始めましてな人、初めまして~。大海ですよ~。
今更になって、転生物ってもんに興味が出ましたゆえ、短編ってことで書いてみましたわ。
何番煎じかは知らんが、ご興味あらば、どうぞ~。
そんじゃら、行ってらっしゃい。
「ははは……マジかよ……」
「……」
「……ターン……エンド」
突然話が始まったと思ったら、初っ端からいきなり決闘シーンていうのもどうかとは思うわ。
けどや、タイトルからも分かる通り、似たような小説はいくらもあることだし。多少の創意工夫には目をつむって読んでほしい。
んでまあ、私がこの世界に転生して、今がその最初の決闘ってわけなんじゃけど……
やっぱ、まずはこうなるまでの経緯を書くべきなんだろうやな。
まあそういうわけだから、若干のこと時間を戻すでよ……
……
…………
………………
どこまでも、どこまでも……
その景色は、目の前のすぐそばから、奥の奥、向こう側まで伸びている。
どこまでも、どこまでも……
雪のよう、とは言えない。煙のよう、とも違う。
どこまでも、どこまでも……
形も景色も、陰すら作り出さない、そんな真っ白だった。
光では決してない。かといって、物質であるとも言い切れない。
そんな、自然に見えて、あまりに不自然な、真っ白に包まれている、そんな場所。
どこまでも、どこまでも……
例えも比喩も見つけられない、ただただ白いとしか言いようのない、真っ白。
そんな真っ白が、手の届きそうにない向こう側まで伸びる空間。
どこまでも、どこまでも……
「……なーんて無駄に小説的な思考してる場合じゃねーやさ。なにここ?」
思わず声に出ちまったけれど……いやホント、どこなのよここ?
少なくとも室内には見えんな。
……いやまあ、室内じゃなきゃ、こんなわざとらしい空間が作れそうにはなさそうな気もするけれども。
ただただ真っ白な景色が奥に下上、右左、全部に、どこまでも伸びてる。
今立ってる場所が地面なんかも怪しいな。ジャンプしたら硬いもんに着地するから、少なくとも浮いてるとも思えんが……
「な~してこんな所いるやさ……私は確か、仕事帰りだったはずやけどや……」
いつも通り、好きでもない面倒くさい仕事して、常態化した残業(手当は出る)も我慢しつつ終わらせて、そんで会社を出て。
そんで家路の途中、いつもの自販機でジュースを買って、それを飲みつつ帰ってた時、突然目の前が眩しくなって……
「せや! 直後に体中が痛くなって、そんでなんも見えんくなった後にここにいたんだ……てことはなに? 私死んだの?」
――そゆこと~。やっと分かった?
「うん分かった。ほんであんたが死後の世界の神様ってわけな?」
――そゆこと~……てか、神様見といて、何そのつまらんリアクション?
「今更神様見たくらいで、驚くもクソもねーやさ。死後を描いたフィクションなんぞ、この世に腐るほどあらぁな」
――まー、そうなんだけどねぇ……初めてだよ、こんな可愛げのない死人は。
「可愛げある顔に見える?」
――見えない……まあ、どうでもいいけど。とりあえずオマエ、今から転生な。
「……あ? 転生? 成仏すんじゃねーの?」
――成仏したいってんなら構わんが、オマエは特別に選ばれた例外なわけ。何事にもあるでしょ? 例外。
「そりゃあ、まあ、あるろうね。何事も……」
そう言いつつ、改めてこの自称神様の見た目をチェック……
――自称じゃねーし。一応本物だし。
仮に本物だってんなら、私のような普通の人間の目に見えてる、この姿も本当の姿なのかは怪しいもんだがや。
見た目は普通の人だね。白い服着た。
若くも見えるが、緩い姿ながらも厳かな雰囲気が全身からにじみ出ちょる。
確かに、神様って言われりゃ納得もできらぁ。
会社の社長って言われても納得できそうだけれども。
――一言多いよ。ほんで、転生するの? しないの?
「んなもん、行先がどこかにもよらぁーな。ていうか、やっぱ私って死んだってこと?」
――そ。ひき逃げ事故でな。
「え? ひき逃げ?」
――飲酒運転のな。べろんべろんだったのが、轢いたところでやっと酔いが醒めて、慌てて逃げたみたいね。もっとも、目撃者いたし、その人が通報してすぐに捕まったけど。
「……で、そいつはちったぁ反省しとるんけ?」
――全然。今も留置場の中で、何で捕まったのか分からいって態度で踏ん反り返ってるよ。悪いのは轢いた自分じゃなくて、轢かれたオマエが悪いって。どうにかして心神喪失かなんかで不起訴にできねーかって、無い知恵絞って模索してる。
「うむ……」
――おい、どこ行く気?」
「帰る。ほんでそいつ呪い殺してくる」
――待ーて待ーて! 本気かお前?
「当たり前やし……酒でべろんべろんの状態で運転してた上に私ひき殺しておいて、おまけに反省の色がまるで無いだぁ? ここで悪霊にならずしてなんになるってのさ?」
――オマエ……悪霊になる気?
