食堂でのよくわからない宴会が終わった後、凉ちゃんを先に部屋へ帰して、私は自室に向かう廊下を歩いていた夕張さんに声をかけた。
「夕張さぁーん」
後ろから声をかけると夕張さんは勢いよく振り向く。傍らには由良さんとその腕に絡みつくように寄り添う夕立ちゃんがいた。
夕張さんは私を見た後、私の背後を確認するようにして少し目を細めた。凉ちゃんがいないのが不思議だったのだろうか。
「さ、五月雨ちゃん!」
「今から夕張さんのお部屋行っても良いですか?」
「え?お部屋来るの?五月雨ちゃんが?」
「よろしければー」
夕張さんはポカンと口を開けたまま顔を赤らめて少し固まった。
あー、なんか妄想してるなー。かわいいなー夕張さんは。こういうところ凉ちゃんと似ている。
「き、汚いところだけど、よかったら・・・」
と、夕張さんが言ったところで由良さんが夕張さんの頭をパシっと叩く。
「汚くないわよ。私が掃除してるんだから」
「いやいや、社交辞令だし」
「私に対しての社交辞令がなってない」
ちょっと言い合っているようでも、夕張さんと由良さんのなかよし度がにじみ出ているやり取りだ。
「五月雨ちゃんも入れて四人でお部屋宴会っぽいー」
夕立ちゃんが由良さんの腕にしがみついたまま、楽し気な笑顔で言った。
甘いお酒はとてもおいしかった。おじいちゃんが飲んでいたビールや日本酒は苦かったり辛かったりで、美味しいなんて思った事がなかったから、今までお酒はスルーしてきたけど、夕立ちゃんに渡されたピンク色の缶は、何か美味しそうに見えたので抵抗なく飲んでみたら、すごく甘くて美味しかった。
一缶開けるころにはどこか全能感というか何でもオッケーみたいな気分になっていて、私は部屋の主に断りもなく冷蔵庫を開けて、色とりどりのお酒の缶の中から今度はライトイエローの缶をとってから、夕張さんの足の間に座り込んで背もたれのように夕張さんの体に背中を凭れ掛らせた。
夕張さんもいくらか酔っているのか、いつもより少し大胆な気持ちになっているのかな。私の腰に手をまわしてキュッと抱き寄せてから私の肩に顎を乗せるようにして置いた。
これ私が顔よこに向けるとそのままキスしちゃうような体制だ・・・・
正面を見ると由良さんと夕立ちゃんがお互いにもたれかかるようにしている。ひそひそと囁きあいながら、折々にチュッとキスしたり、見つめあって微笑んだりと、結構なイチャコラぶりだ。
正直あてられる。
私は少し顔を夕張さんの方に向ける。夕張さんはピクッと一瞬震えたけど、そのままキスはしてこない。
すれば良いのに、へたれだなぁ。抵抗されてダメだった時が怖いのかな。別にいいのに、キスされるくらい。
でも私からはしない。こんなことをしに来たんじゃないし。
「夕張ひゃん・・・」
声をかけると夕張さんはビクッとして背筋を伸ばした。肩に乗っていた顎が離れる。
というか私まともにしゃべれてない?
「五月雨ちゃん?・・・」
「夕張ひゃん・・・すずちゃんお・・守ってやってくだひゃい・・・あたしのぉ大事な妹なんですぅ・・・」
そうとう呂律がまわってないみたいだけど、意味は通じるだろう。頭もグワングワンしてきた。
「妹ってユーかぁ・・・・ダイスキなんデすー、ダイジなんですー、そシてー」
私は飲みかけのライトイエローの缶をぐっと前に突き出す。
「結婚スルデス!」
「五月雨ちゃん?結構酔ってる?」
「酔ってマひぇん!」
私はどっこいしょっと体を回して夕張さんを正面に捉える。
「大丈夫れす!夕張ひゃんハぁ、愛人にシてあげマひゅ!」
凉ちゃんを守ってもらう替わりにあなたを愛人にしてあげますよ。と私は言っている。我ながら酷いし傲慢な事を言っているな。でもこの時はそんな思考すらなくて、ただ凉ちゃんを守りたい一心だった。
「五月雨ちゃんの愛人かぁ~」
私のそんな酷い言葉にも夕張さんは嬉しそうにして、また妄想モードに入っているみたいだった。
「ドうか!よろしくお願いしまひゅ!では、わたヒはこれにて・・・」
私は立ち上がって腰を折って礼をしたけれど、バランスを崩して座っている夕張さんの肩に手をつく。おなかのあたりにある夕張さんの頭が私を見上げた。
「そんなに急いで帰らなくても・・・」
「明日もはやいでしゅし、凉ちゃんもマたせてまひゅのれ!」
「そう、そうだよね。部屋まで送ろうか?」
上目遣いにして夕張さんが問う。優しいなぁ。
「しょれにはおよびまひぇん!ごちそうさまでひた!」
私は由良さんにも礼をしてよろよろと部屋を出た。
よたよたと歩いて部屋にたどり着き、戸を開けると凉ちゃんが壁にもたれかかってオナニーをしていた。頭にはあたしのパンツをかぶっていて私が戻ったことに気づかずに目を閉じて顔を上気させている。ときたま、『夕張さん』とか『五月雨ちゃん』とかつぶやいていた。
あー、またこの子は、私と夕張さんがエッチなことしてるところを妄想してるな。
どうも凉ちゃんは昔からNTRの気がある。ヘンタイさんだなー。お仕置きしないと。
私が近寄って行くとそれに気づいた凉ちゃんは『なんでもない』とか言って両手をバンザイした。私は構わず凉ちゃんの頭を両手でロックして強引にキスをした。
しばらく熱いキスをしていたけど、なぜか凉ちゃんに引きはがされた。愛しい姉のキスをそんなぞんざいに引きはがすとは、けしからん妹だナ。
私の意識はそこまでだった。アルコールに溺れてそのまま眠りに落ちてしまった。