グラドに連れられてギルドの中に入る。
古びた木の匂いがする場所だ。普段は人が少なくて静かな空気と相まって居心地がいいのだが、今日に限っては……
「あれ、戻って来たな」
「何で
この街でBランクで大手を振って歩いていた人達が怖い目で見てくる。
仮面の位置を調整し、目を合わせないようにしながらカウンターへと進んだ。
「どーも、アイラさん」
「あら?エリスちゃん、思ってたより早く終わったのね?」
「まぁ色々あって。これ依頼のラピッドラビット五羽ね。収納魔法使ってるから鮮度は落ちてないよ」
「……うん、確認したわ。はいこれが報酬よ」
事務的に済ませてくれてありがたいんだけど、やはり隣のグラドが気になるのかチラチラ目線を送っている。
「えっと、グラドとはその兎狩ってたら偶然出会ったんだよ。それで知り合いになった」
「そうだったの、エリスちゃんに友達が出来たみたいで良かったわ」
アイラさんはギルドの受付嬢の一人だ。
元Bランクの土属性の魔法使いで、ギルドの階級審査官として試験者相手にゴーレムをぶつけている。
かくいう私の試験官がアイラさんだった。
「どうする?依頼でも受けてく?」
「うーん……」
「エリス、受けてくのか?我は構わんぞ!」
ちょっと悩んでいると後ろから声を掛けられた。
「おい、
「……そうだけど。悪い?」
「ああ悪いさ、お前程度のランクで受けれる依頼にAランクを引っ張るんじゃねぇよ」
なんだその言い方。
私がムッとしていると、別の男も口を挟んできた。
「お前なんかと組むより俺らの方が良いに決まってるだろ。嬢ちゃんもそう思うよな?」
「……口を閉じろ愚か者が」
「あん?」
「おい、受付の。確かアイラと言ったか。そこのデカい熊の討伐依頼、我とエリスで受けさせて貰う」
「え、あぁコレね。分かったわ」
そのグラドの行動に二人組が抗議の声を上げた。
それを意にもとめずグラドは私の手を取って歩き出した。
「おい、話は終わってねえぞ!」
「話す事は何も無い。今の内にBランクという立場に酔っておけ」
「あぁ?どういう意味だ!」
・ ・ ・
「ぐ、グラドほんとに良かったの?」
「何だ?そなたは我があの愚か者どもと依頼を受けに行った方が良かったのか?」
「いや、嬉しかったけど……けど私なんかと一緒にいて恨まれても心配だし……」
「Cランクなのを気にしておるのか?」
「……グラドだけならもっと凄い事が出来るかもしれないのに私が縛って足を引っ張ったら勿体ないのも事実だなって思って」
そういう点でさっきのBランクの人達の言葉に何も思わない事も無かったのだ。
「馬鹿者、我はそなたと一緒に居る為に冒険者になったのに冒険者をやる為にそなたから離れたら本末転倒であろう?」
それはそうなんだが。
他人に言われて改めて何で私なんかとグラドが一緒にいてくれるのか疑問に思ったっていうか。
「どうもそなたは自分を低く見つもり過ぎている気がするんだがの」
「……別にそんな事無いよ」
私がここに居られるのは偶然だし。
首から下げているペンダントをギュッと握る。
・ ・ ・
エリスが黙ってしまった。
(こ奴の仮面魔術、やっている事をよく考えたら最強にだって成れる気がするんじゃがな……)
魔術を使える時点でランクなんて関係無い。
こやつは気付いていないが、狼の仮面を被っている時点でBランク程度の実力はあるハズだ。
それにもっと強力なモンスターの仮面を与えれば更に強くなるのは間違いない。
魔術はただ一人のみ扱える特別な能力であり、使い方次第でいくらでも強くなれるものだからだ。
(我の母上も確か魔術を使ってたハズじゃしな。……やたら強かった)
もう死んでしまっているので確認しようもないのじゃが。
その辺の経緯もあって森で一人で暮らしていたのだ。
(その辺の事もいずれ話さないといけないのう……)
お互いにまだ深い関わり合いをする関係にはまだなっていない。
我もその事を話してエリスが離れていくかもしれないと不安なのだ。
エリスが黙りながら握りしめている首飾りを眺める。
(ガラスの破片……?表面に何か数字が書いてあるが)
お洒落目的で着けているものでは無いだろう。
今は訊ねたりしない。
ただ、いずれ教えてくれたら嬉しい。
そんな事を考えながら我はエリスの手を引いて宿へと向かった。