後半行くでよー。
行ってらっしゃい。
やーい。みなさんこんにちはーい。
決闘と婦女暴行大好き、私だよー。
――やめい!
さーて、あれから時間が経って、みんな大して興味ないだろう、アカデミア筆記試験を終えて、今日結果を受け取ったところよ。
興味無いろうけど、一応出た問題を言うなら……
学科の方は、勉強し直したらとりあえずは思い出せるレベルかな。普通に勉強しておけば大して苦労はしない程度のレベル。
決闘の問題は、ルールとか常識から、それなりの知識を要するもんまで。あとは、ちょっとしたカードの豆知識や雑学なんかもあったが……とりあえず、影山三姉妹とかオメガタウンを知ってる世代なら答えられるレベルだったよ。
それでもさすがに満点というわけにはいかんけどや。自慢じゃねえが、頭は悪い方だし。
ほんで、筆記の結果というのが……
『受験番号 37番』
「ビミョーやなー……」
まあみんなが知っての通り、ここでの受験番号はイコール筆記の成績順位さ。
確か、受験生は全部で、130人くらいだったかね。
レッド寮は辛そうだからイエロー寮入れるくらいの成績目指して勉強したんだけど、これイエロー狙えるんけ?
まあ、全体の四分の一以上には入れてる計算だから、行ける可能性はあるが。
「なんにしても、明後日の実技で結果出すしかねーやさ」
――ガチデッキでいくの?
「んなわけあるかい。あれは強すぎる。今度こそ普段用のデッキで行くよ」
――それで勝てるの?
「この世界が改変されて、登場キャラ全員のデッキがガチ化、なーんて事態にでもなってなきゃ大丈夫よ……なってないよな?」
――まあ、おおよそは原作通りと考えて大丈夫。もっとも、一応オマエってイレギュラーが混ざったわけだから、そりゃあ多少の変化はあるだろうけど。前編で出てきた影山三姉妹とか、本来ならこのアニメには登場しないはずの奴らだし。
「まあ、版権作転生物の宿命だわな」
――そゆこと~。
「はぁ……ま、筆記で落とされる、なーんて仕様も無い事態にならなかっただけ、良しとしよう。筆記で落とされるもんなのかも分からんが……」
なんにしても、全ては明後日さね。
晩飯も食べたし。ト〇ビアの泉とかワン〇イも見終わったし。風呂も入ったし。
明後日に備えて寝るかいね。
――割と順応が早くて助かる。
「異世界に戸惑う主人公なんぞ、読者は望んでないろうからな。そんなすっとろい展開」
――んじゃあおやすみ~。
「おやすみ~」
……
…………
………………
更に一日明けて、実技試験当日の朝。
「学ランに自転車……中学時代を思い出す」
――今がその中学時代。
「そう言やぁそうか」
――てか、筆記の時にも言ってたよな、それ。
「読者は知らんから良いんよ」
そんな会話をしつつ、自転車を走らせた。自宅の戸締りはバッチリよ。
うーむ……天気も良いし、実に爽やかな朝だ。歌でも一つ歌いたいような良い気分だ……
「じょ~お~ね~つの~ あ~かい~ば~ら~♪」
――歌うのは勝手だけど、ちゃんと前見てないと……
「きゃっ!」
「おおぅ……!」キキーッ
――ほらな。
「あぁ~、ごめん。大丈夫?」
「あ、その……大丈夫、です……」
ほ……よかった。因縁でも吹っ掛けてくる輩なら、また婦女暴行せにゃならんところよ。
――おどれの頭にはそれしかないのか!?
「ごめんねぇ~、手伝うわ」
神様の声を無視しつつ自転車を降りて、驚いたせいで落として散らかした荷物を拾うのを手伝うことにしました。
「すみません……ありがとう、ございます……」
「良か良か。ちゃんと前見てなかった私が悪いんじゃけん……」
……と、落としたものを拾い集めてると、
「あれ? これ……」
デッキと決闘ディスク持ってるのはまあ、遊戯王の世界だからなぁ。
それは普通と考えて、更にもう一つ……
「これ……決闘アカデミアの受験票?」
「あ……はい。わたし、今日、受験なんです。決闘アカデミアの、実技試験に……」
「ホントに? 奇遇ね。私もだわ」
「え……?」
そんな会話をしながら、改めてその娘を見てみますると……
制服は、普通に中学生っぽい制服姿だ。セーラー服? その辺の種類は詳しくないから聞かないどくれ。
顔は美人だね。アニメでよく見かけるヒロイン顔だ。髪は長くて、私の青色とは対照的な、ピンクっぽい赤色だ。
あとは、書くべきことか分からんが……
やっぱ、遊戯王らしく、歳の割に大っきいね。何がとは言わんけど。
「良ければ一緒に行くかいね? 何なら、荷物も自転車に乗せたら良いでよ」
「え? えっと……」
断れ……断れ……
「……じゃあ、お願い、します……」
了承しやがったよちくしょう……
(神様よ。なんやら嫌な予感がするねんけど……)
――普通喜ぶところじゃねーの?
