コンドルは飛んでいく   作:りふぃ

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フラグ管理が難しい(´;ω;`)ウッ…


7.ジュニアCクラスの夢

 

パンパン。

ジュニアCクラスの一角から響く乾いた音。

ゴツゴツ。

その音を追いかけるように教室に響く濁った音。

仲良し五人組の溜まり場となっているスペシャルウィークの席では、席主とグラスワンダーが互いに手を打ち合わせる。

パンパン。

その音をかき消すようにスペシャルウィークと向き合う位置で椅子に座ったウマ娘が机に額を打ち付ける。

ゴツゴツ。

 

「いやー。シャトル先輩凄かったねグラスちゃん!」

「本当にそうですね、スぺちゃん」

「むぎぃいいいいいぃ……」

「エル? 新聞が読めないので頭を退かしていただけますか?」

「うん。私もシャトル先輩の活躍もう一回音読したいな。エルちゃんのソレは床でやってもらえると」

「それ土下座になりますヨネェ!」

 

顔を上げたエルコンドルパサーが喜色満面のリギル組に抗議する。

先日の事、この怪鳥はNHKマイルカップの前哨戦たるニュージーランドトロフィーに快勝した。

しかし同日別所で行われたタイキシャトルの復帰戦が余りに派手であり、話題の全てを持っていかれたのだ。

 

「エルちゃんもニュージーランドトロフィー勝ったんだよね、おめでとう!」

「……アリガト」

「所でレース何時だったの?」

「知ってるデショーがぁ!」

「まぁまぁエル? 落ち着いて」

「グラスぅ……」

「ほら、エルの記事……虫眼鏡でも使わないと見えないくらい扱いが小さいですから、スぺちゃんが知らなくても仕方ないかなって」

「むがぁあああああああああっ」

 

もう一度、机の上に広げられた新聞の上に頭を打ち付けようとしたエルコンドルパサー。

そろそろ額が赤くなっていたため、席主をはじめグラスワンダーとセイウンスカイも抱えるように止めに入った。

 

「皆見る目がありまセーン! ワタシのレース見ました? 先行の有利な位置から誰よりも早い末脚で快勝っ。100回やり直しても結果が変わらない完勝デース。タイキシャトル先輩のは身体能力でぶん回したバカレースじゃないデスカ!」

「でもシャトル先輩のレースだって1000回繰り返しても同じだったと思うよ」

「むしろやり直すたびに差が開くまでありますね」

「まぁ、今日の所はおとなしく負けを認めておきなよ」

「ワタシ! 四戦四勝っ。負けてないデースっ」

「この扱いの大きさは負けでしょうが」

 

エルコンドルパサーの隣で両肩を抱え、机から上体を引きはがしたセイウンスカイ。

彼女らが集まる時は大抵リギルの二人が並び、セイウンスカイとエルコンドルパサーが対面に並ぶ。

それはリギルと反リギルの戦いの象徴としてクラスメイトの応援も綺麗に二分されている。

その両者の真ん中で自然と上座に座るのがキングヘイロー。

このお嬢様が止めない所までは手も口も出していいというのが、彼女達のルールである。

 

「……」

 

エルコンドルパサーを宥めるセイウンスカイは何処か気もそぞろなキングヘイローを伺った。

はっきり言ってらしくない。

何時もならエルコンドルパサーの額を慮ってさっさと止めている筈なのだ。

しかしキングヘイローは動かない。

今も気落ちした様子で肩を落としていた。

 

「すいません皆さん、少し体調が優れないので医務室に行ってきます」

 

らしくない事は自分自身分かっているらしいキングヘイロー。

大きく息を吐きながら席を立った。

 

「わたくしが居ないからと言って羽目を外す事の無いように、仲良く喧嘩なさい」

「はーい」

「ご心配なくー」

「心配性だねお母さん」

「白髪が増えますヨ~」

「……セイウンスカイとアホウ鳥は後で覚えておきなさい」

「ひぃ!?」

「アホウ鳥っ、あほう鳥って言いましタ、今!?」

 

死の宣告と共に席を立ったキングヘイロー。

ストッパーが居ない時、少なくともクラスの中では煽り合いはしない両陣営。

それは弥生賞、皐月賞を経て周囲に与える影響を考慮した結果である。

当事者達は分かっている匙加減をクラスメイトが理解できず、怖がらせたり別の諍いに発展したことがあったのだ。

 

「……ま、そのタイキシャトル先輩もエルちゃんも、しっかり勝ち上がって良かったよ」

「そうですね……エル」

「ん?」

「おめでとう」

「ん、ありがとうデース」

「だけどエルちゃん、どうして三冠獲りに来なかったの?」

 

何気なく聞いてくるスペシャルウィーク。

それは彼女だけに留まらずクラスメイト達も気になっていたことだ。

グラスワンダーとセイウンスカイは一瞬、クラスから音が引いたことを察する。

 

