―――息子とのコミュニケーション―――
11年前に死んだ人間が生きていた。
その上、闇の書事件の解決に関わっていたということでいろいろ手続きや取材やらがようやく落ち着いて、海鳴のリンディ達がいたマンションに戻ってこれたころ。
執務官の仕事で家にいなかった息子と委託魔導師の仕事で同じく家に帰ってこなかった義娘が揃って帰ってきた。
ようやく一家全員揃っての食事でリンディが張り切って夕食を作ってくれた、のはいいのだが、
「…」
「…」
何を話せばいいのだろうか…?
助けてください!助けてください!
息子とどうコミュニケーションを取ればいいのかわかりません…。
夕食後、女性陣は女性だけで何やら会話しており、クロノと一緒に別の部屋で話そうと思ったのだが、会話が続かない。
「えーと、最近どうだ?」
「いつもどおりですね。事件が起きれば忙しく、起きなかったら予定通り帰れる。大半が忙しくなる方が多いですが」
「そ、そうか…」
「ええ…」
会話が、続かない。
後にリンディに相談したところ、
「クロノは不器用なところがあるから、11年ぶりに再会できたあなたに対してどう接すればいいのかわからないのよ。大丈夫、時間が経てば解決するわよ」
とのことだった。
「それにあなたを美化しているところがあるから、あの子」
魔導師ランクはSSで、いくつもの事件の解決に貢献し、闇の書対策部隊のエースでその被害を抑え、さらには自分ごとアルカンシェルで撃たせた。
そんな周囲の評判を聞いていたクロノは父親像を美化していたらしい。
でも、そんな父親は家庭ではごく普通の男だった。そのギャップを埋められないのだろう。
昔の記憶なんて4歳までのものだし…大部分を覚えていないのもしょうがない。
「それよりも、ね、いいでしょ?」
艶の混じった声で誘ってくるリンディ。
父親としての威厳を取り戻すためにまた委託魔導師でもすべきか?と思いつつ、電気を消してリンディの服に手をかけた。
次の日の朝、クロノからあきれた目で見られた。
「父さん…その、もう少し声を抑えたほうがいいかと…母さんと仲がいいのはいいのですが…フェイトもいますし…」
………防音をしっかりした部屋にすることを決意した。
これがきっかけでクロノと話せるようになったのは、怪我の功名とでもいうべきか…。
しかしその代償に何かを失った気がする。
―――義娘とのコミュニケーション―――
クロノが提督になり、フェイトが執務官になったころ。
「義父さんと義母さんの出会いってどんな風だったの?」
ソファに座っっている俺の足の間に座ったフェイトがそんなことを聞いてきた。
別に話してもよいのだが、その前にそこからどいて欲しい。
この義娘はクローンで、オリジナルの記憶を持っているが、その記憶には母親との記憶はあっても、父親との記憶がない。離婚していたらしい。
そのためか、妙に甘えてくる。
昔はそれでも良かったのだが、中学を卒業してからも同じことをするのはやめてほしい。
身体の発達が良くて、正直きついです。
義娘に手を出すとか絶対にしないが、それでも心臓に悪い。
前に一度だけやめるように言ったことがあるのだが、泣きそうになったので、つい取り下げて、認めてしまった。
リンディもただ父親に甘えているだけと分かっているので、嫉妬しない。むしろ微笑ましそうに父娘のコミュニケーションを見ている。
「家の都合でお見合いしたのが、出会いだったよ」
言葉に出したら、鮮明に思い出せてきた。懐かしい…。
「そうよ、私は最初乗り気じゃなかったのよねぇ…懐かしいわ」
「へぇ…あたしもちょっと興味が湧いたね、もっと聞かせてよ」
フェイトの使い魔である狼のアルフが子犬の姿で俺の右肩にぶら下って話を促してきた。
飼い主に似ているというか、こいつもコミュニケーションが激しい。とはいえ、普段は子供か子犬の姿になっているので、別に問題はないが。
娘というより妹という感じで接している。それに子犬フォームだから普段はペットみたいなものだし。
「それでいろいろ話してたら、気が合ったから仮面婚約者になって貰ったのよ」
「はは、リンディって昔はやんちゃだったんだねぇ」
「義母さんって、昔はそんなことしてたんだ…」
リンディは俺にもたれかかり左肩に顔を乗せている。
ラブラブ夫婦とその娘とペット。これだけ見れば仲のいい家庭の1シーンなのだがなぁ…。実際にそうなのだが、娘の年と体がおかしい…。
しかし、俺はどれだけ困っていても義娘を甘やかしてしまうだろう。
男親にとって娘というのは甘やかすものなのだ、きっと。だって可愛いし。
もしもくさいとか言われたら、ショックで死んでしまうかもしれない…。
―――隠し子騒動―――
機動六課が設立され、しばらく経ったころ。
俺は教導に協力するという名目で義娘に会いに六課にやって来た。
もう一つ理由があるのだが、それは『頭、冷やそうか』という言葉が鮮明に原作知識に残っており、気になったからというものだ。
もうほとんど覚えていないのだが、なぜこんなに気になったのだろうか…?
そして予定通りやって来たのだが…。
「パパぁ抱っこしてぇ」
なぜか幼女からパパと呼ばれてしまった。
幼女は金髪のオッドアイで、なぜかなのはとフェイトをママと呼んでいた。
そして俺とフェイトの子供だという噂があっと言う間に流れていった。
そのことを聞いた時のリンディからの通信のことは思い出したくない…。
一体誰が噂を流したのかわからないが、もし犯人が見つかったら…俺が手を下さなくても、リンディが下すだろう…。
「違うです!パパはリインのパパです!」
対抗するように、リインフォース(アインス)と俺の子供?であるリインフォース(ツヴァイ)も俺に抱っこをせがんでくる。
金髪の幼女、ヴィヴィオを左肩に、リインを右肩に乗せるとようやく二人は静かになった。
「えへへ」
「パパ大好きぃ」
か、可愛い…もうなんでも許してしまいそうだ。まさに天使。
はやて、にやにやしながらこっちを見るな子狸。
リインフォースも蠱惑的な眼で見つめてくるな。
あれから10年も断り続けているのにいったいいつまであきらめないつもりなんだ…。気持ちは嬉しいが、あきらめてくれ。
フェイトも羨ましそうな目で見るな。どこまで甘えん坊なんだ…原因は俺が甘やかしすぎたからか?
苦笑しながら、ヴィヴィオを離してくれたなのはちゃんだけが良心だった。
ちなみに、ヴィヴィオは聖王の遺伝子と俺の遺伝子をかけわせて作られた人造魔導師だったそうな。
つまり本当に俺の娘だった。
結局ヴィヴィオはなのはとフェイトが引き取ったのだが、これを知ったリンディからの夜のお誘いが増え、しばらく後に子供ができてしまった。
俺は脳量子波使用時に一時的に魔力で身体を変異させている影響で老化が遅くなっているのだが…素のままでリンディはいつまでも老けない。あれこそリアルチートではないのだろうか?
生まれた娘を抱いてあやしているリンディを見ながらそんなことを思った。