「にしても、本当にごめんね。痛いところとか無い?」
「だ、大丈夫、です。私も、ボーっとしちゃってたし、気にしないで、下さい……」
「そう……今日はどうよ? 受かる自信ある?」
「……いいえ。あんまり決闘、上手じゃないから……」
「ハハハハ。まあ、それが普通だぁな。私とて多分敗けるかもだしや」
「敗けるの、怖くないんですか?」
「敗けが怖くて決闘なんぞやってらんねーやさ。今回は受験だからプレッシャーもそらあるが、それで敗けるくらいなら、私は決闘者としてその程度ってことだしや」
「……前向きなんですね。羨ましいです……」
「そう? 普通だと思うよ。普通に決闘して、普通に勝つこと目指して。それが決闘なんじゃねーの?」
「そう……ですね」
こんな感じで、当たり障りのないこと会話しつつ、受験会場の海場ランドを目指しちょる現状。
初対面なこともあって、最初ギクシャクした感じのこの娘も、話してくうちに角が取れてく感じになってく。
海場ランドに到着するころには、普通に親しくなっちまったわ。
「うわー……みんな、強そう……」
「君のこと見た子ぉらも、そう思ってんじゃないかな?」
「え……わたしも、ですか?」
「わー。あなた私より強そー。こんな人と一緒に受験するんだー」
「そ、そんな……やめてください。わたしなんて、全然……」
「良いじゃん。どうせみんな受験生な以上、考えることなぞ似たり寄ったりだろうしや。楽しんだ方が得だで」
「そう……ですか……」
「そんなわけで、受付せねばね。お先」
「あ! あの……」
と、去ろうとしたら呼び止められた。
「なにか?」
「あの……えっと、お名前は……」
「名前? 名前はね……」
(神様ー? そう言やこの子の名はー?)
――生前と同じだよ。
マジかよ……
「私は……大海」
「大海さん……」
「んじゃ、そういうことでね」
小説の主人公の名前が作者と同じ名前とか、ちょっと痛すぎない……?
――分かっててあのデッキ組んだんじゃなかったの?
ハハハハ……そりゃあ、そんな気もしてたけどや。
単純に、このころの時代に相応なカードで、強かったから組んだんだい。
そんなふうに、普段用デッキのこと思いつつ、とりあえず、一番気になったこと……
「神様やぁ」
――ん?
「まさかと思うのやけど、さっきの娘って……」
――言ったろう。オマエっていうイレギュラーが新たに生まれたんだから、少なからず変化はある。あの娘もソレで生まれたキャラだろうねぇ。オマエを主人公とするなら、あの娘はヒロインだろう。
「……」
――んなあからさまな嫌そうな顔してやんなや。オマエが恋愛に関しちゃ、見る専なのは知ってるけど……
「いや……本当、マジに簡便しとくれ。面倒くさい……恋愛はそら好きだよ。見るのは。けど、自分がするのはアンタ……すっげーメンドイ……」
――それ、あの娘の前で言ってやるなよ。泣かすぞ。
「言わねーよ。私とて、婦女暴行の必要のない相手にそんな態度取るほど神経太くねーや」
――どんだけ婦女暴行が好きなんだよ?
「別に婦女暴行だけが大好きってわけじゃねーや。私はただ、ムカつくやつをボコることが大好きなだけだ」
――どっち道最低じゃねーか!
「ボコボコにせざるを得んことしてきた方が一番悪い」
――それを理由に暴力楽しんでたくせに……
「大海さーん!」
うわぁ~……話してたら件の声聞こえてきたで、おい……
「あらぁ、さっきの……」
「……今、誰かとお話ししてませんでした?」
「……うん。他には見えない神様と話してた」
「なんですかそれ~……」
かわいい……可愛いのが余計に面倒くせぇ……
――どんだけ拒否反応だよ……
んでまあ、さっきと同じように、当たり障りのない会話しつつ、会場の観客席へ移動。
着いた時からもそうやったけど、話してる間に受験生の皆さんも集まり出したわ。
……お、あれは三沢君。灰色の制服って割と目立つのな。
あれは……神楽坂君かな?