「うむ」
――悪霊って、どんなか分かってる?
「無論。憎い相手を呪って、さんざ恐怖と苦痛をその身に刻み付けた生き地獄を味わわせたのち、最後は妊婦に憑りついて赤ん坊として生まれかわるんやろ?」
――最後のはホラー映画の見すぎだけど……まあ、死んだ状態で生き物苦しめることは、できなくはないけど、そんなことしたら、天国に行けないよ。
「……天国? あるの?」
――ある。つっても、場所じゃなくて、死後のシステムを便宜上そう呼んでるだけだけど。
「へー……どんなのよそれ?」
――えっと……簡単に言えば、生き物が死後、人間に生まれ変わるのが『天国行き』。逆に人間以外の動植物に生まれ変わるのが『地獄行き』。
「条件は?」
――人間が抱くイメージの通りよ。生前真っ当に生きて、人間に生まれ変わっても問題ないって判断された魂は自然と天国行きが決まる。人間の中には、生まれつき、とびきり優秀で才能持った奴いるでしょう? そういうのは大抵、前世が人間だった奴よ。
「なーる、そういう理屈。そりゃあ、確かに生前にも人の人生歩んだ経験がありゃ、生まれ変わった後も上手くやってけるわな」
――逆に、生前に悪行を重ねて腐りきった人間の魂は、地獄行きになって動植物に生まれ変わる。そんで、動植物になって、その罪があがなわれたって判断されたら人間に生まれ変わるのが許される。人間の中のバカや無能って呼ばれる奴らは、そうやって動植物から生まれ変わった奴らが大半だ。
「え……てことは、私の前世、動植物だったの?」
――んなことまで知るか。
「で、なんの動物になるのよ?」
――生き物にとって最大の罰は?
「死ねないこと?」
――正解。何の動物になるかは、罪の重さで決まる。罪が軽いほど、寿命が短くてすぐに次へ生まれ変われる生き物になる。微生物や雑草、虫、魚、陸上動物ならネズミとかね。この辺ならまだ、ギリギリ人間だった記憶が残る。重い罪なほど、デカくて長生きな奴になる。熊とかライオンとか像とかクジラとか。この辺になれば、完全に人間だった記憶は忘れちまうだろうな。そして、あまりに罪が重いと判断された魂が生まれ変わるのが……
「亀……いや、木か?」
――正解。もちろん、木だって生きてる以上寿命はあるから、罪の重さによって種類は変わるけど、基本は何十年単位。人間以上の寿命持った木も多い。
「だろうね」
――そんな、突っ立ったまま動けなくて、年単位でグングン伸びてくしかない木に、生前の意識とか感覚のまま魂を放り込むわけだ。
「うわー……聞いただけでシンドそう」
――そりゃあ、シンドイだろうね。死ななきゃ生まれ変われないのは人間や動物と一緒だし……綺麗な自然公園なんか歩いてみろ。神様にしか聞こえない声だが、周りに生えてる木が、目の前を笑って歩いてる親子に、殺してくれー、燃やしてくれーって叫んでんだから。
「うわぁ……夢はあるけど、希望はねーのな」
――最初っから悪いことしなきゃ、そんなことにはならないってことだ。真っ当な人生歩んで、何回も人生歩んできた奴らは、偉業を成したり偉人になったりしてる。十回以上天国行きになった魂は、オレみたいな神様に生まれ変わる権利を持てる。
「十回か……まあ、要するに、一回でも人間として生きて、天国行きになったなら、以降の人生勝ち確ってわけね」
――そうでもない……いくら天国行きになったって言っても、その後の生まれる先はランダムだからな。
「ああ……生まれた先にもよっちゃうわけか」
――そゆこと~。過去に何人もいたからな。二度三度人間に生まれ変わって、期待されながら天国行きが決まった魂の生まれた先が毒親のもとで、四つや五つで虐待死した魂とか。極貧だったり、周りの人間が劣悪だったせいで、真っ当に成長することができず悪の道に走って、しかもなまじ天国行きを繰り返したことで優秀なもんだから、悪の親玉になって死後地獄行きの大木送りになった奴とか。
「虐待死した魂の死後は?」
――真っ当な人生なんて送る暇もなかったからな。自動的に地獄行きになる。まあ、罪を犯す暇もなかったから、適当な虫とか微生物になって、すぐ人間に生まれ変わるだろうけど。
「本当、夢はあっても希望はねーのな。死ぬってのは……」
――それで、本題に入るけど、今からオマエが行くの、アニメ『遊戯王GX』の世界な。
「エライ急に話が戻ったな」
――うるせー。死後のシステムの説明だけでページ割きすぎなんだよ。これ以上は読者が飽きるだろうが。
「それもそうね。私も思い出した。これからひき逃げ犯呪い殺しに……」
――だから待たんかい! 転生しろっつってんだろーがよ。
「……理由は?」
――言ったろ。何事も例外はある。それを説明する義務は神様にはない。
「……」
――どうしても元いた世界に戻って悪霊になりたいってんなら、敢えて止めはしない。別に、オマエが地獄行きになろうが、オレには何の得も損もないからな。
「……まあ、話したくないってんなら、私も理由は聞かねーやさ。けどや、なして遊戯王GX? 自慢じゃないが、私、あんまカード上手くねーぞ。むしろ下手くそな方だ。引退して何年も経ってるし」
――ゲームとかアプリはしてたろ? アニメ世界の奴らに比べりゃ、遥かに上手い。
「ハハハハ! それを言っちゃあお終めぇよ」
――それに、オマエ生前、遊戯王の二次創作書いてたろ? ろくに読まれもしないくせに何年も。
「悪かったな。他に趣味がねーんだよ」
――だから、転生させるんなら遊戯王にしてやろうって思ったんだよ。それとも、他に行きたい世界でもある?
