僕の人生に後悔なんてなかった。航海もなく、あったとしてそれを公開することもなかった。
そんな人生で人間って意外にいろいろあって、それでも思う。人間にとっての人生ってそれはそんなに素晴らしいものではなくて、どうでもいいものなんじゃないかなって。
音楽を耳に流し込みながら、外の風景の流れる一つ一つを見る。光源が部屋の光しかないから暗い。今日はそんな日だ。だが別に夜、と言うわけでもなく。
つまりは雨。
そんな回りくどい思考でその結果にたどり着いたわけではなく雨粒を見てそこまで判断したわけだが、人間の思考ってここまで考えてみればたどりつくと言うことは実は一瞬でこの処理をしてるんじゃないんだろうか。
僕は雨の風景を見ながら、とある少女のことを思い浮かべる。いつもどおりならば字を書いてるんだろう、彼女は。僕はその気持ちがよくわかる。文章と言うものが好きだからだ。
好き……といっても何故そう思うのかについては全然、自分でもわからない。たぶん僕について好意と言うものは曖昧なもので、それでも一緒にあればなんだか胸があったかくなるようなものを言うのだと知っている。
蒸散していくように僕の視界は消えていく。そうして、自分が睡眠に近づいていることを知った。僕は昼寝をしていないとつらい。たぶん脳みそを使いすぎてるんだと思う。
そして落下して、僕は椅子に落ちた。とん、と椅子の上に落ちた。軽い音がなって僕は自分が落下したのだとようやく理解した。
ここは夢の空間なのだと思う。僕にとっての夢。そこはきっとだれもを招くように扉は開かれていて、僕のこころに直結している。
「──おはよう」
その言葉に、おはようと返した。彼女はそこにいる。そこに立っている。その事実に、なんだか知らないけど安堵した。
後ろから抱きしめられる。肌に浸透していくこの熱が、僕は嫌いじゃなかった。熱でどろどろに溶け合って、一つの塊になるような感触。それはとても心地よくて脳みそが溶かされそうだった。妙な、独特なにおいだ
「今日はたくさん字を書いたんだ。屋上から、眺めてたせかいを、字に書き起こした。わたしはきっと字を書くのが好きなんだろうね。そんなわたしだから、いつもこうしてここにいるんだと思う」
彼女が離れる。数秒もしないだけくっついていた彼女の顔を、僕はみていない。僕は夢の世界を傍観する。僕は彼女を見ている。
僕はいつも世界を覗いていた。だから知りたくないこともわかってしまう。
彼女の息は嫌に荒い
ああ、こんな世界ならいっそ壊れてしまえ、と僕はかつて述べたのだ。思い出したのは僕の人生。これほど無意味なものなんてあるのかな、と思った。思っただけで、何も
ただ、黙る。執拗に黙る。口を開く意味がないから。僕はいつも黙っている。
僕の彼女はいないと知った
落ちていく感覚と、堕ちていく感覚。その2つが一緒になっていく。雲が足元にあって僕はただただ夢にいた。
『──落下死した?』
僕はただただ見ている。
『どういうことです?』
僕はいつも見ている。
『 』
僕はいつでもここにいる。
僕はいつでも見ていた。だから知っている。ただ、知らないでいいことすら知っている。少しだけ奥を見た。賢しい僕には相応のものを。とっておきのプレゼントが、彼女に触れた。
そこを始点として彼女は砕けていく。彼女という殻が解けて、僕はその風景をただ見ていた。
僕を蹴落とすものを見た。
ショートショートと呼ばれるのかもしれない短い話。透明文字を利用しております。仕組まれた寝取りの話