魔法熟・・・ゲフンゲフン (習作)   作:you-new

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一度いいから修羅場を経験したい そして完結へ

 倒れている車椅子の少女と、その前に立っている彼女。

 そして周囲にいるヴォルケンリッターと魔法少女達。

 

「シン、あなたも来たのか…私は幸せ者だ。こんなに見送ってくれる者達がいるだから」

 

 俺はゆっくりと彼女の前へと歩いていく。

 

「悪いが、死なせてやらない。お前を救わせてもらう」

 

「それは…いくらあなたでも無理だ」

 

「いや、できる。もしかしたら、もう二度と俺の能力が使えなくなるかもしれないが…救わせてもらう!」

 

 ――フルパワーでいく!

 

 脳量子波とツインドライブを同期させ、リンカーコア二つの同期率を跳ね上げる。

 あふれ出る魔力が周囲を覆っていく。

 

「何を…!?」

 

「純度を増した脳量子波でお前をハッキングし、記憶、体、意識のデータを俺にバックア

ップし、お前を初期化して闇の書との同期ができないように封印する。そして闇の書のみを破壊し、初期化したお前にバックアップを移し替える」

 

 俺の持っている力すべてを使った力技だ。

 …いくぞ!

 

 第一段階、俺の魔力で周辺を埋め尽くす。―クリアー

 

 第二段階、脳量子波を利用した魔法で闇の書をハッキングする。―クリアー

 

 脳が痛い。

 

 第三段階、脳量子波で俺の脳に一時的にデータをバックアップする。―クリ、アー

 

 痛い、痛い、痛い。

 

 第四段階、初期化…封印―…くりあー

 

 あと、少し…。

 

 第五段階、は、かい…―…く、りあー

 

 ………。

 

 第六段階、うつ、し、かえ、…―…く…り…ぁー

 

 こ、れで………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると、ベッドで寝ていた。

 身を起こすと脳がずきずきと痛んだ。

 

「目が覚めたのか、シン」

 

 横を向くと、彼女がいた。

 そういえば名前…名づけられていたはずだが、聞いていなかった。

 

「名前つけられたんだろ?教えてくれないか」

 

「祝福の風、リインフォースだ。主はやてがそう名づけてくれた」

 

「リインフォース…」

 

 もう記憶の片隅にほんの少ししか覚えていない原作の記憶が少し蘇った。

 リインフォースがここにいるということは、俺はリインフォースを救えたのだろうか?

 

「あれから、どうなった?」

 

「お前は私を救ってくれた…もう融合することはできないが、それでも…ここに私は存在することができている」

 

「そうか…よかった」

 

 これで、闇の書事件も完全に終わったのだ。

 ようやく平穏に過ごすことができる。

 最初は父親としての意地、自己満足から始まったんだ。それがいつしか責任を負い、それゆえに危険に飛び込んでいった。

 もう、こりごりだ。さすがに疲れた。ゆっくり休みたい。

 

「リインフォースさん?あら…あなた!?意識が戻ったのね!?」

 

 扉が開きリンディが部屋に入ってきて、俺を見て声を荒げた。

 

「ああ、もう大丈夫だ。ちょっとふらふらするけど」

 

 脳量子波が今までにないほど使用できない。

 治るのか治らないのかわからないが、もともとがただで貰ったものだ。だからこれでいいのだ。少なくともそれで救えた者がいるのだから。

 

「あまり無理しないで、もう一度あなたが死んだら、私は…」

 

「…ごめん。もうどこにも行かないから」

 

「絶対よ、一人にしないでね」

 

 リンディは両手で俺の手を強く握ってそう言った。

 

「…シン、ひとつ報告しておくことがあった」

 

「あ、ああ」

 

 なぜだろう?寒気がする…医務室だから空調は完璧になっているはずなのに…。

 

「その、融合機としての機能を持った闇の書の残骸があるのだが…あれには、お前と私の、子供のデータが入っている」

 

 …え?

 彼女の発言で時が止まった。

 

「あの時のお前のデータと私のデータ混じりあって、それが残骸に残っていた。いずれ、主はやての新たな魔導の器なってくれるだろう」

 

 こ、子供…?

 俺と、リインフォースの…?

 

「…ねえ、あなた?ちょーっとお話があるのだけど」

 

「…」

 

 怖い…。

 リンディの身体から闇の書よりも濃い瘴気が出ているみたいだ。

 それはまさに闇の女王。

 

「子供って、一体何をしたらできるのかしらねぇ…?」

 

「…」

 

 リンディから圧倒的なプレッシャーを感じる。

 今までに経験したことのプレッシャーだ。気を抜いたら失神してしまいそうだ。

 

「どういうことか、きっちり説明してもらいましょうか?」

 

「…」

 

 ど、どうしよう…?

