ハイスクールD×f   作:巫女好きの満月

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 雪の降るクリスマスイヴの夜、1人の少年が公園にあるブランコに座っていた。いつから居たのか、その頭と肩に沢山の雪が乗っていることからかなりの時間居たのではないのかと推測できる。

 少年は真っ直ぐと公園の入り口の方を見て居て、誰かを待っているようだ。

 時間を見て、ポケットの中の物を確認して、また公園の入り口を見る。そんな事を少年は何回も何回も繰り返しながらまだ見ぬ待ち人に想いを馳せる。

 既に時間はかなり過ぎている。けれど待ち人は未だ来ない。

 それでも少年はただひたすら待ち続ける。そして、時計の長針が再び頂点を向いた時、ザクッと積もった雪が踏まれた音が聞こえた。

 少年がその音が聞こえた場所ーーーー公園の入り口を見ると、少年が待っていた少女がそこにはいた。

 少年は少女が遅れてきたことに少しだけ驚いていたが、それを顔に出さず少女にいつものように声をかけた。

 それに少女も少しだけ遅れて少年に言葉を返す。

 何時ものようにたわいもない話を少年と少女はしばらく続けていたが、少年は少女に何処か違和感を感じていた。

 何時もであればもっと明るい笑顔なのにと何時もとはどこか違った様子の少女に少年は少しだけ戸惑う。

 そして、話のネタもつき2人の間に会話がなくなる。

 何時もとはまるっきり違う何か、少年はそれに気づいていながらもその何かを明確な言葉にすることは出来ないでいた。

 少年がその何かについて、少女に聞こうとした時、少女が俯きながら少年に言った。

「ごめんなさい」……っと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピピピピピと電子音が鳴り響く。

 それを鬱陶しそうにしながら、布団の中から手が伸びて目覚ましを止めた。

 

「…………前世の事でも、夢で見るのかよ……」

 

 布団の中から1人の少年が出てくる。

 その少年の名は黒鉄零二。この世界に転生した転生者の一人で、『原作に強制的に関わる道』ではなく『試練に挑み原作から逃れる道』を選んだ一人でもある。

 

「…………」

 

 零二は布団から出るとしばらくボーッとしていたが、それも数分だけ。すぐに机の上に置いてあるチェーンに指輪を通しただけの即席ネックレスを見ると先程まで見ていた夢を思い出して切なそうな顔をする。

 だが、すぐに昔のことだと割り切り着替え始める。

 適当なズボンと服を着て、その上から黒いジャージを着ると零二は机の上に置いてあるネックレスを首にかけてから必要最低限の荷物を持つとそのまま部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼過ぎの学校の屋上で零二は自分で作った弁当を食べながら授業をサボっていた。

 その手には図書室から拝借してきた本があり片手で器用にページをめくりながら読んで行く。

 

「…………」

 

 だが、途中で飽きたのか本を近くに置いてあったカバンの中に戻してから寝転ぶ。

 雲一つない青空を見ながら零二はただ目を瞑って時間が過ぎるのを待つ。

 

 

 

 遠くから金属バットがボールを捉える音が聞こえてきて零二は目を覚ました。いつのまにか寝ていたらしく、太陽は沈み始めていた。

 寝惚けているのか零二は欠伸をしながら携帯を見る。そこには、17時30分と写っている。

 

「出遅れた!」

 

 時計を見て眠気が飛んだ零二は急いで屋上から出る。まだ特売の時間ではないが、それでも歴戦の猛者達に挑むには早めにその場所へと行きそれなりの準備をしなければならない。

 

「……今からだと着替えてる時間はない……か」

 

 屋上から出て廊下や階段を走る。だが、その途中で運悪く零二のいるクラスの担任が零二に向かってきていた。

 

「あーーーーっ!黒鉄くん何処にいたんですか!大切なプリントとかあるんですよ!それに授業にもちゃんとーーーー」

「悪いな、今小言聞いてる暇ないんだ!」

「えーーーーっ?……って!何で窓に足をーーーー」

「じゃあな!」

 

