あれから彼が壊した天井を壊す前より綺麗に直し、一晩泊めてもらった翌日。母は私の髪(遺伝子情報さえあれば何でもいいらしい)を受け取ったメイド長に護衛を任せ、城に向かいながら私のステータスを上げたりスキルを強く、もしくは増やすことになった。何故?謎なのはそれだけではなく━━
「えっと……何?これ」
「偽装用の奴隷首輪と紐、偽装奴隷紋だけど」
━━目の前でリオンが手に持った言葉通りの物で、必要な措置だということ。そもそも何でこれらを持ってるのかすら不明で、今更ながら頼みの内容も聞いてなかったことを思い出した。その事については彼からも小言をもらったけど。
「とりあえず邪魔にはならんから着けとけ。偽物だから何の効果もないしな」
渋々と着けたそれは勝手に縮むが首を圧迫しないどころか重さも感じないと訳のわからない性質を持っていたみたいで、偽物なのに力を入れすぎじゃないかと思った。必要だったから作ったと言うが、こんなのが必要になるなんて魔王国は恐ろしすぎやしないだろうかと。
紐の先は彼の手に繋がっており、引っ張ればその分紐が出てき、手を離すと元に戻っていくというこれまたよくわからない作りをしているみたいだが、こちらは彼のスキルで出してるらしい。紐がスキルって……。
「これ一応鎖だからな?見た目紐だけど」
「え?」
詳しくは歩きながらな、と進み出したリオンの後を追い私達は出発した。
「それで?何から聞きたい?」
「じゃあまず、何でこんなのを着ける必要が?」
紐と首輪、それと今は髪や服で見えないが背中の偽装奴隷紋を指差して聞いてみる。あ、奴隷紋の方は村長の娘さんにお願いしました。さすがに年下の少年とはいえ、男に貼ってもらうのは嫌だったので。
「ああいう奴等から守るため」
「え?……ひっ!?」
リオンが指差した先にいたのは……えっと、本当に何あれ!?泥でできた1mほどの山にびっしりと大小様々な眼が張り付いている何かが一番大きな眼でこちらを、というよりは私を見ている。むしろ若干血走ってて睨んでる。怖っ!?
「魔物ならマッドアイ、魔族なら泥眼って種族のやつだったか?あんまり見んなよ、あれ大半が魔眼だぞ」
「あっ…」
そっと私の視線を手で遮り注意してくれるが、そうなると彼……でいいのだろうか?は何故こちらを睨んでるのだろうか。リオンは私が視界に入れないように歩く位置を変えつつ説明してくれた内容はこうだった。
元々はマッド系の魔物ないし泥系魔族とアイ系の魔物ないし眼系の魔族らしいのだが、それが人間によって殺され、恨み辛みを呑み込みつつ混ざるとあれになるらしい。生まれがそういう風になってるせいか人間に対しての憎悪が大きいとのことだ。
リオンは見た目が獣人っぽいから除外されているようだが私は人間のため、睨まれているらしい。
「あいつら奴隷にはさすがに手を出して来ないからな」
「あ、だから…」
これが必要なのはそのためなのかと納得する。
次に聞いたのはステータスとかを上げる理由についてだがまずは自衛のため、次に頼みに関わることなのだが━━
「姉上って襲撃されても自動発動の魅了だけで防げてしまったせいか、いざ防げなかった時に対応できなさそうだからな。シズネに襲撃者役をやってもらおうかなって考えてよ」
━━それはその後の私の身の安全は保証してもらえるんだよね?
そう聞くと、頼んだのは俺だって伝えて納得させる。姉上以外はこれで問題ないから姉上だけは最悪俺自身を売るさ、とのこと。
わかったと伝え、前を向くとそこにはどの国どの環境でも見かける代表的な魔物、緑色の肌と子供のような体躯を持つゴブリンがいた。
「とりあえずステータス上げの手始めにあいつらだな。魔物のしかいないから全力でやっちゃっていいぞ」
「ん、この剣で大丈夫かな?」
教皇国で渡された片手で扱える両刃の剣を見せると、眉間に皺を寄せた彼がいた。何で?
「あの塵共……仕方ない、こっち使え」
何処から取り出したかはわからないけど、渡されたのは腹の部分に奇妙な文字が刻まれた白と青の剣だった。
渡すとゴブリンを指差しもう来てるぞと……あ、かなり近づいてきてたみたいだ。
「えい!」
まずは一撃、ゴブリンから見ればかなり高い能力で持って横に一閃。寸前で間に挟もうとした小剣ごと首を飛ばし……ちょっと待って!?何この剣、実は魔剣の類いだったりしない!?
「……これって続けても技量は上がるのかな」
「とりあえず今はステータス上げとけ、姉上と2桁もステータス離れてるから技量優先してもどうにもならん」
私としてはステータスに見合わない技量のままでいたくないのだけど…。
初めの一戦は剣の方に意識が向きすぎたせいで反応しなかったのか、二戦目では自らの手で殺したことを意識し嘔吐し、やめるかと聞いてはみたがシズネは首を左右に振る。
三戦目以降は勇者達の子供だからか、ステータスが上がりやすい影響か複数の魔物を相手にしながらも(俺から見たら)僅かながら成長しつつ戦っている。
剣がアレなことも相まって無理に攻撃は繰り出さず、隙を見て一撃で仕留めるという戦い方になっているがな。
まあ無理無茶無謀さえしなければいいとして、教皇国側で用意された剣は見た目こそ普通だが中身がすかすかで、十数回斬るか数回打ち合うだけで壊れるような代物だった。魔王殺させに行くにしては酷すぎるそれは、目的がシズネの殺害じゃないかと思わせるには十分で、母親を助けても
「考え事?」
「ん?あ、悪い」
さっきメイド長から報告をもらったが、母親は教皇に手を出されそうになってたので影から攻撃したそうだ。いきなりかよ……本当に駄目だなあの国は。
まあ後で尻尾もふらせるだけで護衛してくれてるのだからメイド長には感謝だな。ん?殺気?俺に向いてたわけじゃないから気づくのに遅れたな。
「きゃあ!?」
『
前後で歪な四肢と竜の翼と尾、頭部は別の何かを使ったのであろう合成獣もしくはキメラが襲いかかってきた。
勇者の娘なのに実は不運とか付いてんじゃないかな、この子は…。
羨ましい妬ましい忌々しいあの方に首輪を着けて頂けるなんてあの雌豚め、そこを代わりなさい。リオン様からの頼みとは言え雌豚の母親を守らなければならない私としては放棄したいところではありますが、母親の方は被害者故放ってはおけません。雌豚?リオン様にああして頂けている以上、もう被害者とは思いません。代わりなさい。
……!?抱き……寄せ……?メスブタァァァァァァアッ!?
・スキル
リオ「前回はステータスだったから今回はこれだ」
シズ「異能、技、魔法を一纏めにしたものみたい」
リオ「今のところ本文で出たのは武器を取り出した『亜空間倉庫』と『封狼魔紐』『
シズ「後ろ2つ物騒なんだけど……いつ?」
リオ「メイド長、追跡は
シズ「持ってればいいってことでもないんだ…」
リオ「なければいいスキルなんて山程あるぞ、マジで」
シズ「封狼魔紐は?」
リオ「便利だな、人生……いや魔生で一番世話になってるかなぁ」
シズ「(紐を出すスキルに世話になるって……まさかそういう趣味?)」
リオ「何考えてんのか知らないけど、あれ色々能力付いてるからな?」