「……ほら、スぺちゃん達にも華を持たせてあげないと可哀想カナーってネ!」

「おお、エルちゃん凄い自信だね」

「あはは、皮肉言ってるんですから流さないでくださいヨ~」

「いや、じゃあさ! 私がエルちゃんの思惑通りに華を持ったらさ」

「うん?」

「秋は、一緒に走ろうね」

「……フーン」

 

口元は笑っているが目は笑っていないスペシャルウィーク。

弥生賞で勝利し、皐月賞でも好走したチームリギルの新星。

勝つ事を知り、負ける事も知った一人のウマ娘が同期のライバルとしてエルコンドルパサーの前に立とうとしていた。

本当にスペシャルウィークがダービーを獲れたなら、秋には倒さなければならないウマ娘の筆頭だろう。

 

「スぺちゃん……私は眼中に無いのかな?」

「まさか、皐月賞ウマ娘を無視するなんて出来ないよ……でも何となく、ウンスちゃんとはこれからもきっと走る事になると思うんだ」

「まぁ、エルはマイル路線に引きこもっちゃいましたからね」

「路線違いっていうか……はっきり言っておかないとエルちゃん、どっか行っちゃいそうだから」

「何処に、デース?」

「いや、何となく名前みたくさ……飛んで行っちゃいそうな気がして」

「もぅ、スぺちゃん寂しがり屋デース」

 

エルコンドルパサーは両手でスペシャルウィークの両頬をこね回す。

悲鳴を上げながら抵抗はしないスペシャルウィーク。

一頻りもち肌を堪能したエルコンドルパサーはセイウンスカイと共に席を立った。

 

「ウンス、ちょっと」

「……ん」

「それじゃ、リギルのお二人さん。まったネ~」

「スぺちゃん、ダービー頑張ろうねー」

「うん、負けないよ」

「では、またー」

 

エルコンドルパサーとセイウンスカイはそのまま廊下に姿を消した。

その背中を見送ったスペシャルウィークとグラスワンダー。

 

「スぺちゃん、秋はマイルに転向する意向あります?」

「いや……流石に其処までは考えていないんだけど」

「エル、秋はどうするんでしょうね……確かに中距離に来てもおかしくないんですけど」

「お?」

「……あのエルが、シャトル先輩から逃げる姿も想像出来なくて」

「あ、秋には直接対するレースもあるんだね……でも正直、マイルで先輩に勝てる人とかリギル以外だとスズカさんくらいしか想像も出来ないんだけど……」

「……もう一人いるかな」

「いるんだ!?」

「草レースですが、1100でエルを20バ身後ろから差して4バ身千切った方とかいますよ」

「うへぇ……」

 

スペシャルウィークはエルコンドルパサーのレースは映像で見ている。

当人が言うように鮮やかな勝利だった。

しかも恐らく底を見せていない。

にもかかわらず、エルコンドルパサーがタイキシャトルに勝つビジョンが見えなかった。

それは自分が走っても同じである。

距離が違うと言えばそれまでだ。

しかし思わず天井を仰いだスペシャルウィークは呟かずにはいられなかった。

 

「日本一は、遠いなぁ」

「一歩ずつ……ですよ」

「うん、そうだね」

 

スペシャルウィークは万感の思いを込めて頷いた

骨折から春を全休しなくてはならないグラスワンダー。

一歩ずつと語った彼女が、内心で歯を食いしばっている事は想像に難くない。

そんな彼女の為にもダービーが欲しい。

それがリギルの全員に育てられたと自負する自分が出来る恩返し。

駆けることは出来ても飛ぶ事は出来ないウマ娘達。

どれ程足が速くとも、一歩ずつ進むしかないのである。

 

 

 

§

 

 

 

セイウンスカイを連れ出したエルコンドルパサーは校舎の屋上にやって来た。

それぞれに一通り周囲を見回し、誰もいない事を確認する。

 

「悪いネ~同志ぃ」

「元、同志でしょ」

「硬い事言わないノ」

「まぁ、良いけどさ」

 

エルコンドルパサーとセイウンスカイ。

そして此処には居ないキングヘイローはかつて一つのチームを作ろうと画策していた仲である。

それは現実と折り合いがつかず流れたが、培った絆は早々風化するものではない。

 

「ウンスちゃん、最近ヘイローちゃんと何処まで行ったんデース?」

「……質問の意図は分かるんだけど、違う意味に聞こえるから言い換えてくれない?」

「チューした? ちゅ~?」

「帰っていい? いや、帰る前に一発殴っていい?」

「わ、分かったから距離詰めてこないでくださいネ」

 

このようにからかった時、大抵セイウンスカイもグラスワンダーに絡めて切り返してくる。

しかしさっさと言葉遊びを打ち切ろうとしてくる様子に、エルコンドルパサーも表情を変えた。

 

「やっぱり最近関われて無い?」

「……うん」

「そっか」

 

キングヘイローの様子がおかしい事は今日に始まった事ではない。

春レースが本格的に始まる前、リギルの選考レースの後から少しずつ空回りしている印象だった。

 

