もしかしたらあったかもしれない、そんな未来 作:サクサクフェイはや幻想入り
何事も突然起こるものだ、目の前の光景を見て能天気にもそんなことを思う。 いつものように授業を終え帰ろうかと思えば、一夏から練習を見てほしいと頼まれる。 まぁ、そんなこと了承するはずもないのだが一夏もしつこかった。 そのしつこさに負け、アリーナの観客席から見ていることを条件に一夏の練習を見ていた。 どこから噂を聞き付けたのか、いつの間にか楯無さんが少し離れたところかに座っていたのだが。 一夏に適当にアドバイスしつつ、何故一夏が俺を呼んだのかわかった。練習を見るというかアドバイザーというか、そういうのがいるのは知っていたがここまで酷いとは...... 言わずもがな、篠ノ之箒、セシリア・オルコットのことだ。 今日はそこに凰さんも加わっているようだが。 セシリア・オルコットは一夏が初心者にも関わらず専門用語を使い細かいダメ出しをしている、篠ノ之箒は訓練機で剣の振り方や間合いの測り方などを教えているが、素人に毛が生えた程度だ。 そもそも、あんなに自分で教えるのを嫌がっていたのにも関わらず、どういう心変わりなのか。 凰さんは、まぁ、感覚ありきだ。 それは一夏も困惑するというもの。 だからと言って、自分が誰に教わるとはっきり意思表示をしないから悪いのだが
『それはどうかなー』
『どういうことだ、白』
白がどこか面白がるように言うので、気になって聞いてみる
『篠ノ之箒は専用機持ってないからわからないけど、セシリア・オルコット、凰鈴音は気の強い子たちだよ?』
『あぁ、一夏の意思は関係ない場合があると』
『ま、そういうことだね』
今はシャルル・デュノアに教わっているようだが。 そんなふうに白と話していれば、少し周りが騒がしくなる。 何事かと指のさされている方向を向けば、ラウラ・ボーデヴィッヒがISを展開状態で一夏たちを見降ろしていた。 一夏の話では昨日いきなり頬をはたかれたと言っていたため、幾ら人のいい一夏でも彼女を誘うとは思えない。 そもそも、ラウラ・ボーデヴィッヒの瞳に友好的なな色はない。 あるのは、ただ一夏への敵意だけだ
「それにしても」
ラウラ・ボーデヴィッヒもよくやること。 ここには生徒会長がいるというのに。 案の定ラウラ・ボーデヴィッヒはドンパチを始めようとして、アリーナを監視していた職員に注意されていた。 まぁ、その監視は俺を監視するものみたいだったんですけどね
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「それで、直接見た感想はどうでした楯無さん」
「そうねぇ......」
その夜、楯無さんにシャルル・デュノアを見た感想を聞いてみれば、苦い顔をしていた。 やはり楯無さんもシャルル・デュノアは男には見えなかったようだ
「そもそもよ、デュノアの家に子供がいたという記録がないのよねぇ」
「へー」
意味深なことを言い始めた楯無さんを軽くスルーして、俺は小説を読み始める。 明らかにこっちを伺っているような視線を感じるが、無視をしておく
「・・・・・・気にならないの?」
「俺は面倒ごとが嫌いですから」
チラリと本から楯無さんに視線を移せば、あきらかに不満げな顔をした楯無さんだが一般市民の俺が聞いたところで何かできるはずもない。 そもそもだ、この情報を楯無さんに言ったのは俺なのだからはなから丸投げする気満々なのだ
「まぁ、調べるとしても慎重に事を運ばないとね。 フランスの政府も絡んでいるんでしょうし」
うんざりしたような楯無さんの声を聞きながら俺は本を読んでいた。 数分後、ドアをノックする音がする。 思わず俺と楯無さんは顔を見合わす。 そもそも、俺がいるこの部屋に尋ねてくるやつはいないからだ。 いや、いるにはいるが俺から遠慮してる。 ともかく、楯無さんには隠れてもらい、応対をする
「はいはい、どちらさんって一夏か」
「おう、こんな時間に悪いな」
正確な部屋の位置は教えていなかったはずなのだが、尋ねてきたのは一夏だった。 というより、もう消灯時間も結構近いんだが......
「それで、どうした?」
「あー、その大事な話があってな」
「それは、後ろについてきてるデュノアも関係してるってことでいいか?」
「あぁ」
どこか周りを伺うように見ているデュノアを見て一夏に質問すると、一夏は真剣な表情で返事をする。 かなり面倒そうな感じもするが、まぁいいか楯無さんいるし。 そんなわけで、一夏たちを部屋の中に招く。 一夏はきれいにしてることをほめていたが、そんなもの当たり前だろうに。 ともかく二人に紅茶を進め、適当に座る
「それで? 何で尋ねてきたんだ?」
「実はな、知恵を貸してほしいんだ」
そう言って一夏が語り始めたのは、シャルル・デュノアの正体だった。 愛人の娘であり、母親が死ぬと同時期に父親に引き取られたこと。 そしてISの適性があり、今回のIS学園潜入が計画されたこと。 シャルル・デュノアを見れば、難しい表情をしていた。 とりあえず、楯無さんが必要としていた情報は得られたわけだ。 まぁ、一つ言うなら、こんな爆弾のような情報外部に漏らすのもどうかと思うが
「まぁ、用件は分かった。 それで?」
「それでって、今の話聞いて何も思わないのかよ!」
「いや知恵を貸してほしいって言われてもデュノアがどうしたいのか聞いてないし」
「僕は、僕は帰りたくない......」
「ふーん。 それで、一夏はなんて言ったんだ」
「IS学園には特記事項がある。 その中にありとあらゆる国家企業に帰属しないってあるから」
「問題を先送りにしてるだけだろ、それ」
「それ、は」
「それにIS学園は中立って言ってるが、それが本当に守れるのかは別問題だと思うぞ。 今回のデュノアの件、あきらかに国が絡んでる。 国からの介入をIS学園が突っ張れるかどうか」
「何でそうやってシャルルをいじめるんだよお前は!」
「いじめるも何も、間違った考えを正してるだけだろ? 今この瞬間にも、デュノアのこれがバレてる可能性もあるんだぞ。 デュノアの他に諜報員がいたら? デュノア自身に盗聴器が仕込まれていたら? 可能性なんか上げたらきりがないけどな」
俺は手をあげ、降参のポーズをとる。 シャルル・デュノアを見てみれば、分かっていたのか薄く笑うばかりだ。 まぁ、今言ったのはほんの一例だ。 どう思おうが一夏の勝手だが。 その一夏も一夏で、シャルル・デュノアに声をかけ出て行ってしまう
「シャルル・デュノア」
「な、なに?」
部屋を出ようというシャルル・デュノアの背に声をかける
「お前が何もかも捨てる覚悟で本当に助かりたいと思うなら、この番号に電話すると良い。 悪いようにはされないだろう」
そう言って楯無さんの電話番号を書いた紙を渡す。 驚いた顔をしているが、一夏に呼ばれ部屋を出て行くシャルル・デュノア。 俺はその背を追い、ドアの鍵を閉める
「もういいですよ、楯無さん」
「まさか向こうから来るとはねぇ...... 調べる手間がなくなったのはいいけど、どうしましょうかしら?」
「まぁ、さっきの番号楯無さんの携帯なんで、助けを求められたら助けるくらいでいいんじゃないですか?」
「なんてことを......」
「もし面倒だったら、良いテストパイロットが見つかったと言って有澤さんとこに投げてもいいですし」
「それもいいわね」