向こう側には決闘アカデミアの生徒らもいるね。万丈目は姿勢と態度で分かりやすいわ。
……おっと。明日香に亮じゃん。
今更ながら、本当にここ、アニメ世界なのな。
影山三姉妹とはオーラが違うよ。キャラクターとしての。
「もうすぐ時間ですね……緊張してきました……」
「そう?」
「……大海さんは、平気なんですか?」
「ガキの頃から決闘ばっかしてるからやぁ。人前でやるんとて初めてじゃねーし。今更緊張もなにもねぇーや」
「そうですか……あの、大海さん?」
「ん?」
「その……失礼ですけど、始まるまで、その……そばに、いて、もらえません、か?」
うわぁ~、なにコイツ、あざとすぎぃ……
「別に構わんでよ」
「あ……ありがとうございます!」
こんなキャラ、今時ラブコメにもいねぇよ。
鳥肌立ってきた……
――そこまで否定することねーだろう……
そうこうしてるうちに、受験開始時刻になりましたわ。
二人とも事前にお手洗いには行っておいたし。健康面での心配は、多分なし。
そんで、試験官らしい大人の方々がご入場。
中心にはクロノス先生がいらっしゃる。その周りには、アカデミアの制服を着た、教員かな? 多分。
このころは佐藤先生はいないのかいね……
「それでは、受験番号の大きい順に呼び出します。受験番号100番以上の皆さんは、一階控室まで移動してください」
まずは100番代ね。30人単位かな?
「あ……わたし、行かないと……」
「あら、もう出番かい? がんばっておいで」
「……あの!」
「なに?」
「その……そばに、いてもらえませんか?」
はぁー? ふざけんなし。面倒くせー。
なんで私が他人の受験に付きあわにゃならんのよ?
「別に良いけど?」
正直に言えねぇのが余計腹立つ……
――ただ気弱なだけじゃん。
うっせ……
「けど、私の出番、まだ先だからなー。私が行っちゃまずいんじゃねーかな?」
「そう……です、よね……」
……んな、あざとい懇願の視線向けんなや。
「けどまぁ、控室の前くらいまでなら大丈夫かね。そこまででも良かなら」
「あ……ありがとうございます!」
その満面の笑みやめろ。あざとすぎて殴りたくなる……
――オマエ……ちょっと精神病院に行ってみた方がよくねーか?
そんな感じで、ヒロインちゃん(仮称)の懇願のままに、他の受験生の皆さんともども移動を始めましたわ……
……お。
「じゃあ、その……行ってきます」
「はいはい。がんばって」
「……あ、あの……!」
「ん? どうかした?」
「その……よかったら、すぐそばで、わたしの決闘、見てて、くれたらなーって……」
どこまで面倒くさい女よ……
「私が行っていいのか分からんが……良かろう。会場前から見ておくやさ」
「あ……ありがとうございます!」
かわいい……その可愛い顔がだんだん狂気に思えてきた。
――考えすぎだ。
なんだかんだ、決闘場には入れないけど、その前の出入り口までは入っていいってことらしく、そこで言われた通り、見学することにしましたわ。
そんで、どうやら十人ずつが呼ばれて決闘が始められてる。
受験番号119番の
『受験番号110番から100番までの方』
と、そんなアナウンスが聞こえてきたわ。
で、しばらくすると決闘場の床が開いて、そこから別の床がせり出してくる。その上に決闘者が相対してるってわけだわな。
ほんで、ヒロインちゃんも、私のいる手前の方に、相手の先生と出てきた。
「……」
こっち見たで、おい……
(が・ん・ば・れ……)
「……」
口の形作ったら喜ばれた。単純だなぁ……
「受験番号104番だね。では、決闘を始めよう」
「は、はい……お願いしましゅ!」
噛んだ……
にしても、受験番号104番て……
『決闘!!』
そうこうして始まりました、ヒロちゃんの決闘。
「わたしは……『シャインエンジェル』を守備表示」
やっぱ天使だったー……
顔は可愛くて、スタイルも良くて、気弱で寂しがり屋、そのくせ主人公がそばにいた途端元気になって、頑張り屋で、デッキは天使族……
ヒロインの要素詰め込みすぎじゃね?