 そのまま零二は窓から飛び降りる。零二が今いる場所は3階、そこそこ高く窓から飛び降りたらタダではすまないだろう。

 最も、それはすぐ下が地面であるならの話だ。

 零二が今いる場所から降りた場合、それは無い。何故なら零二の下には渡り廊下の屋根があるからだ。

 屋根のおかげで幾ばくか衝撃は和らいでいるため、零二はそのまま走って学校を出て行く。

 その様子を見た零二の担任の先生はそのまま頭を痛そうに抑えながら携帯電話を取り出して何処かに連絡をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何とか……買えたな……っ」

 

 何とか特売の品を買えた零二は疲れながら家に帰るために歩く。

 そして、家まであと少しといったところで零二はその目をスッと細めた。

 

「子供はもうそろそろ家に帰らないといけない時間だろ?」

「それは、ブーメランですよ。黒鉄零二さん」

 

 零二の視線の先にいたのは、この前の試練の時に初めて会った銀髪の巫女装束の少女、因幡月読と黒髪ツインテールの制服を着た少女、神代なぎさの2人。

 この前会った時とは人数が違うなっと零二は考えるが、すぐにその考えを消して油断なく月読達を見る。

 

「それで、何のご用事で?オレは早く帰りたいんだけどーーーーっ!」

 

 飄々とした態度で零二が月読に言う。

 刹那、零二は自分の首が落とされるのを幻視してすぐさま後ろに飛び退いた。

 一瞬だが見えたそれに零二は驚くがその零二以上に驚いているのは零二の目の前にいるなぎさと月読だった。

 

「…………嘘」

 

 驚きで固まっていたなぎさと月読だが、すぐに再起動して先ほどのことを思い出す。

 零二が飛び退く前、月読は零二の首に帯にさしている刀を当てようとして少しだけ右手をさりげない動きで()()()()()()()()()()()()()

 そう、手を添えようとしただけでありまだその動きを月読はしていない。

 なのに、零二はその場から飛び退き月読の攻撃範囲から逃げ出した。

 

「……何のつもりだ?」

 

 零二が月読達に聞く。その視線は月読だけでなくその隣にいるなぎさと少し遠いところにいる燐と瑠璃まで捉えている。

 

「……少し、確認したいことがありましたから」

「確認したいことのためにーーーー人の首にソレを当てようとしたのか?」

 

 ジトっとした目で零二は月読の腰にある鞘に収まったままの刀を見る。だが、そうしなければならない事情も零二はだいたい察した。

 

「別にお前らに何かしようとか考えたことねーよ……って言えば満足か?」

「……っ!?何でーーーー」

「先に刀を抜こうとしたこと、戦闘準備万端できたこと、先にある程度の情報をお前らが調べていたこと……。

 まぁ、他にも沢山そう考えた根拠があるんだが敵になるかもしれない奴にそれを明かすわけないだろ」

 

 零二が荷物を置いて構える。それは、武術も何も習っていない我流の構えだが、そこに隙と呼べるところがほとんどない。

 

「…………」

 

 それを見た月読はすぐに帯から刀を鞘ごと取り出すと杖のようにする。それは、もうこれ以上何かをする気は無いという意思表示。

 なぎさ達はそれを見てすぐに普通の体勢に戻り、零二もまた構えを解いて荷物を手に取る。

 

「それで、何の用だよ」

 

 零二が不機嫌そうに言う。

 いきなり首に刀を当てられそうになったのだ。不満の一つや二つあるのは当然だ。

 月読は一瞬だが、言った方が良いのかどうかを少しだけ悩んでから口を開く。

 

「貴方は……この世界のことをどこまで把握していますか?」

「オレ達を転生させた奴が言っていたことまでだ」

「……つまり、この世界について全く把握していないと……」

「そうだ……」

 

 零二が月読の言葉に答える。それに月読達はこの後どうするかを考えようとするが、それよりも早く零二が口を開いた。

 

「そっちは随分と詳しそうだな?大凡、元から知っていたかそれとも……今世での家がそういうのに関わっているところか?」

「ーーーーっ!?どうして……」

「『それを知っていのか?』か?……生憎、知っていたんじゃなくてただの推測だ。まぁ推測の域を出ていなかったんだが、その反応じゃあ当たりみたいだな」

 

 してやったりとでも言いたげな顔で零二が月読達に言うと月読達はしまったとでも言いたげな顔をするがもう遅い。

 