「……サイレントヒル」
――マジかオマエ?
「ウソに決まっとろう。本気にすな……確かに、他には思いつかんね」
――GX以外に行きたいシリーズは?
「まあ、確かに選択肢はねーやな。初代はそもそも決闘自体珍しいレベルだし、DMは現実に近いだろうけど退屈そう。5D'Sは荒廃しすぎ。ZEXALは明るいけど肌に合わんし。VRAINSはIT苦手だから却下」
――ARC-Vは?
「論外」
初期のころだけなら、歴代シリーズ中でも一番好きなくらいだ。
けど、今更ここで書くまでもないくらい、中盤から終盤にかけてのダメさ加減と言ったら……
「……アカン。思い出したら腹立ってきた。やっぱ戻ってひき逃げ犯と一緒にARC-Vのスタッフ全員呪い殺しに……」
――待たんかい! ひき逃げ犯までなら見逃すが、それはさすがに逆恨みがすぎる。
「奴らが遊戯王ファンと遊矢君にした仕打ちの数々、私は生涯許さない……」
――だからって悪霊になるなっての。いい加減、転生の話しようや。
「……分かったよ。転生すりゃ良えねんろう。どうせ他に選択肢なさそうだし」
――あっさり受け入れたな。言っとくけど、元の世界に戻るって選択肢もあるんだよ? 事故とは言え、一応は真っ当な人生送ってきたオマエには、天国行きの資格もあるしな。これ、本当は言っちゃいけないんだけど……
「別にいいよ。未練や楽しみもいくつかあるが、ぶっちゃけ、元いた世界には死ぬこと以上に希望も未来も無さそうだし。あと一世紀もしたら滅んでそうだもん。滅ばないにしても、最近書いた小説みたいな世界観になるのがオチだろうよ」
――さりげなく宣伝したところで、誰も読まねーからな。
「分かってるよ。はぁー! 人気もねぇ、運もねぇ、そもそも才能がまったくねー!」
――はいはい……そんじゃ、転生するってことでいいわけね。
「そうするっつってんじゃん……にしても、アニメ世界か。病気とかはするんけ?」
――そりゃあ生きてるからな。作り物とは言え一つの世界な以上、例外なく命のルールは適用されるよ、そりゃ。
「普通に健康には気ぃ付けにゃあならんというわけか……シュ〇テクト売ってる?」
――知らんわそんなこと……なんなら、死ぬまで歯医者に行かなくて済む、歯と歯茎にしてやろうか?
「そんなことできるの?」
――仮にもこっちの都合で転生していただくわけだし。そらいくつかの特典は用意するさ。
「じゃあそれちょうだい」
――はいはい……言っとくけど、虫歯とか歯槽膿漏とかにならずに、殴られた程度なら抜けもしないってレベルだ。無理やり引き抜こうとしたり、あまりに強い衝撃なら、抜けたり砕けたりは免れないよ。
「あまりに強い衝撃って……例えば?」
――車に轢かれたりとか……
「そのくらいなら構わん。虫歯にならないってんならそれに越したことはない。虫歯を気にせずケーキが食える」
――歯磨きはしろよ。
「毎日するよ。他にも特典あるわけ?」
――欲しい特典でもあるわけ?
