個性【念動力】が思ったよりも強すぎる 〜念堂くんは勘違いされやすいようです〜 作:隣町の変な銅像
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」
「思わねーよ。てめーどこ中だよ、端役が!」
「ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明〜〜〜〜〜!?くそエリートじゃねぇか。ブッ殺し甲斐がありそうだな。」
「君ひどいな、本当にヒーロー志望か!?」
教室の中心で騒ぐ爆豪と飯田、そしてその様子を怯えながら見つめる緑谷。端的に言って、A組はカオスな状況であった。その後の会話まで平然とした顔で流している周りの生徒もまた、大した神経をしていると言っていいだろう。
しかし、そんな彼らでも見過ごせない程の存在感、それが教室に現れた。まるで引っ張られる様に全員の視線が入り口に集まる。
そこに立っていたのはまるで既に臨戦態勢かのような凶暴な気配を見に纏い、教室を見渡す一人の男、念堂刃であった。
その迫力に曲者揃いの雄英生徒達すらも気圧され、教室は沈黙に包まれた。
「…ッ!」
そして、それで黙ったままでは済まないのが爆豪である。自分が気圧された事実が気に入らない。この男が気に入らない。それだけで爆豪には十分な理由だった。
「何ガンくれてんだテメェ…!」
(いったあああ!!相手明らかにヤベー奴だろ!!ブレーキ踏めよブレーキ!!)
(かっちゃああああああん!!)
見るからに危険な空気を漂わせている念堂に迷わず突っかかっていく爆豪に、流石の雄英生達も動揺を隠せない。
「あ?視界にも入ってなかったぜ、自意識過剰なんじゃねえのか。弱い犬ほどよく吠えるってのはどうやら本当らしいなァ?」
(……あ、しまった。なんかヤンキーっぽい絡み方してくるからつい癖で…)
長年次から次へと湧いてくる不良達の相手をしていた念堂は不良に舐められたら余計に面倒になると学習していた為、ヤンキーっぽい絡み方をされると煽り返す癖が条件反射レベルで染み付いている。入学初日ということで気を引き締めていた事も災いし、完全に本人の意思を無視して喧嘩を売る結果になってしまった。
「いい度胸だ、お望み通り今すぐぶっ潰してやるッ!!」
「……」
(ヤバい、この人キレてる。どうにか穏便に…穏便に…)
爆豪が身構え、念堂が爆豪に向き直る。そんな一尺即発の空気の中で、周りの生徒もどう行動するべきか判断が付かず、戸惑っていた。
「喧嘩がしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ。」
そんな雰囲気をかき消す様に、布団に包まれた謎の男が現れる。何故か布団に包まり、小汚い身なりをしたその男、見た目は完全に不審者である。
(((なんか!!いるぅぅ!!)))
この瞬間、Aクラスの心は1つになった。
ーーー
「個性把握テストねぇ…」
その話を聞いた時念堂が最初に思ったのは、このテスト内容なら俺勝てるんじゃね?という事であった。テストで好成績を出せば学校と周りの生徒への良いアピールになる。
念堂は少々思い込みが激しく、よく勘違いをしてそのまま突き進むタイプのダメ人間ではあるが、実のところ自分の能力に関しては比較的正しく認識している。
こういった複数の項目で採点を行う試験であれば、直接戦闘を行うよりも【念動力】の利点を活かしやすい。寧ろ念堂は戦闘よりもそういった使い道にこそ念動力の強さを見出していた。
これは間違いではない。極端な話をすれば、物を動かす事を本質とする【念動力】は戦闘に使用する方が変則的な使い道なのだ。単純に戦闘力だけに注目するのならこの系統より戦闘向けの能力は多く存在し、同じ規模の能力で比べるのならその大半に敗北するだろう。念動力の戦闘においての強みとは対応できる局面の多さ、相性の良い能力の多さ、応用の幅の広さ、そういったところに起因する。
念堂は自分の個性である為、その事実を感覚的に理解していた。その理解に基づいて、自分の能力は戦闘向きではないという判断を下しているのだ。
中学時代に多少不良相手に無双ゲーをしたからといって、それは野球に例えれば所詮草野球で4番エースをやっているだけ。甲子園を目指す強豪校に行けば良くてベンチを暖める程度の実力しかない様なもの。そして雄英は全角各地からエリートの集まる超名門校だ。つまり論理的に言って、自分の戦闘力など雄英ではモブ。今は周りが入学したばかりで未熟な事に加え戦闘経験の差で誤魔化せているかもしれないが、周りの成長と共について行く事すらできなくなるだろう。念堂はそう確信していた。
間違っているとすれば、念動系の個性は能力の規模が大きくなるほど戦闘を苦にしなくなるということ。念堂の個性は同系統でも最上位に位置する程の強力なものであり、向き不向きすら凌駕して大きな戦闘力を有していること。彼が路地裏で粋がっているだけの不良の集まりと思っている潰した組織はどれもプロヒーローすら単独では手を焼く程の戦闘力を持つ集団であったこと。そしてそれを壊滅させた念堂の力は強豪校のベンチどころか高校入学時点で既にプロに片足を突っ込んだ怪物であるということだ。
