その日、スペシャルウィークはトレセン学園の寮棟で目が覚めた。
しかし未だ自室を与えられたわけではない。
初日から盛大に遅刻した彼女は寮長のフジキセキの配慮により、この日は仮眠室で夜を明かした。
「良いもの見れた……けど遅刻は不味かったよね。反省」
寄り道で見た東京レース場は大変大きく、レースやライブも素晴らしかった。
特にそこで優勝したサイレンススズカというウマ娘は、一目でスペシャルウィークを魅了したのだ。
何時か彼女と走ってみたい。
そんな日を夢想しながら身支度を整えたスペシャルウィークは、よく晴れた日の下に飛び出した。
トレセン学園の本校舎に向かい、職員室に到着を報告する。
其処で案内役を受けた理事長秘書の女性に案内され、スペシャルウィークは自分の教室の前に立った。
年齢から彼女が割り振られたのはジュニア最年長のC組である。
「……」
案内役の女性と別れたスペシャルウィークは扉の前で息を吐く。
この時彼女はどうしてか、舐められたら負けだという短絡的な考えに支配されていたのである。
心の中で母親に向けて決意を固めると、スライド式の扉を開け放つ。
ざっと見まわして10人ほどのウマ娘がいる。
視線を集めた転入生はセリフもまとまらないうちから教室の中に踏み入った。
「あ、あぁのわたしき、今日からこのクラスに入るっす、スペシャルウィークって言いまずぐぉ――」
身振り手振りを交えた挨拶から足がからみ、受け身も取れず顔から床に飛び込んだスペシャルウィーク。
田舎者と舐められないように。
そんな常ならぬ前のめりな発想が、完全に裏目に出た形である。
スペシャルウィークはとりあえず泣きたかった。
ひとしきり泣いてすっきりした所でこの醜態を見たウマ娘達から記憶を消し、もう一度リテイクしたい。
しかしスペシャルウィークには時を戻す異能力も他者の記憶を奪う魔法も無い。
諦めて顔を上げた時、至近距離から自分を覗き込む一人のウマ娘がいた。
「……」
「……」
間近で見つめ合う二人のウマ娘。
スペシャルウィークは何よりもまず相手の目元を覆うマスクに目が行った。
「ふーあーゆー?」
「発音悪っ!」
そのウマ娘から飛び出した棒読み英単語に思わず突っ込むスペシャルウィーク。
相手は気を悪くした様子もなく手を差し出し、転入生を引き起こす。
「あ、ありがとうございます」
「平気デース?」
「う、うん……大丈夫」
「なんか顔から行ってたけど」
「は、はい! 頑丈さには自信ありますから」
「オー、面の皮が厚いんデスネ!」
「エル! それ褒めてないですよっ」
スペシャルウィークがそのウマ娘と話していると、クラスメート達も集まって来た。
マスクのウマ娘……エルコンドルパサーはある程度人目をひいた所で唐突に自己紹介を始める。
「まいねーむいず、エルコンドルパサー! エルでいいヨー。アメリカ生まれの帰国子女デース」
「あ、はい。私、スペシャルウィークって言います。今日からこちらでお世話になります」
「へー。何処から来たノ!?」
「ほ、北海道から」
「へぇ……」
エルコンドルパサーはからかう様な笑みを浮かべて転入生に軽くジャブを放つ。
「田舎者さんなんダー」
「い、田舎者ぉ!?」
横合いから親友が肘を放ってくる。
わき腹を狙うそれを腕で受けつつ反応を待つエルコンドルパサー。
「た、確かに北海道は田舎ですけどぉ……」
「ふふん」
「そういうエルちゃんはアメリカのどんな都会のお生まれなんですか」
「け、ケンタッキーデース」
「ケンタッキー? ケンタッキー……」
エルコンドルパサーの解答を聞いたスペシャルウィークはしばし俯いて黙考した。
ややあって唐突に顔を上げると、怪鳥を真っ向から指さして反撃に転じる。
「ど田舎じゃないですかぁ!」
「なっなんデスとぉ!?」
