんの空気により、本題に入るのが遅れてしまったため、仕方ないのだ。 目を見れば、続きを促していたので続きを喋る

 

「ビルドファイターズの経験者なのか?」

 

「うん、そうだよ~。 ゲームセンターとかに一緒に行ってたから知ってるけど、プレイヤーネームとかは知らないかな~」

 

俺が小声でビルドファイターズのことを聞けば、のほほんさんは雰囲気を戻し、答えてくれた。 ふむ、経験者か


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。