涼ちゃんとさみ姉   作:えーひち

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マト姉と・・・・

『よぉ!爺ちゃん』

あたしが実家、木造平屋の古びた家の前にたどり着いた時、爺ちゃんが玄関前にバケツと柄杓で水を撒いていた。バカボンのパパみたいな恰好をしている。前と変わらない、いつもの爺ちゃんだ。

『あ?なんじゃースズじゃねーか』

『おひさっ!元気にしてたかー?』

『なんでおめぇ、いきなり来んなってー、なんで言わんできたんだ?』

『てやんでぇー』

『てやんでぇぇーー』

ガシっと頭抱えられた。ニカっと笑ってグリグリされた。

『爺ちゃんいてぇって』

『おぅ、へぇれへぇれ!長旅でつかれてっだろ!』

長旅とか言われたけど、全然近いんだけどね、距離的には。

 

あたしが休暇をとれたのはもう、夏も終わる頃だった。しかも2日だけだ。今日実家に泊まって明日には帰らないといけない。ちゃんとお盆の時期に3連休をとれたサミ姉とは大違いだ。こういった待遇は残酷なくらい実績に対応している。あんなにちゃんとした時期に休暇が3日貰えるってことは、サミ姉は鎮守府側に結構エース級として認識されているのかもしれない。ちょっと悔しい。いや、かなり悔しい。だってあのぽよよんとしたサミ姉だぜ?サミ姉のくせにー。

ちなみに実家には連絡なしで来た。サミ姉が帰省した時、ご近所さんが大勢集まって大騒ぎで出迎えられたと聞いたからだ。そんなんやられたらたまったものじゃない。良くも悪くもお祭り好きなのだ。

『こうとなったら、ご近所さんに声掛けにいかんとなー』

『おい、ヤメロ』

『なんだって?』

『やめてくださいませ、御じい様』

『てやんでぇー!スズがけぇって来ためでてぇ日にご近所総出でお祝いせんでどーする!』

『んなちょくちょくお祭り騒ぎやってったらご近所迷惑でぇ!適当にしとけー』

『べらんめぇ!』

『べら棒めぇ!!』

『ちょっとやめてよお爺ちゃん、大声出さないで、涼音も。それこそご近所迷惑だわ』

玄関先で爺ちゃんと言い合いしてたら、奥からマト姉が出てきた。

『マト姉』

『涼音お帰りー。お茶入れるから居間にでも座って待ってて』

『はぁーい』

爺ちゃんはちょっとすねたように下唇を突き出していたが、すぐに目を細めて普通の顔になった。

『今夜は寿司でもとっとけ、ミヤケのとこな、特上だぞ』

『うぉ、やった!』

『このぉ、ゲンキンな奴め』

『にしししー』

あたしは爺ちゃんと肩をくんで居間にのしのしと向かった

 

 

『マト姉なんで家にいんの?仕事は?』

『何言ってんの、今日日曜だよ。役所はお休みだよ』

居間にある仏壇にお線香をあげた後、あたしはとりあえずちゃぶ台の前にどっしりと座る。

爺ちゃんはお得意さんのところの庭木の剪定の仕事に出た。バカボンのパパと同じ植木屋さんなのだ。そしてマト姉は国立大学を出た後、何とか言う役所に入った。結構優秀なのかもしれない。ちょっと性癖に問題はあるけど・・・

実は我が家はあたしとサミ姉の報奨金と給料でものすごく裕福だ。爺ちゃんもマト姉も働く必要はないのだが、その辺のお金は使わずに貯金してるらしい。『人間働かなくなったら終りでぇ』ってのが爺ちゃんのお言葉で、マト姉もせっかく入った役所をやめる気はないみたい。

とか言えば聞こえはいいが、実際のところ貧乏が根についてしまって、お金の使い道が判らないってのが本当のところなんだと思う。サミ姉の最初の報奨金が入った時のあたしたちのビビり方はは半端じゃなかったし、爺ちゃんなんか『ご、ご近所に配るか?どーなんでぇ』とか言ってたし。金配っちゃダメだろ。

 

さて、夕食は特上寿司ということだがまだ昼過ぎだ。あたしは地元の友達の何人かに電話をかけた。しかし日曜日の午後に突然電話して暇してる奴なぞいないのだった。みなさんリア充してやがる。今デート中とか言ってる奴もいる始末だ。爆発しろ。

それでも『もっと早めに言え』とか『夜なら空いてる』とか言うのもいて、夕食後に駅前のローソン前に3人ほどで集まることとなった。鎮守府の生活とか話聞きたいらしく、結構みんな興味深々らしい。大した話はないと思うのだが・・・・