 

「そ、それは…」

 

「それは?」

 

「その…」

 

「その?」

 

「リンディ・ハラオウン、シンを責めないでください。私が一度いいからと契りを求めた

 

のです」

 

「あなた?どういうことなのかしら?」

 

「その、実は―――」

 

 俺は闇の書の中で精神が狂いそうになるほどの時を過ごしたこと。

 あくまで精神体であり、ユニゾンしていたようなものだということを説明した。

 …所詮言い訳に過ぎないが。

 

「―――というわけです。その…ごめん」

 

「………はぁ、そういうことなら今回だけは許してあげます。でも、もし次があったら…どうなるかわかってるわね?」

 

「ぜ、絶対しないから」

 

 なんとか許してもらえたようだ。

 リンディの所に帰ってこれたのだから、浮気などしない。リインフォースには悪いがあれはあくまで特殊な状況だったからだ。

 

「…シン、あなたが求めるなら私はいつでもOKです。では、失礼します」

 

 爆弾発言を残してリインフォースは部屋を出ていった。

 

「…」

 

「…」

 

 とりあえず、身体が本調子に戻ったらリンディの機嫌を取ろうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新暦66年の夏。

 ハラオウン一家、高町一家、月村姉妹とその主従、バニングス一家、そして八神一家の4家族で海に来ていた。

 バニングス家のお誘いで来たのだが、会員制のリゾート地のプライベートビーチなので、人が少なくて砂浜も奇麗だ。

 皆水着に着替えて、思い思いのことをしている。

 子供たちは一緒になって遊んでいる。

 俺はリンディとパラソルの下で、手をつないで子供たちを眺めていた。

 と言うかカップルはみんなそれぞれでいちゃいちゃしている。

 息子であるクロノもエイミィさんといちゃいちゃしているが、あれは主にクロノがからかわれているだけだ。まあ、それでも満更では無さそうだが。

 息子はMなのだろうか…?

 

「平和ね…」

 

「ああ…」

 

 思えばいろいろなことがあった。

 前世、転生、リンディとの出会い、結婚、闇の書…楽しいこと、辛いこと、それら全てがいい思い出だ。

 …さすがに修羅場はいい思い出にはならないが。

 

 リンディは俺の肩にもたれ、頭を乗せてきた。

 心地よい重みを感じ、幸せだ、とただそう思った。

 

「シン、ここにいたのですか」

 

 そんな空気をブレイクしたのは、後ろ側が尻以外に紐しか面積のない露出の多い黒い水着を着たリインフォースだった。

 

「主はやてが選んでくれたのだが、似合っていますか?」

 

 くるりと回転して、感想を求めるリインフォース。

 

「少し、派手すぎないかしら。そういうのはこの人の趣味ではないわ」

 

「リンディ・ハラオウン、私はシンに感想を求めています」

 

 この二人が揃うと、いつも修羅場になる。

 リインフォースとは闇の書を出てから、一度もそういう行為をしたことはない。

 俺はリンディを愛しているし、あれはあまりにも特殊な状況だったからだ。だから、リインフォースとはそういう関係にはなれないと告げた。

 例え一度とはいえ彼女とそういう行為をしたのは事実だ。だからこそ頭を下げて、あきらめてほしいと言ったのに…なぜこうなった?

 リインフォースはあきらめずに何度も何度も誘惑してくるし、そのたびにリンディは機嫌が悪くなる。

 ハーレムを作ってしまえとか思った奴、もしいるなら絶対に結婚しても失敗すると断言しよう。

 だいたい一夫一妻が常識の世界で、同意しているとはいえ何人もの男と付き合っている女をどう思う?ただのビッチだと思うはずだ。

 女だってそう思うに決まっているだろう。

 これが一夫多妻が常識だったり、特別な家柄で子供を残さないといけないからとか理由があるならともかく、一夫一妻が常識の世界でハーレムなど作れるはずがない。

 少なくとも、この修羅場をどうにかできる甲斐性がなければ無理だ。そして、この修羅場に何度も巻き込まれている俺だから言える。

 そんなことは絶対無理だ、と。

 

「どうなの?あなた?」

 

「どうなのです?シン?」

 

「…い、色っぽくて似合ってはいるが、ただ…少し派手かな?と思う」

 

「そうか、次の機会があればもっとあなたの好みのものにしておきます、楽しみにしておいてください」

 

 そう言い残し、リインフォースははやて達の方へと歩いていった。

 機嫌を損ねて、こちらをじと~と見ているリンディ。

 しかしそんなところすら愛おしく感じてしまう。

 

「…リンディ」

 

「…何かしら?」

 

「愛してる」

 

「し、信用できないわ」

 

「どうしたら、信用してくれる?」

 

「…キス、して」

 

 目を閉じて、唇を突き出した。

 

「チュッ」

 

 とキスをして、彼女を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺には前世の記憶があり、この世界は前世のアニメの世界で、俺は神様によってこの世界に転生させられた。

 でも、だからと言って俺は特別な存在じゃない。

 例え転生しようとも、人は日常を過ごしていく。一人の人間として生きていく。

 俺の幸せは、愛した女性とともに日々を過ごせること、ただそれだけだ。

 時には思いが揺れることもあるかもしれない、時には喧嘩することもあるかもしれない。でも、それでも、一緒に生きていきたい、

 

 少女から女性に、女性から熟女になった彼女と共に生きていく。

 いつか死ぬその時まで。

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