サミ姉はかわいい。特におでこが良い。
サミ姉のおでこは美しいのだ。陶器のようにつるっとしていてつい撫でまわしたくなってしまう。
美しくも繊細そうに見えるサミ姉のおでこだが、美しいというにもそこには理由がある。察するにあのドジっ子である我が姉は事あるごとに転ぶ、滑る、ぶつける、を大した間も置かずに繰り返しているわけだが、果たしてどうだろう、この傷一つなく美しいおでこは!!
サミ姉のおでこはあんな繊細そうに見えて実は大変に頑強なのだ。
毎度繰り返されるドジっ子パフォーマンスによって大量の打撃をうけてなお、この美しさを保て得る強度。まさに鉄壁!頑強で鉄壁と美しく繊細という相反するこのパラドックスがサミ姉のおでこを神格化させているのだろうか?
・・・・うむー
『んんn・・・涼ちゃん?』
おっとおっと
眺めるだけのつもりがいつの間にかおでこを撫でまわしていたらしい。
出撃もなく暇を持て余したあげく暢気に畳の上で昼寝をしていたサミ姉が目を覚ましてしまった。
(出撃もなく暇を持て余したあげく暢気にサミ姉のおでこを撫でまわしていたのは何を隠そうあたしだ)
『何?おでこどうかした?』
『畳で寝てないでベッドにいけ』
『ん~~~寝てたぁ~』
サミ姉は上半身を起き上がらせて、部屋着にしている中学に通っていた時の学校指定の青いジャージの前ジッパーをおろし、無造作に脱いで無造作に脇へほおって白Tシャツ1枚になった。暑かったのだろう。下はジャージのままだが、上に着ているTシャツは薄手でささやかな桃色の乳首が透けて見えた。そうしてしばらく眠そうな細目をむにゃむにゃしていたが、やがてよく見えてなさそうな視線をこちらに向けてくる。
『涼ちゃん一緒に寝よう~』
『あー、ベッドでねー』
サミ姉はずりずりと二段ベッドのあまり高くない一段目に這っていってそこにコロンと転がった。あたしも追って同じ一段目に這い入る。
『サミ姉、もちょっと奥行って』
『はい~』
あたしが隣に寝転ぶとサミ姉は身体ごとこちらに向けてきた。顔近い。にゅぅ~といった感じに少し笑った顔になったがすぐにホケ顔になって静かに寝息を立て始めた。
あたしはしばらくそうして寝ているサミ姉を見ていたが、意を決してサミ姉のおでこに唇をつけた。サミ姉は起きる様子もなかったが、あたしの鼻息が荒くなっていたのか、サミ姉の前髪がさらっと動いたので慌てて身を引いた。
あたしは自分の心臓の鼓動がサミ姉に聞こえるんじゃないかという気がしてしまって、胸をぎゅっと抑えていた。
そうやって鼓動が収まるまでしばらくサミ姉の顔を見ていた。
頑強なおでこ、ぷにっとした頬、閉じられた瞳にかぶさる長い睫。
でも、実はそれはそのまま自分の顔でもあるのだ。
あたしとサミ姉は造作的にはよく似ている。
性格の違いから雰囲気が随分と違っているのか、他人にはあまり言われないのだけれど。
しばらくそうしているとサミ姉はポジションが具合悪かったのか、寝返りをうってあたしに背中を向けてからちょっと丸まって、むにゃむにゃ的な声とも息ともつかない音声を発してまた寝息を立て始めた。
今度はサミ姉のうなじが目の前にあった。
一瞬うなじに顔をうずめてくんかくんかしてる自分がフラッシュバックした。それだけでまた胸がドキドキし始めたので、ここは抑えておこうと思ってやめておいた。
見るだけにしておこう。
さて、あたしはサミ姉をかわいいと思うし、好きだとも思ってるし、たぶん愛している。しなかったけど、くんかくんかしたいくらいには。自分によく似た顔をした実の姉の事を。
もしかしてこれは実は自己愛に近いんじゃないだろうか???
などと思ってみたけども、あまり美味くない思考な気がしてあたしは考えるのをやめた。
そうして目を閉じた。