望「救える命なら、必ず助ける!」
八神家に転移した後、俺は変身を解除し、しゃがみこんだ。
「望、大丈夫!?」
フェイト達が心配そうに駆け寄ってくる。
「なんとかな……」
「ナハトヴァールは?」
「逃げたよ。パワーアップして、3日後に再戦するらしい」
「でも、望さんなら勝てるよね?」
アリシアが少し心配そうに聞いてくるが、
「……わからない。さっきの戦いはギリギリで勝ったからな。パワーアップしてくるとなると、負けるかもしれない」
「そ、そんな……」
俺の返事に、愕然とした表情になる。俺が負けるところを見たことないから、当然か。
「そ、それで、これからどうするんだい望?」
そんな空気を変えようと、アルフが言う。
「……先のことを言っててもしょうがない。とりあえず、夜天の書を完成させる」
「えっ!?」
全員が、俺の言葉に同時に驚きの声を上げた。
「ちょっと待て、望。蒐集活動は、やらないんじゃなかったのか?」
狼形態のザフィーラが尋ねてくる。
「少し違う。魔導士を襲ってリンカーコアを集めるのはやらないが、蒐集はするってこと」
「は? どういう事だよ?」
意味が解らないと、ヴィータは眉間にシワを寄せて首を傾げる。
「こういうことだ」
1本のメモリを取り出し、それを生身の状態で腰のスロットに入れる。
『XTREME! MAXIMUM DRIVE!!』
「っく……」
発動と同時に、少し胸の辺りが苦しくなる。それを見たプレシアが異変に気づいた。
「これは……望の魔力が、上がっていく?」
「正解……エクストリームのマキシマムドライブで、俺の中にあるリンカーコアの魔力を極限にまで引き上げているんだ。いや、限界なく上げていると言った方が正しいか」
これも過去にきてから調べた方法だ。正直、これがなかったら詰んでたかもしれない。
「望……貴方まさか」
「そのまさかだよ、プレシア。この状態のリンカーコアを蒐集させて、一気に完成させる」
「だが、それをしたら変身が―――」
「心配ない。ガイアメモリはデバイスとは別物だから、魔力がなくても使用できる」
シグナムさんの疑問に答えると、納得したように頷く。
「そういう訳だから、シグナムさん。蒐集してくれないか?」
「…わかった。だが気をつけてくれ。痛みはあるからな」
「覚悟してるさ」
やりとりを終えると、俺のリンカーコアがシグナムさんによって抜き出された。
「っつぅ…」
シグナムさんの言う通り痛みを感じたが、なんとか我慢できた。
そして抜き取ったリンカーコアを、蒐集させる。
「これでいい筈だが……」
確認してみると、666ページ全てが埋まっていた。
「よし。後は起動するのを待つだけだ」
夜天の書をテーブルの上に置き、起動を待つ。すると、夜天の書がガタガタと揺れ出し、紫色の輝きを放った。
輝く夜天の書から、1人の女性が現れた。長く綺麗な銀髪に血のように真っ赤な瞳で、黒いワンピースのような服を着ている。彼女が、夜天の書の管制人格だ。
「貴方ですね。私を起動させたのは?」
「そうだ」
こちらに顔を向け、そう言ってくる管制人格に答える。
「また、始まってしまうのですね……破壊と悲しみが……。一体何度繰り返せば……終わるのか……」
管制人格は、絶望した顔で悲しげに言った。幾度となく行われる破壊行為を止めることができず、管制人格は何をしても無駄だと悟っているらしい。
「ちょっといいか?」
そんな管制人格に呼びかける。
「今からバグを直す。じっとしててくれ」
「え?」
「変身」
『ETERNAL!』
怪訝な顔になる管制人格に構わずエターナルに変身すると、先ほど使ったのと同じメモリをスロットに入れる。
『KEY! MAXIMUM DRIVE!!』
『GENE! MAXIMUM DRIVE!!』