――可愛くなくて性格も最悪な女が、ヒロインですって出てくるよりはマシだろう?
そらそうだけど……私はただ、平和にのんびりやっていきたいだけなんだけどやぁ……
……と、決闘が進んでく。
まあぶっちゃけて言えば、『シャインエンジェル』だけじゃあ本当に天使族かは分からんよ。リクルーターだし。
そう思って見てたけど……やっぱ天使族だわこの娘。
『天空の聖域』とか使ってるし。
エース……てか、主力モンスターは『天空騎士パーシアス』かな?
それでビートダウンしていくデッキ、みたいだけど……
「……ひっどいな」
詳しくは説明しない。書くのも大変だし。
ただ、相手の伏せカードに無警戒すぎ。かと思ったら、次のターンにはビビりすぎ。
攻撃するべき場所では攻撃せずに、伏せたカードもほとんど飾りだし。
魔法・罠の発動タイミングも成ってない。
手札もあって、モンスターの数増やしとくべき場面で、わざわざ生け贄召喚なんてしてるし。
自分のデッキでのプレイを意識しすぎて、場の状況がまるで見れてないな。だから自分の思い通りの展開にならなくなった途端、混乱して対応しきれない。
最上級モンスターが破壊された時には、哀れなほど慌てふためいてるし……
そんなプレイングで、よう勝てたもんだ。
「大海さん!」
……と、決闘が終わるなり、私の元まで走ってきた、ヒロちゃんです。
「おつかれ」
「はい。えっと……わたしの決闘、どうでした?」
「うん。ひどかった」
「ひど、かった……?」
この際だ。決闘に関しては正直に言ってやれ。
「カード効果の使い方分かってなさすぎ。場の状況見てなすぎ。デッキの回し方も分かってなすぎ。何より不要にビビりすぎ……私の前住んでた所にいた小学生の方が、まだマシな決闘できてた」
OCG民と呼ばれるつわもの達の話ね……
「一度勉強しなおした方が良いんじゃないかな? そんなんじゃ勝てる決闘にも勝てん」
「……」
で、やっぱ泣きそうな顔になってるし……
「仕方がない。まだ先だけど、私の決闘でお手本見せてあげようわい」
「……本当ですか?」
「うん。もっとも、お手本になるかは分からんがや。デッキのタイプも違うだろうしや」
「えっと……頑張ってください」
そんで、そう会話した後で、また客席に戻っていったよ。
そこでも順調に受験は進んでいったけど、実際、どの子も下手くそだねぇ。
まあ、受験番号が若くなっていくごとに、実力も上がっていってるようだけれど、中にはヒロちゃん以上に下っ手クソな子ぉまでいる始末。
受験の緊張やプレッシャーもあるんろうけど、所詮はアニメ世界か……
(ま、単に元居た世界が進みすぎてたってだけなんだろうけどや……お。アニメ版『双頭の雷龍』)
「みんな、やっぱりすごいですね……」
ヒロちゃんは分かってないようで、そんなこと言う始末だしや。
「どうにか勝てたけど、もし合格できたとして、あの人たちに混ざって、やっていけるのかな……」
「……」
まあ、不安だわなそりゃ。
歳食ってる……どころか、一度高校通ってたことある私からすりゃあ、特に気にするほど不安は感じん。けどや、未経験の人間からすりゃあ不安でしかあるまいて。
「それは……君次第としか言いようがないよってに」
だから、今から言うことはただの慰めでしかないけれどもや。
「そら誰しも、不安は多かれ少なかれ感じてるろうよ。先のこと見えてる人間なんて、そういないんだから。私とて不安だいや」
「本当ですか?」
一応本音。先の展開知ってるって言ったって、それはあくまで、アニメ見て見える範囲でしかない。その裏で起こってることまでは分からん。
ストーリーには絡まんと決めた時点で、見たことも無い裏っ側で生きていかにゃいかんのは確定事項。どうなることか……見えん以上、期待値よりは恐怖のほうが、そら勝らぁ。
まあ、それとて、この娘らが感じてるのとはまるで別種だろうけどや。
「とは言えどもよ。ビクビク怖がってるだけなところで、良いこと無いんも事実だいや。どうなるかなんか結局のところ、始まってみんことには分からんのんから。怯えてようが気楽でおろうが、始まってしまえば、割とどうにかなるもんだしねぇ」
「そんな、ものでしょうか……」
「そんなもんさね。不安がるのは勝手だし、怯えるなとは私には言えん。誰かと話しててそれが紛れる言うなれば、私でよければ聞いてあげるでよ」
「大海さん……」
