ハイスクールD×f   作:巫女好きの満月

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無効を見つけ、地に落とせ

 

 

 

 転生者達がこの世界……『ハイスクールD×D』の世界に転生して前世の記憶を取り戻してから、10年が経った。

 ある者は原作キャラと関わるために行動し、ある者は来るべき『原作』に備えて『特典』を使いこなすために実践や訓練を繰り返し、また、ある転生者達は『原作』に強制的に関わることを免除するために五つある試練、その最初の試練に挑んでいた。

 

『試練名 "『無効』を見つけ地に落とせ"

 

 ・挑戦者一覧

  ・黒鉄零二 ・白金燐 ・因幡月読 ・神代なぎさ ・星川瑠璃

 

 ・挑戦者敗北条件

  ・無効ではないプレートを二つ地に落とす

  ・制限時間を超えてもプレートが一つも落とされていない場合

 

 ・挑戦者ペナルティ事項

  ・プレートのある部屋に入った挑戦者は30分以内に勝利条件を満たさねばならない

  ・挑戦者は中で戦闘を行ってはならない

  ・プレートのある部屋に入った挑戦者は外部と連絡することはできない

 

 ・挑戦者勝利条件

  ・1.無効であるプレート二つ地に落とす

  ・2.全てのプレートを読み解く

 

 以上を持って第1の試練を開始します』

 

 

 30個もの様々な人や怪物などが描かれているプレートが壁にかけられている部屋の中で、1人の少年が紙を見ながら地面に寝転んでいた。歳は12歳ほど、身長は同年代の平均ぐらいだ。

 その少年の近くには同じく試練に挑戦している少女達が頭を捻らせながら壁にかけられているプレートを見ている。

 怪物を倒す男のプレート、猪を狩る狩人のプレートなど、まるで神話に出てくるエピソードを物語っているプレートを見ては考えを捻らせ、違うかもなどという言葉がたまに少年の耳に入ってくる。

 

「……それで、貴方は何をしているんですか?」

 

 退屈そうにその様子を見ていた少年に声をかけてきたのは銀髪の巫女装束を着た少女だった。目が見えていないのかプレートを見に行くことはせず最初からずっと少年の隣で座っている。

 

「何って見たらわかるだろ?謎が分からないから考えているんだよ」

「嘘ですね」

 

 少年の言葉をバッサリと切る少女。少年は「へぇ」と興味深そうに少女を見る。

 

「貴方がここに来てからプレートを見た回数は1回、見ていた時間は凡そ5分。この部屋にあるプレートは全てバラバラに配置されていて5分で全てを見ることはできません。貴方が全てのプレートを一度に全て見ることができるのなら話は変わりますが……」

「それに近しいことはできるが……、生憎こんなに広く置かれているとそれは無理だな」

「ですね。なら、貴方が今こうしている理由は一つだけ……()()()()()()辿()()()()()()()からですね?」

 

 少女の言葉に少年は何も言い返さない。

 何故なら少女の言葉は当たっているからだ。

 

「制限時間は残り5分。他の人達はクリアしようと躍起になっていますが、貴方だけは何もしようとしていません。最初は諦めたかと思っていましたが、貴方がその紙……試練について書かれた紙をずっと見ていることからそれは無いと思いました」

「何でだ?」

「諦めた人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その少女の言葉に少年はなるほどと思うと同時に()()良いなとも思った。

 少女の目が見えていないことを少年は直ぐに理解していたが、まさか出来るだけ()()()()()()()()行動まで見抜かれていたとは思ってもいなかった。

 

「よく分かったな」

「この部屋に置いてあった紙は試練について書かれていた紙のみ。外部から持ってきたという可能性は否定できませんが貴方はバッグなどを持ってきていない事からそれは無いでしょう」

「『特典』の効果で見えなかっただけかもしれないぜ?」

「それも否定できませんが、貴方はそういった特典は持っていないでしょう?」

「……へぇ?その根拠は?」

「乙女の勘……では駄目ですか?」

 

 クスリと笑いながら言った少女を見て少年は笑う。何らかの根拠があると思っていて聞いたのに、まさかその根拠が『乙女の勘』だと少年は思ってもいなかったのだ。

 