「……こらない肩……疲れない腰……痛くならない関節……歪まない骨格……水虫にならない足……痔にならない肛門……遠くならない目……大きさが揃った両足……」
――ジジイか! まあ、できる限り希望には沿うけど、無理のない範囲だ。今言った全部が全部ってわけにはいかないよ。
「そう? まあそれでもいいけど……つーか、転生するんならいい加減、移動しようよ。周り真っ白なせいで目が痛い」
――オマエが話を長くしたんだろうが……じゃあ、早速転生先に送るよ。タイミングはアニメ第一話の数日前。オマエにはそこで、デュエルアカデミアに受験してもらうから。
「言っとくけど、ストーリーには関わらないからな」
――好きにしろ。転生後の後のことはこっちも管轄外だ。ああ、あと、一応最初の方は、オレもサポートってことでオマエのそばにいるからな。
「ふーん……あいよ。ほんじゃら、早速……」
――ああ……生まれ変わるとしよう。
そんな会話をした後で、目を開けてられないくらい周りの白が光り出して……
……
…………
………………
「ほんで、気が付いたら家の中、と……」
明らかに、普通の一軒家のリビングって感じの場所に、私は立っちょりました。
時計を見ると、時間はどうやら朝らしい。このリビングの広さだけで、そこそこ裕福っぽいな。ゆったりとしたソファもあるし、テレビも割と大っきいし。
それだけなら、元居た世界と違いは分からんが、テレビ見てみると、元居た世界での競馬かゴルフのノリで、良い歳した殿方が大勢の観客の前で決闘してる。
決闘ディスク着けてるし、モンスターも実体化してるし。CMとか見てても、普通に『海場コーポレーション』とか『シュレイダー社』、『オメガタウン』なんてマニアックすぎる社名まで出てくる。
確かに、遊戯王の世界だわこれ。
そんな部屋の、足もとにはテーブルがあって、そこには一枚の紙きれが。
「あー……これが、この世界での私の略歴ってわけね」
んで、書かれてることを簡単にまとめると……
・年齢15歳(中学3年生)。
・両親は一年ほど前に他界。
・両親の残した遺産と生命保険金で、高校三年間は困らないだけの預貯金を持つ。
・両親以外の親族はなく、天涯孤独。
「なんでデュエルアカデミアを志望したんや……」
この世界が遊戯王だから……
そう言ってしまったら全て納得できるのがまた……
とりあえず、ここ、この子の家で間違いなさそうね。関係ない他人の家だと目も当てられん……
「……て、大事なこと忘れてた。この子は……男か」
ズボンの中身を確認後は、部屋の隅にある姿見の前に移動、と。
「ふむふむ……」
アニメ見てて、隅の方によく見かけるモブイケメンって感じかね。目立ちはしないが、よく見たら、お、あの子可愛い格好いいって、目に付きはするが印象には残らない美人……そんな感じの顔だ。
とりあえず、ブサイクだったらどうしようかと思ったけど、これなら大丈夫かね。髪の毛が青色なのはわざとらしい気がするけれど。
体の方も、無駄な贅肉は無いし、かといって痩せすぎでもない。程よく筋肉もある。ちょっと鍛えてやったら、ちょっとした細マッチョにはなるかな。決闘者には必須だ。
「……て、そういやデッキは? 神様ー?」
――はいはーい。
「うお! 普通に出てきたし……」
――心配はいらん。オマエ以外には見えもしないし、声も聞こえん。
「そ。で、カードは? まさか、遊戯王の世界に転生させといて、カードが一枚も無いなんてベリーハードモードじゃあるまいな?」
――大丈夫。カードは全部、オマエの部屋だ。
「そう……いや、どこよ私の部屋。この子はこの家の子ぉだろうけど、私は今来たばっかりなんやで?」
――二階だよ。歩いてりゃ分かる。
「案内はしてくれんのな……そう言やぁ、私が今なってるこの子って、たった今生まれた命? それとも元々いた子に私の魂が入っちゃった感じ?」
