どうやら私は強くなりすぎたらしいです。 作:丸いピンクのアイツ
これからも精進していきますのでよろしくお願いします!
......正直なところ一話目でこんなお気に入りつくと思わなかったから内心ビクビクしてます。
私が目覚めてから13億759万8760年と56日目。
最近、空を飛ぶ事など様々な用途に用いていたエネルギー以外のエネルギーがまだあることに気が付いた。
今までのエネルギーは半透明な白色だったけど、それとは別に赤いエネルギーが体の外側に近い場所と青色のエネルギーが体の中心にあるのだ。
物は試しと放出してみると、前世の頃よくやってた東方の妖力弾と霊力弾にそっくりだったので、それぞれ赤い方を妖力、青い方を霊力とした。
これを踏まえて白っぽいのにも適当に『白力』と名前をつけることにした。
これで暫くの間、暇を潰せそうだ。
21億3424万1年と298日目。
この頃、なかなか私の脳みそは性能が高いと感じている。
理由は、カレンダーも無しに目が覚めてからの日数を数えて記憶したり、未だ体も人間だった時の知識やサブカルチャーに関する細かいネタを覚えているからである。
ついでにあともう一つ、陸が出来た。多分後々ヌー大陸とか呼ばれて伝説になるやつ。
海しかなくて流石に飽き飽きしていたので正直凄く嬉しい。
この広さならエネルギーの増幅や操作の練習するのに不便は無いだろう。
36億375万64年と193日目。
大陸が沈んだ。
結果としてただの一度もオカルト的な超文明や海底都市などが造られる事は無く、それ以前に生物すら現れる事は無かった。
それ以来、寝なし草の日々を過ごしていたが、景色も良くて自然豊かな山を見つけたのでそこに根を下ろす事にした。
土壌はあまり良くなかったが、土壌に注入すると野菜の育ちが良くなったり、火山を強制的に噴火させることができる等、私が思ってるより便利だった『白力』を使って農業をし、野菜を作ってみよう。
実のところ、今の体には食事や睡眠などは必要のないものだが、できるだけ人間らしい生活することにしている。
そして今回の発見から謎の白いエネルギーを、『白力』改め『自然力』とすることにした。
明日は家でも作ろうか。
39億4398万4571年と116日目。
近頃、一人が寂しいと感じる気持ちが強くなってきた。
これだけの時間を過ごして何を今更と感じるだろうが理由は分かっている。
やることがなくなってしまったのだ。体に溢れる三色のエネルギーは、これ以上増えそうにも無いし、制御に関しても大きさ、速度、形状自由自在にできるようになった。
人間性を保とうと始めた人間らしい生活は、この体になる前には当たり前にあった他人との関わりが一切ないことに気づき、一人の寂しさを一層感じさせただけだった。
いつまでこんな日々が続くのだろう。
39億9741万42年と348日目。
最近、雪が続いている。何度目かの氷河期に入ったんだろう。氷河期は嫌いだ。この虚しいだけの日々から更に景色までも奪ってしまう。
この苦痛を少しでも和らげる為には寝るぐらいしか出来そうにない。
39億9999万1008年と3日目。
ようやく氷河期が終わった。
そう思いながら既に、惰性となりつつある畑の手入れをしようと、山の麓に建てた家を出ると犬耳の天狗とばったり出会った。
嬉しさのあまり、泣きながらその天狗に抱きついていたら天狗はいつの間にか気絶してしまっていた。
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私は哨戒天狗の一人「楓」。今日からが初めての哨戒任務だ。
哨戒の任に就くと知ったときはとても嬉しかった。何故なら哨戒を任されるということはそれほど信頼されているということに他ならず、一人前として扱われる事になるからだ。
重圧が無いとは言えないが、それよりも認めてくれたという事実に気分が高揚していた。
配属先は新しく縄張りとした山の麓近くの前線付近。戦闘の危険性がかなり高い場所になるが、それははつまるところ、余程私の技量を信頼してくれてる証でもある。
そんな初めての哨戒任務で早速私はある建物を見つけた。
人一人が住むのには少し大きいが二人が住むには小さすぎると言った具合の家ではあるが、気になるのはその様式で、壁は木製ではなく石を薄く伸ばしてあるなど、河童達ですら出来ないだろう技術だ。
そこらの人間達が造るには技術力が高すぎる。
「これは...一体?」
巡回経路からは少し離れているが私達の縄張りであることに変わりはない。人がいるならば早急に立ち去って貰おう。
そんなこと考えて謎の家に近づいた時だった。
ソレは現れた。
自分より一回り程小さな身体。あどけなくも、何かを悟ったような顔。一見しただけでは人畜無害にも見える見た目からは、強者が力を抑える時に見せる、全身を包む、熟れた紅葉のような紅い妖力。
その
――間違いない、アレはこの山の全員を以て立ち向かう敵だ。一個人で勝てる相手では...無い。
今し方起きたばかりなのだろうか。幸い、向こうはまだ此方には気付いていない。今すぐ皆に報告をすれば間に合うかも知れない!