「ド田舎ですーケンタッキー州はアメリカの田舎ですぅ!」
「そこまで田舎って事は無いデスよ!」
「日本の北海道ならアメリカのケンタッキーっていうくらいには田舎だと思います」
「バカナ!」
「大体エルちゃん自分が田舎者でコンプレックスあるから相手も同じに括っちゃおうとしてるんじゃないですか?」
「……グラスぅ……新入生がいじめマース」
「自分からちょっかい出してなにを今更……」
一太刀で半泣きにされたエルコンドルパサーは親友に泣きついた。
その光景を離れた所からみていたのは、クラスメイトのセイウンスカイとキングヘイロー。
二人は視線を交わし、キングヘイローは首を横に振る。
友人が関わる心算が無い事を察したセイウンスカイは席を立ち、騒動の中に入っていった。
「面白い子来たねー。私はセイウンスカイ。よろしくね、スぺちゃん」
「あ、よろしくお願いします。セイウンスカイさん」
「長いからウンスでいいよー」
その後も居合わせたクラスメイトが次々に挨拶を交わしていく。
エルコンドルパサーとのやり取りがあったせいか、最初から距離が近い。
グラスワンダーはエルコンドルパサーを引きずって転入生を取り巻く輪から少し離れた。
「エル、人気者ですね」
「そうですカ?」
「あれ、貴女が親し気に絡んだからだと思いますよ」
「馴染むのは早い方が良いデース」
「そうですね」
グラスワンダーはクラスメイトに囲まれ、さまざまな質問を受けているスペシャルウィークをほほえましく見つめていた。
あちらはもう気にしなくても大丈夫だろう。
「スぺちゃーん、後でランチ、ご一緒しましょう」
「あ、お願いします」
北海道から出て来たばかりのスペシャルウィークにこの学園の知り合いはいない。
そう予測したグラスワンダーはそつなく約束を取り付ける。
今は彼女の周りが騒がしくて近づく気になれない。
時間は確保したのだし、スペシャルウィークの為人を見るのは昼で良いだろう。
良い友人になれればいい。
この時グラスワンダーはそう思っていた。
§
昼休みの食堂は場所取り必須の戦場である。
エルコンドルパサーは授業終了と共に教室を駆けだすと、最短距離を走って戦地に到着。
入り口から見渡すとまだ八割ほどは開いており、手際よくテーブルを一つ確保する。
待つことしばし。
その間にも徐々にウマ娘達が空席を埋めていく。
程なくしてグラスワンダーがスペシャルウィークとセイウンスカイを伴って入ってくると、エルコンドルパサーは大声で呼びよせた。
「へーイグラスー、スぺちゃーんウンスー。こっちこっちー」
「何時も言うけど君にウンス呼びを許した覚えはないんだけどなぁ」
「気にしすぎると禿ますヨー」
息を吐きながら肩をすくめるセイウンスカイがエルコンドルパサーの正面に座ろうとする。
「あ、そっちはスぺちゃんにしまショ」
「おや?」
「お話、質問するのに向き合ってた方がしやすいデース」
「それじゃ、こっち失礼します」
「それならエルは少し詰めてくださいね」
スペシャルウィークの正面に三人のウマ娘が座る。
三人側は多少手狭だが、やや長めのテーブルであるため無理ではない。
四人はそれぞれに自分の食事を確保する。
「スぺちゃんのごはん凄いなぁ」
「皆さんそれで足りるんですか……」
「私は十分足りるんですガ―……グラスはそれっぽっち大丈――アウチっ」
「もう、エルったら。私はいつもこれくらいですよ」
「あ、あはははっは」
教室では防げたグラスワンダーの肘をまともに受けたエルコンドルパサー。
その光景に乾いた笑みを浮かべるしかないスペシャルウィーク。
しかし貴重な昼休みは有限である。
育ち盛りのウマ娘達はそれぞれに食欲を満たし、談笑に交えて新顔への質問を進めていった。
「スぺちゃんはどうしてこの時期に転入してきたの?」
