涼風ちゃんを離脱させた後、私は隙を見せた機銃艇の包囲を突破した。なぜか機銃艇群はこの時30秒ほど固まったまま動かなかったのだ。理由は分からないけど幸運だったのかもしれない。この状況で幸運もないか。
五月雨ちゃんと約束したから、私は涼風ちゃんを離脱させた。私は今単艦で勝たなけらばならない。爆加速用チャージャーは涼風ちゃんに使った一基のみで予備はない。離脱は不可能。だからもう勝つしか生き残る道はない。手はある。あるはずだ。私の背中にあるバランスの悪い主機にはいろいろな新兵器がしこんである。明石さんと遊び半分でゴテゴテくっつけた物がいくつかある。そのうちの一つ、アレは使えるはずだ。
「私は生き残って五月雨ちゃんの愛人になる!」
岩礁の向こうに浮かぶ機銃艇の母艦へ、私は叫びながら突貫する。
「それで姉妹百合を間近で堪能する人生を送るんだぁー!」
かなりというか、致命的に残念な叫びな気がするが、これが私の正直な願いなんだから仕方ない。
母艦は単独だった。護衛の機銃艇も残してないなんて、敵はバカなのかな?それでも艦首の方に3基の機銃が装備されていて撃ってくる。砲は装備していないようだ。対艦娘戦を想定しての装備なのだろう。高速で動き回る小さい的には砲より機銃が有利だ。しかし機銃では明らかに火力不足だ。艦娘のフィールドは機銃弾くらいならはじいてくれる。体当たりの自爆攻撃をくらわなければ、なんとかなるんだ。
後方からは機銃艇が動き出したようで急速に接近しつつある。こいつらが追いつく前に決めないといけない。
私は単装砲を母艦に向けて撃ちながら進む。フィールドもない速度の遅いデカイ的だ。ボコボコ当るがコチラも火力不足。あの大きな艦を沈めるには時間がかかる。
砲撃を続けながら、私は背中の主機にある突起に手をかけて引っ張り上げる。真直ぐに伸びた細い筒状の砲身だ。限界まで引っ張って前方に向けて倒す。
艦首を向けて迫ってくる母艦を正面に捉えて狙いを付ける。スコープはないので完全に肉眼目視での照準だ。
明石さんと遊び半分で作ったこれは艦娘のフィールドをビームに変換して打ち出すシステムだ。たぶん1発しか打てない。テストした時も1発以上は撃てなかった。
これは賭けだ。細いビームは正面ど真ん中に当てればおそらく艦尾まで貫通するだろう。内燃機関であればエンジンや燃料タンクを貫いて引火して爆散するだろうけど、内燃機関じゃないかもしれないし、動力の主要部分が必ずど真ん中にある保証もない。砲もないし魚雷も撃ってこないので保管庫の誘爆も期待できない。でもやるしかない。姉妹百合のために。
追いすがる機銃艇が後ろから撃ってくるが気に留めない。私は集中して照準し、引き金を引いた。
迸るビームがそのまま母艦の真ん中を貫いた。そして少しの間を置いて爆散する。
勝った。私は勝った。追いすがってきていた機銃艇も母艦の爆散と共に動きを停止して漂流し始めている。
勝鬨をあげたい所だったが無理だった。私の胸や腹には大穴が空いていて血が噴き出していた。
「そっかー、フィールド撃ちだしちゃったらこうなるの当たり前だよなぁ、私って結構バカ?」
海面に突っ伏すように倒れる。そのまま私は沈んでゆく。
「五月雨ちゃんと涼風ちゃんに挟まれてエロイことしたかったなぁ・・・」
それダメなやつじゃんと思ったところで、そんな残念なつぶやきも泡となって消えていく。沈んでいく私は、でも穏やかな気持ちになっていた。
「何だろう。私沈むのに・・・」
幼い頃から感じていた海に対する郷愁みたいなものを強く感じていた。
私、海に帰るのかな・・・・
帰る
還る
「そっかー海に還るんだねぇ」
夕張型1番艦夕張はこの日轟沈した。