――企業秘密。
「神様の世界に企業があるんかい……む? ここかね」
話してる間に階段上って、そこにあるドアの前到着。早速ドアを開いてみてみる。
中はまあ、普通の中学生の部屋って感じだわ。
勉強机とベッドがあって、本棚にはマンガがある。携帯電話に……お、ノートパソコンあんじゃん。
「このころのOSって?」
――Window XPかな。来年辺りVistaが発売されるかなって辺りだったはず。ちなみに、当たり前だがスマホはまだ存在してないからね。
「分かってるよ。携帯電話は普通にあるんろう? むしろガラケーのが慣れてるからありがたいわ……じゃなくて、カードよカード」
――ん……
「ん?」
指さされた方にあるベッドには、ベッドの上には普通置かなそうなもん。
「なにこれ? アタッシュケース?」
中を開いてみると……
「なにこの濁った四次元ポケットみたいな中味……」
――詳しいことはそこの説明書読んで。
「取説かい……」
言われて、開いた蓋の裏にある紙を見てみた。
それを見ると、まあ、みんなが想像した通り、好きなカードを自由に、何枚でも取り出せるっていう代物だそうだ。
ただし……
「取り出せるカードは合計200枚まで。200枚のカードを取り出した時点で次のカードを取り出せなくなり、その状態で蓋を閉じた時、このケースは消滅します……」
――好き勝手にカード出されて、世界観ぶっ壊されても困るからな。
「まあ、確かに妥当っちゃ妥当な措置かもしらんね。全てのカードを無制限に使えるって特典持った小説もたまに見かけるけど、大抵つまらんし」
んで、取り出せるカードにも制限があって、シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・リンクといった、この時代には存在しえないカードは取り出せませんと……そらそうだぁな。
また、この世界で特別であるカードも取り出すことはできません。例が、『D-HERO』、『宝玉獣』、『三幻神』、『三幻魔』、『地縛神』、『機皇帝』等……これも妥当ね。
それらに該当せずとも、あまりにこの時代にそぐわない新しいカードも取り出せません。ただし、強すぎない、無理のない範囲であれば、多少最新のカードも取り出せることは可能、か。
まあ、この世界にも、アニメオリカやアニメ効果もあるし、多少はね……
ほんで、OCG化したカードはもちろん、アニメや原作特有の効果を持ったカードを取り出すことも可能です、と……
「そう考えると……私が生前書いてた小説と似たような基準ってわけか」
――おもっきしシンクロもエクシーズも出しといて、よく言うな。
「ちゃんと理由あるんだから、良かろう……まあいいや。ルールは把握した」
取説を放り捨てて、アタッシュケースと向き合いまする。
200枚か……
単純計算で、デッキ五つ分。もっとも、融合デッキだったり、デッキ交換用のカードも欲しいし、汎用カードは複数枚欲しい。このケースからしか手に入らんカードもありそう。
諸々考えると、作れるデッキは二つか三つってところかね。
「そう言やぁ……この世界の禁止制限ってどうなってんの? リストある?」
――そこに決闘マガジンがあろう? そこに最新のが載ってるよ。
差された本棚から雑誌を取って、開いてみて、と……
「『強欲な壺』、『天使の施し』、『押収』、『破壊輪』が制限のころか。んで、『サンダーボルト』に『ハーピィの羽箒』が禁止で、『ブラック・ホール』と『大嵐』が制限ね。懐かしい時代だ」
このころの私自身に、のちに大嵐と羽箒の立場が逆転した、なんて言ったって信じられんろうよ……
「カードの種類もさすがに少ないな。んで、禁止制限がこれなら……うし。そんじゃ、普段使う用と緊急用の二つ作って、後は汎用カードに回すべ」
――なに緊急用って?
