鎮守府には風呂と呼ばれる施設が二種類ある。
一つ目は入渠風呂。艦娘が破損した時艤装以外の部分を修復するための物で、1人用の狭い浴槽が4つある。
二つ目は普通の共同浴場だ。特に広くもなく、狭くもなく、スポーツジムなんかにある風呂をイメージしてもらうとだいたいあってる。
艦娘は修復以外に風呂に入らない、などというあり得ない噂が市井では流れているようだけど、毎日風呂には入る。だって女の子だもん。
区別をするためだろうけど、皆は入渠風呂の方を単に『風呂』と呼び、普通の風呂のことを『浴場』と呼んでいる。ちょっと前に聞いた話だと『浴場』と『欲情』をかけてるとか真偽不明な話まであったりするのだ。
欲情ねぇ・・・・・
あたしの隣で湯につかっているサミ姉をじっと見た。
・・・あれ?なんか、乳育ってないか?
まったくささやかな差ではあったろうが、五月雨マスターのあたしの目はごまかせぬ!
『涼ちゃん・・・・』
気づくとサミ姉もあたしの方をじっと見ていた。乳に気を取られて気づかなかった。
『おっぱい大きくなってるよ涼ちゃん!!』
『え?ええぇ~??』
サミ姉はなんの躊躇もなくあたしの乳房を両手でつかんできた。
『やらかい・・・』
『揉むな!』
『おねえちゃんはうれしいよ、ちゃんと育ってるんだねぇ涼ちゃん・・・・』
『それはお前もだろ!育ってるじゃん!!』
『え~~?』
サミ姉はあたしの乳房から手をはなして自分の胸元に手を持って行って・・・軽くさすった。『揉む』でなく『さする』である。
『おーーー、夕張さんに揉まれたからかなー』
『ガッ???』
『てか、揉むほどないかー、さすられただけかー』
テヘ、とかわいく顔かしげてみたところで事実としては如何ほども変わっていない。
いや、確かにこの共同浴場ではそんな風景は普通に見かける日常風景なんだが・・・・・しかしあたしの見えないところでサミ姉の乳を揉む、いやさするとか、何というか、何とゆーかー・・・
『やだ!』
サミ姉が目を丸くしている。(元々丸い)
『涼ちゃん?』
『いや、なんでもねぇ』
あたしはサミ姉の丸っこい目から逃げるように視線をそらした。辺りをみるといつの間にか浴場内はあたしたち二人だけになっていた。お湯から出る音がして振り向くと、立ち上がったサミ姉が身体ごとあたしの方に向けていた。目の前にはサミ姉の太ももがあった。暖まった肌がピンク色に上気して、肌を伝って下へ滑り落ちてゆく雫が名残惜し気に湯面に吸い込まれていく。あたしはそのまま固まって、視線を上に向けることができない。するとサミ姉はあたしの目の前に手を差し出した。差し出された手が視界をある程度遮ってくれたおかげであたしは視線を上に向けることができた。
『涼ちゃん、髪洗ってあげるー』
あ、髪、髪ね・・・あははははは
あたしは差し出された手をとった。
サミ姉の細い指先がシャンプーで泡だったあたしの髪をかき分けて入ってくる。
優しく、なんだか慈しむようにして頭皮を刺激する。
『痛くない?涼ちゃん』
『だいじょぶ。気持ちいい』
『ん♡』
サミ姉の指先の動きが頭皮を揉むような動きに変わった。
頭の芯の方が暖かくなってきたみたいな気がして、あたしはボーっとしながらその指の動きに気持ちをゆだねた。爪を立てないように気を付けながら、強弱をつけて頭皮をほぐすように刺激している。その快楽とも快感とも言えそうな感触に包まれながら、あたしは妄想を膨らませていた。後ろからサミ姉の乳房に両手の平をまわしている夕張とそれを許しながらはにかんでいるサミ姉の表情を。
シャワーで泡を洗い流されて我に返る。
『サミ姉、夕張が好きなのか?』
いきなり出た言葉は自分でも信じられないものだった。サミ姉も驚いたようで、その様子が息遣いで伝わってくる。正面の鏡にサミ姉が写ってるのを伏せた目で確認はしても、鏡越しですらその丸い瞳に目を合わせることもできないでいた。
『うん、夕張さんが好き』
そういったサミ姉の声はわずかな湿り気を帯びてあたしの胸に浸み込んだ。
『・・・・・そうか』
ため息のような声が出ていた。サミ姉はそんなあたしの頭を後ろから優しく抱きしめていた。
『涼ちゃんも好きだよ』
『はは、妹だからな・・・好きとかそういうもんでもねぇだろ』
サミ姉はしばらく思案気な沈黙をしていた。
『そういうの区別つけるにはあたしまだおっぱい小さすぎると思うの』
『・・・・いや、おっぱい関係ねぇだろ』
おっぱいかんけーねーーだろ!
サミ姉がポンプを押している音がした。コンディショナーを手に取ってあたしの髪にすりこみはじめる。
『涼ちゃんはあたしのこと好き?』
あたしは少し考えた。いささか波立っていた気持ちもなぜか落ち着いていた。サミ姉のボケ発言はしばしば動揺しているあたしを落ち着かせるのだ。
『姉ちゃんだからな、好きで仕方ねーだろ、裸見てもドキドキしないけどな!貧乳だし』
『貧乳って言わないでぇー』
桶にためていたお湯を頭から一気にぶっかけられた。