どうやら私は強くなりすぎたらしいです。   作:丸いピンクのアイツ

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お久しぶりです。先ず始めに、様々な諸事情により執筆活動に取り掛かれなかったことをお詫びしたいと思います。これからはこのような事が無いよう、頑張って行きますのでどうかこれからもこの小説を読んでくださると幸いです。

再開に当たり、2話の内容を大きく変えました。お読みいただけると幸いです。



どうやら鬼とのタイマンらしいです。

 地上からは楓さんと同じ白狼天狗達や淡い青色の服と緑の帽子を被った河童達、空からは筆と紙の束を握った烏天狗達といった何処かで見た覚えのある山の住民達を尻目に、山を登る事数時間。

 三十分程にして吐き出す物を出し切ったのか楓さんの愚痴もすっかりとなりを潜め、ほんのりと秋めいた木々がひしめくばかりだった変化の無い光景は突如、拓けた土地に姿を変える。その広さはサッカーをするには少し小さいが、野球なら十分と言った面積を持っていた。

 広場と言って差し支えない山の頂上付近に突き出た台地の周りには、いつの間に情報を得たのか天狗の記者や様々な種族が入り交じった野次馬達が既に陣取っている。

 その中央にて待ち構えていたのは、一本の長い角を生やし、銀杏の色合いを彷彿とさせる髪を腰まで伸ばした旧製の運動着姿の女性。

 運動着という時代に似合わぬ締まらない格好だが、その気迫と特徴的な角からは彼女が力の強さを自慢とする種族である鬼であることが容易に解る。

 その女性は私を数秒じっと見て、何か納得したような顔をし、

 

「来たか...自己紹介なんて野暮ったいもんは置いといて、さっさとおっ始めようぜ......来な...!」

 

 それだけを言って腰を低く落として、戦闘の態勢を整えた。

 

 それに習って私も構えを取るが、恐竜やら獣等を今まで相手にしていた為、対人に関しては未だ素人なので私の構えは見様見真似の付け焼き刃でしかない。ただ、相手はこちらの初撃を見るようで、今は全く動きを見せない。

 初撃を受けてこっちの力量を推し量ろうというところか。なら、こっちも本気で行くべきだろう。

 凡そ二十米の距離を三歩で詰め、渾身の右のストレートを放つ...はずだったが、

 

「――っ!」

 

 致命的とも言えるだろう。私は攻撃の瞬間、無意識に力を抜いてしまった。

 前世では喧嘩の一つもした事がないのもあり、初めての対人戦で躊躇してしまった。何だか初めて動物を狩ろうと恐竜を相手にした時も同じミスをした記憶がある。やはりそう簡単に(性格)は変わらないのだろう。

 既に私は攻撃を止められた後、如何に素早く防御に移れるかを考えていた。

 私が多少力を抜いたところでその威力は相当の強さであると自負しているが、相手は伝説に語られるあの鬼だ。力比べで勝てるとは到底思えない。

 

 

 

 ――そう思っていた時期が私にもありました。

 

 いつまでも防御をされた時の衝撃が来ないことを疑問に思い、ふと意識の海に沈みかけていた思考を現実に引っ張りあげると、四天王と呼ばれたはずの鬼が周りにいた野次馬の中に吹っ飛んでいく姿が見え、私は思わず右腕を振り切ったまま固まってしまった。

 

どうやら私は自分の予想以上に力があるらしい。

 

 

 

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 口に溜まった血を吐き出して、心配の声を掛ける部下達を制し、目の前の白い少女に再び目線を向ける。試合前に見た時は私と同じ程度だった妖力が、明らかに増えている。

 成程、楓から相当の強さだとは訊いていたが、本来の強さを隠して生活してたみたいだな。こんな近場に私以上の強さを持っているかもしれない奴が住んでんのかと思ってたが、妖力の扱いは相当のものみたいだな。まさか私以上の力が出るとは思ってなかったけどな。

 ...何故だか殴った本人も驚いてる気がするが。

 唯、これ程の力を持っている癖に動きは素人同然。まるで初めて他人と闘ったみてえな、違うな。技術を磨く必要がなかったってとこか?