「命賭かったような決闘で使うデッキ。要はガチデッキよ。元居た世界の人らが使うようなや。この世界じゃ珍しくねーからね、カードゲームで命のやり取り」
そう決めた後で、アタッシュケースと睨めっこよ。
カードを取り出すには、欲しいカードを思い浮かべつつ、黒い沼に手を突っ込んで引きづり出せば良いそうで。
見るのもするのも、あんま気持ちのいいもんじゃあねーな……
「まず、これとこれと……おお、これも取り出せるの? 良いね……あら、このカードいいじゃん……あと、あれだよあれ、あのー……あれ? あれなんだっけ? あれ……」
――ほい、パソコン。今だけ元居た世界と繋げてやったから、Wikiも見れるで。
「気が利くね。んじゃあ……これと、これ。それからこれと……そうそうこれこれ。ほんで、これやろう……」
「そっから……あれ? ああ、もう200枚出したん? んじゃあ、こっちのカード戻してと……ほんで、これと。そっからあれは……ん? これは取り出せんの? じゃあこれは……おお、行けた」
「マジか! これも使っていいのん! いや嬉しい……これとこれでしょう? それからこれに……て、これはアカンの? ほしたらこっち……それにこっちと……」
――約5時間後……
……よし。デッキはこんなもんかね。入れ替えるカードも、サイドデッキ的に二十枚ずつ用意したし。無難なところうね。
汎用カードも、良さげなカードは大体取り出したことだし。後はこっちの世界で買い足して……
「……て、そう言や、この世界でのカード単価ってどんなもんかね?」
――ん。今はこの世界のネットが使える。
「さんきゅー。えーつと……『死者蘇生』が、ノーマル300円。ウルレア600円。ミラフォも似たようなもんか。変にリアルね。『強欲な壺』が、ノーマルでも600円から1000円。さすがにちとお高めだが……お? 『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』が……うん……見なかったことにしよう」
……とまあ、中にはOCGなら考えられんような値段のカードもあるにはあるが、基本的に元居た世界と似たり寄ったりかね。よっぽど無理しなきゃ、普通にデッキは組める感じだ。
「それでも、子供のお小遣いじゃあちょっと厳しいかなってレベルかね、シングルで作るとなると。カードパックで無難に集めてって感じか。選ばれし決闘者は、それで運命のカードを引き当てるってわけか……」
大体把握した。
一応、この子も金はそれなりに持ってるみたいだし、極端に使いすぎなきゃ新たにデッキも組めよう。必要無かろうけどや。
「さて……そんじゃ、カードも200枚取り出したことだし。ケースを閉じるかね」
――本当に良いのか? 一度閉じたら二度とそのケースは出てこない。忘れたカードが無いか、確認するなら今のうちだぞ。
「何度も確認したからだいじょーぶさ。はい、パタンと」
蓋を閉じると、ケースはそのままベッドの中へ吸い込まれていきました。
「まぁ、ホラー……」
――デッキができたなら、これ、決闘ディスク。
「おお、ありがとう……軽いのね、見た目の割に」
――今のうちに使い方マスターしとけよ。
それもそうだと思って、カードをセットしたり、ボタン操作したり。
「すげぇ……本当にモンスターが出てきちょる……」
今更ながら、私、本当に遊戯王の世界にいるのな……
元居た世界じゃ、技術的に作れないことはないらしいけど、利益になるかも分からんこんな大がかりな機械、作りたがる奴も金出してくれる奴もいないし……
んなことを感じつつ、一緒に渡された取説を読みながら、色々といじってみる。
まあ、実戦も必要だろうけど、特に難しいことはない。基本的な操作を覚えりゃ、使うことに不自由はしなさそうだら。
「さて……」
デッキは組んだ。ディスクの使い方も分かった。この子のことも把握した。
「アカデミアの受験日は?」
――今からちょうど、七日後。
「一週間後か……そういや、この子、学校は?」
――受験シーズンで休み。
「受験シーズンて、そんな制度やったっけ? 覚えてないけど……」
残り七日……
とは言え、まだ七日ある、とも言える。受験勉強するには短すぎるけど。
「ちなみに、アカデミアに落ちたら、その後どうなるのかね?」
――中学浪人としてのスタートになるな。
「マジかよ……滑り止めとか受けてないわけ? 童実野高校とか」
――無いよ。
「あーそうかいそうかい……とりあえず、勉強しなきゃとして。せめて問題集とかねーかな……」
――あるよ。そこ。
「……あら、本当。しかも、まあまあ良さげ」
アカデミア試験問題の過去問とかあるんだ……これなら何とかなるかな? 何とかするしかないんじゃけど……
「勉強もだけど……そう言や、ここどこ? 何県何市?」
――童実野町。
「あー、だと思った。てことは、実技試験会場の海場ランドも近かろうな。筆記試験はどうだか知らんが……受験票は?」
――ん。
「ん……分かった。とにかく勉強しなきゃだが、その前にデッキ組んでて疲れたし、せっかくだから、街の散歩でもするかいね」
グゥ~……
「飯食った後にや……この家、食料ある?」
……
…………
………………
そんなこんなで、デッキと決闘ディスク持って、外に出て歩いてみてんけどや……
「普通だなぁ……」
家のあった住宅街を抜けて、そっからは繁華街。
コンビニは普通にあるし、店も色々ある。初代でお馴染みのゲームセンターもいくつも見かけるし、スーパーもあるし……あ、バーガーワールド。
私がアニメや漫画で見たまんまの、普通の都市部って感じね。
まあ、公園とかそこかしこで決闘してるのが、普通じゃねーっちゃ、普通じゃねーけどや……あそこが海場ランドかな?
「面白みねーな。まあ、暮らす分には不自由はしなさそうけども」
とは言え、ここは童実野町だ。何が油断できないって……
原作ファンの間じゃあ有名だ。この街の治安の悪さは……
「あのぉ……」
と、そんなこと考えてると、神様とは別の声が聞こえた。
そっちを見てみると……
「こんにちは。今、お一人ですか?」
字に書いたような……いや、絵に描いたような美女がそこには立っとった。
普通に歩いてるだけで、道行く男子は振り返ること受け合いろうな。
「もしよろしかったら、その……ご一緒、しませんか……?」
顔をうっすら赤らめつつ、もじもじとワザとらしい可愛らしい仕草……
うん……なんて見え見えなハニー罠なんだろう。
普通なら無視するところなんだけども。
(これって、ひょっとして決闘のチュートリアル?)
――知るか。
まあ、こんな罠に引っかかる男もバカだとは思うが……
「ご一緒しまーす」
どうせ、童実野町にいる以上は覚悟してたことだし。
引っかかってやーろおっと……
……
…………
………………
ほんで、裏路地に連れてこられて、そこで囲まれました。
これから決闘して、敗けたらカードを全てよこせときたもんだ。
なんで直接ボコりに来ないのかしら? ありがたいけれども。
そんで、いざ決闘をしてみたらだ……
「ははは……マジかよ……」
「……」
「……ターン……エンド」
???
LP:1600
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
???
LP:1200
手札:0枚
場 :モンスター
『イエローヘカテー』攻撃力2500
魔法・罠
無し
???