「ヘイローちゃんって今、結構大きいチームに入っているんでシタ?」

「いや、私もそう思っていたんだけど少し違うみたい」

「お?」

「去年かな……そのチームのトレーナーが急逝して三つくらいに分かれたみたいなんだよね。ヘイローちゃんがいるのはその一つで、逝っちゃったトレーナーの若いボンボンのチームみたい」

「……なんかウンスちゃん、悪意ない?」

「……正直、うちのお嬢様を任せるには足らないかな……僻みかもしれないけどさ」

「むぅ……」

 

セイウンスカイもエルコンドルパサーも自分のチームには不満が無い。

細かい事を言い出せば限が無いが、このチームに入って前進した自分がいる事は実感している。

夢を賭ける先として不足はなかった。

勿論リギルの二人もそうだろう。

しかしまさかこのような形で級友が苦労しているとは想像していなかった。

 

「前のトレーナーは大層腕が良かったらしいんだけどね……今の二代目はどうなんだか」

「全く見どころが無いってわけじゃないんデース?」

「そんなトレーナーをヘイローちゃんが選ぶはずない……ってくらいだね、私が信じられるのは」

「……トレーナー自身へは信頼ゼロですネ」

「例え才能が先代以上だとしてもさ、若い駆けだしってだけで合わない気がするんだよ……ヘイローちゃんみたいな我の強いお嬢様にはベテランが根気よく、一つ一つ言い聞かせていった方が良いような気がする」

「成程ネ……」

 

エルコンドルパサーにはセイウンスカイが抱えているジレンマが良く分かる。

条件戦からGⅢまでを無敗。

順調な滑り出しだったキングヘイローだが、そこから先は勝ち星が無い。

彼女は敗北を受け入れてバネにする器量が確かにある。

しかし過ぎればそれも毒になる。

一つ一つは小さな傷でも、巨大な才能を砕くたがねになるかもしれない。

少なくとも気持ちの切り替えを仕切れずに、調子が今一つのまま此処まで来ている。

これまでもキングヘイローが仲間内の草レースで負ける事はあった。

その度に彼女を引っ張り上げて来たセイウンスカイからすればもどかしいモノがあるだろう。

 

「チームが違うって本当に遠いんだよ……此処までやりにくくなるとは思わなかった」

「ウンスちゃん……」

「スピカの連中はまぁ、根が良い子だって分かってるから気にならないんだけどさ……ヘイローちゃんの方の人間関係がどう絡まってるか分からなくて声がかけづらいんだよ」

「皐月賞獲った張本人だもんねぇ」

「うん。しかも私達がチーム組もうとしてた事を知っている奴は知っているだろうからね。私がヘイローちゃんに関わろうとするとあらぬ誤解を受けるかもしれない」

「……それ、ウンスちゃんじゃなくてヘイローちゃんが困る奴ですよネ~」

「そうなんだよ」

 

頭をかいて息を吐いたセイウンスカイ。

エルコンドルパサーも苦虫を噛んだように顔を歪める。

 

「これ、ワタシのせいかなぁ」

「なんでエルちゃんのせいになるのさ」

「ワタシがもっと粘っていれば、少なくともヘイローちゃんのケアはウンスちゃんがやれたデショ」

「それこそ結果論でしょうが。まさかジュニアCの春直前にスぺちゃんみたいな子が来るなんて誰が予想出来るっての」

「……結果論だって間違ってたと思えば惜しくもあるヨ」

「またぁ……その完璧主義は、良くないなぁ」

 

セイウンスカイはエルコンドルパサーの肩を叩いて笑う。

しかし怪鳥の表情は冴えなかった。

常の彼女からは余りにかけ離れたその姿に苦笑するセイウンスカイ。

 

「しょうがないね分かったよ。じゃあヘタレな同志の後悔を、私が吹っ飛ばしてあげる」

「おぉ……ウンスちゃんがビッグマウスとか似合わないデース」

「黙って聞いて。良い? スぺちゃ――スペシャルウィークは私達と夢を見る事は出来たと思う、だけど一緒に夢を追う力はなかった」

「……え?」

「次のダービーで、私がそう証明してあげる。それなら、今の形が私たちにとって間違いじゃなかったって、エルちゃんも信じられるでしょう」

 

不敵に微笑むセイウンスカイに魅入ったエルコンドルパサー。

それなりに長い付き合いだが、こんな彼女の顔は見たことが無い。

スペシャルウィークを抑えての勝利宣言。

以前のセイウンスカイからこんな言葉を想像する事は出来なかった。

それほど濃密なモノをスピカで積んできた。

エルコンドルパサーは級友の力強い変わり様に背筋が粟立つ。

 

「ワタシは目的があって、今はマイルにいるんですケドー」

「へぇ」

「ちょっと勿体ないって思っちゃいましたネ~。今のウンスとダービー獲りあってみたかったヨ」

「正直其処は気になってたんだよね。エルちゃん何企んでるのさ」

 

