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西暦2307年。
化石燃料は枯渇したが、人類はそれに代わる新たなエネルギーを手に入れていた。3本の巨大な軌道エレベーターと、それに伴う大規模な太陽光発電システム。しかし、このシステムの恩恵を得られるのは、一部の大国とその同盟国だけだった。
3つの軌道エレベーターを所有する3つの超大国群。アメリカ合衆国を中心とした『ユニオン』。中国、ロシア、インドを中心とした『人類革新連盟』。ヨーロッパを中心とした『AEU』。各超大国群は己の威信と繁栄のため、大いなるゼロサム・ゲームを続ける。そう、24世紀になっても、人類は未だ一つになりきれずにいたのだ……。
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その日、ユニオン軍の技術者である『アルフォンス・クレンズ』は頭を抱えていた。なんでも、近々AEUが新型のモビルスーツをお披露目するらしいという情報が耳に入ったからである。
「やあ、どうしたんだい?そんなに頭を抱えて」
「ビリーか、いや、なんでもないんだ」
部屋に入ってきた、長年の付き合いである同じくユニオン軍の技術者『ビリー・カタギリ』が見かねた様子で声をかけてきた。アルフォンスはひとしきり頭をかいた後に一通の招待状をビリーに見せる。
「なんだ、君にも来ていたのかい」
ビリーはそう言いながらアルフォンスが貰ったものと全く一緒の招待状を取り出した。どうやら、彼にも招待状が来ていたらしい。
「カタギリ、明日の出発についてだが……と、クレンズ、君にも招待状が来たようだな」
遅れて入ってきたのはユニオンきってのエースパイロットである『グラハム・エーカー』だ。彼にも招待状が来ていたようで、アルフォンスはますます頭を抱えるのだった。
「君たち2人が揃うとろくなことにならないからね……」
ユニオン軍が発足して、新型モビルスーツである『フラッグ』の開発に携わったアルフォンスとビリー。そして、その機体のテストパイロットだったグラハム。この3人が仲良くならない訳ではなく、暴走気味のグラハムを宥める役割のビリーとアルフォンスである。
ため息をつきながら明日の出発のための準備をするアルフォンス。だが、このお披露目の機会が、グラハムとビリー。そしてアルフォンスの運命を変えるということには誰も気づかなかった。
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無事に出発できた3人はお披露目当日、会場であるAEUの軌道エレベーターに到着していた。目の前ではAEUの新型である『イナクト』が次々と現れる的を撃っていた。
「まったく……このようなお披露目だとはな。それにどことなくフラッグを真似ているようだな」
「無理もないよグラハム。なんせ、ユニオンのフラッグは最先端だからね。こんなのは猿真似にしか過ぎないよ」
「まぁ……性能的には近づけただけでそこまでは高くなさそうだがな」
「おい!そこ!聞こえてんぞ!」
三者三様の意見を述べるとイナクトのパイロットの声がスピーカー越しに聞こえてきた。
「どうやら、集音能力は高いみたいだ」
「みたいだね」
すると、双眼鏡を覗いていたアルフォンスが上空から接近する一機の機影を確認した。
「ん?カタギリ、新型は一機だけだよな?」
「そうだけど、どうしたんだい?」
「……あれを見てみろ」
グラハムの示す方向に目を向けると軌道エレベーター沿いに何かが降りて来ているのが見える。遠目から見てもその物体は四肢がありまるで人のようだ。
「あんな人型に再現出来る……そんなものは……」
アルフォンスはボソッと呟きその言葉に頷くようにビリーが言葉を紡ぐ。
「間違いないよ、AEUや人革連の兵器じゃない……」
そして地面に着地した物体はゆっくりとイナクトの方を向く。
「おい!そこのお前!ユニオンか?人革連か?どっちにしたって人様の領土に勝手に入ってきてるんだ、ただじゃ済むわけないよな!」
イナクトのパイロットはソニックブレイドを選択し、抜き放つ。その振動は観客席にも響き、アルフォンスたちは苦悶の表情を浮かべる。だがイナクトのパイロットは意に返すことなくソニックブレイドを突き出す。次の瞬間、所属不明機は右腕に装備していた剣を展開し、逆袈裟に振るう。
わずか一瞬のうちにイナクトの右腕が切り飛ばされ地面に落下する。あまりにも華麗な一撃に誰も声を上げることが出来ずに呆然としてしまった。所属不明機は肩口から何かを抜きもう片方の腕も切り飛ばす。
「なっ!ビームサーベルだと!?」
現代の科学力では実現不可能と言わているビームサーベルでイナクトの腕を切り飛ばしたのだった。
「俺は!」
剣が閃き、イナクトの頭部が切り裂かれる。
「スペシャルで!」
次は左足を。
「二千回で!」
そして、次は右足を。
「模擬戦なんだよぉ!!」
最後に胴体を切り飛ばされてイナクトはバラバラに地面に落ちるのだった。
「……失礼!」
グラハムはいち早く復活し、高官の人から双眼鏡を拝借するとその機体をじーっと観察する。
「……ガンダム……」
「ガンダム?」
「ああ、奴の機体の額に書かれている名前だよ」
アルフォンスはその名前を聞いてほんの少しだけ笑みを浮かべるのだった。
「……ガンダム……か」
それは後の人生を大きく変えるターニングポイントとなったのだった。
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そしてこの日、全世界に対して戦争根絶を目的とした私設武装組織『ソレスタルビーイング』が武力介入を開始した。
『地球で生まれ育った、全ての人類に報告させて頂きます。私達は、ソレスタルビーイング。機動兵器「ガンダム」を所有する、私設武装組織です。
私達、ソレスタルビーイングの活動目的は、この世界から戦争行為を根絶することにあります。
私達は自らの利益のために行動はしません。
戦争根絶という大きな目的のために、私達は立ち上がったのです。
只今を以って、全ての人類に向けて宣言します。
領土・宗教・エネルギー、どのような理由があろうとも、私達は全ての戦争行為に対して、武力による介入を開始します』
ソレスタルビーイングの代表者であろう『イオリア・シュヘンベルグ』の演説は全世界の人々に対し、様々な感情を抱かせるのだった。
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「ははは!紛争根絶を掲げる組織が武力を振るうなど、とんだ矛盾もあったものだ!」
記念式典の会場から移動する途中の車内で、グラハムが笑っていた。ビリーはさっきの『ガンダム』という機体のことを推測、判断しているがあまり芳しくないようだ。
「でも……彼らは我々以上の技術力を有しているということだね」
「そうだな、ふっ……興味を抱くよ」
グラハムの目は恋にこがれた少年のような好奇心を浮かべていた。
「どうやら、お迎えのようだ」
正面から1台の車がこちらに近づき停止する。中からはユニオンの軍服を着た兵士が降りてきた。
「グラハム・エーカー中尉、ビリー・カタギリ技術顧問、アルフォンス・グレンズ技術少尉、MSWADへの帰投命令が降りました」
「了解した、その旨を良しとする」
こうして、彼らはユニオンへと召喚され新たな指示を受けることになったのだ。