個性【念動力】が思ったよりも強すぎる 〜念堂くんは勘違いされやすいようです〜   作:隣町の変な銅像

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個性【念動力】が思ったよりも強すぎる 〜念堂くんは勘違いされやすいようです〜

 

「ゲエッ!?あれ念堂じゃねえか!なんで不良の頭が雄英なんて受験してんだ!敵側だろ明らかに!」

 

「試験荒らしか?どうせ筆記試験に合格できねぇだろうが、ここら一帯の不良共を傘下に収めた実力は間違いない。事故を装って将来有望なヒーロー候補を潰す気かもしれないぞ……。」

 

「おいおい勘弁してくれよ。不良の中でも有名だった半ば敵みてぇな不良団体をたった1人でいくつも潰したバケモンだって話だぞ。」

 

 

 

 ザワザワと騒がしい受験生達の目線の先には1人の男が佇んでいた。学生服に身を包み、静かに立ち尽くす長身のその男は一見するだけで分かるほど凶悪な空気を身に纏っている。

 

 周囲の空気を一切気にせずに立ち尽くすその姿は、既に周りの受験生と一線を画していた。画面から映像を見ていたプロヒーローは思わずこう呟いた。

「素人の面構えじゃねえな……荒れるぜ、この試験。」

 

 

 

 

 

 

 「ハイスタートー」

 

 その不意打ちに反応できた者は多くはなかった。

 つまり、反応した者もいたということだ。その内の1人が会場入りしてから一度も集中を切らしていなかった念堂なのは必然だっただろう。

 

 合図と同時に念堂が個性を発動し空中に躍り出る。上空を取ることのアドバンテージは多いが、今この瞬間で最も大きいのは情報だ。

 仮想敵の配置、点数、そして他の受験生の動き、念堂はその全てをこの一瞬で把握した。

 

 故にその行動は必然。最も効率の良いルートを瞬時に割り出し、飛び出した。その速度について行ける受験生はいない。空を飛んでいる事を考慮してもなお、その速力は群を抜いていた。

 

 念動は高速で飛び回りながら、その通り道にいる敵を尽く破壊していく。直接攻撃する必要もなく、彼の通り道にいる敵は次々と鉄屑へと変わっていく。個性【念動力】によるものだ。

 

 念動力系統の個性の大半は、手で持ち上げられる物を少し動かす程度の力しかない。そういった印象が強い為、ポピュラーな個性ながらその能力に注目される事は少ない。あるいは、ポピュラーだからこそ注目されないのかもしれない。

 しかし、ヒーロー業界と関わりのある者なら知っている。出力の高い念動系の個性はそれだけでトップヒーロー達すらサイドキックに欲しがる逸材であると。

 

 物を持ち上げるその個性は災害現場では間違いなく重宝され、戦闘でも対応できる幅が広く穴がない。更に飛行が可能なレベルであれば戦闘だけでなく移動や情報戦に関しても有利であり、出力次第では多数を相手取る事も難しくない。不可視の力故に防御も難しく、遠距離攻撃の無い相手ならそれだけで封殺してしまうだろう。

 

 

 そして念堂の個性は念動力系統の中でも一際強力だった。仮想敵を全て一撃で叩き潰すその出力、高速で飛行を行える程の精密性、加えて飛行を制御しながらでも複数の敵を同時に攻撃できる手数の多さ。

 試験との相性の良さもあり、圧倒的な速度で仮想敵を破壊していく。あまりの速度に、他の受験生が敵を見つける事すら困難なほどだ。

 更に毎日と言っていいほど町の不良達との抗争に明け暮れた念堂はそのスタミナも尋常ではなかった。最初からハイペースで飛ばしながら、試験の後半に入っても衰える様子がない。

 ポイントを稼げず焦る受験生達は、しかしその甲斐もなく念堂に先を越され続けるのだった。

 

 

 

 暴れまわる念堂を尻目に、試験会場の中央で巨大仮想敵が動き出した。敵を探すために深くまで入り込んでいた受験生達が我先にと逃げ出していく。

 

 そんな中で巨大仮想敵に向かっていく受験生が数人存在した。何も人を助ける為だとかそんな高尚な目的ではない。念堂が敵を狩り過ぎた煽りを受けて全くポイントを稼げず、不合格をほぼ確信してしまった者たち、彼らが巨大仮想敵に隠しポイントのような物が存在するかもしれないという淡い希望を持っての特攻。つまりはただの破れかぶれであった。