「私、新聞とかでトゥインクルシリーズの事はよく読んでいたんです。だけど、自分が其処で当事者になって、夢を追いかけるなんて想像も出来なくて……」
「ふむ」
「だけどお母ちゃんがトレセン学園の願書を出してくれて、編入が認められて……そこで繋がったんです。トレセン学園に入学すればトゥインクルシリーズに登録できる。登録出来ればレースに出れる。レースに出られれば、其処で勝てれば……もしかしたら、私にも夢が見られるかもしれないって」
スペシャルウィークは憧れと希望の混じった瞳で夢を語る。
そんな転入生の言葉より表情に納得したエルコンドルパサーは、やや真面目な顔で深く頷いた。
「夢の道が見えたら進むしかないデース」
「そうですよね! いつか必ずレースに出て、夢をかなえて……お母ちゃんにやったよって伝えたいんです」
「親に……ね」
セイウンスカイはその言葉に引っかかり、箸を一瞬止めた。
何かざらついたものを感じたが、心の中で形にならないセイウンスカイ。
そのうちにグラスワンダーが続きの質問をしてくれた。
「ところでチームは何処に入るか決めましたか?」
「チーム?」
「はい。チーム毎に、トレーナーさんがついてトレーニングを積むんですよ」
「へぇ……」
こちらの事など何も知らないスペシャルウィークにとって、チーム決めと言われてもどうすればいいか分からなかった。
一つだけあったのは、昨日見たレースとライブへの憧れ。
その主役だった一人のウマ娘の事である。
この時スペシャルウィークはレース場できっかけをくれた一人の変質者の事など欠片も覚えていなかった。
「あ! 私、サイレンススズカさんと同じチームで走ってみたいです」
「サイレンススズカさん……って、一個上のシニアクラスだっけ」
「スぺちゃん、スズカさん知ってるデース?」
「はい。昨日、レース場でたまたま拝見して……」
エルコンドルパサーはその名前が親友の所属するリギルのメンバーだと知っている。
其れほど話した事は無いらしく、グラスワンダーの口からその人柄を聞いた事は無かったが。
「調度良いタイミングです。今日、私が所属しているチームの入部テストがありますよ」
「スズカさんと同じチームだよね」
「ええ!?」
スペシャルウィークが喜色に染まるのを見たグラスワンダーは、内心の寂しさを隠して笑う。
本当はエルコンドルパサーの為のテストになるはずだった。
彼女の為と方々に話を通し、やっと実現した所属テスト。
一般公募して希望者と一緒にエルコンドルパサーが走り、実力をはっきりと示す為のもの。
ところがタッチの差で親友は別チームの所属を決めてしまい、昨日グラスワンダーはトレーナーの東条ハナに不手際を謝ったばかりである。
実はこの時、東条トレーナー側にも予想外の事態が起きていた。
そのためグラスワンダーの願いとは別口の事情から、テストレース自体は必要になっていたのである。
しかしエルコンドルパサーにかかり切り、最近はリギルに顔だし程度しかしていなかったグラスワンダーはその辺りの事情に疎かった。
エルコンドルパサーに対しても、スペシャルウィークに対しても、グラスワンダーは出来る限りの善意を持って対応してきた。
それが些細な行き違いから何一つ報われない事になると、今の時点で知るものはいない。
「私も、そのテスト受けたいです」
「それでは放課後、リギルまでご一緒しましょうか」
「はい。お願いしますグラスちゃん」
スペシャルウィークはグラスワンダーの手を取って頭を下げたが、グラスワンダーは選考が厳しい事を告げる。
リギルは学園のトップチームである。
正直、碌に基礎も積んでないだろうスペシャルウィークが選考レースに勝てるとは思えなかった。
「これヘイローちゃんも受けるって言ってマシタ?」
「確か言ってたねー」
「じゃ、応援にいきまショー」
「っていうか、エルちゃんは走らないの?」