一通り電話を終えたころにマト姉が温泉饅頭のいくつか乗った皿をもってきた。

『涼音、お茶おかわりいる?』

『おう、もらっとこうか』

マト姉がお茶を注ぐ間にも饅頭に手を出す。うまうま。

『涼音ももう子供じゃないんだし、その江戸っ子口調なんとかならない?』

とか言いながらマト姉があたしの隣に座る。なんか近い。

『これはあたいのアイデンティティーだし、爺ちゃんの孫だという証だ』

『意味わかんないよ』

言ってるセリフと裏腹にマト姉は笑顔だ。

『マト姉、なんか嬉しそうだな』

『だって涼音がそばにいるんだもの。お膝乗る?乗ってもいいよ?』

『いや、それこそ子供じゃねぇし』

『えー、お姉ちゃんさみしかったんだよー。涼音は沙弓がそばにいるからいいかもしれなけど、あたしはずっとお爺ちゃんだけなんだよー』

『つーか、体格的に無理だろ膝乗るとか』

『じゃこうしよう』

マト姉はちょっと後ろにずれて体育座りになってから足をひらいて、『きてきて』とか言ってる。スカートなのでパンツが丸見えである。あたしはちょっとの間マト姉のパンツを覗き込んでいた。うむー、いいパンツだな。ナイス・パンツ。

『ちょっと、パンツはいいから、ほら来て』

あたしは素直にマト姉の立てた膝の間にマト姉に背を向けて座った。するとマト姉はあたしの前の方に手をまわして背中に密着してきた。ふわっとした柑橘系のいい匂いがした。

あたしの頭の左横にマト姉の顔があった。あたしは何か恥ずかしくなってきて、ちゃぶ台に手を伸ばしてお茶を一口飲んだけど、マト姉はそのままあたしをギュッとしたままだ。マト姉の満足そうな吐息を頬に感じながら、あたしはサミ姉とマト姉と3人で暮らしていた時のことを思い出していた。お爺ちゃんもいて、あたしたちは幸せだったのだろう。両親が亡くなって、そこにぽっかり空いた穴を強く認識した時。お爺ちゃんや二人の姉を大切に思う気持ちが深くなったのかもしれない。だからあたしはサミ姉が全く迷いもなく鎮守府に行ってしまった事にはどこか裏切られたような気持ちがあった。

そしてあたしはサミ姉を追った。でも結局それはマト姉を置いていく事にもなったのだ。マト姉に『さみしい』

なんて言われたら、あたしは素直になるしかない。

マト姉の手があたしの顎にかかり後ろを向かせる動きをした。あたしは半ばぼぉっとして『キスされるんだなぁ』とか考えていたけど特に抵抗するでもなく、そのままマト姉の唇を受け入れた。やらかい、柑橘系の香りのするマト姉の吐息がしみわたってくるようにして、あたしは幸福感の中でされるがままだ。でもまだそれはフレンチキスだった。あたしは『舌をいれてこないのかな』とか思っていた。後から考えればたぶん、どうかしていると思うのだろうけど、この時は『舌を入れてほしい』と思ったのだろう、あたしはマト姉の唇を少し強く吸った。するとすぐにマト姉は舌を滑り込ませてきてあたしの舌に絡めてきた。

しばらくあたしたちは次ぐ息も絶え絶えになりながらもはげしく唇を吸いあい、舌を絡めあった。あたしはもう体をマト姉の正面に向けて背中に手をまわしている。とてつもなく幸せを感じていた。

 

どのくらい抱き合ってキスをしていたのだろうか、外は暗くなってきていた。そろそろお爺ちゃんも帰ってくる頃だろう。こんな幸福なキスでもあまり長時間していればやっぱり疲れるのだ。あたしとマト姉はもう、ぐったりして畳に寝転んでいた。

『お寿司注文しないとー』

そういってマト姉は立ち上がろうとしたけど上半身を起こしたところであたしの方を向いて、寝転がっているあたしの乱れた前髪を手で梳いて、優しそうに微笑んだ。

『涼音、愛してる』

あたしはしばらく見下ろす逆光の柔らかい影のかかったマト姉の顔を見上げていた。

『サミ姉にも言ってるんだよね、それ』

『もちろん。あたりまえじゃない』

そう言ってマト姉はもういちど軽くキスをした。

『涼音だって、沙弓が好きでしょ』

『うん』

『あたしも好き』

『サミ姉ともキスしたんだ?』

『もちろん』

『キスだけ?』

マト姉はあたしの頬を軽くなでてから笑って言った。

『ないしょ』

 

 

 

【挿絵表示】

 




さみ成分少ないので落書き鉛筆画乗っけてみた
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