 まあ、今目の前の勝負には関係無い事。今すべき事はこの闘いを全力で楽しむ事よ。

 そうと決まれば攻撃有るのみってねえ!

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 最初の一撃以降相手も本気を出したらしく、嵐のようなラッシュを放ってくる。実際、一撃一撃に風圧が伴っていて危険極まりない。

 私の頭の回転の速さのお陰で躱すことこそできているものの、攻勢に移ることが出来ずにいる。力こそこちらの方が上だが、なにしろこっちは対人に関しては全くの素人。戦闘のいろははからっきしである。

 この状況をどう脱却するか考えている間にも右から左から殴打と蹴撃が舞い踊る。その暴力の嵐をなんとか躱し、ようやく一瞬の合間を見つけることが出来た。

 この機会を逃すまいと反撃の一撃をねじ込むが、最初の一撃の衝撃ですっかり萎縮してしまった私の一撃は簡単にいなされてしまい、カウンターの掌底を顎に貰うことになる。

 その掌底は鬼を吹き飛ばす力を持った強靭な身体に傷をつけることこそ出来ないものの、揺らされた脳は平衡感覚を失い世界が歪む。その直後、急に天地がひっくり返り背中に衝撃が走る。恐らく背負い投げだろう。歪んだ世界の中で無意識に地面を転がり勢いで立ち上がる。

 ぼやけた世界が元通りに戻る。自分の身体の回復の早さに自分で感謝しつつ、地面を這ってなお汚れの一つもなく真っ白な衣装の袖を振り牽制の為に火力の殆どを削った妖力弾を放つ。

 やっぱり、自分には技術が足りない。原因はよく分かる。今までは技術が無くとも力だけでどうとでもなったし、今放った妖力等の扱いに重きを置いていた。それ以外にも原因は多々あるが、最大の原因は間違いなく対人戦の経験が一切とないことだ。けど、今その事を嘆いても何も始まらない。

 

 ――なら、今ここで学習するしかない。幸い、動きを見切るだけの目とそれを実践出来る身体能力はある。そして、学ぶための例は最高のものが目の前にある。

 

 

 

 

 ――学べ、勝機はそこに或る。

 

 

 

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「いやーほんっと、楽しかったよ!」

 

 そう言いながら、とんでもない度数の酒を浴びるように呑む目の前の鬼は先程、激闘を繰り広げた女性、星熊勇儀。

 

「あれだけ本気を出したのは何時以来かねぇ?全く、とんでもない速度で人の技を真似しやがってぇ。えぇ?」

 

 帽子を脱いだ私の頭を撫でて揶揄う勇儀と私の周りでは新しい山の住民を歓迎する妖怪達が食べて呑んで騒いでいる。

 ここは山の頂上から少し降りた屋敷の中の宴会場。今回は闘いを終えた私と勇儀を主役とした宴会を開いている真っ最中である。

 といっても私はこの身体になるより前ですら酒を呑んだことの無い身。だから会場の中央を離れ縁側で月を眺めていたのだが、私と話をしに先程勇儀がやって来たのだ。

 

「もーやめて下さいよぉ、私のほうが年上なんですからね」

 

「いやなぁ、確かにその妖力なら私よりも年上なのは納得なんだが、流石に40億近いとなるとどうにも実感が湧かなくてなぁ」

 

 昨日の敵は何とやら。あの闘いを終えた私と勇儀は親友のような間柄になっていた。まあ、これからも何度か本気でやり合おうと約束を取り付けているのだけど。

 まだまだ学べることは沢山あるし、将来人を攻撃しなければならない時に躊躇する訳にもいかないだろう。

 

「そういや、まだアンタの名前を聞いてなかったな。なんて名前なんだ?」

 

 思い出したように尋ねた勇儀の質問に困惑してしまう。

 

「えっと...今までずっと一人だったからまだ名前は無いんだよね」

 

「おっと、そういやそうだったな。...なら今決めればいいんじゃないか?」

 

 名前かぁ。今後は山の住民との付き合いもあるし名前が無いと何かと不便かな。でも自分で決めるとなると迷うなー......そうだ!

