オリジナル展開ってどこまでが通用するのか難しいところですね。
「それにしても……本国は余程ガンダムのことを気にかけているみたいだね」
あの後、ヨーロッパのホテルに戻り1泊した後にMSWADへ戻る日程になり、彼らはホテルでゆっくり休むことになった。ビリーとアルフォンスはそれぞれの見方から解析をしようとし、グラハムは日課の筋トレを行っていた。
「こんなに早く新設の部隊ができるとはな」
既に移動のあいだに内示が出て、新設部隊への異動が決まっていた。それだけではなく所属させる人員も選べるという特殊事情である。
「これで成果を上げられなかったら笑いものだな」
アルフォンスはため息混じりにそう呟く。その不安を振り払うようにグラハムが豪快に笑い飛ばした。
「ふははは!このグラハム・エーカーがいるのだ、負けるはずはなかろう」
「……随分と自信があるんだね」
ビリーは呆れたようにグラハムに言うがそこには笑みが浮かんでいた。
そして、夜が更け彼らはMSWADへの帰投の途中にガンダムと遭遇するのだった。
「……ん?正面の方向に機影を見つけたよ?」
「こんな空域に……誰だ?」
グラハムはすぐにパイロットスーツに着替える。
「ビリー、フラッグを出す」
「この状況でかい?」
「実際に相対して見ないとわからないこともあるのでね!」
そう言うとすぐに輸送機のコンテナへと向かっていった。
「……君はいいのかい?」
「ふっ、俺はグラハムほどのテクニックはないしな。おまけに積んでるフラッグは1機だけだ」
アルフォンスは苦笑いを浮かべながら出撃するグラハムを見届けるのだった。
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「さぁ、君の力を見せてもらおうか……!ガンダム!」
グラハムは飛行形態でガンダムに接近していき小手調べでリニアライフルを撃つ。相手のガンダムは鋭い軌道で易々と避けるあまりか、右手に装備した剣を展開しフラッグへと振りかぶる。
「そう来るか!ならば人呼んで、グラハムスペシャル!」
グラハムはその剣に応戦するために無理やり空中で変形し機体の空気抵抗を増やして減速する。ガンダムはその挙動に驚いたのか一瞬だけ動きに迷いが出てしまった。
「これでどうだ!」
剣を振りかぶった後のガンダムに対し、ソニックブレイドを抜きガンダムへと迫る。だが、ガンダムはその振りかぶった勢いを利用して機体を回転させると反対側の肩からビームサーベルを抜き、フラッグの右腕を切り裂こうとする。
「ビームサーベルだと!?」
想像していなかった武器に迷いが生じ回避運動が遅れたせいでフラッグのライフルが切り裂かれてしまった。
「しまった……!ここは引くしかあるまいか……!」
これ以上の追撃は無意味と判断したグラハムは機体を反転させると飛行形態へ変形させ輸送機へと戻っていく。その後ろ姿を見届けることなくガンダムはその場を去っていくのだった。
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帰ってきたグラハムを見てアルフォンスとビリーは驚いた表情を浮かべていた。
「まさか……新型の機体と戦ってこれだけの損害で済むとは……」
「やはり、グラハムはすごいね」
そして輸送機に無事着艦したグラハムは少しばかり落ち込んだ様子でブリッジに上がってきた。
「ライフルを失ってしまった……始末書ものだな」
「いや、これだけのデータはフラッグを1機落としてもお釣りが来るよ。この塗料の追跡をすれば分かることもあるだろうしね」
「そうか……それにしてもガンダムのパイロットは若いな」
「……まさか話したのかい?」
「いやいや、動きが真っ直ぐだったからな」
グラハムはガンダムへの興味をより深めたようでいよいよ、手につけられなくなってきそうだった。
「そうだな、そしてあの時にどうしてレーダーが使えなくなったのかの理論もおおよそ掴めた」
アルフォンスは今回の戦いでどのような特性があるのかをほとんど知ることが出来ていた。
「おそらくは背面から出ている特殊な光が原因でレーダーに障害が発生するのだろう……そして、ガンダムがビームサーベルを持っている理由。これもあの光の応用だとすれば説明できるしな」
「なるほど、君の理論は理にかなってるね」
アルフォンスの説明にビリーは頷く一方グラハムは既に聞く耳を持っていなかった。
「……グラハム、興味無いのは分かるけどちょっとぐらい聞いてくれよ……」
「そういう難しい話は私の性分ではないのでね」
「やれやれ……」
アルフォンスは肩を竦めながら今回わかったことを端末へと纏め始めるのだった。
しばらくして無事に司令部へとたどり着くと真っ先に司令室に通された。
「よく来たな、今回君たちには『対ガンダム調査隊』と言う新設の部隊に君たちを配属しようと思ってな。内示にも示したように、人員、兵器、なんでも優遇しよう」
「その代わり、ガンダムを鹵獲しろ……ということですね?」
「ああ、本国はこの件を重く見てるようでな」
「分かりました」
「うむ、それと……アルフォンス君、君は残ってくれたまえ」
「はっ、かしこまりました」
基地司令の指示を受け先に退出するグラハムとビリーを見送り、アルフォンスは司令の前で気をつけの状態で待機する。
「アルフォンス技術少尉、君には対ガンダム調査隊ではなく違うものに配属だ」
「……といいますと?」
「まさか私が君の家系のことを知らないとでも思っているのかね?」
「…………なるほど、そういうことですか」
アルフォンスは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべ司令を見る。
「君にはある程度自由な権利を与える代わりに、ユニオンでガンダムと同等、あるいはそれ以上の機体を作り上げることをしてもらう。その為には、テスト運用も構わん」
「体のいい駒ってことですか?」
「いいや、君には期待しているということだよ」
そして、司令から退出を促されるとそのまま部屋を出て自分の部屋へと向かう。中に入ると携帯端末を開きとある連絡先へと電話をかける。
「……もしもし、私だ。ああ……予定通りに事は進んでいる。……そうだな、これからが勝負だな……」
そして電話を切ると服を着替えて車のキーを取り足早に部屋を出るのだった。
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部屋を出たアルフォンスは寄り道せずに自分の家へと向かう。幸いなことに帰宅ラッシュなどに巻き込まれることなくスムーズに到着した彼は車を停めると地下へと足を向ける。
個人の家に置くにはもったいないほどのエレベーターを用いて地下へと行き奥にあるシャッターを開ける。すると、そこには一体の巨大なモビルスーツが鎮座していた。
「……ガンダムフラウロス……お前の出番が来たぞ」
そこに眠るガンダムは出陣のときを今か今かと待ち構えていたのだった。