「うっし、いっちょ気合い入れてやっか!」
そんな勘違いをしながらやる気に満ちた様子でアピールに励む念堂を、周りは何かやらかす気かと戦々恐々と眺めていた。
ーーー
(まあ、概ね想定通りか。)
不審者改め雄英高校教師の相澤はそう思考する。
彼の目の前では生徒達による競技が着々と進められていた。
目を引くのは推薦組の2人と爆豪、そしてやはり念堂だろう。
「バカな…俺が、走りで負けた……?」
50m走。自身の身体で飛行すら可能とし、加速の必要もなく即座に最高速を出せる念動力より機動力に優れる個性はそう多くない。スピード自慢の飯田すら上回りトップ。おそらく最高速度なら飯田の方が上だが距離の関係で念動力の特性で差がついた。
「ええ!?壊れた!?この握力計さっき540㎏とか測定してたんだけど!!??」
握力測定。入学試験の大型敵すら破壊した出力を遺憾なく発揮して一位。同じく大型敵を破壊した増強系の緑屋が最大出力を出せばおそらく上回るだろうが、緑屋にはそんな様子もない。
「まだ飛んでる……。おーい、念堂、相澤先生がもう記録測定不能でいいから降りてこいって」
立ち幅跳び。空を飛べる奴を測るだけ無駄だ。あいつの体力が尽きるまで延々と測る必要もないだろう。合理的に考えて。
「負けてばかりでいるつもりはございませんわ。」
「あのー……一位オイラなんだけど…。」
反復横跳び。念堂は峰田と八百万に次いで三位。念動力を反復横跳びに応用しようとすれば相当な制御力が必要だ。好成績ではあるが、規格外としか言いようのない出力や射程範囲に比べれば常識的だな。
「どこまでいくんだよ。アレ本当に念動力で飛ばしてるんだよな?」
ソフトボール投げ。物を飛ばす競技は【念動力】の専門分野だ。しかし流石にこの競技では麗日には劣る。更にここでも八百万が上をいった。八百万は他の種目でも念堂には劣るものの好記録を残している。【創造】は対応力なら【念動力】をも上回る強力な個性、寧ろ事前準備が可能なこのルールでここまで念堂とほぼ互角だった事が驚きだが。
そしてこの競技である程度念堂の能力範囲も見えた。実力を隠しているのでなければ2㎞前後。俺の知る念動系の個性でもトップのバケモノ染みた射程範囲になる。
試験で見せたあの出力に目が行っていたが、射程が一番規格外だ。距離が開くほど出力は落ちるみたいだが、戦闘となれば一度相対してしまえばまず念堂の射程からは逃れられない。まして念堂は空を飛べる。敵になればどれだけ厄介か。
しかしやはり校長の見立ては正解だった。俺は念堂にとっての天敵。万が一の際、確実にこいつを制圧できる俺が担任をやるのが最も合理的だ。
結局総合一位は念堂、二位は八百万、三位が轟という結果になった。個性の特性から考えて八百万がトップをとると予想してたが、想定以上に念堂の総合力は高かった。
轟は戦闘において強力な分こういった応用はあまり向かないな。それでも炎を使えばまだ伸ばせただろうが、何故か使う様子を見せなかった。4位の爆豪は優秀な個性に高いセンス、発想力と向上心もある。入試の結果を見てもこのクラスでトップレベルに優秀なのは間違いないだろ。問題はその性格か。その辺はおいおいだな。
まあ、今回の一番の問題児はとりあえず雄英に残るだけの可能性を見せたがそっちも課題だらけだ。全く、緑谷といい爆豪といい念堂といい、今年のクラスは苦労が多そうだ。
ーーー
おまけ
ーその頃の念堂くんー
(うおっ!?50m走じゃなかったら確実に負けてるわ!なんだあの眼鏡の人!!スピードには結構自信あったんだけど……やっぱり雄英はヤバいな!!)
(あの触手の人、個性増強系じゃないよな!?なんで握力が500超えてんだ!?え、何、雄英ともなると個性関係なくそれくらい鍛えてるのがデフォな感じなの?俺個性の補助無しだとクッソ貧弱なんですが大丈夫なんですかね……)
(うん、俺飛べるんだよね。なんか申し訳ない。テストの趣旨と合ってるんだろうかこれ……)
(えー、測定不能ってなんだよ測定不能って。この競技は自信あったのに流石に勝てんわ。俺も人の事言えないけどさ。というか【創造】ってなんだそのチート。ちょっと相性が良くてこのテストの成績がいいからって雑魚個性が調子に乗るなよってことですね分かります。)
(あの氷の人なんか俺のセンサーがビンビン反応すんだけど、絶対ヤベェ奴だ……あっちの筋肉の人は筋力5倍!?あの変な影の個性ちょっと便利過ぎない!?うわ!?今投げた人指怪我したみたいだけど増強系?肉体が耐えられないってどんな出力だよ……雄英生ヤバスギィ!!!!)
着々と自信を失っていた
映画面白かったですね。オールマイトの活躍をもうちょっと期待してたのでそこは残念でしたが主人公がいるから仕方ない。