もしかしたらあったかもしれない、そんな未来 作:サクサクフェイはや幻想入り
「・・・・・・」
またもや出てきた俺の過去の二つ名にいい加減飽き飽きしながら、沈黙を保つ。 そんな俺の内心を知ってか知らずか、用務員さんはニコニコしていた。 その沈黙も数分も続けば、流石にため息をつきたくなる
「はぁ...... 俺の質問に答えてもらっていないのですが」
「おや? 何故私が、あのビルドファイターズのセキュリティ上知らないはずのことを知ってるか、気にならないのですか?」
「その二つ名は過去の話です。 それに、白い閃光は譲りましたしね」
「日本代表に、ですか? それこそ、私たちが認めません。 私たち、運営側がね」
にこやかに笑う用務員さんだが、その瞳は笑っていない。 存外に、今の日本代表が白い閃光にふさわしくない、そう言っていた。 そんなこと俺に言われても困るし、最早譲ったものだ、その後どう使おうがその人の勝手だ。 ・・・・・・無責任ではあるが
「・・・・・・俺にどうしろと?」
「別に白い閃光に戻れ、そう言っているわけではありません。 もはやあのゲームは過去のもの、時間は巻き戻りませんから......」
そう言う用務員さんの顔は悲しそうで、この人もまた運営として情熱を燃やしていたのだろうとわかった。 今も、あのシミュレーターどこかで使われていると噂はされているが、詳細は不明。 しかも、最後の世界大会で起こった暴走によって未来永劫、世に出ることはなくなったのだ
「でしたら、なおさら俺にどうしてほしいんですか?」
「今の日本代表を、白い閃光の名を騙る偽物をどうにかしてほしい、それだけです。 あのゲームを世に出れなくした者たちの手駒が、あの名前をあの機体を乗るのは生みの親として我慢ができませんからね」
「はい?」
なんか怒りに任せてとんでもないようなことを聞いた気がする。
「まさか、貴方が? 貴方が、あのゲームの生みの親?」
「ふふふ、お喋りが過ぎましたね。 ですが、貴方には知る権利がある。 世界二連覇を成し遂げ、三連覇確実と言われていたプレイヤーネームUnknown。 白い閃光」
「・・・・・・」
それから語られた真実は、ネットの中で予想された真実の一つだった。 ビルドファイターズ世界大会決勝、その最中に起きた暴走事故。 会場の全隔壁はロックされ、脱出不可能。 大会運営するための巨大ジェネレーターの暴走により、爆発寸前までなった。 それを止めたのは、俺ことプレイヤーネームUnknownと戦っていた重腕さん。 そして、外部から何とかアクセスできた世界大会出場者数名だ。 その裏側のはなし。 元々、ビルドファイターズはISの操縦関連の技術を使っているため、賛否両論であった。 もちろん賛成派は男が中心だった。 ヒーロー好きや、そんなことも気にしない女性たちも賛成派だったが。 そして反対派はISの登場により発足した女性利権団体。 その中でも、過激派と言われる奴らがひどかった。 女性優位の法案は当時なかったものの、強引な手法、時には犯罪まがいのことまでして強引に事を進めた。 まぁ、これもあったからこそ、ビルドファイターズは異常とまで言われるセキュリティをかすことになったのだが。 ともかく、最初のころは女性利権団体もおとなしくしていた。 当時はISも出始めということもあり、多くの代表候補生がシミュレーターで練習していたからだ。 一回大会の優勝者は、もちろん代表候補生だった。 だが二回目からは俺が優勝し、少し騒がしくなる。 どこからか情報が漏れたのか、優勝者が男ということで騒ぎ始める女性利権団体。 それに伴い、セキュリティも強化された。 そして第三回大会も俺が優勝、そこからだ女性利権団体の活動が活発になり、時には店のシミュレーターが破壊されたりもした。 そして三回大会、予想していた通り女性利権団体がクラッキングを仕掛け、システムは掌握され、世界大会は台無しになった。 女性利権団体の狙い通り、暴走を起こしたビルドファイターズは消え失せた、そう言うわけだ
「あの時はすみませんでした。 運営者として、生みの親としてビルドファイターズを維持できなくて......」
「・・・・・・」
目の前の用務員さんは本気で頭を下げていた。 こんな若輩者の俺に向かって。 それだけ彼はビルドファイターズを愛していた、ということなのだろう。 実際、当時アンケートなどをマメに行い、その都度アップデートや修正を繰り返していた。 それだけ運営がやる気を見せ盛り上げていたのだ、プレイヤー側もかなり盛り上がっていた。 だから、とても悔しかったと思う。 あんなことで、やめなければならなかったことが。 実際、資金面での援助やあのクラッキングの捜査などは有志で行われていたらしい。 そして、危険面の撤廃はあともう少しだと聞いていた。 まぁ、用務員さんに聞いた話ではそれすらも女性利権団体は横やりを入れてきたようだが。 俺が黙っている間、ずっと頭を下げ続ける用務員さん
「・・・・・・顔を上げてください」
「・・・・・・」
無言で顔を上げる用務員さんに構わず、俺は続ける
「別に、貴方の事は恨んでいません。 こんな言い方はしたくないですが、仕方なかったですから。 クラッキングがあって、安全面で確かに問題は出た。 だからって未来永劫、危険だから開発も改良もダメというのは納得いきませんが。 ですから、そんなに気に病まないでください。 女性利権団体は確かに恨めしい気持ちになりますが...... 俺は、貴方にお礼が言いたいくらいですよ。 貴方のおかげで素敵な人たちに出会えた、素晴らしい時間が過ごせた。 チームの皆さんは優しかったですし、素晴らしい人たちだった。 だから、そんな人たちに会わせてくれて、素晴らしい時間をありがとうございました。 これが、俺の本心です」
そう言って頭を下げる。 しばらく頭を下げるが、返事も何もないことを不思議に思い、顔を上げてみると用務員さんが泣いていた。 それを学園長は隣で支えていた。 俺はそれを見ないようにしながら、お茶を飲む。 しばらくすると、ようやく声をかけられた
「すみません、年甲斐もなく」
「いえ、別に......」
「さて、自己紹介が遅れました。 こんな世の中ですからね、男が学園長なんかをやっていればいろいろとやっかみも受けます。 なので、妻にやってもらってますが、学園長の
「知っていると思いますが、元白い閃光、プレイヤーネームUnknownこと、白石黒夜です」
俺の自己紹介に苦笑していたが、顔を真剣なものに戻す学園長
「さて、そろそろ本題に入りましょう。 何度も言いますが、今の日本代表、
「日本代表を、俺が、ですか?」
「貴方になら出来るはずだ」
真剣な目で言われる。 正直言って、勝てるかどうかなんてわからない。 俺は
「・・・・・・」
俺が口を閉ざしていると、学園長の電話が鳴る。 俺の断りを得て電話に出る学園長。 俺はどうするか迷いながらお茶を飲んでいると、電話が終わったようだ
「貴方に会わせたい人とモノがあります」
その言葉を受け、俺は学園長と共に学園長室の隠し部屋から地下に降りる。 そして、薄暗い通路を抜け俺の目の前に現れたのは
「・・・・・・」
「貴方は...... それにその機体......」