もし、梨子ちゃんが内浦に引っ越さなかったら、
そんな自分の読みたい内容を書きました。会話を使わずに仕上げてみたかったので読みにくいかもしれませんがよろしくお願いします。(`・ω・´)ゝ
とにかく結婚したまえ。
良妻を持てば幸福になれるし、
悪妻を持てば哲学者になれる。
(ソクラテス 紀元前469年~紀元前399年)
渡辺曜の目の前には、荒原が広がっていた。生物は生きることのできない過酷な環境。助けを呼ぶ方法もわからず立ち尽くす。叫び方を忘れたのだろう。
渡辺は学生時代から周囲の期待を背負ってきた。自分の希望よりも周囲に気を使っていた。渡辺の1番の親友も家族も何もかもが近いようで実は遠かった。だからだろうかいつの間にか荒原の中に入ってしまったのだ。
桜が咲き乱れる春の日の事。荒原に変化が訪れる。いつもの通り、大学へ行き家へと向かう途中の事だった。周囲は桜が舞い散りそれを見る人々が多くいた。心と心の繋がりが渡辺の目にははっきりと写った。
いつの頃からだろうか、渡辺は心を開く事が出来なくなった。故に、渡辺はからであった。正確には自分の募る感情で満たされていたが、人から得る共感などもなくそれらの感情は腐敗してなくなってしまっていた。
風が強く吹く。草木の香りの広がりをはっきりと感じた。目の前には、舞い散る桜が広がっていた。何でもない日。けど、美しい日。2人はそんな日に出会った。2人はそれぞれの先駆種となった。
桜内梨子は夜をさまよっていた。日が差して暖かな昼はいつの間にか消えた。太陽に置いてかれたのだ。
桜内には才能があった。
しかし、今はない。
故に周りは桜内を置いていって先に進んでしまったのだ。本当はそんなことはないのかもしれない。しかし、桜内の心は負の感情が決壊したダムのように流れていた。自分の周囲を客観視できなかったのだ。
桜内もまた夜の中で孤独だったのである。
春の日。暖かな昼の草原で2人は話していた。小鳥が囀り、草木の香りがあたりを覆っている。そしてなにより薄いピンクの花弁が果てしなく広がっていた。
「梨子ちゃんとあったのもこんな日だったよね。」
「うん。お互い辛かったよね。あの時は。」
過去を振り返る彼女達には心にゆとりがある。それぞれの心もまた、この草原のように生で満ちていた。2人の心の植生は長い時を経て移り変わっていったのである。
2人の薬指には素朴ながら美しさのある指輪がはめられていた。
この遷移が成り立った要因となるそれぞれの先駆種は2人を良い道へと導いた。そして、心の遷移はまだ途中である。これから幸福になるかもしれないし、哲学者になるかもしれない。
ただ、過去に知識を持っていると勘違いした人々を言い負かした私は、彼女達が幸福になるということを知っている。暫くはこの様子をじっくりと見よう。空の上から。