外務省事務次官、山重は先の戦いの戦後処理の事務作業に追われていた。閑職となって久しい外務省にはその処理を担当する事務員がそもそも確保出来ていないのだ。暇だからと言って役所の人件費をケチるといざと言う時に事務次官までも事務作業に追われる始末となる。人は一向に歴史に学ばない生き物らしい。
秘書である雨宮纏はさらにテンパっていた。入省以来の忙しさにデスマーチが聞こえてくる気がしていた。今もいくつかの書類をまとめて山重のデスクに決済を貰いに来ている。
「こちら沖縄関係の決済と。こちらは市ヶ谷のですね、あとこれは天津に送るタブレット300個の輸送業者の候補リストです」
「あ、そこ置いといてくれ、ん?」
書類を確認していた山重がふと目線を上げると、デスク越しに疲れ切ったような儚さをたたえる美女の顔が伺えた。
「雨宮君、少し休んだらどうかな」
そう言って山重は部屋の奥の方にある来客用のソファーを指し示す。
「お茶をもってこさせよう、座って待ちたまえ、私も一息つこう」
山重はインターホンの受話器をあげた。
間もなくしてお茶と和菓子が運ばれてきた。山重は深々とソファーに身体をうずめてちびりと緑茶をすすり始める。纏はそうリラックスするわけにもいかず背をのばして座っていた。
「楽にしていいぞ、纏君」
「あ、はい、ではお言葉に甘えて」
纏もソファーにもたれかかる。背中のあたりが少し楽になった。リラックスすると脚がだらしなく開きかける。いかんいかんと下半身に気合を入れる。次官にだらしなくパンツなぞ見せる訳にはいかない。
しばらくは二人がお茶を啜る音と和菓子を咀嚼する音だけがやけに存在感をもって聞こえていた。二人共疲れ切っていて何か雑談する気力も起きないようだった。
そうは言っても無言でいるのも失礼かと思い、纏は先ほど持ってきた書類で疑問を持った事を聞いてみた。
「天津にタブレット300個送るんですね」
「あぁ、そうだね」
「なぜタブレットを?300個も?」
「あー、彼女らが好意で船舶を沈めてるって話は君も聴いたと思うが、その沈めたいって欲求はかなり根源的な欲求らしくてな」
「根源的?」
「そう、根源的、それでなかなか上手く抑えられないそうなんだよ」
「困りますね」
「そう、困るね、そこで例の軽空母の艦娘がおふざけで艦を沈めるゲームをやらせたら深海棲艦の間で大ブームになったらしくて」
「はぁ、大ブームに・・・・」
「そう、それやってるとかなり沈めたい欲求が収まるとかで、大量のタブレットを配ってこのゲームをやってもらおうと言う事らしいよ」
「なんていうゲームなんですか?」
「えー何だったかな」
次官は一呼吸の間考えて記憶を探った後言った。
「艦隊これくしょん」
随分と時間がかかってしまいましたが、何とか完結することができました。特に誰に応援されるでもなく、期待されるでもない中、ちゃんと完結させました。普通は途中で書くの辞めますよね。なかなかできる事ではないと思います。俺えらい!w