「ワタシはチーム決めましたヨ」
「え、マジ?」
「イエース」
「そっか……おめでとう」
「うん……ありがとう」
一人、また一人、叶えられなかった夢を置いて現実に向かっていく。
ふと服の下から首にかけたストップウォッチを手に取っていたセイウンスカイ。
画面を見ずに操作すると、狙った時計よりも一秒ほど早い数字。
焦っている自分がいる。
セイウンスカイは息を吐き、本格的にチーム探しを進める事に決めた。
§
チームリギルの新メンバー選考レース。
それはトレーナー東条ハナの挨拶と、チーム入り希望者全員の目標を確認する所から始まった。
「私、日本一のウマ娘になりたいです」
そう答えたスペシャルウィーク。
この目標は他のウマ娘達からは嘲笑で迎えられた。
不思議な事ではない。
オープンクラスに上がれる者は一握りという世界であり、そこからさらに重賞で勝てるウマ娘は極一部。
ましてその上にはドリームシリーズという頂上決戦の舞台まである。
大抵のウマ娘にとって日本一などと言う目標は、地に足のついてない妄想としか取られなかった。
(日本一……日本一ですか)
他人の目標を右から左に流していたキングヘイローだが、この発言だけ耳に残った。
記憶にとどめる価値すら認められない低レベルな目標の中、唯一興味を惹かれたもの。
キングヘイローは列から乗り出して発言者たるウマ娘を確認する。
それは今日転入してきたウマ娘。
(名前は……そう、スペシャルウィーク)
周囲の者に笑われて赤くなっているが、更によく見ればトレーナーを含めたリギルのメンバーは誰も笑っていなかった。
その目標は、確かにトップチームの加入を目指すに相応しいかもしれない。
しかしキングヘイローは彼女が田舎から出て来たばかりという事情も知っている。
スペシャルウィークを笑ったウマ娘達が理解している厳しい現実がある。
転入生はそれを知っているのか。
知っていてなお、其処を目指せるのか。
キングヘイローは胸の中にざわつく感情が湧き上がるのを自覚した。
「……貴女がもしかしたら、五人目だった……なんて、簡単には認められませんわね」
口の中だけで呟いた言葉は誰の耳にも届かない。
キングヘイローは今一度周囲を確認すれば、エルコンドルパサーとセイウンスカイの姿が見える。
この選考レースは一般公募であり、テストを受けないものでも見学することが出来るのだ。
セイウンスカイは自分の視線に気づき、小さく手を振って来た。
何か反応を返すべきか迷ったが、隣のエルコンドルパサーをみて止めた。
感情のない視線でテスト生達を眺める怪鳥。
しかし彼女が本当に見ているのはスペシャルウィークだけだろう。
他の同期はジュニアB組時代に散々調べたのだから。
「今更彼女がそうだとして、もう意味はないでしょうに」
スペシャルウィークが期待通りであろうとなかろうと、今の自分達には関係ない。
キングヘイローはエルコンドルパサーの未練を笑おうとして失敗した。
今しがた感じた心のざらつきは恐らく、彼女のものと同じだろう。
ならばちょうどいい機会かもしれない。
スペシャルウィークが本物かどうか、此処で自分が見極める。
「それではこちらのくじを引け」
選考レースはスターティングゲートまで用いた本格的なものだった。
トレーナーの指示に従い、一人一人くじを引いて入るゲートを決めていく。
キングヘイローはスペシャルウィークと隣に当たる。
其処である可能性に気づいたキングヘイローは、物珍し気にゲートを見ている転入生に声をかけた。
「ちょっと貴女、スペシャルウィークさん」
「あ、はい……えっと……」
「キングヘイローです。同じクラスの」
「キングヘイローさんですね。よろしくお願いします」
「……時間がないから手短にお聞きしますけど、貴女スターティングゲートを使った事ありますの?」