「まあそれも、受かってること前提の話しだけんどや」
「そ、そうですね……」
『受験番号40番から10番までの皆さん、控室へ移動してください』
「のん? 私の出番」
「え?」
「てなわけで、行ってまいりまっさ」
と、立ち上がって下へ降りようとしたら……
「……何だべ?」
「あ、あの……」
手を握られた。
「えっと……わたしも、一緒に行って、良い、ですか……」
「……」
えぇ~……なにコイツ。
もうヤだ……
――紳士的なセリフ吐いといて、そりゃ無ぇだろう……
「別に良いけど……さっきの私と一緒で、控室には入れんと思うよ」
「良いです! 大海さんのそばで、大海さんの決闘、見ていたいんです……」
「あー、そう……」
シンドイ……
なにがシンドイって、作者が、作者と同じ名前した主人公に対して、ヒロインにこんなあざといセリフ言わせてるって思うと、痛々しくて本当にシンドイ……
――言ってやるなって。作者だって、羞恥をガマンしながら書いてるんだから。
まあそんな感じで、控室に入る時点でヒロちゃんとは別れて、指示されたから移動。
さあみんな。ここでようやく、マトモな決闘シーンが入るでや。
決闘読み飛ばす派の人らは、構わんから飛ばしちゃって飛ばしちゃって。
さっきのヒロちゃんらと同じように、立ってる床がせりあがって、上の床が開いてく。
そんで、向かい合う先には試験官の先生。
「大海さん……」
後ろを見ると、さっき私がいた場所にヒロちゃん。笑って手を振ってあげます。
「受験番号37番。大海ですー」
「うむ……あまり緊張せず、いつもの決闘を見せてくれたまえ」
「はーい」
そんなこんなで、互いに決闘ディスクを起動。
『決闘』
大海
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
試験官
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
「先行は受験生からだ」
「はいな。んじゃ……大海の先行、ドロー」
大海
手札:5→6
「うむ……スタンバイは何もせずに、メインフェイズ。大海はモンスターをセット。カードも三枚伏せまして、エンドフェイズ。ターン終了」
大海
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
セット
魔法・罠
セット
セット
セット
「うむ……私のターン、ドロー」
試験管
手札:5→6
「では……私は『メカ・ハンター』を召喚する」
『メカ・ハンター』
レベル4
攻撃力1850
「更に装備魔法『機械改造工場』」
わー、古いなぁ。
まあ、私の受験番号や試験用ってこと考えると、『団結の力』や『魔導士の力』とかは強すぎるし、妥当なのかもね。
とか思ってる間に、場がフィールド魔法っぽく工場に変化して、そこの機械でいじくりまわされた『メカ・ハンター』は、パワーアップしましたわ。
『メカ・ハンター』
攻撃力1850+300
攻撃力2150……
OCG民として、ステータスだけ見りゃ微妙すぎるが、それでもさすがのソリッドビジョンの迫力だぁね。
「バトルだ。『メカ・ハンター』で、セットされたモンスターを攻撃する」
その言葉の通り、『メカ・ハンター』が六本ある腕のうち、右側一番上の腕から槍を飛ばしてきた。そんで、私のセットモンスターを貫いたんやが……
「戦闘破壊された『素早いマンボウ』の効果が発動。コイツが戦闘破壊された時、自分のデッキから魚族モンスターを一枚、墓地へ送ります。その後、デッキから『素早いマンボウ』を一体、特殊召喚」
『素早いマンボウ』
守備力100
「リクルーターか……私は二枚のカードを伏せる。ターンエンドだ」
「ほしたらそちらのエンドフェイズに、罠カード『フィッシャーチャージ』を発動」
「『フィッシャーチャーチ』だと……!」
「大海の場の魚族モンスター一体を生け贄に、フィールド上のカード一枚……『メカ・ハンター』を選択して発動。選択したカードを破壊して、カードを一枚ドローします」
言葉の通り、場に出たばっかの『素早いマンボウ』が消滅してく。
この二枚は相性的には微妙だが、まあ一枚はリクルートしてデッキ圧縮したし、マンボウの仕事は果たしたでしょう。
そう思ってるうちに『メカ・ハンター』は破壊。ついでに装備されてた『機械改造工場』も破壊されて、カードを一枚ドローできる。
