もしかしたらあったかもしれない、そんな未来   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第三十一話

一夏は負けた。 それはもう、可哀想なくらいだった。 普通の人ならね。 現役時代を知っている俺からすれば、慈悲すら感じたけど。 試合開始と同時に、ミサイルを発射され出ばなをくじかれた一夏。 呆然と立っていればいい的で、そこに荷電粒子砲を容赦なく撃ち込む簪さん。 数発ヒットしてようやく我に返ったが、そのころには48発のミサイルがすぐそこに迫っていた。 雪片弐型で応戦するも、数基撃墜しただけで大部分は直撃だった。 SEも残り僅か。 一か八かでワンオフアビリティである零落白夜を発動して特攻するも、簪さんは冷静に迎撃。 荷電粒子砲を数発ヒットさせ、雪片弐型をあさっての方向に吹き飛ばし、最後は武器を持っていない一夏にミサイルを直撃させ試合終了。 この通り普通の人から見たら容赦ないが、開幕フルバーストされるよりはましだと思う。 そんなわけで試合もすぐに終わり、俺の方は大した休みもなくすぐに試合と言う運びになった。 このころには観客も少なく、ほとんどの生徒が帰ったようだ。 俺にとっては好都合だけど

 

「ようやく、だな」

 

「そんなに楽しみだったのか、俺との試合?」

 

「当たり前だろ!」

 

まぶしい笑顔を浮かべているが、まるで意味が分からん。 同じ男子同士、初心者同士の試合だから楽しみとか? お門違いもいいところなのだが

 

「お前楽しみじゃないのか?」

 

「面倒だ」

 

逆に一夏が質問してくるが、俺は短くそう答える。 せっかく空を飛んで風を感じながら自由に戦えるというのに、邪魔なのは利権団体の手先とくだらない思考にとらわれた女子ども。 楯無先輩がいるからいいものの、楯無先輩が居なかったら俺は飛べもしなかったわけだ。 そう考えると、楯無先輩には感謝だ

 

『つまり、今の黒夜の心境を現すとこうだね!戦いの中にしか、私の存在する場はない。 好きに生き、理不尽に死ぬ』

 

『おう、やめーや。 誰が死神部隊のJだ、コラ』

 

少しテンションがおかしいが、まぁ大丈夫だろう。 俺の言葉を受け、一夏は首をかしげる

 

「面倒って...... 確かに、こうやって見世物になるのは面倒だし、俺だって遠慮したいけど......」

 

「違う、そうじゃない」

 

「?」

 

まぁ、分からないだろう。 織斑千冬(あの人)の栄光に守られて、のほほんと暮らしているお前には。 俺たちの、普通の男子たちが受ける理不尽な行為には。 もしかしたら、こいつもそう言う行いを受けたのかもしれないが、多分守られているほうが多いだろうから

 

「わからないならわからないままでいい、そのほうがいいだろう」

 

ブザーがちょうど鳴り、試合が開始される。 俺は焔火を展開し構える。 だが一夏は俺が構えたのを見て、雪片弐型を慌てて構える。 しょっぱなからやる気がなえたのだが、気を取り直して両手に持つ焔火をフルオートで撃ちだす。 その弾幕の中、まっすぐ突っ込んでくる一夏。 何か作戦があるのか、それとも

 

『作戦なんてないと思うよ? ただ愚直に、まっすぐに敵に切り込む。 そう言うタイプだよ、彼』

 

『・・・・・・』

 

大体が正面に弾幕を張り、引き打ちが主体の俺の戦法。 簪さん、凰さんの試合でやってきたはずなのだが。 それの対策すら立ててないのか?

 

『対策を立ててないじゃなくて、試合もただ見てただけ。 白式もそう言ってるよ』

 

試合を見ても感心するだけ、ね...... 上段から振り下ろされる雪片弐型を軽く避け、距離を離し引き打ちに徹する。 そうすれば

 

「くぅ...... やり辛いな」

 

険しい顔をしながら、それでもなお勝負を諦めていない一夏。 だが、一夏が一方的にやられる試合展開に観客席は盛り下がる。 中には、俺の誹謗中傷も。 あぁ...... 本当に面倒だ。 見え見えの攻撃に当たってやれば、観客席は歓声が。 零落白夜を常に発動させているのか、大ダメージだ

 

『どうするの?』

 

『もういい、冷めた。 茶番は終わりだ』

 

盛り上がっている観客席も、目の前の一夏もすべてどうでもよくなる。 早く帰って休みたい。 こんなストレスばかりの場所。 俺は両手の焔火拡張領域に戻し、葵を展開し、構える

 

「ついに剣の勝負か」

 

「一夏、一つだけ言っておく」

 

「ん? なんだよ?」

 

雪片弐型を構えながら首をかしげる一夏に

 

「これまでのようにいくとは思うな」

 

「っ!?」

 

イグニッションブーストを発動し、葵で加速した突きを放つ。 話していたことによって気を抜いていた一夏はこれに対応できず、もろに食らうことになる。 吹き飛ぶ一夏だが、俺はそれを待つほどやさしくない。 その一夏を追いかけ、横なぎに葵を振るう。 だが、かろうじて一夏はそれを受け止める

 

「話し中に...... 卑怯だろ!」

 

「で? それが何か問題でも?」

 

「は?」

 

目を点にする一夏。 その隙につば競り合いを崩し、また一撃を加える

 

「戦いの中にルールなんか存在しない。 あるのは勝ち負けだけだ」

 

「戦いって、何を!?」

 

「勝負事ってそう言うものだろ? それも理解していないお前に、俺は倒せない」

 

一夏の雪片弐型をはじき、尻もちをついた一夏に葵を振り下ろそうとするが、すんでのところで止まる。 試合終了のブザーが鳴ったからだ

 

『黒夜』

 

『わかっているさ、白』

 

一つ息を吐き、その場を後にする。 ストレスが溜まったからと言って、やりすぎたようだ

 

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「試合には全部負けるって聞いてたんだけど?」

 

部屋に帰れば、楯無先輩が楽しそうに聞いてくる。 帰りは誰にも会わないように人通りの少ないところを通ってきたし、最速で帰ってきた。 おかげで誰とも会わずに帰ってこれたのだが、部屋には楯無先輩が。 楽しそうなところ悪いが、俺は簡潔に答える

 

「あそこに居たくなかったんですよ。 女尊男卑(くだらない)思考の女子は、口を開けば俺の悪口。 織斑の攻撃が当たらなければ盛り下がる観客席。 逆に俺が当たれば、盛り上がる。 一夏自身は俺との実力差に気が付こうともせず、見え見えの剣を振るだけ。 作戦もなにもなく、ただまっすぐに俺に剣を振るうだけ」

 

「・・・・・・」

 

俺の独白を静かに聞く楯無先輩。 俺はそれっきり何も話すことはなく、服をとりシャワーを浴びる。 シャワーを浴び、着替えを済まし、ベッドに腰掛ける

 

「まぁ、ストレスが溜まったからと言って、あんなことはするものじゃないですね。 GW後が面倒そうですよ」

 

GW。 今日はGW前最後の授業であり、明日からは連休でもある。 なので、くだらない連中と会わなくて済むが、結局GW後に顔を合わせるのだから、猶予期間でしかない

 

「あまりため込んじゃ駄目よ。 貴方、そう言うタイプそうだもの」

 

「善処しますよ」

 

心配そうにこちらを見つめる楯無先輩にそう返事をし、そのまま横になる。 本当に疲れた

 

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