「あ、実は初めてです」
やはりそうだった。
キングヘイローが素早く視線を走らせると、他のウマ娘達はさっそく自分のゲートに向かっている。
自分で言った通り、時間が無い。
「貴女、狭所に閉じ込められた経験はおあり? 悪戯のお仕置きとか」
「狭い所って基本ウマ娘だめですよね。お母ちゃんはそんな事しないですよ」
「そう。そのダメな狭い所に入らないといけないんです。これから」
「あぅ……」
「ゲートの入場からスタートは勝敗を左右するれっきとした技術です。ジュニアAからカリキュラムがあって、もちろん必修ですわ。貴女もこれから本格的に習うでしょうが、このゲート試験に落ちてレースに出れないウマ娘も居るんです」
「そ、そうなんですか……」
「慣れたウマ娘でも、あの中では頭が真っ白になる事がありますわ。わたくしが知っている例ですと、レース本番でゲートが開く前に下からくぐった方とか」
「まさか……」
キングヘイローはゆっくりと、しかし不自然にならない程度の歩調でゲートに向かう。
スペシャルウィークはその意図を察したか、それとも会話相手だからか、キングヘイローに合わせて動く。
既にほとんどのウマ娘はゲート前に集まっている。
気の早く慣れた者は入場を始める者もいた。
やや不安そうなスペシャルウィークにキングヘイローも悩む。
教えない方が良かっただろうか。
ぶっつけ本番でやらせた方が上手く行くウマ娘がいることも事実である。
しかしそんな器用なウマ娘は多くない。
キングヘイローは教室で開幕すっ転んだこの田舎娘に、そんな器用さがあるとは思えなかった。
「……良いですこと? 自分の入るゲートの前で、入場する前に立ち止まって深呼吸を一回。そのまま両手で左右の敷居に手を当てて、目をつむって手さぐりに三歩入りなさい」
「キングヘイローさん?」
「入ったらもう一回深呼吸をして、ゆっくり目を開きなさい。少しだけ時間を稼いでさしあげます」
スペシャルウィークの脇を離れ際、それだけ伝えたキングヘイロー。
その傍でも他のウマ娘達は次々とゲート入りを完了していく。
キングヘイローはゲート入り口の数歩前で立ち止まり、瞳を細めて大きく息を吐く。
落ち着かなげに視線を巡らし、再び深呼吸。
明らかに嫌がっているその様子にトレーナーから指示が飛ぶ。
「キングヘイロー、入りなさい」
この人はもう自分の名前を覚えたのか。
そういえば試験希望者は順番にノートに名前を書いていた……そんなことを考えながら声がした方に振り向くキングヘイロー。
名前を呼ばれたからそちらを向いた。
そんな仕草と共にもう一度自分のゲートに向き直る。
隣のゲートでは転入生が自分の言ったとおりに入場していく所だった。
キングヘイローはもう一つ息を吐き、今度はさっさとゲートに入る。
これ以上は引き伸ばせない上、中で待たせすぎても逆効果だった。
その様子を見ていたセイウンスカイは隣の級友に声をかける。
「なんかさー……お嬢、スぺちゃんに甘くない?」
「……ウンスちゃん機嫌悪いデース?」
「まさか、と思いながらも期待しちゃう自分がさぁ。なんか嫌なんだよね」
「……」
「期待外れだったら残念だし、期待通りだったらどうして今更って気持ちが止められない」
「……そうネ」
苦笑した怪鳥は肩の力を抜くように大きく一つ伸びをした。
「でも、なーんか放って置けないんデスよネ~。あの転入生」
「変な擦れ方してないもんね。聞いた? 日本一だって」
「フフーン。スぺちゃんが日本一なら私は世界一を目指しマース!」
「こいつ臆面もなくパクりつつ規模膨らませやがったよ」
「パクリ? ノンノン。リスペクトだヨ!」
話ながらもゲートからは目を離さない二人のウマ娘。
彼女らを含めた多くのギャラリーが見守る中、ついにレースが始まった。