大海
手札:2→3
「……改めて、ターンエンドだ」
試験管
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
大海
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
互いにフィールドには伏せカード二枚のみか。
「大海のターン。ドローフェイズ」
大海
手札:3→4
この手札なら、いけるかな。
「スタンバイ、メインフェイズ……『光鱗のトビウオ』を召喚」
『光鱗のトビウオ』
レベル4
攻撃力1700
「ほんで、永続罠『リビングデッドの呼び声』発動」
「墓地のモンスターを蘇生するカード? また『素早いマンボウ』を呼び出す気か?」
「うんにゃ……忘れました? 『素早いマンボウ』の効果」
「は……! 前のターン、デッキから墓地へ送った魚族モンスター……」
「左様……私は墓地へ送られた、『超古深海王シーラカンス』を特殊召喚」
フィールドに、水、つーか海水が、間欠泉みたく噴きだすエフェクトが発生。
その海水がフィールドを包んでいって、その中から、青くてデッカイ、ブッサイクな魚が飛び出した。
――ブッサイクは余計だろう。
『超古深海王シーラカンス』
レベル7
攻撃力2800
うーむ……不味そう。魚として。
――最上級モンスター初召喚した一言目の感想がそれかよ……
「んじゃ、シーラカンスの効果。一ターンに一度、手札を一枚捨てることで、デッキからレベル4以下の魚族モンスターを、可能な限り特殊召喚します」
「可能な限り!?」
「可能な限り。さあおいで。大海のデッキの魚たち!」
大海
手札:3→2
シーラカンスの時と同じ。海水が噴き出るエフェクトが三つ。
そこから新たに、シーラカンスよりも小さい魚たちが現れた。
『オイスターマイスター』
レベル3
攻撃力1600
『キラー・ラブカ』
レベル3
守備力1500
『レインボーフィッシュ』
レベル4
攻撃力1800
「ただし、この効果で特殊召喚されたモンスター達は、攻撃宣言できず効果も無効になりますがね……そこで、『光鱗のトビウオ』の効果」
「なに?」
「自分の場の、自身を除く魚族モンスター一体を生け贄に捧げて、フィールドのカード一枚を破壊できる。大海は『オイスターマイスター』を生け贄に捧げ、その伏せカードを破壊します」
『オイスターマイスター』が光に変わったと同時に、『光鱗のトビウオ』が光り輝いた。
んで、大海が指さしたカード、『
「更にこの瞬間、『オイスターマイスター』の効果。コイツが戦闘破壊以外でフィールド上から墓地へ送られた時、『オイスタートークン』一体を特殊召喚する」
『オイスタートークン』トークン
レベル1
守備力0
「なに!? ……そうか。シーラカンスの効果で無効になっているといっても、それはあくまでフィールドで発動される効果。フィールドを離れることで発動する効果は無効にされず、問題なく発動されるということか」
「丁寧な解説ありがとうございます……この『オイスタートークン』も、牡蠣のくせに魚族。でもって、『光鱗のトビウオ』の効果は一ターンに何度も発動可能です」
「なにぃ!?」
「オイスタートークンを生け贄に、効果発動」
さっきと同じように牡蠣が消えて、トビウオのウロコが光り輝く。
それが、残りの伏せカード『攻撃の無力化』を焼いた。
(攻撃反応系ばっか……)
「二体の魚は攻撃できんままだが……攻撃力は十分。バトルフェイズ」
「むぅ……!」
「『光鱗のトビウオ』、『超古深海王シーラカンス』の二体で、直接攻撃します」
輝くお魚、大っきなお魚。
フィールドすいすい泳ぎだす。
ピチピチ元気に泳いで向かって。
怖いおじさんやっつけたー。
――やっぱそれでいくのか。決闘の描写……
試験官
LP:4000→0
「……試験決闘終了。君の勝利だ。結果は期待していいだろう」
「ありがとうございました」
ソリッドビジョンが消えて、一礼してそのままフィールドを後にする。
ストーリー的にもOCG出身としても当然の結果だが、やっぱ、勝つのは単純に嬉しいね。
「大海さーん!」
あ……忘れてた。
「すごかったです! 大海さんの決闘!」
「そう? ありがとう……」
笑顔が眩しい……
眩しくてうっとうしい……
――いい加減、素直に喜んであげたら?