その質問は既に何回か貰っていた。

しかしエルコンドルパサーの口から大目標が語られたのは、コメットの外ではこれが初めて。

秋の中距離路線を制して翌年の凱旋門賞。

そして再来年のドバイWCとBCクラシック。

全てを聞き終えたセイウンスカイは開いた口が塞がらなかった。

 

「マジかよ」

「イエス」

 

セイウンスカイは無理だと呟く心の声を確かに聞いた。

同時に、無理か? と囁く疑問の声も。

見込みが薄いのは間違いない。

しかしコレほどの目標を聞いた後でも一縷の期待を捨てられなかった。

この怪鳥ならばやるかもしれない。

 

「あ、こけたら恥ずかしいからまだ内緒ネ!」

「よし、一瞬でも期待した私のワクワクを返せアホウドリ」

「コンドルデース!」

 

半眼で告げるセイウンスカイと調子の戻ったエルコンドルパサー。

 

「すると秋はこっちに来るんだ?」

「イエ~ス」

「……タイキシャトル先輩はどうするの」

「ん?」

「エルちゃんは今の所、世代で無敗のマイラーでしょ。もしこのまま次のNHKマイルカップを獲ったら、秋には打倒タイキシャトルの大将格に推されるよ……此処で路線替えたら、バカが邪推するんじゃない?」

「タイキシャトル先輩がマイルの女王なんて言われるのはこの春が最後デース」

「へぇ、なんでさ」

「うちの先輩達が倒すからネ」

「……成程、納得」

 

セイウンスカイはいつの間にか握り締めていた拳をほどく。

 

「ねぇウンス―」

「なに?」

「三冠、獲ってネ」

「……うん」

 

頷いたセイウンスカイは怪鳥に背を向けた。

友人たちはそれぞれの目標に向けて歩み始めている。

自分も立ち止まっている暇はなかった。

 

 

 

§

 

 

 

『さぁ、ウマ娘の本バ場入場です!

 

 

 

 先ずは弥生賞三着、皐月賞は二着!

 

 いざ頂点へ! 

 

 キングヘイロー!』

 

 

 

ターフに入ったキングヘイローは慣れと経験によって笑顔を作り、歓声をくれるファンに手を振った。

しかし内心ではこのレースに対する迷いが晴れない。

弥生賞ではセイウンスカイとスペシャルウィークに勝てなかった。

皐月賞では弥生賞の反省を生かして立ち回ったが、それでもセイウンスカイには届かなかった。

キングヘイローは自分が瞬発力で勝負するタイプであることを知っている。

長い距離に対応することも出来るが、練習の時計が自分の適性をはっきりと示していた。

ジュニアCクラス、クラシック三冠。

それは徐々に距離が長くなるレースである。

自分に一番高い勝機があったレースこそ、一番最初の皐月賞だったのだ。

 

「あれは……絶対に落としてはいけないレースだった……」

 

この先自分がどうなるのか。

漠然とした不安から抜け出せない。

今日のダービーは2400㍍の12ハロン。

皐月賞より400㍍長い距離。

ウマ娘にとっては400㍍など誤差に等しい距離である。

しかしこの400㍍がウマ娘を仕分ける不思議な基準。

1200のスプリント、1600のマイル、2000のチャンピオン・ディスタンス、2400のクラシック、2800のステイヤー。

普通に走れば何のことは無い400㍍という距離によって、勝てるウマ娘は全く変わる。

セイウンスカイがこの400㍍に対応できるかは分からない。

スペシャルウィークがこの400㍍に対応できるかは分からない。

それでも自分の事は分かってしまう。

恐らく、皐月賞の時ほどのパフォーマンスは出来ないだろう。

観衆の視線が無ければ震えていたかも知れない。

今ここにキングヘイローが立っているのは、逃げを許さぬ矜持である。

 

「勝てるとすれば……」

 

どんな展開があるだろうか。

キングヘイローとトレーナーはそれぞれに正反対の意見をだした。

キングヘイローが参考にしたの三冠ウマ娘の一人、ミスターシービーのレース。

恐らく短距離ウマ娘と言われながらも三つの冠をもぎ取った彼女のレースは、最後方から終盤に上がって行って全員をぶち抜く豪快な勝利だった。

どちらかと言えば自分にはこれが合っていると思う。

しかし彼女のトレーナーは別の案を出してきた。

その理由の一つが、逃げウマ娘のセイウンスカイ。

もし誰も鈴を付けずにセイウンスカイを逃がしたら直線だけでは届かないのではないか。

ミスターシービーもライバルの逃げウマ娘、カツラギエースの本格化以降は絶対的な強さのアドバンテージを失っていった。

現時点でのセイウンスカイと、キングヘイローの完成度の差。

将来的にはともかく、今日この時点では皐月賞を獲ったセイウンスカイに一歩を譲る。

それならば……

 

「先行……か」

 

 

 

 

『皐月賞の屈辱は果たせるのか!?

 

 奇跡を起こせ!

