「じゃあ出発しますか」
「おー!!」
グラドに抱き締められて圧死する事無く、無事に朝日を拝めた。
寝起きにグラドの整った顔が眼前にあって別の意味で死にかけたのだが。
「で、今日は何処に向ってるんじゃ?」
「ギルドのある街だね」
私の荷物も置いてあるし、グラドが私と冒険者をやるってのならギルドに登録しておいて損は無い。
登録しないでフリーの何でも屋として生きている人も居るが、何かこだわりが無い限り仕事の依頼等はギルドを介した方が効率が良い。大抵そういうフリーの人はギルドが禁止している事に手を染めていたりするのだが。
「あ、そうそう今グラド羽出してるけど街の中では仕舞っておいて貰えないかな?」
「む?別に構わないが何故じゃ?」
「亜人………というか人間以外はあんまり都会には居ないんだよ。昔程じゃ無いらしいけどまだ差別思想が残ってるし」
うむ、と頷くとグラドは指パッチンを一つして羽を収納した。
「そうなると我がドラゴンだって名乗るのも控えた方がいいのか」
「ごめん。その代わり私と二人っきりの時は好きに元に戻って構わないから」
「………逆にそっちの方が二人だけの秘密っぽくて良いな!」
「今は二人だけだから元に戻ってもいいよ?」
「今、元に戻ったらそなたをモグモグして舌で嘗め回したくなるから止めておこう」
何それ怖い。
その後暫く話した結果、グラドは山奥で暮らしていた魔女の一人娘で修行の為に街へ出て来た。という設定になった。
ドラゴン化さえしなければ普通に魔法使いで通ってしまうグラドの人化魔法凄いなー。
「まぁ我の偽装を見破れる存在はそうそう居ないであろうから安心しておけ!」
凄い自信だ………と言いたい所だけど、実際グラドは魔法使いとしてかなり上位に位置するのだと思う。
しかもドラゴンだから素の身体能力も高いし……私より何もかもスペックが上じゃないか。
私がこの先冒険者やっててグラドに追いつける日は来るのかなぁ……?
そんな事を思いながら歩いていたらグラドから声を掛けられた。
「そういえば、そなたは人間の街で暮らしてきているのに我の姿を見て何か思う所はないのか?」
「?」
「ほら、我って今は人化してるがドラゴンじゃろ?」
「だから?」
「…………えっと」
一旦黙った後、グラドが言いづらそうに訊いてきた。
「その……そなた自身は亜人に差別意識は無いのか?」
………あぁそういう事か。私が亜人を嫌ってる方の人かと思ってるのか。
確かに街に入るから羽隠してってのはそう捉えられても仕方なかったかも。
「私はそういうのは無いよ」
「………本当?」
今の上目遣いはヤバかった、ドキッてなった。
いやいやそうではなく。
「本当本当、むしろ羨ましいよ。私はこんな仮面使わないと使えない能力や力をそのまま使えるんだから」
そう言ってもまだ心配そうだったので歩くのを止め、クルリと振り返ってグラドの事を抱きしめた。
押し倒せるかと思ったけど普通に受け止めるのねこの娘………
「本当にグラドの事が嫌いだったら昨日抱き着かれた時に抵抗してたって」
「………分かった」
「ほら、いつもの調子に戻ってよ。こっちも何か調子狂うからさ」
「うむ…………」
そのままグラドがいいと言うまで、私は彼女の事を抱きしめ続けた。
・ ・ ・
「いや~……何かすまんかったの。もし好きなそなたに嫌われてるって考えたらつい、な」
なんとなくお互い照れ臭い雰囲気になりながら歩くのを再開する。
「ちょっと意外かな。グラドってそういうの気にせずグイグイ行きそうって思ってたけど」
「流石に我も嫌がる事を押し通そうとは思わん。そなたの事は好きだからなおさらな」
「なるほど」
ついに好きって明言されてしまった。まぁグラド的には嫌いの反対で好きって言ってるのだろうけど。
そもそも種族違うし、同性だし。
私なんかを手元に置いときたい宝物程度に思ってくれてるのなら結構嬉しい。
私の存在価値を魔術保有している点以外に見い出してくれているのだから。
途中で何回か休憩や狩りを挟みつつ、ギルドの定時回収馬車が来る時刻より前に回収地点に着くことが出来た。
「ちょっと早めに着いちゃったね。何かする?」
「あ、ならばギルドについて訊きたいのじゃが、登録って何をすればいいんじゃ?」
「えっとそれはね………」
ギルドは多くの舞い込む依頼を遂行出来る冒険者に割り振る仲介組織だ。
依頼の報酬は依頼主からお金で支払われ、その一部をギルドは貰って運営されている。
また登録の際にギルドから階級を認定される。
自分の実力を過信した者が無謀な依頼を受け、また報酬の金に目が眩み無茶と知りつつ依頼を受ける等の事が起きたのでこのような階級制が導入されたらしい。
また、冒険者達としても依頼者と自分の認識の違いで身に合わない依頼を受けてしまい最悪死ぬよりは仲介料を払ってギルドを介した方が結果的には得なのだ。
そんな経緯で始まった階級制だがやる事といっても簡単な魔道具を使った能力測定、模擬戦をするだけだ。
この街に住む住人は大抵C~Dランクであり稀にBランクが居る程度なのであまり厳密にやる意味がないからこうなっているらしい。
ギルドの受付のお姉さんに訊いた所、王都の検査はかなり厳密なモノなんだとか。
要するにこの街のギルドに登録するには自身の名前をギルドに登録して階級認定の検査、それが終わって冒険者としての情報が書かれたギルドカードを貰う必要があるという事だ。
「こんな所かな」
「お、おう」