そっからは、すぐ帰ろうかと思ってたんだけど、ヒロちゃんのお話に付き合わされて、結局試験終了までいることになったわ。
そっから先は、アニメ第一話の通りの展開。
受験番号1番の三沢君が勝利して、みんながソレに注目してる。
私はワンキル達成したけど、半端な受験番号もあって、そんなに注目されてなかったみたいだわ。ありがたや。
そんで、その後で我らが主人公、遊城十代の登場。
クロノス先生の『古代の機械巨人』を倒して、決闘にも勝利。
三沢君以上に注目を集めましたわ。
「いいぞー! 110番!!」
「良きライバルになりそうだ……」
「信じられん……あの、クロノス教諭が……」
「面白いヤツが現れたな……」
「遊城十代……」
「美しい手と顔をした女だ……」
「どう見ても男だと思うが」
「……美しい手と顔をした男だ」
(また、明日香の悪い癖が出たか……)
……
…………
………………
そんなこんなで、試験も終了。みんながゾロゾロ帰ってくのに合わせて、私とヒロちゃんも別れて、自宅に帰ってきましたわ。
「さーて……これで、とりあえずのやることは終わったかね」
――そうだな……オレの出番もこれで終わりだ。
「……終わり?」
――帰るんだよ。これでも神様として、色々忙しい身なもんでなぁ。
「あー、そう。帰っちゃうの……」
――ああ……そうだ。これだけは教えておくけど。オマエを轢き殺した男な。酒気帯び運転による危険運転致死罪で実刑判決が決まったよ。実は前にも、死なせてはないけど酒気帯び運転で人身事故起こしてて、今回はその事件の執行猶予中に起こした事故だったらしい。二度目だしまるで反省の色も無いから、かなり厳しめな刑になりそうだ。
「あっそ。それ聞いてちょっとは気が晴れ……ることもないけどね。いつかまた出てくるわけだし」
――気にすんなよ。この世界の住人になったオマエには、もう関係ないことだろう?
「そうね。そう考えとくよ」
――そうしろ……じゃあな。婦女暴行しようが、地獄へ行こうが勝手だが、あまりやりすぎるなよ。
「……ありがとうよ。色々と」
――はいはい。んじゃ、せいぜい頑張んな~……
……
「神様? 神様?」
……
返事はない。ただの空間のようだ。
「神様ー!」
テーレーレー レ~~~~~~~~~~~
レ~レ~
テレレレレレー テレ~(※着メロ)
「もしもし?」
……
…………
………………
そんなこんなでまた時間が経って、受験の結果は郵送で送られてきた。
結果は、無論のこと合格。寮も狙った通り、ラーイエローに入れることになったわ。
ほんで、誰も興味がないであろう、この世界の大海君が通ってたらしい中学校の卒業式も終えて、そっから新生活の準備とかも済まして。
そんで、決闘アカデミアに入学。
退屈な入学式も終わって、歓迎パーティーも終了。明日っから授業が始まる。
なんだかんだ、特にトラブルなんかも無く、この世界にも完全に馴染んで、今のところ、全部が全部、上手くいってる。
そんな生活の中でも、敢えて不満というか、疑問点を一つ挙げるとするなら……
それは……
ヒロちゃんが落ちてしまったということよ……
……いや、落ちたって言い方は、ヒロちゃんに失礼か。
話を聞くと、あの娘にも合格通知は来たらしい。
けど、アカデミアは滑り止めで受けてた学校らしく、それ以前に受けてた第一志望の高校に合格したもんで、さんざ悩んだうえで、第一志望の『童実野高校』への入学を決めたそうな。
「なんで決闘アカデミア受験したんや……」
やっぱ、学歴目当てだったのかなぁ?