ナハトヴァールを消滅させようとした時と同じ様に、キーとジーンのマキシマムを併用し、右手を管制人格の肩に置く。
探っていくと、淀んだ魔力―――バグを感じ取り、それに自己消滅プログラムを書き加えていく。何秒か待つと、バグは消滅した。
同時に、管制人格は自分の異変に気付いたのか、驚愕して目を見開く。
「こ……これは……!? 体の中にあった淀みが、消えた!?」
「ガイアメモリの力を使って、アンタの中のバグを直した。消滅させたと言った方がいいか? とにかく、これでもう防衛プログラムを造り出して、破壊行為をする事はなくなった」
信じられないと言った表情をする管制人格。やがて、その体が小刻みに震えてきた。
「で、では……私はもう……破壊をしなくて……いいんですね……?」
震えた声で、管制人格が聞いた。
「ああ」
変身を解除する。
「本当ですか……?」
「ああ」
管制人格の目から、ポロポロと大粒の涙が零れ出す。そして手を伸ばすと―――俺に抱きついてきた。
「うおっ!? ちょっ、何が……」
「ありがとうございます……ありがとうございます……!」
涙を流し続けながら、管制人格はお礼を言い、力強く抱きしめてくる。
ま、まずい。そんなに強くされると、その……む、胸が………
気持ちを切り替えようと周りを見渡すと、周囲にいる一同は、管制人格が救われた事に安堵し、微笑んでいた。
この時俺は気づいてなかったが、その中で1人、モヤモヤした気持ちになっている者がいた。
(私……嫉妬してるの? 他の女の子に抱きしめられている望を見て……)
俺を見て、プレシアはそう思っていた……らしい。
文明が無い、無人の世界。
岩が転がっている殺風景な大地に、リュウガが立っていた。すぐ側にはドラグブラッカーがいる。あれから蒐集を続け、更に魔力を得てリュウガは進化していた。それでも、望には勝てない。もっと強くならなければ。
実は、リュウガ―――ナハトヴァールにはずっと前から自我が存在していた。しかし、その自我はプログラムされた破壊衝動に身を委ねてばかりだった。
理由は―――強い奴がいなかったから。
彼は強い敵と戦いたかったのだ。そしてそれは、望と出会ったことで叶うことになる。
「……」
リュウガは考える。真剣勝負で、命を賭けた勝負をするのはどれほど楽しいのだろうと。
早く、それがしたいと。
その日の深夜、俺は窓から月を眺めていた。
管制人格を救った後、はやてが彼女に名前を贈った。祝福の風──―リインフォース。彼女は喜んで新たな名を受け取り、リインフォースと名乗った。
とりあえずの目的を達成して、俺達はマンションへ帰宅した。皆、自分の部屋に戻って眠りについている。
俺は起きて、窓際に座って月を眺めながら、今日起きた出来事を思い返していた。
「望」
声がしたので後ろを見ると、プレシアがいた。
「眠れないの?」
「ああ」
短く答え、月に顔を戻す。プレシアは静かに隣に座り、共に月を眺めた。
「……リュウガの戦闘力は、俺より上だった」
そう言葉を漏らす。それに気づいたのか、プレシアがこちらを向く。
「正攻法でいったら、多分勝ち目はない」
ましてやパワーアップしてくるとなると、確実に負けるだろう。
「作戦を、急いで考えないとな」
自分に言い聞かせるように、呟いた。
望「何か、リュウガっていうかナハトヴァールの性格が武人みたくなってるな」
こういう性格なのもいいんじゃないかと思いまして。
望「なるほど。てか、何でドラグブラッカーがいるんだ?」
ナハトヴァールの膨大な魔力が変化し、形を持ったんです。
望「ふうん。で、次回はリュウガとの決戦になるのか」
はい。互いの全力を出し合う勝負で、最後に立ってるのはどちらなのでしょうか?
望「次回もよろしくな」