どうぞ。
闘いが終わり、数日が過ぎた。
世間はクリスマス一色で、街は店に飾られた綺麗なイルミネーションの明かりで輝いていた。街を行き交う家族やカップルも、ケーキを片手に楽しそうに笑っている。海鳴市にある八神家でも、クリスマスで賑わっていた。
「メリークリスマス!」
リビングに集まった一同が、手に持つコップを鳴らして乾杯した。集まってるのは、フェイト、アリシア、アルフの他、なのはとユーノだ。もちろん八神家は新たに家族となったリインフォースを含めて全員揃っている。
テーブルの上には、美味しそうなケーキや飲み物、豪華な料理が並べられていた。これらの料理を作る時、シャマルが台所に立とうとしたが、シグナム達に全力で止められてしまった。そして、この場にもう2人、パーティーに招待された少女達がいた。
「なのはったら、いつの間にこんなに沢山の友達と知り合いを作ったのよ?」
1人は長い金髪で、日本語が上手な外国人の少女。なのはと同じ学校に通い、クラスメイトで友達である『アリサ・バニングス』だ。
「はやてちゃん。今日は誘ってくれてありがとう」
ニッコリ笑ってお礼を言うのは、紫色の長髪で、少しおとなしそうな印象の女の子。アリサと同じく、なのはのクラスメイトで友達の、『月村すずか』だ。
なのはが、はやての家で行われるクリスマスパーティーの話をすると、2人は喜んで参加した。特にすずかは、以前図書館ではやてと出会い、友達となってから彼女の家に遊びに行くのを楽しみにしていた。
「にゃはは。ごめんね、アリサちゃん、すずかちゃん。別に隠してるつもりは無かったんだけど」
「ウチも、すずかちゃん達とパーティー出来て嬉しいよ」
なのはとはやては、屈託のない笑顔で答えた。みんなで料理を食べ、沢山話をして、笑い会い、パーティーは盛り上がった。目の前の光景を見て、リインフォースは微笑みを浮かべる。まるで、夢のような光景だ。こんなに大勢の人と騒ぎ、一緒に楽しい時間を過ごすのは、彼女にとって初めての事だった。まさか自分に、こんな日が訪れるとは思ってもいなかった。
(ありがとう、望)
心の中で改めて望に感謝すると、ふとあることに気づいた。
「そういえば、望とプレシアはどこに?」
リインフォースは部屋の中を見渡すが、2人の姿はなかった。するとフェイトが、思い出したように言った。
「あ、望と母さんは一緒に出かけたよ。確か、『せっかくのクリスマスだから、2人だけで楽しんでくる』って言ってた」
「2人だけって、何か付き合ってるみたいだね」
「みたいじゃなくて、母さんと望さんは付き合ってるんだよ」
「ええっ!?」
アリシアの一言に一同は驚き、その中でもリインフォースはかなり動揺していた。
(ま、まさか望とプレシアが付き合っているとは……。って、な、何で私は、2人が付き合っていることを知って、こんなに動揺してるのですか? 確かに望は私を救ってくれた恩人ですが……べ、べ、別に…す、好きという訳では……! いや、だからと言って嫌いという訳では……むしろ、その……いやいやいや、わ、私は一体何を考えて……)
自分でも気付かない内に、リインフォースは顔を真っ赤にさせていた。心臓の鼓動が高鳴っていくのを感じ、顔が赤くなっている事に気付き、熱を冷ますように飲み物を口の中に流し込んだ。
テーブルの下では、子犬形態に変身したアルフとザフィーラが、骨付き肉をかじっていた。
俺はプレシアと街に出て、デートをしている。
なんせ人生初だから、嬉しいのと緊張するのとが混じって変な気持ちになる。ん? 夏に海に行ったじゃないかだと? あれは、デートというより家族旅行のような感じだからな。
まあそれは置いといて、前はクリスマスだのデートだの言われても、特に興味がなかったので何も感じなかったが、今日は、なんて言うか……特別な日に思えてきた。
(やっぱ、付き合うと変わるもんなのかな……)
そんなことを考えながら、俺達はまずレストランへと入った。
レストランの中は、沢山の家族やカップルで賑わっている。店員に案内されて席に座り、料理を注文する。
しばらくすると料理が運ばれてきたので、食事を始める。ちなみにプレシアは魚料理を食べていて、俺は肉料理を食べている。
「味はどうだ?」
「ええ、凄く美味しいわ」
笑顔で答えるプレシア。……やっぱり美人だな、この人。確か固定化したのは今の状態だったから、そうするまで素だったってことか。ある意味恐ろしい人だな……
「ね、ねぇ望」
「ん?」
「私のも…食べてみない?」
「え? いいのか?」
突然そんなことを言われたので、思わず尋ねた。
「もちろんよ」
「じゃあ、お言葉に甘えるとするかな」
「そう……そ、それじゃあ…あ、あーん……」
「うぇいっ!?」
まさかのプレシアの行為に、変な声が出てしまった。こ、これはもしや、友人が定番と言っていた、はい、あーんというものか!?