 

 明らかに巨大仮想敵に通用しない攻撃を繰り出して突撃する彼らを見て、流石に隠れて様子を見ていた教師も助けに入るべきかと身構える。

 

 その瞬間、足を大きく振り上げた仮想敵の動きが止まった。

 

 まるで金縛りにあったようにその動きを止めた巨大仮想敵が徐々に浮かび始めた。そこで初めて受験生と教師は巨大仮想敵の後ろに立ち、力を込める様に腕を空に向ける念堂の姿に気付く。

 

 

「邪魔だ。」

 

 

 短く放たれた一言と会場中に響き渡った轟音と共に、試験の終わりを告げる合図が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「今回は面白い受験生が多かったなあ。」

 

「救助ポイント0で合格した彼も面白いが、敵ポイント0で巨大仮想敵を破壊した彼もまた興味深い。」

 

「注目株といえばやっぱり1人で半数以上の敵ポイントを独占した念動力のあの子でしょう?」

 

「ありゃあ流石に他の受験生が可哀想だったな。あの速度で標的を潰されたら対抗できる奴はプロヒーローでも多くねえだろう。」

 

「だから毎年言ってる通り、相性が大きいこの形式の試験は合理的じゃない。まあ、手柄を奪う力と運も現代のヒーローの必須項目、同じ会場の奴らは運がなかったと諦めるんだな。」

 

「しかしふむ……念堂刃君か、強力な個性だね。」

 

「巨大仮想敵を破壊した出力は勿論、高速で飛行できる制御力もかなりのものだ。戦闘を行えるレベルの念動力を持っていても、一歩間違えれば致命傷になりかねない空中制御を行える奴はそう多くない。ましてや複数の敵への攻撃を同時にやりながらとなるとな。」

 

「映像を見る限りおそらく直接作用型ではなく力場型だな。まだまだ伸びるぞ、あの個性は。」

 

「敵ポイントはダントツ1位。意外にも筆記試験は合格ラインを超えてるし、普通に考えれば文句なしの合格なんだけど……」

 

「警察も手を焼く不良達のリーダーか……」

 

「最近のガキはヤンチャだからなあ。個性を使って暴れる奴も少なくねえ。特に数年前はこの辺りでいくつかのチームが抗争をしてて、ヒーローが駆り出されるのも珍しくなったくらいだ。」

 

「それを中学生にして全て潰してまとめ上げたのがあの念堂……」

 

「本人が警察に厄介になった事はないがその名前は有名だ。経歴に拘るつもりはないが、流石にこのレベルになると一切不問という訳にもいくまい。評判通りなら半分敵候補のような男だぞ。試験内容を見れば少なくとも戦闘能力は本物だ。」

 

「今不良達が大人しくなってるのはあいつを恐れてるからだ。力だけじゃない。その冷静な判断力と冷徹さを、だ。」

 

「念堂の名前は有名だ。念堂が雄英に入学するとなると大きな問題になるかもしれんぞ。ただでさえこの学校はマスコミの目が多い。隠し通す事はできないだろう。」

 

「だからこそ、僕は彼を雄英に受け入れたいと思う。」

 

「校長?!」

 

「どんな思惑があれ、この学校に入りたいという意思があり、その能力があるなら断る理由はないさ。もし良からぬことを考えていたとしても、生徒を導く事もまた教師の役割さ。」

 

「私も賛成です。彼はまだ若い、その力を向けるべき先を教えてやるのも我々先達の役割でしょう。」

 

「オールマイトまで……」

 

「全く真面目なこった。後で後悔しても知らねえぞ。」

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

一方その頃、件の少年といえば

 

 

 

 

(よっしゃー!!憧れの雄英に合格できたぞ!!血みどろの不良生活からおさらばして、エリートヒーローの卵達と充実した青春を送るとんだ!!)

 

(念動力なんてヒーロー向きじゃない個性じゃ個人事務所なんて夢のまた夢だろうけど、移動にも荷物持ちにも便利な個性だってしっかりアピールして将来はエリート達のサイドキックを狙うくらいならできる筈……)




勘違い物にも色々タイプがあって云々

主人公が狙って勘違いさせる系も書いてみたい
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