 

 スペシャルウィーク!』

 

 

 

 

東京レース場を埋め尽くす観衆。

其処から湧き上がる大声援。

スペシャルウィークはこの時、自分が世代で最も優れたウマ娘を決める場所に立った事を意識した。

 

「お母ちゃん、見てる? 見ててくれてるよね」

 

自分はこの学園へ来て、凄い人たちのチームに入った。

凄いライバル達と出会った。

勝ったレースもあれば、負けたレースもあった。

今日がどんな結果になるかはスペシャルウィークにも分からない。

当然負けるつもりはなかったが、どんなに望んで努力しても勝てない事はあった。

それでも胸を張れることが二つある。

それは自分が学園で、最も腕のいいトレーナーに見て貰えた事。

そして自分は学園で、最も強いウマ娘達に鍛え上げられた事だ。

 

「わぁ……」

 

歓声に応えるように手を振るスペシャルウィーク。

それまでもいっぱいだと思っていた歓声が更に大きく、強くなる。

これほどまでに沢山の人が応援してくれている。

そして此処には居ない人間の母が、間違いなく自分を見ていてくれる。

東条トレーナーから、今日は自分が一番人気だと聞いていた。

皐月賞では三着だったのに、それでも一番多くの人が自分に勝って欲しいと願ってくれたのだ。

誰かに夢を見せたのなら、叶える事で応えたい。

負ける事で得る強さもあった。

しかしウマ娘の可能性と未来は勝つ事によってのみ拓かれる。

自分を育ててくれた母。

自分を鍛えてくれたチーム。

自分に期待してくれたファン。

皆に報いる華が、グレートⅠの冠が欲しい。

その先に……

 

「エルちゃん……」

 

まだ戦った事のないライバルがいる。

先にNHKマイルカップを勝利した怪鳥。

ニュージーランドトロフィーと同じく、前目の好位置から誰より早い末脚で抜け出しての楽勝。

今日、此処で彼女と並ぶ。

秋も。

その先も走るために。

 

 

 

 

『皐月賞ウマ娘っ悲願の二冠へ!

 

 トリックスター!

 

 セイウンスカイ!』

 

 

 

 

飄々とターフに入ったセイウンスカイ。

両手を頭の上で組みつつ大きく一つ伸びをした。

観客に応える事も良いだろう。

しかし自分の戦いはもう、始まっている。

踏みしめた芝の感触が重い。

先日降った雨が乾いていない。

 

「稍重だっけ……」

 

バカ正直に1ハロン12秒の平均ペースを守っていたら終盤でダレる。

レコードを取りに行けるような足場ではなかった。

一つ歩くごとにターフの情報を収集してはレースプランを修正していく。

そこでやっと気づいたように観衆を見渡し、思い出したように手を振った。

タイミングを外された観客たちはそれまでとは違い、やや躊躇ったような歓声で応えた。

 

(こういう所で空気が読めてないとか言われるのかなぁ)

 

内心で苦笑したセイウンスカイ。

皐月賞を獲ったのに一番人気は持っていかれた。

多くの人に期待されるだけの何かが自分には足りなかった。

出走ウマ娘中では最高の実績で臨んでいるにもかかわらずだ。

 

「良いんだけどね、別に」

 

同じチームの先輩たるサイレンススズカから聞いたことがある。

その世代でダービーを獲ったウマ娘の言葉。

自分の全く与り知らぬ所でスズカに絡まれる因縁を作ってくれたそのウマ娘に良い感情は持っていない。

しかしその言葉は、セイウンスカイも万感をもって同意する。

 

「一番人気はいらない。一着が欲しい……」

 

それは間違いなくウマ娘達全員が胸に抱く本音だろう。

此処に立つ以上、欲しいものは一着以外にあり得ない。

二着、三着はあくまで好走であって勝利ではないのだ。

18人のウマ娘が戦って、勝つのはそのうちたった一人。

 

「ヘイローちゃんは……やや不調っと。スぺちゃんやる気満々だね……これは締めて行かないと……」

 

セイウンスカイは勝負服の胸元を軽く握る。

瞳を閉じれば何時もの光景。

黒く霞み、本来の色が分からない牧場のような場所で鮮やかに浮き上がる葦毛のナニか。

自分自身の心の中、いつもの所にいつもの相手がいる事を確認して息を吐く。

端的に言うならば、今のセイウンスカイが見て欲しい相手はこのナニかただ一頭。

 

「ほんと……なんなんだろうねあんた」

 

でも今日は機嫌が良さそうじゃないか。

私に期待しているのかい?

そのナニかが此処まではっきり見えるのは初めてだった。

 

 

 

 

『さぁ! 準備が整いました!

 

 

 

 日本ダービーのファンファーレです!』

 

 

 

奇数番号のウマ娘達がゲートに入った。

続いて偶数番号の入場が始まる。

 

 

 

『クライマックスの時が近づいてまいりました!

 

 

 

 ウマ娘の祭典!

