正直、評価までしてもらえるとは思いませんでした。
「束ちゃん!」
「今調べてます!」
「エリカ様! 束様!」
「西園寺! 状況は!?」
「こちらもまだ把握できておりません!」
ニュースを見た束は持っていた小型端末を使って何が起きたのか確認し始めた。同時に店内の隠しエレベーターで地下に降り他のメンバーと合流する。
「わかりました!」
「本当!?」
「原因は各地の急進派です! 彼らがミサイルの発射を行ったみたいです!」
「急進派が……! いったい何を考えているの!?」
急進派――『ガーディアン』の中でも過激な思想を持つ一派であり、その思想とは一言で言うなら「地球の支配者になり地球人を導く」だ。『ガーディアン』や『大銀河連邦』の持つ技術と地球の技術には隔絶した差があり、それ故に自分達が上に立つ事で技術の発展を推し進めるための思想であったが、過激な思想故に完全に地球人を見下している者が多数存在する。
一方、束が協力しているのは穏健派、地球の発展を見守るという不干渉を貫くもので未開惑星の環境保護を唱える『ガーディアン』としてはそちらが主な思想となっている。だが地球には大昔から宇宙人が何人も住み着いており、御伽話や神話の類に出てくる人物が実は宇宙人でありその子孫が超能力に目覚める事態が発生しているため早期の公表も必要なのではと考えられている。
閑話休題
「仕方がないわ。航宙船を戦闘モードにして出撃しましょう」
ミサイルが急進派の仕業だと判明した穏健派のメンバーの行動は早かった。即座に宇宙船を起動させる準備を始めていた。
「ちょっと待ってください! そんな事をしたら世間に『ガーディアン』の、宇宙人の存在を表に出すことになりますよ!?」
「……これが急進派のやった事なら同じ『ガーディアン』である私達が責任取らないとね」
「でも!」
「今はこれしか手段が無いわ」
エリカの言葉に束は悔しそうに俯く事しかできなかった。他に手段がないのが分かっているからだ。2000発以上のミサイルを短時間で迎撃する技術など今の日本に、いや地球には無い。しかもこの事件には急進派も関わっている。こうなっては『ガーディアン』の存在を隠し続ける訳にはいかないだろう。
「全員出撃準備――」
「待ってください!」
「――!? 何事!?」
「何者かがミサイルを迎撃しています!」
「え!?」
「ちょっと映像見せて!」
状況確認を行っていたメンバーの言葉に束はすぐに近くの端末を使いモニターに外の様子を表示する。
「嘘……!」
「あれは束ちゃんが作った白騎士!?」
そこに写っていたのはミサイルを手に持った剣で斬り落としていく最初のIS、白騎士の姿だった。
「いったい誰が!? それに白騎士は束ちゃんが管理しているはずじゃ――」
「た、多分ちーちゃんです! 私のラボの場所知っているのは他にいないはずなので!」
「なんで白騎士に乗っているの!?」
「わかりません! セキュリティもロックも設定してきましたから乗れないはず――」
そこまで考えて束は気づいた。白騎士のコアの性格なら千冬を乗せると。白騎士は名前の通り物語に出てくる騎士の様な性格をしている。もし白騎士が現在の状況を知れば人を守るために迷いなくロックを解除して千冬を乗せるだろう。千冬の方も恐らく白騎士の存在を知っていたのでニュースを見た後、たった一人の家族である一夏を守るために束のラボに向かったと予測できた。
「……いや、だとしてもどうやってラボに? あ、ちーちゃんなら力尽くでどうにかできるか……。でも白騎士を使うなら私に連絡が有るはず……うん、連絡は来てない。さすがにちーちゃんも私に無許可で白騎士を使うとは思えないし――」
「束ちゃん?」
束は拭い切れない違和感を覚えて独り言を口にしながら思考し続ける。見逃してしまうと厄介な事になる。そう感じたからだ。
「報告します!」
「何!?」
「ミサイルの数がニュースと違います!」
「あれだけの数なら誤差も出るわよ!」
「それが、ニュースで公表された数の半分もありません!」
「はぁ!? という事は情報操作されてるってこと!?」
「それだけではなく全てのミサイルが白騎士に向かって方向を変えています」
「……変えている。つまりさっきまでは違う方向だった、と」
「日本に向かっているのは変わりありませんが、明らかに方向を変えているものが見られました」
エリカがメンバーと状況確認を行っているのを同時に聞き束はある結論を出す。――狙いは白騎士、いやISだ。ISをどういう目的で狙っているのかまではわからないが束はそう結論付けた。
「エリカさん! 私はラボの方を確認してきます!」
「束ちゃん!? どういう事!?」
「私の想像でしかないのでなんとも……! ただ確認してくるだけですので!」
「ちょっと待ちなさ――」
エリカの言葉を最後まで聞かず束は外に飛び出した。
外はミサイルに怯える人達でごった返していた。束は自身の超人的な身体能力を駆使して人混みを避けつつラボへと向かった。
ラボの入り口は無理矢理こじ開けられたのか、問題なく通れるようにはなっているがボロボロだった。それを見て束は「ちーちゃんが無理に開けたな」と考え気にしない事にした。
束が内部に入ってすぐに目に映ったのは自身がISの設計に使っていたパソコンとモニターが稼働しており、何者かがキーボードを使い作業している光景だった。
「誰かな~束さんのパソコンを勝手に使っているのは~?」
束は最大限に警戒しながら声をかけた。エリカと出会う前の自分の理解者はいないと捻くれていた時の話し方で。
「そんなの決まっているでしょ~?」
相手の返事を聞き束は固まった。その話し方に、その声に驚いて。
「これを扱えるのはこの世でただ一人――」
椅子の背もたれが影になっていて気づかなかったが、立ち上がったその人物は頭にウサ耳を模した機械を、服は不思議の国のアリスを彷彿とさせるワンピースを身に着けている。
そして目の前の誰かは束の方に顔を向けた。
「大天才の束さんだけだよー」
もう一人の篠ノ之束がそこにいた。
元ネタは軽いノリで進んでいくのに私が書くとシリアスになるのはなぜなのか……。