「な、何よ…私だって、その……こういうこと、したいのよ」
「そ、そうか…なら……あ、あーん……」
「あ、あーん……」
プレシアがフォークで刺した料理を、パクッと食べる。
「……お、おいしいな、これ」
「そ、そうね」
気がつけば、お互いに真っ赤になっていた。
しかし、プレシアの方からしてくるとは思ってもみなかったな。何か申し訳ない気分だ。……よし。
「プレシア……あーん」
「えっ!?」
俺がそう言って料理をフォークに刺して出すと、驚いて目を見開いていた。
「え、えと、あの……」
「こ、これは、その、お返しだからな。アンタに食べさせてもらったから、その礼にと……」
「あ、そ、そうなの……じゃあ…あ、あーん……」
「あーん……」
パクッと口の中に頬張るプレシア。その顔はさっきよりも赤くなっていた。
「け、結構おいしいわね」
「だ、だろ?」
更に顔を赤くし、互いに気まずくなりながら、料理を食べ続けた。
食事を楽しんだ後、俺達はレストランを出て再び街中を歩き、色々なところを見て回った。
ちなみに、顔は赤いままだ。
いや、だってこういうのって今日が初めてだぜ!? 初々しいとか言われるかもしれないけど、仕方ないだろ!! ……自分で言ってて少し悲しくなった。
「の、望?」
「えっ、な、何だ?」
「次はどこに行こうって聞いてるんだけど」
「つ、次か…そうだな……」
や、やばい。さっきから上の空だったから全然決めてない……どうする!? こ、こうなったら―――
「だったら、最後はあそこに行こう」
「? どこのこと?」
首を傾げるプレシアを引っ張り、俺は歩いて行った。
俺達は、遠見公園に来ていた。俺と士郎さんとで、フェイトとなのはに稽古をつけている場所だ。アスレチックで遊ぶ子供、その様子を眺めてる親、公園内を歩くカップル等、公園にも人は沢山いた。俺達は、近くのベンチに座った。
「プレシア……今日は、楽しかったか?」
「ええ。こういうのは久しぶりだったけど、とても楽しかったわ」
満足そうな笑みを浮かべて、プレシアは空を見上げた。
そんな彼女を見て、俺は決意を改めた。
実は、俺には大事な目的がある。もし恋人ができて、こうしてデートすることがあるなら、是非やってみたいものだと思ってたことだ。
それを今―――実行する。正直かなり恥ずかしいが、やるなら今しかない……!
「プレシア!」
「どうしたの、望?」
プレシアが顔を戻して、こちらを見る。
「その……えっと……お、俺と……」
「?」
「俺と……キ、キスしないか?」
「えぇっ!?」
かなりどもりながら告げた俺の言葉に、プレシアの頬が赤くなる。
少し混乱してるようで、周りをキョロキョロとしている。
「ダ、ダメ……か? 嫌なら強制しないが―――」
「い、いいえ……そんな事はないわ………」
呼吸を整えると、プレシアはじっと見てきた。
「じ、じゃあ……キス、しましょう……」
「あ…ああ……」
緊張しすぎて体がガチガチになり、俺達はどこかぎこちない動きで、ゆっくり顔を近づけていく。距離が近づくにつれて、心臓の鼓動が速くなっていく。俺は目を閉じ、プレシアとの距離を縮めていく。
そして―――互いの唇が、重なった。
同時に、まるで見計らったかのように空から白い雪が降ってきた。短くて、拙いキスを終え、俺達は顔を離した。初キスで、恥ずかしさのあまり耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかる。それは、プレシアも同じだ。
しばらく互いに顔を合わせられず、顔をそらしてしまう。プレシアとのキスの感触を思いだし、興奮が高まっていく。その後、プレシアが口を開いた。
「…………ありがとう、望」
そう呟いたプレシアは、自身の手を俺の手の上にそっと重ねてきた。
望「わ、我ながら恥ずかしいことをした……あーんとか、き、キスとか……」
これから慣れますって。
望「そういうもんかな。あ、そういやリインフォースの様子が変だったな。何かあったのか?」
……この鈍感(ボソッ
望「? まあいいや。それで次回は?」
次回はエピローグ2です。あの人物が想いを伝えます。お楽しみに。