 

 

 

 日本ダービー――

 

 

 

 

 

 今……

 

 

 

 スタートしましたっ!!』

 

 

 

§

 

 

 

スタートから前に出たセイウンスカイ。

しかし流石にマークもされていた。

12番という外枠に近い位置もあり、簡単にはハナを切れない。

五人の叩き合いになった先頭争い。

その中に緑の勝負服を見たセイウンスカイは首を傾げた。

 

(ヘイローちゃんが先行?)

 

一人、二人と控える中で最後まで前を譲らなかったのはキングヘイロー。

完全に引く気が無い事を見て取ったセイウンスカイは一度退いて後ろにつけた。

キングヘイローはペースを作って勝てるのか。

にわか仕込みで逃げ切れるほど甘い面子ではないと思う。

 

(っていうか……こういう大舞台で奇策って選ぶ子じゃなかったと思うんだけど)

 

これがトレーナーの指示だとしたら、セイウンスカイはそいつの評価をさらに下げるだろう。

スタートから先頭に立ち、すべてのウマ娘を引き連れてそのままゴール。

極まれば確かに華麗なレース。

しかし先頭を走ると言う事は凄まじい精神的、肉体的な疲労に繋がる。

先ずペース配分で誰も頼れない。

前を征くウマ娘はひたすら己の体内時計でレースを組み立てなければならないのだ。

キングヘイローも1ハロン平均の12秒で走る時計は持っているだろう。

それは此処まで来たウマ娘ならば当たり前ともいえるモノ。

ならばキングヘイローに逃げが打てるのか。

 

(……無理だね)

 

後ろからその走りを見たセイウンスカイは更に位置を下げてバ群に沈む。

徐々に遠くなるキングヘイローの背中を哀惜を込めて見送った。

戦術として逃げを選択するには膨大な下準備が必要である。

少なくともセイウンスカイはそう思う。

はっきり言えば彼女にとって、サイレンススズカ等は逃げウマ娘と認めていない。

アレは偶々足が速くて持久力のあるウマが好きなように走っているだけだ。

本当の逃げウマ娘は、先ずどのようなコンディションでも12秒を正確にカウント出来るところから始まる。

そして自分が1ハロンを何歩で走破するかを覚え込み、12秒に当てはめる事が最初の鬼門。

更にそこから20㍍単位で時計を刻み、200㍍を10分割してペースを配分。

何処かで早くしたら何処かで遅くし、最終的に12秒に揃える所が次の鬼門。

其処まで出来たら走行フォームから歩幅とテンポを調整し、11秒のハイペースも13秒のスローペースも同じ見た目で走れるように揃える。

ここまでやって初めて自分の後ろを走るウマ娘達をコントロール出来るのだ。

間違いなくキングヘイローにそこまでの下地はない。

 

(この重めのバ場で正確な12秒……それじゃダメなんだよヘイローちゃん)

 

一瞬だけ、隣で併せてやりたい気持ちが疼く。

この後二分弱の未来に待つであろう、親友の残酷な結末を変えてやりたい。

しかしそれは自分の真後ろについた視線の主が許さなかった。

セイウンスカイを完全にマークしているのはスペシャルウィーク。

スタート直後から先頭を取りに行った時。

そしてキングヘイローのハイペースにセイウンスカイが退いた時。

そのどちらもスペシャルウィークはついてきた。

自分で時計を刻みながら。

 

(っとっとっと……多分ヘイローちゃんが平均で、ウンスちゃんが少し遅い感じかな?)

 

先頭を走るキングヘイローから五バ身程の後方。

バ群の中団に据えたセイウンスカイを見るスペシャルウィーク。

自分の末脚を正確に把握し、セイウンスカイがスパートした瞬間から競り潰す。

それはセイウンスカイが逃げなかった時に選択するプランの中の一つだった。

 

(このペースならこっちの脚も残るから大丈夫。ウンスちゃんに逃げられたら捕まえられるか分からなかったけど……)

 

このまま直線勝負になればセイウンスカイより自分が早い。

皐月賞ウマ娘対策としては、自分がやり易い展開になってくれた。

しかし一つの予想外がキングヘイローの先行策。

スペシャルウィークの脳裏にリギルの選考レースの記憶がよみがえる。

 

(あの時も前に行ってた。でもアレは周りが遅すぎたから普通に走って先頭だっただけだよね。戦術で逃げてたわけじゃないと思うんだけど)

 

キングヘイローはあの時と同じように走っているのだろうか。

あの時よりも長い距離、重いターフで。

 

(いや、無理でしょこれ)

 

 

 

『先頭はキングヘイロー!

 

 今1000㍍の標識を通過しました!

 

 通過タイムは60秒程っ

 

 平均ペースになりました!』

 

 

 

それは距離とバ場を考慮すれば早めのペースと言えた。

其処から一秒弱遅れたセイウンスカイの位置が本来の平均。

前にいるウマ娘は最後に苦しくなるだろう。

セイウンスカイは此処で一気にペースを上げた。

バ群の中から徐々に順位を上げていくセイウンスカイ。

それを逃がさずについていくスペシャルウィーク。

6ハロン1200㍍程の位置で先頭が入れ替わった。

レースが一つ動くたびに東京レース場を大歓声が包み込む。

それはターフを走るウマ娘達、一人一人の悲喜交々を呑み込むうねりとなる。

 

(来たねぇスぺちゃん!)