「…………」

「…………」

 

 互いに何も話さない時間が続く。

 何を話せばいいのか分からない訳ではない。ただ、どう切り出せばいいのか分からなくなっただけなのだ。

 5分くらいだろうか?しばらく沈黙を保っていた零二と月読達だったが先にその沈黙を破ったのは月読だった。

 

「……(わたくし)達を転生させた『神』が説明したのは幻獣や悪魔などの人外がいるという事だけです。この世界には、悪魔や幻獣以外のものが存在します」

 

 ぽつりぽつりと月読が言葉を発していく。それを聞きながら零二は頭の中でそれらの情報を整頓しながら目の前の月読達についての考察も進めていく。

 

「この世界には悪魔以外にも天使や悪魔、妖怪とそして神と呼ばれる存在などがいます。

 勿論、この世界の神は(わたくし)達を転生させた神とは違います」

「だろうな」

「……そして、(わたくし)達はその中の神……正確には『日本神話勢力』に所属しています」

「……『日本神話勢力』ね、ってことは『北欧神話』とか『ギリシャ神話』の勢力もあるってことか」

「……はい、ありますが今はその話は良いです。

 今日貴方のところに来た理由は……まぁ、上の人から貴方に会いに行けと命令されたからです」

「それで、何でいきなり首筋に刀を当てられそうになるんだよ」

「それはーーーー」

 

 零二の質問に月読は言っていいものか悩むが、それも数秒だけ。一旦深呼吸をすると月読はその質問の答えを言った。

 

「ーーーーこれまで、会ってきた転生者たちの大半が出会ってすぐに攻撃してきたからです」

 

 その言葉に零二はため息を吐いた。

 何のためになどの疑問が零二の頭の中に現れるが、それはどうでも良いものだと頭の片隅に置く。

 

「……何て言うか、過激だな」

「はい」

 

 疲れたように答える月読に零二は少しだけ同情するが、すぐに自分が持っているものを思い出す。

 それと同時に月読も零二が何かを持っていたことを思い出し本題へと入る。

 

「……(わたくし)達が今日ここまで来たのは貴方に質問があるからです」

「質問?」

「はい。貴方は……この世界で何をするつもりですか?」

 

 月読が薄っすらと目を開ける。

 たったそれだけの動作。だが、零二の本能はその動作だけで危険信号を零二の脳へと伝える。

 本能が距離を取れと言うが、零二はそれを理性で押さえつける。

 ここで引いては駄目だと、目を逸らしてはいけないと理性が本能を無理矢理押さえつける。

 数秒ほど、静寂が周囲を支配する。油断なくこちらを見据えるなぎさ達を視界の隅に入れながら零二は月読の質問の答えを言った。

 

「別に……何もしねーよ」

「え……?」

「何もしねーよ。『原作』とやらにも関わらず、ただの日常を過ごしていたいだけだ。

 だから、オレは『試練』に挑むことを決断したんだ」

 

 零二の言葉に月読達は固まってしまった。

 これまで月読達が出会ったことのある転生者達はその誰もが「ハーレムを作る」「原作を変える」といったようなことしか言ってこなかった。

 綺麗事を並べていた転生者もいたが、結局のところそれをやってハーレムを作るのが目的だった。

 

「これまでお前らが会って来た転生者がどんな奴なのか知らないし興味もない。オレは今の日常を壊されなければ何だって良いんだ」

「それは、世界の危機だとしてもですか?」

「当たり前だろ?」

 

 月読の問いに零二はさも当然のように言った。

 世界の危機と日常、正義感の強い人間であれば恐らく世界の危機を優先するとでも言うだろうが零二はそんなものよりも日常の方を選ぶ。

 

「目的は達したろ?なら早く帰ってくれると助かるんだけどな」

「……そうですね。少なくとも最低限の目的は達成できたので(わたくし)達はこれで」

 

 そう言って月読達が零二とすれ違うようにして歩み始める。

 零二はそれを横目に見ながら月読達に声をかける。

 

「精々気をつけろよ、お前らの敵は……外だけじゃないんだろ?」

「「「「……っ!?」」」」

 

 零二の言葉に月読達は足を止めて零二の方を見るが、零二はすでに自分の家の中へと入って行ってしまった。

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