LP:900
手札:0枚
場 :モンスター
『レッドヘカテー』攻撃力2500
魔法・罠
無し
私
LP:4000
手札:5枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
「くぅ……強い……ッ」
「お前ら弱すぎやあー!!」
相対する三人組に向かって、思わす絶叫してしまったわ。
だってさー、こいつら単純な攻撃しかしてこねーしさー。伏せカードの警戒もしねーしさー。そら魔法カードのコンボもするけど、単純すぎて読みやすいしやー。
いきなり3対1で来られて、ヤベェと思ってガチデッキ使った私にも問題あったかもしらんけど……
初戦で敗北の上にカード盗られるってのよりはマシだけど、さっき初めて決闘ディスク触った相手にやで? いくらなんでもひどすぎやぞコレは……
「ここまでライフが削れないとは……おのれ……ッ」
紫色の髪と瞳。三人ともが同じ声と顔。
使ってるカードからしても、もうお分かりだろうね。
私が今相対してる三人……影山三姉妹です。
もちろん知っておろう? 私の小説にも出してたし。
詳しい説明は、小説を読むかWikipediaでも読んで確かめとくれ。
「だが、今までのようにはいかんぞ。貴様のデッキの要である永続魔法は破壊した」
「三人がかりでここまでやっといて、永続魔法一枚破壊するしかできなかったこと誇られても……」
「黙れ! 必ず目にものを見せてやる……私のターン、ドロー!」
影山リサ
手札:0→1
「……来た。魔法カード『死者蘇生』! このカードで甦れ『ヴァイオレットヘカテー』!!」
リサ? が叫んだと思ったら、さっき破壊してやった、紫色の魔女が出てきたわ。
『ヴァイオレットヘカテー』
レベル7
攻撃力2500
「……いつにしよう。再び三人がまみえるのは?」
「騒ぎが静まり……」
「戦いに敗けて勝って……」
「その後で……」
「ならば日暮れ前に片付こう?」
三人が全部言う前に、被せてやったぜ。
「マクベスの『三姉妹の魔女』でしょう? 知ってるから、早く進めとくれよ」
「ふ……よかろう。では見るがいい。三姉妹の魔女がフィールドにそろったことで、伝説の『ゴーゴン』が復活する!」
リサの言った通り、フィールドに並んだブサイクなカラフル魔女三人が一つに重なると、そこから一番ブサイクな魔女が湧いて出てきたわ。
『ゴーゴン』融合
レベル8
攻撃力3000
「これこそ私達の切り札、『ゴーゴン』だ!」
「おっかねー(棒)」
「その澄まし顔もここまでだ……バトル!」
長女? のリサ? が宣言したら、ブサイクの持つ杖にデッカイ炎が溜まっていって、それが髪の毛と同じ、蛇みたくのたうちまわり出した。
やっぱKCのソリッドビジョンてすげーなー……
「『ゴーゴン』で、貴様にダイレクトアタックだ!」
綺麗なくせに醜い顔と声で叫ばれたと同時に、デッカイ炎蛇が私に向かってバーン!
「熱っつい! 熱っつい!」
……いや、所詮はソリッドビジョンだし、大したこたぁ無いんだけどや。実際、アクファほどじゃないにせよ触感も再現されてるらしいから、熱さも感じるのよな。
それでも大騒ぎするほどじゃねーけどや。
私
LP:4000→1000
「そして、『ゴーゴン』は一度のバトルフェイズ中、三回の攻撃が可能だ」
「な、なんだってー」
「これで終わりだ……やれゴーゴン! 大蛇の炎で、その男を呑み込んでしまえー!!」
一回私を呑み込んで、二度目も呑み込んでしまおうとやってくるデッカイ蛇ちゃん……
「これでも食っちょれ……手札の『バトルフェーダー』特殊召喚」
蛇さんニョロニョロ目の前に。黒い悪魔がこんにちは。
ゴーンゴーンと鐘鳴らし。炎の蛇さんさようなら。
――なんでいきなり童謡っぽい文章?
「ば、バカな……なにが起きた……!」
「相手のダイレクトアタック時、手札の『バトルフェーダー』を特殊召喚して、攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了させたのよ」
『バトルフェーダー』
レベル1
守備力0
「なんだと!?」
「……だが待て、そんなカードを手札に握っていたのなら、一度目の攻撃の時にも使えたはずだ……」
次女と三女? も似たような反応して驚いてるけどねぇ……
確かに、確実に勝ちたいんならそれが良かったろうけどねぇ……
「実はね私、決闘ディスク使うの初めてなんだわ。だから一回、モンスターの攻撃がどんなもんかっての受けてみときたかったのよ。なるだけ強烈なのをや」
「そんな……そんなことのために……!」
……ま、『ゴーゴン』が私の知った通りの効果だったのが幸いだったさね。
実は隠された効果でもあって、攻撃力が4000オーバーとかになったら終わってたし。
もっとも、魔法で攻撃力を上げようにも、手札0じゃあそれもできそうにないし。墓地発動のカードもこの時代にはほぼ無いことだしや。
「んでどうすんのよ? まだ何かすることある?」
「……ターン……エンド……」
影山リサ(多分)
LP:1600
手札:0枚
場 :モンスター
『ゴーゴン』攻撃力3000
魔法・罠
無し
影山次女(だと思う)
LP:1200
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
影山三女(じゃねーのかな)
LP:900
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
私
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
『バトルフェーダー』守備力0
魔法・罠
無し
「んじゃ、私のターン、ドローフェイズ」
私
手札:4→5
「……もう少し遊んでやっても良えのんやけど、これ以上やっても面白いものは見られそうにないし……終わらせるでな」
『……!!』
手札のカードを三枚、手に取ったと同時に戦慄してらぁ。
まあ、始まってからここまで、さんざ見てきたからなぁ。
こいつらからしたら正に、地獄絵図でしかなかろうなぁ。
「スタンバイフェイズ。メインフェイズ。おいで……『
フィールド吹きます強い風。
そこから出てきた紫着物。
それを羽織った伊達男。
なんとびっくり凛々しいイタチ。
――だからなんで童話チックなの?
『
レベル4
攻撃力1600
「効果はもう分かっとらぁな。コイツが召喚に成功した時、手札から鎌壱太刀以外の『妖仙獣』を通常召喚できる。おいで、『妖仙獣
『妖仙獣
レベル4
攻撃力1800
『妖仙獣
レベル4
攻撃力1500
「んで、もう一回通常召喚できるわけだが……せっかくだし、出しちゃえ。『バトルフェーダー』をリリ……生け贄に、おいで『妖仙獣
名前の通り、場に並んでる三兄弟とは雰囲気がまるで違う、禍々しいイタチ様が現れいでたよ。
――様呼び?