(逃がさないよウンスちゃん!)

 

レース中盤で先頭に立ったセイウンスカイ。

それをぴったりマークするスペシャルウィーク。

しかもただのマークではない。

セイウンスカイの視界に入りつつ、外から被さるように圧力をかけてくる。

それは逃げウマ娘には非常に辛い展開であった。

振り切るためには更にペースを上げるしかない。

 

(スぺちゃんやるなぁ)

 

セイウンスカイは皐月賞の様に坂を利してみようとするが、スペシャルウィークはしっかりとついてきた。

こうしてセイウンスカイの後ろを走っていると、スペシャルウィークには彼女が苦しんでいる事が良く分かる。

ピッチもストライドも限界まで伸ばしている風であるが、スペシャルウィークにはまだ余力があった。

最終4コーナーを回った直線で、その余力を切ってスパートすればセイウンスカイを差し切れる。

そう思った。

 

(ん?)

 

違和感に気づいたのは最終コーナーの中ほど。

セイウンスカイとスペシャルウィークが最後の直線に向けて息を入れた時。

スペシャルウィークは予想外の近距離でバ蹄の音を後ろから聞いた。

 

(嘘っ!? 近すぎ……)

 

セイウンスカイは自分に競られて必死に逃げていた筈だった。

ハイペースになっていなければおかしいのだ。

後続との距離は開いている……そう思っていた。

 

(それが……こんなに近いって事は……)

 

セイウンスカイはペースが……

 

(上がってないっ!?)

 

競りかけていたのはスペシャルウィークだった。

セイウンスカイはピッチを上げて、上り坂でもストライドを限界まで伸ばして駆け上がっているように見えた。

間違いなくウマ娘が全力疾走する時の特徴が走りの中にあったのだ。

それでもペースを狂わされた。

自分が今どんなペースで走っているのか一瞬分からなくなる。

足元の感触が怪しい。

せり上がってくる浮遊感。

それは嘔吐感に変わって胃液を押し上げてくる。

 

(歩幅はそんなに伸ばしてないんだよねー。登りの傾斜分だけ早く地面に足がつくから。でも必死に見えたでしょ?)

 

セイウンスカイはそれまで真っすぐ背中を射抜いていた視線がぶれた事を感じた。

間髪入れずにスパートをかける。

最終コーナーの出口から勢いよく飛び出したセイウンスカイ。

その末脚を削れないまま距離を稼がれてしまったスペシャルウィーク。

仕掛けのタイミングも完全に外された。

スペシャルウィークの脚も残っているが、それは当たり前だろう。

早く走っていなかったのだから。

 

 

 

『先頭はセイウンスカイ!

 

 最終コーナーを回って直線を向いた! 

 

 リード1バ身を追走するスペシャルウィーク!

 

 スペシャルウィークは少し苦しいか!?

 

 此処で外に持ち出した!』

 

 

 

 

チームスピカのトレーナーはセイウンスカイのレースに喝采を送る。

キングヘイローの先行は予想外だったに違いない。

しっかり我慢して中盤で捉えたが、其処からもスペシャルウィークには散々競られて厳しかった筈だ。

それでも自分のペースを守り抜いた。

辛いレース展開に耐え忍んだ成功報酬は健在の末脚。

彼がトレーニングの中でセイウンスカイに仕込んだ事。

時計を捨てて全力で駆け抜けるラスト2ハロンに、11秒台が二つ並ぶ。

必勝の展開だった。

しかし第4コーナーを周って自分から外に出したスペシャルウィークの姿に背筋が粟立つ。

 

(怪我になるから頼るなよ……そう言っていましたっけ。勿論忘れていません……だけど私っ)

 

それでも教えてくれたと言う事は、使う事もあると知っていた筈である。

スペシャルウィークの重心が低く低く沈み込む。

地を這う様な独特のフォーム

其処から繰り出す力強い脚。

 

「勝ちたいんですっ。今、此処でぇ!」

 

多くの者が既視感を感じた。

何処で見たのか。

最初に気づいたのはチームリギルのトレーナー。

それは彼女の誇りの一つ。

勝ちと負けを繰り返し、傷だらけの手で三冠を獲ったウマ娘の姿。

外に持ち出した分、セイウンスカイとの差は開いた。

後ろから迫って来たウマ娘にも並ばれた。

しかし今この時、スペシャルウィークの進路はゴールまで何もない。

 

 

 

 

 

『先頭セイウンスカイのまま残り400を切った!

 

 二番手争いは混戦!

 

 誰が抜け出すか!?

 

 セイウンスカイが逃げ切るか――

 

 

 

 

 バ群を割ってスペシャルウィーク!

 

 もう一度伸びて来た! 凄い足! 

 

 先頭セイウンスカイ! リード2バ身!