 

「私はちょっとイメージ湧かないから、勇儀が付けてくれない?」

 

「いめえじ?なんだそら。っていやいや、他人に名前付けて貰うのはやめとけ」

 

「?なんでですか?」

 

 勇儀ならいい感じの名前付けれそうなのに。

 

「名は体をあらわすって言うだろ?特に妖怪は名前の影響受けやすいんだよ。だから自分がどう生きて、どういう意志を持って行きたいかが名前で大方決まるから、極力自分の家族がこうあって欲しいって付けたり自分自身で名前付けんのがいいんだよ」

 

 そっか、どう生きて、どんな意志を持って行きたいか、ね。そうだなぁ、

 

「私は...私は、今までの一人きりの時間を取り戻すくらいに世界と...皆と楽しくしたいかな」

 

「ふふっ、そうだな。何か妖怪らしくはないけど、アンタらしいな」

 

「あっ、今笑ったなー」

 

 私は勇儀が笑ったことに若干の不服を申し立てつつ、生前遊びの代表にまでなった、ゲームの中でも遊びを極めた存在を思い出す。ゲームの全てを遊び尽くす、ツールを用いた人達の総称。Tool Assisted Speedrun又はSuperplay略してTAS。正体不明にしてその正体は諸説あるが、一説にはロシア人の金髪幼女とも言われる。

 なんの因果か私の姿もロシアの民族衣装のコサック帽に近い物や防寒具を着て、金色の髪を持っている。

 それなら、遊んで遊んで遊び尽くすために、遊びを極めた遊び人の名前を使わせてもらおう。

 

「......ツィール・アステード・ラプレイン。私は今日からそう名乗ることにする」

 

 並び替えただけの適当な言葉。だけど、意味を持った私の名前。

 

「そうか、いい名前だ」

 

「あ、ありがとう」

 

 勇儀の心からの感想と今までと違う少女然とした笑顔に少し気恥しくなり、空を見上げると金色に耀く月と白く流れる天の川が綺麗私の瞳に映った。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、見つけましたよ!えーっと...」

 

「おっ楓か。こいつの名前か?それならついさっき、ツィールなんちゃらって名前に決めたぞ」

 

「へー名無しだったんですねぇ。唯、ついさっき決めたばかりの名前を忘れるのはどうなんですかね」

 

 ...出来ればしばらく静かにしてて欲しかったかな。雰囲気ぶち壊しだよ。

 

「ツィールさんは呑まないんですか?」

 

「えっいや、お酒はまだ呑んだこと無くて」

 

 酒に呑まれるって言われるくらいだからなんだか飲む勇気が出ないと言うか...

 

「いいじゃねえか、ほら何事も挑戦だって」

 

 そう言いながら私の肩を押さえつける勇儀の手には、大分キツイ匂いのする徳利が握られている。

振りほどこうにもまだ力の加減がつかないこの身体では下手をすることも出来ない。

 

「ほら、一気に行ってみろ。大丈夫大丈夫、水みたいなもんだ!」

 

「そうです。最初は不味くてもその内、美味しくなってきますから!」

 

 それ二つとも酒呑みの自論だから。大概ダメなやつだから。

 あっ、何だか酒の匂い嗅いでたら頭がふわふわしてきた。本格的にヤバいやつだこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の事を自分では覚えていないがどうやら私は妖怪、それも頭に大がつく強さにも関わらず、その辺の弱小妖怪よりも酒に弱いらしい。そして酔った時は男女構わずベタベタと甘えにいくとのことだった。

 これを酒を呑まない理由と勘違いしたのか勇儀と楓ちゃんが謝りに来たが取り敢えず気にしないでと言っておいた。

 

 




うちの子裏設定その1

 今回飲まされたお酒は鬼のお酒ということもありますが、主人公ちゃん改めツィールちゃんは現世の缶ビール一本で顔真っ赤になる程度の弱さです。クソザコ。
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