『妖仙獣
レベル6
攻撃力2000
「『バトルフェーダー』は自身の効果で除外して……こいつには通常召喚をアレする効果はない。代わりに、通常召喚に成功したら、デッキから凶旋嵐以外の妖仙獣一体を特殊召喚できる」
「なんだと!?」
同じレベル6の『妖仙獣
「おいで『妖仙獣
『妖仙獣
レベル4
攻撃力1000
おっほほー、壮観そーかん……
『妖仙獣 鎌壱太刀』
攻撃力1600
『妖仙獣 鎌弐太刀』
攻撃力1800
『妖仙獣 鎌参太刀』
攻撃力1500
『妖仙獣 凶旋嵐』
攻撃力2000
『妖仙獣 辻斬風』
攻撃力1000
「こんな……バカな……」
やれやれ……
本来なら、普段使う用のデッキを使って、その後色々あってガチデッキ解禁ー、つーパティーンだろうに、こいつらがややこしいことしやがったせいで、順番が逆になっちまったよ。
『……』
三人は三人とも、恐怖に固まってるし。
そら怖かろうなー。
まだまだ展開力には乏しい時代なことだし。
たーっぷり怖がらせてやったところで……
「そんじゃらバトルフェイズ」
『……!?』
「妖仙獣たち、楽にしておやり」
風に踊るよイタチのみんな。手には刃物を光らせて。
一緒に走って敵に向かって。
三人の魔女をやっつけたー。
――もしかして、今後の決闘の描写それでいく気?
影山リサ(でいいや)
LP:1600→0
影山次女(でいいよもう)
LP:1200→0
影山三女(てことにしとけ)
LP:900→0
――しかし何で『妖仙獣』?
(強くて、展開力に長けてて、制圧力あって、何よりデザインがドストライクだから)
「……」
「……」
「……」
「そんじゃら約束通り、アンティルールでアンタらのデッキはもらってくでよ」
そう言いつつ、ただただうな垂れるだけの三人に近づいて……
ボコッ……
「ぐぅ……ッ」
カードを抜き取る寸前、リサ? の顔面に蹴りを入れました。
念のため警戒はしといたけど……やーっぱ童実野町だわここ。
「貴様……!」
他の二人も、当然反応して立ち上がってる。
それでも、リサみたく、ナイフやスタンガンやの武器を握る前にボコりましたわ。
「さーてと……決闘に負けた上に、仮にも凶器向けたんだ。どうなるか分かっとろうな?」
「あ、ああ……」
「言っとくけど、美人な女性だからと許される、なーんて甘い考えは無駄だでよ。むしろ、一度でいいから、アンタらみたいな綺麗な女、ボッコボコにしてやるのが夢だったのよ、生前からの……」
「ひぃ……!」
(つ~わけで神様? 人が来ないか見張っといて)
――はいはい。キリの良いところでさっさと逃げろよ。見つかったら普通に警察には捕まるぞ。
「だーろうね。んじゃ、この子の肉体の強さの確認も兼ねて……ニヤリ」
『っっ!?』
「はい顔面ー!」
「次に耳ー!」
「手首ー! 指ー! 右足ー! 左足ー!」
「はい鼻ー! 耳ー!」
「お腹ー! お腹お腹お腹お腹胸と来てあばらー!」
「歯ー! ついでに髪の毛ー!」
――……終わったら、綺麗に治してやるからな……
……
…………
………………
「やー、すっきりしたー。決闘と婦女暴行最高♪」
――最低だなオマエ……
「良いじゃん。アイツらもどうせ似たようなことしてカード巻き上げてきたんだろうし。乱暴はしなかったんだから、女性としてはむしろ救われた方よ」
――俺が治さなきゃ普通に死ぬレベルの重体だったんですが、それは……
「これで私も地獄行き?」
――まあ、一応は正当防衛だから、今回は大丈夫なんじゃない? 理由なく相手をボコボコにするようなことがあったら、間違いなく地獄だけど。
「さすがにそこまで愚かじゃねーやさ。けれどそれなら、正当防衛なら相手をボコボコにしても大丈夫ってわけな」
――いくねーよ! 正当防衛でも程度があるに決まってんだろ!
「分かってる分かってる。カードもデッキ三つ、新しく手に入ったことだし。これで新しくデッキも組める」
――コイツを転生させたの、失敗だった気がする……
「さーて、街も大方見て回ったし。決闘ディスクの使い方もバッチリだし。新しいカードに小遣いも手に入ったし。護身用のナイフやスタンガンも手に入ったことだし。んじゃあ、帰って受験勉強に勤しむかね」
――得体の知れない不安しか感じない……
「ところで、暴行と乱暴ってなにが違うん?」
――ググれや……
お疲れ~。
後半へぇ~続く。
それまで待ってて。