「さて、長々と話してしまったせいで制限時間が残り2分になってしまいましたね」

「そうだな。そろそろ待つのにも飽きたし、サクッと終わらせるか」

 

 

 少年が立ち上がってプレートの場所へと向かう。先程まで少年と喋っていた少女はこの試練の答えが知りたいのかトテトテと少年の後を追う。

 

「何で付いてくるんだよ」

(わたくし)、この試練の答えが気になってしまいましたので」

「……説明しながらやれと?」

「是非」

「はぁ、りょーかい」

 

 少年がため息をついてプレートの方へと足を進める。残り時間の少なさに焦っている少女たちが視界に入るが少年はまっすぐとその奥へと進んでいく。

 

「先ず、お前はこの試練の名前を聞いて何を思った?」

「そうですね、この試練の名前を聞いた時、何が『無効』なのか疑問に思いました」

 

 少女が思い出しながら言う。少年はそんな少女を見ながら喋り始める。

 

「そう、『無効』を見つけ地に落とせ……これだけだと何が無効なのかは分からない。だが、この部屋のプレートを見れば何が無効なのかすぐに分かる」

「そうなのですか?」

「ああ、ここにある30個ものプレート。一見すると何の繋がりもないように見えるがよーく見ると一つの共通点がある」

 

 少年が足を止める。

 少年が足を止めた場所は他の場所のようにプレートがバラバラに置かれている場所ではなく、12個のプレートが並べられている壁の目の前だ。

 

「その共通点は、全て『ギリシャ神話』だということだ。さっき通った場所にあったのは『オリオン』と『アルテミス』のエピソード、その次は『アキレウス』と『ケイローン』のエピソード……ほら、この四つは全て『ギリシャ神話』の英雄と神様だ。

 そして、ここにあるのは12個のプレート、しかもご丁寧に並べられててさらには描かれている男は同じ……。

 ギリシャ神話で12個の功績、さらには男。ここまでくれば誰だって分かる。

 ここにあるプレートは『ヘラクレス』の十二の功業のプレートだ」

「それは、(わたくし)にも分かります。ですが、これのどこに『無効』があるのですか?」

 

 少女が少年に質問をする。少年はそれにプレートを手で触りながら答える。

 

「ヘラクレスの十二の功業、実はこれ最初は10個だったんだが、その内の()()()()()()()()()()()()()()()

 おっ、こうすれば外れるのか。

 あの試練の紙に書かれていたのは2つの『無効』を地に落とす。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。正解であるこいつから少しでも意識を逸らすための奴だろうな」

 

 少年がプレートを2つ取り出してそれを下に落とす。

 

「ヘラクレスの十二の功業『ネメアーの獅子』『レルネーのヒュドラ』『ケリュネイアの鹿』『エリュマントスの猪』『アウゲイアースの家畜小屋』『ステュムパーリデスの鳥』『クレータの牡牛』『ディオメーデースの人喰い馬』『アマゾーンの女王の腰帯』『ゲーリュオーンの牛』『ヘスペリデスの黄金の林檎』『地獄の番犬ケルベロス』のうち、功業が無効となったのは『レルネーのヒュドラ』と『アウゲイアースの家畜小屋』よって、9つの頭を持つ蛇に向かっていく男のプレートと2つの川の流れを変えようとしている男のプレートを地面に落とせばーーーー」

 

 甲高い音ともに落ちた2つのプレート、そしてそれと同時に制限時間を示していた時計は止まり、閉じていた扉が開いた。

 

「ーーーー試練クリアだ」

 

 笑みを浮かべて少年がそう宣言した。

 それと同時に、先程までプレートを見て必死に試練をクリアしようとしていた少女たちが少年達のところへとやってくる。

 

「さっきのはもしかして……」

「はい、この人がクリアしました」

 

 黒髪のツインテールの少女が少年の隣にいる銀髪のツインテールの少女に話しかける。銀髪のツインテールの少女はそれに返事をし、黒髪のツインテールの少女はそれに驚きながら少年を見る。

 

「え……っ!?月読ちゃんが解いたんじゃないの!?」

「違います。(わたくし)では途中までしか解けませんでしたから」

 