 スペシャルウィーク届くか!?

 

 スペシャルウィークが襲い掛かる!

 しかしセイウンスカイも譲らない!

 

 前二人! 前二人の勝負になった!?

 

 

 

 

 

 

 先頭セイウンスカイのまま残り200㍍!

 

 

 スペシャルウィーク並んだか!?

 

 

 後続のウマ娘は伸びが苦しいっ

 

 

 内セイウンスカイ!

 外スペシャルウィーク!

 内と外の叩き合い!

 

 

 セイウンスカイの二冠か! スペシャルウィークの戴冠か!

 

 

 

 

 

 両者全く並んだままあと100㍍!

 

 スペシャルウィークが前に出たか!?

 セイウンスカイ苦しい!

 しかしまだ粘っているっ

 

 

 

 しかし勢いはスペシャルウィークか!

 

 

 

 スペシャルウィーク!

 

 

 

 スペシャルウィーク!

 

 

 

 スペシャルウィーーーーーク!!

 

 

 

 

 身体半分差し切って今っ ゴールイン!!!!

 

 

 

 

 やりましたぁああああああああああああああ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

「ウンスぅ……負けてるジャーン……」

 

死闘の結末を見届けた怪鳥は、自分の声を他人事のように聞いた。

大歓声にあてられた聴覚が怪しい。

しかし視覚ははっきりと眼下の光景を脳裏に焼き付けてくる。

 

「スゲー……」

 

足が震えたまま立位が保てず、救護車で運ばれるスペシャルウィーク。

二着のセイウンスカイも跛行している。

この様子ではウイニングライブは無理だろう。

限界を超えてレースに臨んだウマ娘が、何らかのトラブルでライブが出来ないという例は割とある。

今日は三位以下の面子で強行しても観客は納得しない。

これはそういうレースだった。

 

「……」

 

エルコンドルパサーは疲れ切った両雄から視線を切る。

そしてもう一人、主役になれなかった同志を探す。

先行失敗から脱落しての14着敗退。

本日二番人気に支持されていたキングヘイロー。

地下道へ引き上げていくその姿は決して俯いてはいない。

しかし、肩は落としていた。

痛ましいその背中を見送るエルコンドルパサー。

其処へ声をかけるモノがあった。

 

「エル」

「……スぺちゃんは良いんデース?」

「トレーナーさんが付き添っていますから」

 

エルコンドルパサーはキングヘイローの姿が見えなくなるまで動かない。

グラスワンダーは地下道入り口をじっと見つめる親友を待った。

やがて小さな吐息と共に怪鳥の時間が戻って来る。

いつの間にか全身に張っていた力を抜いたエルコンドルパサー。

 

「……スぺちゃん凄かったネ~」

「……セイウンスカイちゃんも、強かったです」

「ヘイローちゃんは残念だったネ」

「本当にそうですね」

「それで、グラスは……辛くない?」

「……今のスぺちゃんを見るのは……辛いかな」

「そっか」

 

隣り合って並びながらターフを見つめるエルコンドルパサーとグラスワンダー。

 

「エルは……」

「んー?」

「今日のレースに出ていたら、勝てました?」

「そりゃ、ぶっちぎりデース!」

「そっかぁ」

「グラスは?」

「控えめに五バ身くらいじゃないですかね?」

「あは! そりゃ、景気良いデースネ」

 

大口で殴り合う二人のウマ娘。

関係者席だからこそ許される事だ。

もしこのレースを見たファンの中で言ったらタコ殴りにされるだろう。

スペシャルウィークとセイウンスカイが鎬を削ったこの春は、人々の心に鮮やかに焼き付いた筈だ。

其処に混ざれなかったことが、少しだけ悔しかった。

 

「ねぇグラス」

「はい」

「秋は、一緒に走ろうね」

「ええ、走りましょう」

 

この日、一つの時代のダービーウマ娘が決まった。

それは北海道の片隅からやって来た転入生。

クラシックの直前に学園に飛び込み、そのまま世代の先頭に立ったスペシャルウィーク。

しかしそれでも、スペシャルウィークを日本一のウマ娘だと考える者は少ない。

スペシャルウィークが未だ知らない、シニアクラスの実力者達。

彼女の、そしてこの世代の真価が問われるのは、シニアクラスとの戦いが始まる秋以降の事である。

 

 

 

 




最終回の心算で書きました

誰が何と言おうとこの作品は何時更新が途絶えてもおかしくない短編な訳ですが、一つの世界観の中で長く続ける事で書き手が味わえる楽しみもあります
それは此処まで埋めて来た伏線同士が殴り合う展開
この瞬間を味わうために続けて来た部分はありました
今回のスぺちゃんVSウンスちゃんは書いてて楽しかったです
もう本当にこれが最終回でいいのではないでしょうか
実はこの時点で主人公兼ラスボスの怪鳥の公式戦が全てカットされているような気もしますけどアニメでもそういうのいっぱいあったしさ……
正直燃え尽きてます
安田記念? シラナイコデスネ・・・・・

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