そう思い、報告に戻ろうとした時。
ソレと目が合ってしまった。
恐怖で視界が歪む。足が思うように動かない。相手は此方の様子を楽しんでいるのか、未だ動きを見せない。
逃げろ。早く、伝えなければ。動け。
ソレが此方の方へ駆け出す。私の身体に抱きつく。視界が黒く染まって、そのまま意識も闇の中に沈んでいくのを感じた。
___気が付くと、ソレと見つめ合っていた。
何故まだ私は生きてるのか、まさかコイツ意識があるままの相手を食べるのが好きだとかそういう悪趣味な妖怪なのだろうか。そんな死に方をするくらいなら自害した方が、いやそれは悪手だ何としてでもこの危険を皆に__
意識を取り戻した直後とは思えない速度で様々なことを一瞬の内に考えていたが、ソレの様子を見ると自分が決定的な思い違いをしていたことに気づく。
「よかった...気がついた...!」
ソレ...いや、彼女は目尻に涙を貯めてながら、とても嬉しそうにそう言ったのだ。
そしてそのまま涙を流し始めた。その顔は見た目相応の子供の様で、とても此方に害をなすようには見えない。
単に私が未熟で彼女の思惑に気付いていないだけかもしれないが、私には彼女がまるで人肌恋しい一人ぼっちの子供にしか見えなかった。思えば、気を失う前にぼんやりと見えた彼女の動きも、傷ついた母親を心配する子鹿に似ていた気がする。
...この山で最強の強さを持っている鬼の四天王の御仁達よりも色濃い妖力から、とても守られる立場ではないのだろうが。
一体、彼女に何があったのか。何故これ程までに過剰な反応を見せるのだろうか?
理由は分からないが何か深い訳が在るのかもしれない。
と、彼女が話し掛けてきた。どうやら話し相手になって欲しいらしい。私は少し悩んだが、二つの理由から了承することにした。
一つは彼女が本当に悪意を持っていないか多少なりとも見定めるため。私としては問題ないと確信しているが職業上優しそうだからと言うだけで素通りさせる訳にはいかない。
もう一つは完全に個人の好奇心でしかないが、私自身が彼女を気になって来ていた。
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やっと、やっと話が通じる相手が見つかった。この娘が気を失った時はどうなるかと思ったけど、どうやら無事みたいで良かった。
今思えば、初対面の人(?)に飛び付くなんてびっくりされても可笑しくない。気絶するくらいに驚かれるのは心外だけど。
...にしてもこの和装みたいな格好と白っぽい髪と犬の耳、まるで東方Projectで見た白狼天狗みたいだ。そういう世界線なのかな?
もしそうなら、あそこの天狗ってかなり縄張り意識が強くて排他的主義な一族だった気がする。
いつの間に。少なくとも250万くらい前は何にもいないただの山だったから、私の寝てる間にこの近くにみんなで住み始めていたのかな?
それとも気付かない内に
「あの、起きてすぐで悪いけど天狗さん」
「何でしょうか?」
私を追い出す為に来たのか不安になり、目の前の天狗に聞いてみると、
「この辺りは、つい一昨日に領地にしたばかりですね」
やっぱり。あと数日寝っぱなしだったら、いつの間にか天狗に殺されていたかもしれない。
自分以外の知恵ある生き物に会えたのは嬉しいけど、家に住めなくなるのはちょっと困るなあ。ダメ元でこの辺りには手出ししないようにしてくれないか聞いてみようか。
「うーん、この辺の木がない所くらいでいいから、どう
にか手出ししないようにしてくれないかな?」
そう聞くと白狼天狗は、
「いえ、私達も貴方ほどの妖怪がいるとは知らず勝手な事を。とはいえ、私もまだまだ下っ端の身。上方に掛け合って来ます故、暫しお待ち下さい」
と言って、山の上へと登って行ってしまった。
「あ、名前聞いてなかった...」
そういえば、と思った頃にはあの娘の姿は見えなくなっていた。
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10分程経っただろうか、白狼天狗の娘が戻って来た。
「この土地の話についての話ですが...」
了解は貰えたのか、貰えなかったのか。全てはこの娘の次の一言で決まる。
「一つを此方からの要望をのんでくれれば、許可してもいいとの御達しが降りました。」
そんな私の張り詰めた気持ちはあっさり霧散した。
え、そんな言うこと一つ聞くだけでいいのかな?...あ、要望の内容にも寄るのか。
もし、『山の住民との一切の交流を禁ずる』などと言われたら40億年近く待ち焦がれた希望が遠のいてしまう。
どうかそれだけは許して欲しい。
「要望の内容ですが...そのですね...」
...気のせいかな、何だか困ったような、呆れたような表情をしている気がする。
若干のタメと溜め息を経て、白狼天狗が要望の内容を口にする。
「此処の山の鬼の四天王の一人が少しばかりの手合わせを頼みたいと仰られまして...申し遅れましたが、勝ち負けに関しては問題ないそうです。唯自分より強い奴と闘いたいだけらしいので」
どうやら、杞憂で済んだみたいだ。それにしても手合わせかぁ。今までずっと一人きりだったから、どれくらいの実力があるかも確認しておきたいな。
それにしても、何でこの娘はこんなに疲れたような表情をしているんだろ。
「...はぁまた私達が後片付けをしないといけないんですね...あの人毎回全力だから周囲を気にしなさすぎるんですよ...」
少し気になっていると、死んだ目でボソボソとそう呟いているのが聞こえてきた。
...上司に参ってるのは上下関係がある限り、どこでも同じらしい。
「はぁ......手合わせの場所ですが山頂で、今すぐやりたいとのことなのでついてきて頂けませんか?」
特に断る理由もないのでコクリと頷いた私は、会話と言う名の愚痴を聞く代わりに、山についての詳しい説明や『楓』と言う名前などを聞き出しつつ、山の頂上へと案内されるのであった。