童実野高校がアカデミア以上の名門校とも思えんけど……
そんなこんなで、歓迎パーティーを終えて、現在はイエロー寮の自室。
「……うん。こっちは元気にやってるでよ。そっちはどうよ?」
『あ……はい。わたしの方も、大丈夫です。上手くやっていけると思います……』
「ま、まだ始まったばっかなんだし、上手くいくかは自分次第さね」
『そう、ですね……』
「あんま気負わんと。始まっちまえばなんとかなるって。お互い頑張ってゆこう」
『は、はい……』
携帯電話で、現在通話中。相手はヒロちゃん。
受験が終わって帰ろうって時に、携帯電話の番号交換させられたよ。
これで、もはや逃げ場は無い……
『……やっぱり、わたしも、決闘アカデミアに入った方がよかったかな……』
「なして?」
『だって……ここには、大海さんが、いないから……』
「うぎゃ~~~~~~ぁぁ」
『ど、どうしました?』
いけね、声に出てた。
「ううん。別に何もない」
ただ、あまりにあざとくてベタすぎるキャラに怖気が走っただけだから。
――酷っでぇなオマエ……
「私がそばにいたところで、できることなぞねーやさ?」
『そんなこと! ……ない、です……』
「私がおらんとも、君なら一人でも上手くやっていけるさね。てゆーか、一人でやっていけるくらいにならんと、どっち道生きてはいけんさね」
『それは……そう、ですよね……』
「そういうこと……と、もうこんな時間かい。今夜はここまでにしようや」
『え? もっと、お話してたいです……』
ひぇ~~~~~……
「あんま夜更かしすっと、美容に良くないでよ」
『……』
「明日は私が電話すっからや」
『……本当? 本当に、本当ですか?』
「う、うん。本当本当。なにがそがいに嬉しいんか分からんが……電話すっからや」
『……じゃあ、待ってます。お電話、待ってますから』
「はいはい。ヒロちゃんも、あんま夜更かしすんなや」
『はい!』
そんな感じで、ようやっと電話を切ることができた。
ちなみに、本名も教えてもらったけど、ヒロちゃん呼びで問題ない名前だったわ。
「はぁ……男の理想も、突き詰めたらあんな痛々しいキャラが出来上がるのな。人気投票でもさせたら最下位待ったなしだよ、あれ……」
――なんだかんだ嬉しそうに会話してたくせに。素直に可愛いヒロインのこと喜んだら?
「へいへい……それはどうでもいいけどや。帰ったんじゃなかったん? 神様」
別れた時とはだいぶ姿が変わっとるが、声と言い喋り口調と言い、間違いない。私の知る神様や。
――神様してるよりこっちのが面白そうだからな。神様の仕事にも飽きてたし、こっちに来ることにした。
「今時の若者が仕事辞める、みたいなノリで来られても……」
――それに、オレとオマエの会話以外、この小説にネタなんかないだろう。
それを言っちゃあお終めぇよぉ……
「まあ、理由は分かったけど……なんでまた、格好が『光鱗のトビウオ』?」
その言葉の通り、今目の前にいるのは、白い服着た人間でなくて、私のメインデッキに入ってる『光鱗のトビウオ』だわ。
――元が神様だからな。オマエのそばにいるのに都合がいい精霊に転生したんだ。
「神様だけでなく、精霊にも生まれ変われるん?」
――ああ。五回以上天国行きが決まった魂は、精霊や妖精に生まれ変われる。神様と一緒で、やることほとんどなくて退屈だけどな。
「あー、そう……んで、なんで数あるカードの中から、トビウオなわけ?」
――良いじゃん。オマエのデッキのキーカードだろう? 光属性なのも神様っぽいし。
「キーカードねぇ……まあそうだけど。今言ったように、他の魚とは違って光属性だから、属性サポート受けられない使い辛さもあるねんけど。場合によっちゃあ、デッキから抜くよ」
――お好きなように。決闘のことには口出ししねーよ。
「……あと、その姿であんま近寄らんどくれ。意外と顔怖い」
――悪かったな……そん時はこうしてやるよ。
「戻れるんかい! 元の姿!」
――神様嘗めんな。もっとも、体は精霊だから、精霊が見える奴に出会ったら見つかっちまうけどな。遊城十代とか、万丈目準とか……
「んじゃ、せいぜい気を付けなよ……」
そんなこんなで……
ベッタベタで痛すぎるヒロインの女の子と、ツッコミ兼サポート役の元神様な魚の精霊。
そんな人達に囲まれつつ、私の新しい学生生活……
アニメ世界での生活が、ここに始まったわけですわ……
「……む? メール?」
携帯電話でなく、学生用端末が鳴り出した。そこに送られた文章を開いてみると……
『受験番号37番。お前の決闘は見せてもらった。今夜、ブルー専用決闘フィールドへ来い。そこでアンティ決闘を
全部読む前に端末を放って、ベッドに突っ伏した。
「おやすみなさい……」
――おやすみ~。
お疲れ様~。
こんな感じで、転生物でした~。
他にも連載してるから、続かないよ~。
そんなこんなで、ここまで読んでくださった方々、ありがとね~。
ではでは。