涼ちゃんとさみ姉   作:えーひち

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世界の現状(設定)

艦娘というのは過去沈んだ艦の付喪神が人に憑いた、いわゆる付喪神憑きである。

深海棲艦が海と海上の空を封鎖して、世界が海洋的に分断されてしまった頃に現れた『妖精さん』と呼ばれる存在がもたらした技術、付喪神憑きの人間と艤装をリンクさせる技術を使って誕生したものである。

この『妖精さん』も何かしらの付喪神であるというのが一般的な認識だが確定ではない。

リンクさせる艤装は付喪神の元となった艦と形が近い必要があり、そして付喪神が憑くのは必ず女性である。これは艦が女性名詞で呼ばれていたことから艦が女性として自身を認識していたためだといわれている。

付喪神は生まれながらに憑いていてある時期に顕現化するといった説と、ある年齢に達した時に適正者に憑くという説とあるが、どちらであるかはわかっていない。

要するに深海棲艦と同じでわからないことだらけだが、必要に迫られるという形でとりあえず運用されている。現状深海棲艦に対する唯一の有効な対抗手段として広く認識されているのだ。

 

付喪神は憑く、もしくは顕現化するとその女性の周りに体長10cmちょっとの妖精さんが数体現れ啓示を行う。具体的に言うとこんな風に言われる。

 

『お嬢ちゃんは白露型駆逐艦の五月雨ちゃんだよ!おじさんと一緒に最寄りの鎮守府に行こうね』

 

妖精さんの一人称が『おじさん』だということに関しては、様々な憶測を呼んでいるのだが、それについては後程機会があれば語ろう。

そんな、まるでロリコンおじさんに誘拐されるようにして、女の子は鎮守府に導かれる。そして艤装を意のままに操るためのリンクシステムを内蔵したジョイントを背中に埋め込む手術を受けるのだ。

 

ちょっとしたサイボーグである。

 

艦娘を輩出した家は国から多額の報奨金が支給され、大変に栄誉なことという認識なので、このサイバネティックな手術に抵抗をもつ娘はあまりいないが、そうでない娘も少なからずは存在する。そういった娘に関しては辞退することも可能であるが、憑いていた付喪神が辞退によって離れるわけではないので、適正は相変わらず付きまとうため、1~2年後同じ娘にまた妖精さんが勧誘に現れる事もある。ただ、25歳を超えた女性のところに現れた事は現時点では報告されていない。

また国内のいくつかの人権団体がこのサイバネティックな手術を激しく非難をしていて、国会の予算委員会で特定の野党が執拗で悪質な上げ足取り的な質問を繰り返し、たびたび問題になるため、予算審議が滞ってしまう事態に発展することが多々あるが、政府としては艦娘の運用をやめるわけにはいかない状況に解決策があるはずもなく、その度に輩出家族への報奨金の多額化や、艦娘への待遇を向上させるといった対応となっている。

 

また、深海棲艦の跳梁跋扈によって世界が分断され孤立してしまったこの極東の島国は当初、ほどなく訪れるであろうエネルギー資源枯渇の危機に直面していた。

しかし艦娘の顕現化が早い時期に始まり近海の制海権を確保することに成功したことによって、かねてから進めていたメタンハイドレートの採掘実用化が可能となり、また運よくこの時期に連邦が樺太や北方領土などの沿岸部から完全撤収したため、その一帯の油田を確保。連邦に対して借款の申し入れをしたが、当初連邦はこれを拒否。後に交換条件として艦娘によるウラジオストック港の開放作戦を要求して来た。これに関しては国内の親連邦派の政治家が数は少ないなりに強硬に実行を主張してきたが、海上封鎖時に国内に残っていた合衆国軍が自治区化した沖縄合衆国自治区がこれに反発。大変な論戦となったが、この沖縄が政治的発言力も高く、実質的に強制力のないこの連邦の要求は無視しても採油は可能という結論となり、作戦は実行されず採油が実行された。採油された原油量は細かく記録され、その時の原油価格に対応した金額がきちんと算出され、その費用がストックされていたりするところはこの島国の国民性であろう。基本データ以外のやり取りが不可能となり、現物の貿易が出来なくなったこの時代に外貨がどれほどの価値を持つかは甚だ疑問ではあるのだが・・・

後に連邦も実行されない作戦を待つより、とりあえず価値が疑問視される外貨でもないよりはマシと実を取るという判断となったのか、正式に油田借款の条約が結ばれた。

メタンハイドレートと北方領土の油田。この二つのエネルギー資源を軸として、原発や自然エネルギー等の補助を得て、この極東の島国は実に分断前よりも多くの自前エネルギー資源を確保できるに至っている。

元々GDPの国内需要が90%を超えている経済市場でもあったため経済的混乱もあまりなく、食料供給に若干の不安があったものの、これも政府による迅速な農畜産業改革や、艦娘によるEEZの制海権確保がもたらす漁業の安全な操業が功を奏していた。

鉱物資源に関しても外国産との価格競争に敗れて閉山していた鉱山を再開。もともと鉱物資源は豊富な土地でもあったので、ボーキサイト以外の鉱物資源は問題なく確保している。問題のボーイサイトだが、封鎖時国内にストックのあった原石やアルミニウム製品が回収されたりして賄っているのが現状だ。これらすべて艦娘の航空機補給に使用されているが、いずれ枯渇することになるこの資源は急ピッチで代替品の開発を急いでいる。

 

さらに、この深海棲艦による孤立は大陸や半島、連邦などの他国からの脅威を完全に排除していた。北方油田に関する連邦の対応からも明らかに見て取れる。

艦娘の顕現化の鈍いこれらの国はほぼ、内陸に押し込められる形となっていて、海を挟んだ他国に干渉することができないのだ。

封鎖前この国にはスパイ防止法がなかったため、国内にあふれるようにいた各国の工作員達も封鎖によって本国との繋がりがほとんどなくなってしまった。そのため多くがその活動を鎮静化させておかしな世論誘導もすっかりなくなっていた。

連邦もそうだが、大陸や半島からもその近海の開放を求める作戦要求が後を絶たない。元工作員達の海上開放運動もチラホラとある。しかし国民世論には封鎖前の彼らのやり方にウンザリとしていたという空気もあって、どうしても前向きには考えられない上に沖縄の強い圧力もあって、政府ものらりくらりとかわしているようだ。

 

こうして安全保障と豊かな自前エネルギー資源を得たこの極東の島国は、有史以来最も豊かな時代を迎えていた。

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