あの後しばらく待っているとやって来た馬車に乗ってゴトゴトと揺られて数時間。
街の唯一の入り口である門の前へやって来た。
「ほう、大きな壁じゃな……」
「余程大きなモンスターじゃなきゃ越せないはずだよ」
街は周囲を壁で覆われており、その規模はグラドが評した通り巨大である。
風化している人工のモノとも自然に出来たモノとも言われている。
私は自然に出来たとは思えない位整った外観をしている事から1000年前の誰か凄腕の魔法使いが作ったんじゃないかなと予想している。
私がグラドを連れて入口に近づくと門番として立っていた二人の片方が話しかけてきた。
「おう、
「……どうも」
「相変わらずそっけねぇなあ……ん?こっちの嬢ちゃんは」
「グラドという。冒険者になろうとこの街にやって来た」
その言葉に驚いたようにもう一人の門番が話に加わってきた。
「見たところ剣も持ってないみたいだが……嬢ちゃん魔法使いか?」
「まぁそんなところだ」
「行こ、グラド」
若いのに凄いなぁ、と後ろで感心する声を聴きながらグラドの手を引っ張って足早に街の門をくぐる。
「おいおい急に引っ張るでない」
「…………ごめん」
暫く手を引いて歩いていると急に手を掴んでいた方から引っ張られ、よろけてグラドの身体にもたれ掛かった。
「わっ」
「前もろくに見ないで連れまわすな、まったく……」
呆れた表情でこちらを見てきた。
「ご、ごめん」
「もしかしなくてもそなた人見知りじゃな?」
「………ハイそうです」
何故かグラドにはそれが起きないけど、私は結構な人見知りだ。
ギルドの中でも最初に階級の試験をしてくれた受付の人と、他数名の一緒に依頼を受けた冒険者としかまともに会話していない。
その結果
「ふむ、まぁその性格だったから我以外に手を出す輩が居なかったのは良かったかもしれん」
「……そう?」
「うむ、むしろそなたが我だけ人見知りしないのはちょっと気分がいいな!」
逆に喜んでるみたいだ。
……良かった。失望されなくて。
「さて街の中心まで来ているようじゃが、ギルドというのはどこにある?」
「言われてみたらそうだね」
さっきまで緊張してまともに周囲が見えていなかったが、昼間なので当然人通りも多く道の真ん中で会話している私達に注目している人も多く………多く………
あ、隠蔽技能使い忘れてた………
「……………………」(思考停止)
「おい、おーい?しょうがない奴じゃのー……」
・ ・ ・
「……………はっ!?」
意識が飛んでた。
普段余り人目に慣れないせいで緊張の限界を超えてしまったらしい。
「あれ、何で私の部屋?」
周りを見渡せば普段私が泊まっている宿屋の一室だった。
私はといえば備え付けのベッドに装備を外した楽な格好で横になっていた。
(グラドが運んでくれたのかな?でも部屋の場所なんて教えてないと思うんだけど……?)
不思議に思いながら、ベッドから起き上がってつけたままだった仮面を外し、左手をかざして
普段は危険に備えて仮面を外したままでいるなんて家の中でもなければ滅多にしない。
「さて、どうしよう?グラド探しに外に出かけるべきかな」
冒険に行くわけでは無いので軽い身支度をして仮面を被る。
狼の仮面を着けて、今度は隠蔽の技能をちゃんと発動させておく。
目立ちたくない。
そんなこんなで、人目を避けながら街の中を歩いて行く。
グラドの事だから一人でギルドの試験を受けているんじゃないだろうかと予想しての事だ。
ついでに私のラピッドラビットの納品も同時に出来る。
「…………?何だろあの人だかり」
ギルドの入り口に沢山人が集まっていた。
私は街としか呼んでいないが、この街の正式名称は『勇者の街』である。
かつての勇者がここ出身だったとかでこの名前がついているらしい。
現状は最高でBランクが居る程度で名前負けしている街名だったのだが……
「見たかよあいつが一撃で訓練用のゴーレムを粉砕したのを!」
「この勇者の街初めてのAランク冒険者だ!!」
「俺何回も昇級試験受けてるのに一向にCランクのままなのに凄ぇな!!」
流れてくる会話を聞くと誰かがAランクになったらしい。
…………あ。
まさか、いやでもグラドなら余裕でやりそうだな…………?
「おいお前ら退きな!そこに立ち塞がっちゃAランク勇者様が通れないだろうが!」
「お、おう。すまねえ……」
たむろしていた男女の集団が真っ二つに割れ、ギルドの入口から一人の人物が歩いてきた。
その他社を圧倒するような気迫に周りに居た人達は思わず息をのむ。
糸が張り詰めたようなその雰囲気は……
「気配はこの辺に……あ!来ておったかエリス!!どうじゃAランクじゃぞ!!褒めて!!」
あ!の時点で常人には視認できない勢いで群衆の前から消え去り、仮面を被っていた少女を押し倒した瞬間に消え去った。
「えーっと……嬢ちゃんどこに消えた?」
「風が吹いたら消えたな?」
「あっ!あそこだ!」
「人が倒れてないか……?」
「あれ?あの倒れてるのって」
「
「知り合いなのかね?」
グラドはもうちょっと力加減ってものを覚えて欲しい。
それはそれとして……
「Aランクだったの?凄いじゃん」
「そうじゃろそうじゃろ!さっさと終わらせてそなたの元に戻ろうと頑張ったら何かAランクじゃって!」
私はCランクなんだが、グラドは本当凄いな……
って感心してる場合じゃない。
「あの、たくさん人がこっち見てるしそろそろ離れない?」
「いいじゃろ?見せつけておけば」
「私が恥ずか死ぬから」
「ならばしょうがない」
思ってたよりあっさり納得してくれた。
(折角だし納品してこうかと思ったけど、この人だかりじゃあなぁ……)
「そなたがここに来たのは例の依頼の兎肉じゃろ?丁度いいしこのまま行くか」
「え、ちょ待」
手を引っ張られてギルドの方に進んでいく。
やーめーてー……