今日はもう日も暮れたのでグラドの所に泊めて貰い、明日の朝に出発する事にした。
幸い馬車が来るのは二日後なので途中で狩りをしていかなければ余裕で間に合う計算だ。
「ほれほれ~!ベッドは無いが干し草敷き詰めてあるからフカフカじゃぞ!」
「グラドが集めたの?」
「そうじゃぞ、近くの農家からかっぱらってきた!」
「……農家の人が受けてた被害って」
「?」
例の銀狼の被害の中に何故か干し草が荒らされてたってあったけどお前だったのか。
「なぁなぁエリス、そなたの使ってる仮面魔術って何なのだ?」
「え、何で知ってるの?」
ギルドの知り合いにも話してないハズなんだけど……?
「いやなに、我クラスになると
「…………そうなんだ」
あいつと似たような事出来る魔法もあったんだ。
嫌だな、変にトラウマが残ってるから。
………もしかしたらギルドの人でもグラドみたいに実力のある人は私の魔術に気付いてたのかもしれないのか。
隠す理由……はあると言えばある。
魔法は方法を知って、それを扱う才能が有れば誰でも使うことが出来るのだが、魔術は別である。
その術を知るのは魔術使用者だけであり、使えるのはその個人だけだ。
そのお陰で殺されずに私が生き残ったのもあるので仮面魔術には感謝しているのだが、下手に大勢に知られて研究対象にされるのは真っ平ごめんだ。
「グラド、私が魔術使えるのは黙ってて欲しいんだけど」
「む?そなたがそう言うなら他人には黙っておこう」
まぁ仮面魔術の内容自体はそう変哲もないものなのでグラドには寝る準備をしながら話して伝えた。
その説明の最中、私の仮面コレクションについて話していると、不意にグラドが私の話を遮って質問してきた。
「なぁ、その仮面魔術は使ってて副作用等はないのか?」
「ないはずだけど……何か分かる?解析魔法で」
「いや、解析魔法で分かるのは対象の持っている技能や状態を読み取るだけじゃ」
「ふーん?今の所副作用とかは特に感じてないから平気だと思うよ」
少しの間難しそうな顔をしていたグラドだったが、すぐに先程までの調子に戻り自分の分の干し草を盛り始めた。
夕飯はグラドが蓄えていたカポークゥの燻製を切り分けて食べた。
調達先は訊いていないが……例の銀狼の被害の三割位はグラドがやったんじゃないかと思えてきた。
食後、明日の出発に向けて
ふと気になって狼の仮面を取り出す。
手に取ってまじまじと眺めた。
(この仮面だけやけに馴染むんだよね………)
気を抜くと仮面を被りそうになる。
今まで色んな仮面を作って使ってきたけど、こんな仮面は初めてだ。
一つ疑問なのは、この頭蓋骨の持ち主は本当に強かったのか?という点である。
グラドの話を聞く限り、言われてた被害の半分位しかこの銀狼はやっていない。
私の罠に掛かってあっさり仕留められたのもこの銀狼がそこまで強くなかった事の裏付けにもなる。
なら、この仮面のやたら高い能力には別の理由が有るのだろうか?
・ ・ ・
荷物をまとめ終え、首飾りを外してグラドの待ってるベッドに戻る。
あの後私が確保していた干し草をグラドが纏めて「どうせ寝るならデカいベットのほうがいいじゃろ!」といって合体させてしまったのだ。
まぁ反対する理由も無いので好きにさせていたのだが………
「ん?準備は終わったなら早うこっち来んか」
「完全に抱き枕にするつもりですよね」
小首を傾げてこっちを見てくるグラド。
彼女は自分の見た目が物凄い美少女なの自覚してないのだろうか。
そっちの気は無いつもりだったのだがちょっとクラっとくる。
「はいはい、まぁ抵抗出来ないんで好きにして下さい」
「うむ!諦めがいいのはこの場においては利口だぞ!」
腕を掴まれ、あれよあれよという間にグラドの両腕に頭を抱きかかえられてしまった。
……ドラゴンのくせに何でこんないい香りするのこの娘。
「エリス、キツくないか?我どうも力加減が苦手でな……」
「今のままなら平気だけど……無事に明日を迎えられる事を祈ってるよ」
グラドの暖かい身体に抱き締められていると今日あった色んな事のせいで一気に眠気が襲ってきた。
私って割と人見知りする方だと思ってたんだけど、今日初めて会ったグラドは何故か気を許してる。
グラドは噂に聞いてたドラゴンとは全然違うのが原因なんだろうか?
そもそも古龍でもないのに何で魔法を使えるのか?
そんな事を考えながら、私は眠りに落ちた。
・ ・ ・
愛する者も、敵対する者も、全てを自分の力へと捻じ曲げる。
何と強欲な事だ。お前の牙は。