 わいわいと先ほどの話をしていく銀髪のツインテールの少女と黒髪のツインテールの少女。それを見ながら少年は足音をできるだけ立てないようにしながら外へ出ようとする。

 

「そういえば、名前を聞いていませんでしたね」

 

 ゾクっと少年の背中に冷たいものが走った。少年が慌てて後ろを見るとそこにはいつのまにか黒髪のツインテールの少女と話していた銀髪のツインテールの少女が少年の服の袖を掴んでいた。

 

「名無しの権兵衛」

「そんな名前がこの世にあるのですね」

「…………」

 

 皮肉げではなく、純粋な疑問の言葉に少年は一瞬唖然とするがすぐにため息を吐いて自分の名前を答えた。

 

「零二、黒鉄零二だ」

「黒鉄……零二さんですか。(わたくし)は因幡月読です。よろしくお願いします」

 

 丁寧にお辞儀をする因幡月読と名乗った銀髪のツインテールの少女。それに、少年ーーーー黒鉄零二は苦笑すると「まぁ、よろしく」と曖昧に言って外へ出ようとするが、その前に他の人物たちにも捕まってしまう。

 

「あっ、あの!私は!神代なぎさっていいます!よろしくお願いします!」

「私は星川瑠璃です」

「……しっ……白金……燐……です……よろしく……お願いします」

「……よろしく」

 

 素っ気なく返す零二、それに燐は自分が何かしたのかと思いビクッと肩を震わせる。零二はそれを見てやべっと思ったが、どうしたらいいか分からず月読の方を見る。

 月読はそれに何かを察したのか燐に向かって言った。

 

「怯えなくても大丈夫ですよ白金さん」

「……いっ、因幡……さん……」

 

 燐が月読の方を見る。月読はそんな燐に自信満々に言った、

 

「この人はただ人付き合いが苦手なだけですから」

 

 月読が言葉を放つと同時に零二が何か言いたそうにするが、事実なのでただバツが悪そうに目をそらす。

 

「…………ほよ?」

 

 それを言った本人はまさか、自分が冗談で言ったことが真実だったとは思わず、間抜けな声を漏らしてしまう。

 

「……それじゃあ、オレは帰るわ」

「……はい、どうぞ」

 

 何となく、居心地が悪くなった零二は逃げるように走って扉の方へと向かう。

 ……その手に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を持って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある森の中に一人の少年が立っていた。

 薄暗い森の中で、月明かりだけが少年の周囲を照らしていた。

 

「なぁ、そろそろ俺帰りたいんだけどー」

 

 少年が森の中にいるモノに声をかける。だが、辺りは何も変化しない。

 

「……はぁ、面倒だけどやるかー」

 

 少年の両手に一瞬だけ光が現れ、ソレは現れた。

 鞘に収められた、少年の背丈ほどはあるであろう長刀。鞘や、柄などには特に変わったところはない……だが、その刀から出ているモノは違う。

 漆黒のオーラ、それも明らかに明るいオーラではなく何処か禍々しさを持つ漆黒。

 ソレに当てられたのか少年の後ろの方からガサッと音がした。

 

「あれ?意外と近くにいたんだ?」

 

 少年がその場所を見る。そこには、少年の持っている長刀を見て恐怖で震えている異形がいた。

 

「……戦意喪失かぁ、ガッカリだよ」

 

 そんな異形の姿を見て心底失望したような声で少年が言った。だが、異形はそれでも動くことをしない。

 いや、正確にいうならば異形はそれを聞こえてはいるがパニックを起こしていて動けないと言った方が正しい。

 

「……つまんない奴」

 

 その言葉が、異形が最後に聞いた言葉だった。いつのまにか少年は異形の目の前まで移動してその鞘から抜いた長刀を異形に突き刺していた。

 心臓を貫かれ、頭を貫かれた異形は最後に何をされたのか理解することなく、ただその生涯を終えた。

 

「転生して10年経ったけど……、つまらないなぁ。ここら辺に手応えのある奴はいないし」

 

 少年が過去を思い出しながらブツブツと小声で言いながら場所を移動して行く。

 

「そうだ、いっそ辻斬りでもしようか。そうすればいつかは強い人に出会える気がするし」

 

 そう言って少年は近くにあった木に実っている木のみを取って口にした。

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