ソレスタルビーイングが武力介入を開始してから世界各地の戦闘は目に見えて減っていた。だが、それは世界から戦いが消えているのではなく、ひとつの敵に対して協力するという方向に移ったからであった。
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「おお!ついに完成したか!」
「ああ、君専用のフラッグだよ」
ユニオンの格納庫で歓喜の声をあげるグラハムと微笑みながら解説をするビリーが並んでいた。
「やれやれ……とりあえずこのフラッグはアイリス社特製の試作ライフルを装備してるからね。ガンダムの装甲に傷をつけるぐらいの威力はあるはずだよ」
「それに……出力も上がっているみたいではないか」
「まぁね、アルフォンスの提供してくれたガンダムのデータもフィードバックしてるからね、この前よりは戦えるはずだよ」
このフラッグの開発にはアルフォンスも関わり、対ガンダムの機体として要求されるスペックは満たしているもののそれでもまだ遠い目標である。
「俺のガンダムのデータを持ってしても、彼らのガンダムと互角かそれよりも下にはなるだろう」
「アルフォンス、君は随分辛辣だな」
「事実だしな、だが……これで奴らが全く敵わない敵ではなくなったわけだ」
こうしてユニオンは対ガンダム調査隊を新設し、その部隊にはガンダムとまともに戦えるような性能のフラッグが続々と配備されることになるのだった。
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「なに?人革連が宇宙でガンダムと交戦しただと?」
フラウロスの整備をしながら入ってきた情報にアルフォンスは聞き返した。
「そうか……結局人革連はダメだったのか」
「そうみたいだね。これで人革連とユニオンは距離が縮まるわけだね」
「……まったく、嫌な世界だな」
アルフォンスはため息をつきながら機体を整備する。
「そうは言ってるけど、君だってその機体の整備を楽しそうにしてるよね?」
ビリーはため息混じりにアルフォンスへ向けて言う。
「まぁな、この機体を使うことは確実だしな。整備しておくことに間違いはないさ」
そしてしばらくして前回の戦闘で見つかった問題点を解決するためのアイデアも取り込んで機体を改良するのだった。
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「まさかガンダムにこうまでしてやられるとは……」
人革連の司令室でロシアの荒熊こと『セルゲイ・スミルノフ』中佐は頭を抱えていた。先のガンダム鹵獲作戦にて、機体を確保する1歩手前まではいったものの、みすみすと逃げられてしまい作戦は大失敗に終わったのだった。
「君の責任がないというわけではないが、やはり我々は奴らの力を見くびっていたようだ」
総司令官であるキム中将は慰めるように言葉をかけるがスミルノフ中佐は納得しておらず苦虫をかみ潰したような顔を浮かべていた。
「次の機会があれば必ず仕留めます」
「そうだな……その前に、我々人革連としては独力でのガンダムの確保は困難だという結論に至り、ユニオンとの合流を極秘裏に行おうと考えている」
「なんと……ユニオンとでありますか……」
数世紀に渡ってユニオンと人革連はあまり友好的ではなく、どちらかというと旧世代の冷戦に似たような状況ではあった。
「……こうも世界が変革していくとなると複雑なものがありますね」
「それが奴らの狙いだと思うが、我々はそうしなければ行けない所まで来てしまったようだ」
人革連がユニオンとの合流をすることになり、世界は次第に統一されていこうとしていた。
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「そうか……人革連はついに合流することに……」
グラハムからの電話で事の次第を理解したアルフォンスは深いため息をつく。
「どうした?君がそんな風に溜息をつくのは珍しいな」
「いや……これからはガンダムと世界の戦いかと思うとな」
いくら家系がガンダムと関係していたからとはいえ今のソレスタルビーイングには何の感情も抱いてはいないが、それでも少しばかりは気にする部分もあるわけで、複雑な気持ちが胸の中で渦巻いていた。
「ところで話は変わるのだが……来月に大規模合同軍事演習があるのは知っているか?」
「いや、初耳だが……」
「そうか……その軍事演習なんだが、実情は3国合同でソレスタルビーイングを叩くらしい」
「……そういうことか」
「ああ、そして我々は恐らく主力として作戦に参加することになるだろう」
アルフォンスのガンダムとグラハムのフラッグがこの作戦の戦力の中で最も高いであろうことは容易に想定できる。そのため、敵を消耗させた後に本隊が攻撃をするというわかりやすい作戦が取られる。
「分かった、それまでには完璧に調整しておくさ」
その後、少しだけ世間話をして電話を切るとアルフォンスはガンダムのところへと向かう。格納庫に着くと慌ただしくフラッグの調整をしている整備員達がよく見えた。
「これから先、何が起きるか分からないが……今はできる限りの事はしておくさ」
1人そう呟くと整備員に混じって機体のチューンを始めるのだった。
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そして、三国合同軍事演習当日になった。どの国も既に作戦の目標であるガンダムの撃破、あるいは鹵獲に向けて準備を開始している頃だろう。アルフォンスもまた、同様に機体の最終調整を行っていた。
「受け持ち区画にガンダムが入ってくるまで戦闘ができないのに精が出るね」
「そうか?いつ彼らが入ってくるのか分からない以上、備えておくことに越したことはないさ」
するとその横ではグラハムがソワソワしていた。
「……どうやら君以外にも待ちきれない人がいるみたいだね」
「むっ、それはどういうことだ?」
「……やれやれ、分かってないのは本人だけかい……」
ビリーは2人を見ながらため息をつくものの喜んで整備を手伝うのだった。
しばらく時が経ち、演習区画内にテロリストと思われる機体が出現した。どうやら狙いは原子力発電所のようだ。
「この状況でよくやるよ」
「そうだな……だが、この状況ではソレスタルビーイングも動かざるを得まい」
すると案の定一部地域でのレーダー反応が消失するのを確認することが出来た。
「ビンゴだ、彼らが来たぞ」
瞬く間にテロリストの機体を撃破した彼らはすぐさま戦域を離脱しようとするがその前に人革連の物量による砲撃を受けて釘付けにされてしまった。
「ここからが本番だな」
アルフォンスとグラハムは立案された作戦通りに出撃するために待機をする。
その後はしばらく戦闘が続き既に時刻は深夜を回っていた。ソレスタルビーイングの面々は疲労困憊になっておりまともに食事すら取れない状況だろう。
「では出撃するぞ!」
MSWADの面々がグラハムに続いて出撃する中でアルフォンスもガンダムに乗って待機をする。
「アルフォンス少尉、出撃準備完了です」
「了解した、アルフォンス・クレンズ出撃する」
ガンダムフラウロスを飛行形態に変形させると真っ直ぐにガンダムの所へと向かうのだった。