涼ちゃんとさみ姉   作:えーひち

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電波届かなかったみたいだねぇ

漣と龍驤が寮舎と学舎棟の間の路地で露店を開くようになったのはやはり先週の作戦終了直後だった。幅1800mm奥行450mmほどのテーブルを1個出してこじんまりとやっているが、はて?このテーブルどこかで見たことがあるような?

そしてどこからどうやって仕入れているのかはさっぱりわからないが、日によっていろいろ違うものを売っている。夕張が先日持ってきた坂角のエビせんもここで手に入れたらしい。

 

『本日の目玉は、柿安の和牛爆弾メンチやで~!』

『きたこれ!』

『揚げたてあつあつや~』

『さーご主人様方~かってかって~』

 

あろうことが店先でカセットコンロに油をなみなみ入れた広東鍋を乗せてメンチを揚げていた。これちゃんと鎮守府に許可とってあるのかなー?

 

『メンチ・・・・』

おいしそうな匂いに惹かれてふらふらとおびき寄せられるサミ姉を追ってあたしも店先に立つ。

『サミ姉、夕飯くえなくなるから・・・・・って』

うまそう・・・・・じゅる・・

丸々としてキツネ色に揚ったメンチは香ばしいパン粉とジューシーな牛肉と玉ねぎの香りがして、ちょっと抗えない感じだった。

『涼ちゃん、一個買って半分こしようか』

『しょーがねーなー、いいぜー』

なんだかあたしも食べたくなってしまった。

 

『漣ちゃん!1個ください!』

『はい!揚げたてですよ!五月雨ちゃん!』

漣がフライバットからトングでつかんだメンチをクリアパックに入れて輪ゴムで止めて、間にソースのポーションとお箸2膳を手際よく滑り込ませた後、手提げのショッピングパックに入れてサミ姉に渡した。

『熱いからお気をつけや~』龍驤が広東鍋のメンチの面倒を見ながら声をかける。『まいど、おおきになぁ~』

サミ姉はポケットからガマ口を出して100円払った。(安い!)青地に白水玉のガマ口は結構古びているが、長い事サミ姉が使っているもので、あたしにも愛着がある。

 

ホクホク顔であたしたちは寮舎入り口わきの長いベンチに座った。

サミ姉がソースをたっぷりかけて割りばしを割ってそろえてメンチにブッ差す。割りばし割った意味がねぇ。

『はい、涼ちゃん』

そのまんま笑顔で差しだしてきた。

『いやいや、半分こだろ』

『齧って~、私も齧るしー』

まいっか、と思ってそのまま齧ったら、対面でサミ姉も同時に齧ってきた。

『ん、もふぉ!』

メンチ熱いし、サミ姉の顔が近いしでびっくりしてのけぞった。

『あ・・・・』

両方で同時に齧ったものだからメンチが崩れてサミ姉の膝のスカートの上に落ちた。

『ふぉーー、おひひゃった・・・』慌てるでもなく、とりあえず咀嚼して飲み込んで『きゃーーーーー』と一応言ってから『おいしいねー涼ちゃん』

と、まぁ美味しい笑顔だった。

『これどーしよっかー・・・・涼ちゃんたべる?』

『うーん・・・・いや、食わねえし!』

一瞬・・・・

サミ姉のスカートの上のメンチをそのままそこで貪る自分を想像してしまった。

いやいや、それダメなやつだろ。

『サミ姉、これソースシミになるぞ・・・』

サミ姉の目線が遠くの方に向いていた。その先を追ってみると学舎棟の向こう、工廠から談笑しながら出てくる二人がいた。結構距離があるのでこっちには気づいていない。

夕張と・・・・由良かな?あれは・・・

あたしはにわかに感情を波立たせる。

サミ姉を見ると眉間にシワを寄せてそっちのほうを凝視している。こういう顔をしているときは電波を送っている時だとあたしは知っている。当然ながら電波などは届かず、二人はそのまま門を出て行ってしまった。

『電波届かなかったみたいだねぇ』

『やだー、電波とか言わないでぇー』

『じゃなんなの?毒電波くらい言った方が良かったか?』

『ひっどーい!せめて乙女電波くらい言って!』

『乙女電波!www新機軸だー』

『えへへへ』

サミ姉はちょっと顔を左に傾けてにへらっと笑った。いや、かわいいけど褒めてない。

『これなんとかしないと』

『あそっか』

サミ姉はフードパックにコロッとメンチを落として、ベンチのそばにあったゴミカゴにトトトっと駆け寄り、特に残念そうにもなくポイっと捨ててから、また行った時と同じオノマトペを背負って戻ってきた。

『何つって電波送ったん?』

『夕張さんメンチ食べたいかなーって。おいしいメンチがあたしのお膝にあるよーって』

あー・・・・

夕張なら嬉々としてスカートの膝から直で食うかも。あたしはそんなシーンを想像してみた。サミ姉の膝元にひざまずいてメンチを貪る夕張。それを見下ろすサミ姉は慈しみ顔で夕張の頭を撫でている。なんかエロい・・・

『ん?何々涼ちゃん』

おかしな妄想をしているあたしはサミ姉の顔をマジマジとみていたようだ。あたしの表情から何か良い事を言われるものと感じたのか(なぜ?)目がキラキラしている。

『スカートすぐ洗えよ。あたいは貸さねぇからな』

『ええ~なんでぇ~』

困り顔のサミ姉もかわいい。そんな顔を見たあたしは少し波立った感情を平穏に戻す事ができた。

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